2010年9月30日木曜日

タイムマネジメント-生産的な時間とムダな時間

しばらく書評などが続きましたが、またドラッカーの仕事のマネジメント論を深掘りしていきます。

ドラッカーは時間からスタートすると述べています。


この感覚は製造業などでははっきりとありますが、それ以外の業種、特に営業系や事務系などでは意識が薄い会社があります。


また書評で改めて書くつもりですが、タナベ経営のコンサルタントが書いた『問題解決の5S』(南川典大、ダイヤモンド社)という本がドラッカー経営に非常に近いところで具体策が書かれています。


しばらくドラッカー理論をこの本との対比で検討していきたいと思います。



南川氏によると、ビジネスパーソンの仕事時間のうち、真に付加価値を生む仕事は全体の25%しかなくて、後の25%はそのための準備業務にとられるといいます。

準備業務というのは、情報収集や見積、資料作成、客先への移動がそれに当たるといいます。

そして残りの50%は極論すると付加価値と無関係なムダな仕事といえるといいます。



この仮説はかなりの妥当性があります。

私は当社事例で言うならば、付加価値業務、準備業務、ムダな業務の比率は同等で、それぞれ3分の1ずつ考えていました。


この場合南川氏の比率と私の比率を比べることは意味がなく、南川氏の方がより厳しい目線であるというだけです。

ポイントは成果を上げることに貢献する時間は非常に少なく、多くの時間がムダに費やされている ということをしっかりと認識するということです。


ですから、あらゆる仕事には改善の余地があるわけです。そうした改善は時間に基づいて考えていくことが第一歩になります。

これが、ドラッカーの言うところの 時間からスタートする という命題の本質です。

2010年9月29日水曜日

閑話休題-名選手の語録②

「どのポイントもみな大事。全力を尽くそう、全力を尽くそうと自分に言い聞かせてプレイした。」 シュテフィ・グラフ(テニス)

「スポーツはまさに人生そのものだ。努力した分だけ自分に返ってくる。」 イアン・ソープ(水泳)

「新しい成功をつかむためには、今、手にしているものを放さなければならない。」 岡田武史(サッカー)



「きつい練習をしろ。長い練習をしろ。」 ベーブ・ルース(野球)

「私は何度も失敗した。そして、打ちのめされた。それが私が成功した原因だ。」 マイケル・ジョーダン(バスケ)

「失敗したことのない人間は成功することもない。たゆまざる挑戦が成功につながるからだ。」 カール・ルイス(陸上)



「悪いと分かっていても、人間がどうしても捨てられないものに先入観がある。」 落合博満(野球)

「競輪で勝つコツは、人より速く走ることです。」 中野浩一(競輪)

「人間は本来保守的である。ある状況になれると特に強い動機がない限り、そこから抜け出そうとしない。」 広岡達郎(野球)



「自分の人生は自分にしか作ることはできない。」 ニキ・ラウダ(F1レーサー)

「私は過去を振り返らない。今のことだけを考えている。」 伊達公子(テニス)

「限界に限界はありません。限界は個々の選手の目標で、限界を超えれば次の限界が生まれます。」 イビチャ・オシム(サッカー)



「プロというのは技術的な限界を感じてから本当の戦いが始まるのだ。」 野村克也(野球)

「人に勝つより自分に勝て」 嘉納治五郎(柔道)

「全力を尽くす者は、何も言わなくても自然にリーダー的存在になる。」 ジョー・ディマジオ(野球)



「不安もプレッシャーもあります。それをはねのけるのは納得できる練習しかありません。」 谷亮子(柔道)

「人間は、本当に上手になりたいと思った時にこそ学習能力を発揮する。」 平尾誠二(ラグビー)

「なぜ強いのかですって?それは厳しい練習をしているからです。」 ナディア・コマネチ(体操)



「窮地に立った時に人間の本当の価値が決まる。」 大鵬幸喜(相撲)

「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」 松井秀喜(野球)

