焼き肉店で0-157による食中毒死事件が発生しました。
北陸にある焼き肉チェーン「焼肉酒家 えびす」(フース・フォーラス社:金沢市 勘坂康弘社長)でユッケ等が原因でO-157に感染・発症した結果、35人が食中毒症状を起こし2人が死亡したそうです。
このチェーン店の若いオーナー社長・勘坂康弘氏が記者会見で次のような趣旨のコメントを記者会見で発表していました。
・牛肉について国内と屠場からの生食用としての実績はない。
・問題があるというなら法律で生食用ないし普通の精肉をユッケとして出してるのを全て禁止すべきだ。
・事件発生以後、当社には「人殺し」という批判メールが多数送られている。
・当社の衛生管理に不備はあったかもしれないが法は順守していた。
・今回のO-157も社外の時点で混入していた可能性がある。
ようするに生食用という食肉区分が法的にない以上、この会社がだしたユッケは合法なものであり、食中毒問題の責任は限定的なものであるはずだと社長は言いたかったようです。
この記者会見はクライシスマネジメント上、最悪なものでした。
内容もさることながら、社長の開き直った態度と発言は多くの視聴者の反感を買ったことでしょう。
ドラッカー流に言うならば、こうした場合の考え方の基準は最近、このブログでも書いた野獣の原則を基本にすることになります。
ライオンが逃げた責任は理由のいかんを問わず飼い主が負うべきという原則です。
この原則からすると、記者発表は次のような内容であるべきであった考えます。
1、このたびの食中毒事件の責任は全面的に当社にある。
2、被害を受けた方々にはお詫びの言葉もないほど申し訳なく思っている。
3、賠償責任等可能な限りの責任を取るつもりである。
4、現在原因の究明を急いでいる。
5、事故の発生経緯のみならず通常の衛生管理など当社のオペレーション上の諸問題の可能性も視野に入れている。
6、捜査当局には全面的に協力する所存である。
7、事件が一段落した段階に置いて経営責任を負う所存である。
事故の大きさからいって責任回避は不可能ですから、真摯な対応と思われる可能な限りの打ち手を打つべきであるということです。
このプロセスの中で仮に社長個人に全責任を負わせるのはかわいそうだという声が外部から起きるのであれば再生の道はあるのかもしれません。
しかし自分の責任を回避するかのような開き直った態度は自ら再生の道を閉ざすもののように思われます。
CSRの世界では「サプライチェーン上で起きた問題はすべて責任を負う」という原則があります。
この原則にのっとって評価を高めた会社もあれば、「外注先のせいだ」といって破たんした会社もあります。
現在、ソニーの情報流出事件も問題になっているようにクライシス・マネジメントの基本を押さえることは不可欠な時代状況になっています。
(浅沼 宏和)