2011年5月11日水曜日

書評-「ユニクロ帝国の光と影」⑧

柳井氏は、SPA(製造小売り)のメリットとして、低価格・高品質の他に次のようなことを指摘しています。


1、100%買い取りが前提であるため、在庫を1社で負うことになり在庫リスクの管理が容易になる。
  自社で開発・販売している商品の売れ生きが悪ければ、売りきるまで値下げすることができる。

2、流通の川上から川下まで1社で管理するので、売れ筋情報を有効活用できる。



柳井氏は特に「売れ筋情報」“金の鉱脈”と呼んでいるそうです。

売れ筋情報を押えていることでユニクロはヒット商品を見つけ出すまで何度も実験することができるのです。


柳井氏によると

今までのヒット商品も、お客様の反応、売り場の社員や店長の意見、雑誌編集者の口コミなどちょっとしたことがきっかけで生まれ、その商品が翌年改良され、そのまた翌年にもっと改良されて販売されてヒットにつながっている。

現在の多くの小売業は自分で商品を作っていないので、そういうことよりも自分たちのアイディアを押し付け、「こんな風な商品を作ってきて!」とメーカーさんに指示するだけなので、長続きしないし、自分達のノウハウも貯まらない。
それでは成功しない。

ということだそうです。


これは機会を見つけるために外を歩きまわれといドラッカーの言葉に合致していると思います。

「外を歩き回る」とは外部との接点を多くするという意味です。データや統計にあらわれない兆候を探すことが重要であるという意味です。

そして機会とおぼしきものを見つけたら打ち手をうち、好感触のあったもの、つまり「予期せぬ成功」を拡大していくというやり方です。

そしてそのうまくいったものが新たな強みになるわけです。

これがドラッカーの言う「強みを生かす」ということです。


柳井氏の上記の発言は、ドラッカーのイノベーションの手順通りの行動であると評価できます。



(浅沼 宏和)