「リスクを取る勇気がなければ何も達成することがない人生になる。」 モハメド・アリ(ボクシング)



「うまくいくことを前提に立てたゲームプランなど妄想にすぎない」 青木功(ゴルフ)

「戦術眼というのは、多くの修羅場をくぐることによってのみ養われる。」 釜本邦茂(サッカー)

「ちょっとした見栄がゲームを台無しにすることがある。」 アーノルド・パーマー(ゴルフ)


「最強の敵は自分自身だ。」 アベベ・ビキラ(マラソン)

「印象だけで物事を判断すると失敗する。だから、あいまいな記憶に頼らない。きちんと書いて記録に残していくことがとても大事だ。」 古田敦也(野球)

2010年9月28日火曜日

閑話休題-名選手の語録①

孫子と韓非子が続きましたので、少し一服です。


私はイチロー等の一流のスポーツ選手の語録が好きです。

分野は違えど一流の言葉には共通するものを感じるからです。

そして、その多くがドラッカーの言葉と通じるものがあると思っています。



「始まるのを待ってはいけない。自分で何かをやるからこそ、何かが起きる」 植村直己

「勝つことがすべてではないが、勝つしかないんだ」 ヴィンス・ロンバルディ(アメフト)

「何も考えずにボールを打ってはならない」 ゲーリー・プレーヤー




「今強くなる稽古と、三年先に強くなるための稽古の両方をしなくてはならない。」 千代の富士

「運というのは、つかむべく努力している人のところを訪れる」 衣笠祥雄

「準備万端でない限り、失敗することは目に見えている」 マーク・スピッツ(水泳金メダリスト)




「常に100%の力を出していれば、最後には必ずうまくいくというのが私の持論だ」 ラリー・バード(プロバスケ)

「勝つ、という言葉は簡単に口に出すものではない。特に勝つための準備ができていない状態では言うべきではない。」 岡本綾子

「夢はモチベーションを高めるが、夢を実現するにはもっと具体的な要因、知識と努力が必要だ」 ジャック・ニクラウス



「無駄になる努力などない」 川上哲治

「一生懸命努力しても必ずメダルが取れるとは限らない。だが、誰よりも厳しい練習をし、自分に勝たなければ勝利はない」 山下泰裕

「いろんな努力の蓄積が見えないところにあるわけで、凄いなと思う人ほどその努力をしている」 今井通子

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」⑩

韓非子の続きです。


・何か裏があると気付いたら、それでだれが得をするか考えることだ。


・紛らわしい行為は人を惑わせる。


・古の賢人に学ぶのもよいが、時勢に合わせた対応が必要だ。


・君主が効用を念頭に置かずに意見を聞くと、多くは耳触りのよい話を持ってくる。




・君主が自ら実行しなければ人は信用しない。


・自分の条件を頭に入れず、原則にこだわると臨機応変に対応できない。


・無意味な虚飾は物事の本質によくない影響を与える。




・いくら精巧なものでも実際の役に立たないなら何の価値もない。


・法律の大事な点は平等にある。


・問題に直面して適切な処理ができず、ただただ先人の教えを重んじるのはよくない。




・深遠でとてつもない議論は役には立たない。


・仁徳のある人は他人を助けても何も求めない。凡人はだれかを助けることで見返りを期待する。


・ちっぽけな利益のために本分をおろそかにしてはならない。


・君主が人材を使いこなしていれば、臣下も才能を飾り立てたり売り込んだりしなくなる。




・他人を推薦するときは仇敵を避けず、わが子も避けない。


・物事には一定の法則がある。そこから推理すればだまされることはない。


・指導者とは、独創的な観点と正確な判断力を備え、自信家だがおごらず、控えめだがためらわず、人々を導いて集団の精神を発揮させられる者のことだ。




・君主が好き嫌いをあらわにすると、臣下はその心理に合わせようとする。

・人にはそれぞれの職分がある。君主が権力の根本を抑えることを怠り、臣下のやるべきことまでやろうとすれば眠くなる。

・君主の行う賞罰は国を統治するための威力である。


・どんなに優れた技量があっても歩調が合わねば共に仕事はできない。君主と臣下は権力を共有してはならない。



だいぶ長丁場になりましたが、これで孫子と韓非子のまとめは終わりです。

孫子編はできがいいと思いますが、韓非子編は体系的ではないですね。私は孫子は読んでいますが韓非子は読んでいません。

また韓非子の原本に当たってレベルを上げる機会を持ちたいと思います。

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」⑨

韓非子の続きです。


・大切なのは実際的効果である。救済で大事なのはタイミングだ。

・万に一つも誤りがないと知っていれば赤の他人でも信用するが、未熟であれば親子の間でも信頼しないものだ。

・何事にも前兆がある。事が起こる前に策を講じることを怠ってはならない。


・利益が転がっていれば人は気持ちの悪さも忘れてやる気を出す。

・利益を追う者は目先の利益にとらわれて争い続ける。大局を見れば真の利害関係が見えるはずだ。

・何事も事前に対策を立てておけば手の施しようのない事態を避けられるはずだ。

・智者は言葉では人を教えない。すべては「道」に任せて行う。


・世にもなれな逸材などめったにいない。国家社会の屋台骨は平凡な人々の中の賢人だ。
中堅の人材を有効に使えれば明君になれる。

・寛大にすぎると法は成り立たないし、刑罰が厳しく行われないと禁令はいきわたらない。

・法令を徹底すれば人は軽々しく法令を破らない。

・信賞必罰であれば、勇士は水火をものともせずに勇敢に戦う。

・士は自分を知る者のために死ぬ。


・情けが深すぎると寛大になりすぎ法は立ち行かない。

・君主の権勢が増すと下の者はどうしても表面取り繕う。

・君主が直接臣下と話をすれば、臣下の実力は一目瞭然となる。無能な者の入る余地はない。


・恩賞は手厚く、刑罰は重く。

・人間は利己的だ。設定した目標にまい進させるには、それが得であることを知らせることだ。

・1人の人間だけを信用し、他の意見を聞かないとたちまち愚弄される。


・寛大すぎると法は成立しない。威厳が足りないと臣下は増長する。

・君主と臣下は立場が異なり利益も違う。臣下は忠義を尽くさず自分の得になるようたくらむ。

・君主は気まぐれで一度決めたことをよく覆す。それが混乱のもととなる。

2010年9月27日月曜日

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」⑧

韓非子編です。

今回の書評はだいぶ回を重ねていますが、孫子も韓非子も歴史的名著ですが、意外と触れる機会のないものです。
ですから、この機会を使って、できるだけコンパクトな要約版を作っておこうと思っています。

韓非子は法家の思想の大成者です。秦の始皇帝が韓非子の思想を用いて帝国をおさめたのは有名です。

何回かにわたってまとめていきます。


・臣下は職分を超えて手柄を立てることは許されない。自分の職分内のことを立派に成し遂げるのが肝要だ。


・国が滅びるのは大臣が尊ばれ、近臣に威勢がありすぎて権力が君主の手を離れたからだ。

・物事の道理を知ることは難しくない。難しいのは知った後にどう対応するかだ。

・忠告の難しさは、忠告者自身ではなく相手の心理を読むことの難しさだ。好意があだとなる。


・人はしばしば自分の利益を考える。一つのことで得する者と損する者がいる。

・聖人に恥辱はない。それを恥辱と思わないのだから恥辱ではない。

・かすかな兆候を見て取ることができれば明察といえる。


・価値観や理想は人によって異なる。人が欲するものを欲しなければ得難い宝も貴重ではない。

・荘王は小事にこだわらず大事を失わなかった。だから名声を得た。軽はずみに自身の意図を表に出さなかった。だから大きな功績をあげた。  -大器晩成


・勝利への道は集中力にある。

・師と仰ぐ人を大事にせず、資本となるものを善用しない者は無知蒙昧だ。

・志を立てそれに励む時、人は多くの困難にぶつかる。自分に勝つのは容易ではない。

・巧みな偽りは拙い誠実さに及ばない。手柄を立てて疑われることもあるし、罰せられても信頼を得ることもある。


・知恵者は知らないことがあれば馬やアリにさえ学ぶ。無知な者は自覚がないので聖人の教えに頼ろうとしない。

・下の者は見捨てられることを恐れて自分より優秀な人材を推薦しない。

・人間は利己的で、度が過ぎると自身の本分まで忘れる。役人には多い。


・成功のカギは時間と場所と仕事の内容だ。


(つづく)

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」⑦

孫子の要約の最後です。


≪火攻編≫

・火攻めには五種類ある。①兵隊を火攻め ②物資を焼く ③補給部隊を火攻め ④倉庫を焼く ⑤敵陣に火を放つ

・火攻めを行うには条件が整い、準備もできていなければならない。また時機を図って決行日を決める必要がある。

利に合わせて動け-戦うからには勝つ、攻めるからには取る、有利でないなら行動するな。

・君主や将軍は一時の怒りで戦ってはならない。国益に合うなら行動し、合わなければすぐ中止する。

・明君、名将は慎重なうえにも慎重を期す。


≪用間編≫


・戦争をすれば連日、多くの人的損失に加えて多額の出費を強いられる。
国全体が動揺し、人は疲弊する。戦争は数年に及び結果は最後の一瞬で決まる。
だから情報を得るために恩賞を惜しんではならない。


・優れた将軍が必ず勝つのは事前に敵情をつかんでいるからだ。

・敵情を知るのに、神頼み、過去の経験からの推測、占い出の判断に頼ってはならない。

・スパイを使った情報収集こそ正確だ。

・スパイには、郷間、内間、反間、死間、生間の5種類がある。

郷間-敵国の住人をスパイにすること

内間-敵国の役人をスパイにすること

反間-敵のスパイを裏切らせて味方につけること

死間-こちらのスパイを送り込み偽の情報を流すこと。死を覚悟して潜入するスパイのこと

生間-敵情を探って生還し、本国に情報をもたらすこと


・スパイには高い信頼を置き、最も高い報酬を支払い、その活動は絶対に秘密にする。

・才知を備えた将軍でなければスパイは使いこなせない。

・仁義に熱いものでなければスパイは使いこなせない。

・最新で巧妙な手段を用いるものでなければスパイがもたらした情報の真偽を見分けられない。

・こちらの動きが漏れた時はスパイと情報提供者を殺さねばならない。

・軍事行動はスパイのもたらす情報によって決まる。




以上で孫子編は終わりです。マンガ仕立てなのですが、ここまでのまとめを見ていただいて分かるようにかなり有益な仕上がりの本です。

次回から韓非子をまとめます。

2010年9月26日日曜日

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」⑥

孫子の続きです。

≪九地編

・地の利は戦いの重要な条件である。

・九種類の戦場-散地、軽地、争地、交地、ク地(変換できず)、重地、圮地(ヒチ)、囲地、死地


散地-自国の領土内で戦う場合

 すぐには戦わず、敵を深く誘いこんでから攻撃する。

軽地-国境に近い敵地

 止まることなくどんどん進撃する。

争地-敵味方双方にとってどうしても手に入れたい地

 先に占領する。敵に先を越されたら攻めるべきではない。

交地-味方もいけるが、敵も来られる地

 先に占領して敵を阻み、後方部隊との連絡を確保する。

・ク地-そこを手に入れられれば近隣諸国の軍事行動をけん制できる地

 外交交渉に重点を置く。

重地-敵国内に深く侵入し、すでに多くの街を通過した地

 現地調達を心がける。

圮地-山岳、森林、高山、沼沢地など行軍しにくい地

 急いで通り抜けること。

囲地-進入路が狭く、帰路が迂回していて敵がわずかな兵力で味方の大軍を襲える地

 巧みな計略で切り抜けること。

死地-速戦即決以外に生きる道がない地

 死力を尽くして戦うしかない。


・有利と見たら攻撃し、不利と見たら動かない。

・敵が優勢な兵力で攻撃してきた場合、そこを襲えば必ず救援するポイントを攻撃する。すると敵は動きをけん制される。

覇王の兵-天下を制する軍隊

  ①国際情勢に暗ければうまく外交交渉ができない。
  ②地形に通じていなければ行軍できない。
  ③その地の案内人を重く用いなければ地形を利用できない。

常山の蛇-頭を打てば尻尾が襲い、尻尾を打てば頭が遅い、中間を打てば頭としっぽが襲う。強い軍隊は常山の蛇のようだ。


・兵士を勇敢にたたかわせるのには指揮が大事だ。

2010年9月25日土曜日

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」⑤

孫子の続きです。


≪地形編≫


地形には、通、挂、支、隘、険、遠 の6種がある。


-味方もいけるが敵も来ることができる地形。

  視野のきく高所に陣を張り、補給路を確保すれば有利。

-(けい)進みやすく退きがたい地形。

敵に備えがない時に進めば勝てるが、敵に用意があるなら不利。容易に撤退できないため。

-敵にとっても味方にとっても出撃するのに不利な地形。

敵が誘いをかけてきても応じない。逆に退却して敵に追わせ、敵の半数がこの地形に入ったら攻撃する。

-狭隘な地形。

先んじて占拠し、入口を制すること。敵が占拠していたら攻撃しない。占拠していても入口を守っていないときは進撃を検討する余地あり。

-要害の地

先に占拠し高地に陣を張り敵を待つ。敵が先に占拠していたら間違っても攻撃せず、撤退する。

-敵味方の距離が離れている。

双方の兵力が均衡している場合、先に攻撃したほうが不利になる。


以上、6種の地形を見分けるのは将軍の重要な仕事である。
  



敗因には、走、弛、陥、崩、乱、北 の6種がある。

・敗因は地形の不利で敗れたのではなく将軍の過失による人災である。


-敵味方の兵力が同じなのに決戦時に兵力集中ができず戦う場合。

-装備・訓練が完璧なのに指揮官の能力が劣る場合。

-指揮官は優秀なのに兵士が弱い場合。

-士官が自信満々で勝手な行動をとり、しかも将軍がこれを抑えられない場合。

-統制が緩く、兵士に規律がなく、陣形がばらばらになっている場合。

-将軍の敵に対する認識が甘く少数で多数に、弱兵で強兵が戦いしかも集中していない場合。

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」④

孫子の続きです。

地形や状況に合わせた陣の構え方なので、使い道はないと思いますが、状況やささいな兆候からリスクを読み取る合理的な視点を学ぶことができると思います。


≪行軍編≫

・山地を進む時は谷に沿って行軍し、攻守に適した見通しのきく高地に位置せよ。
・敵が高地を占拠していたら正面から攻撃しないこと。

・川を渡ったら速やかに川岸から遠ざかり、敵に乗じる隙を与えない。
・敵が川を渡って攻めてきたら水中で迎え撃ってはならない、敵の半数が岸に上がったところで攻撃するのが効果的だ。

・川岸では高地に陣を張れ。
・敵の下流に布陣してはならない。

・湿地を横切るときは一刻も早く通過すること。
・湿地で戦うときは水草の生い茂っている場所を確保すること。
・一番いいのは木の茂みを背にすることだ。

・平原で戦うときは平たんな場所に陣を張れ。
・右翼または背後に高地があり、前方が低くなっている地形がよい。


・敵が間近にいて静まり返っているのは自然の要害を頼みにしている。

・敵が遠くにいて挑発してくるのはこちらを誘い出そうとしている。

・敵が自然の要害を頼らず、わざと平たんな場所に陣を張っているのは何か他の利点がある。

・林の木々がゆれているのは敵が近付いたためだ。

・鳥が突然飛び立つのは敵が潜んでいるためだ。

・獣があわてて逃げ去るのは敵が近付いたためだ。

・土ぼこりが隆起して舞い上がるのは兵車(古代の戦車)が来たためだ。

・土ぼこりが低く広がっているのは歩兵部隊が近付いたためだ。

・敵の使者がへりくだった態度でありながら着々と準備を重ねているのは進撃してくる前兆だ。

・敵の態度が強硬で、しかも進撃の構えを見せているのは撤退する前兆だ。

・敵が何の取り決めもなしに和睦を申し出た時は、何か計略があるとみるべきだ。

(つづく)

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」③

孫子編の続きです。


≪九変編≫

・9つの原則-用兵を心得た将軍といわれるための原則

① 通行困難な場所に野営してはならない。

② 交通の要地では隣国との関係に気を配れ。

③ 交通と補給の困難な場所にとどまってはならない。

④ 険阻な地形は一刻も早く脱出すること。

⑤ 退路のない局面では死力を尽くして戦え。

⑥ 進軍路であっても「迂直の計(急がば回れ)」を使うときは路を使うな。

⑦ 敵を倒せる局面でも他に兵力を集中する必要があるときは攻撃を控えろ。

⑧ 攻略可能な城でも効果的な全滅を狙って攻めない場合もある。

⑨ 君命といえども戦いが不利になるようなら受け入れなくてもよい。


・知将は策を練る時に必ず利と害の両面を考慮する。

・敵は来ないという幻想を抱かず、万全の準備を整えて待ち受けよ。


・将軍が冒しやすい5つの間違い

① 無鉄砲な戦いではむざむざ殺されてしまう。

② びくびく戦えば捕虜にされてしまう。

③ 焦って腹を立ててばかりいると敵にあなどられる。

④ プライドが高いと相手の中傷に耐えられない。

⑤ 思いやりがあると敵につけこまれる。


(つづく)

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」②

孫子編の続きです。


≪兵勢編≫

・大部隊を小部隊のように管理する。これは編成の問題である。
・大部隊を小部隊のように指揮する。これは号令の問題である。

・敵の攻撃にさらされても不敗である。これは奇と正の運用にかかっている。

 ・戦いは正攻法で行うのが原則である。

・そして戦況の変化に応じた奇策によって勝利をおさめる。
・戦いの基本は正と奇の二種にすぎない。しかし、組み合わせは無限に変化する。

 ・戦上手の戦い方は引き絞った弓のように勢いがあり、ばねをはじいたように素早い。


・戦上手は大勢の中で戦い、個々の兵士の失敗を追及しない。
・適材適所の人選で戦いに有利な状況を作る。

・優れた将軍の作り出す勢いは防ぎようがない。



≪虚実編≫

・敵より先に戦場に到着すればイニシアチブがとれる。
・戦上手は常に戦いのイニシアチブをとり続ける。

 ・味方は集中し、敵は分散させる。
・戦いの法則は実を避けて虚をうつことだ。敵情の変化に順応できれば勝利できる。

 ・兵法に一定の法則はない。戦いに決まった型はない。実を避けて虚を突き、正と奇を組み合わせて勝利する。



≪軍争編≫

・戦いとは戦場において敵と有利な条件を争うものである。
・機先を制し合う局面では有利な面も危険な面もある。


・軍が補給部隊とともに行動すると機動性がなくなる。離れて行動すると物資を奪われるリスクがある。
・軽装備で軍の速度を上げると精鋭だけが戦場に到着し、弱兵は落後するため戦力が10分の1になる。


・諸侯の狙いを見極めずに同盟を組むのは危険である。
・山林、沼沢などの地形を知らずに行軍してはならない。
・地元の道案内を見つけなければ地の利を得られない。


・敵を欺くことで勝利できる。有利かどうか見極めて行動し、状況変化に合わせて兵力の集中と分散を決める。


・風林火山

・『風』 行動するときは疾風のように
・『林』 静止するときは林のように静まり返る。
・『火』 攻撃するときは火のように激しく
・『山』 防御するときは山のように微動だにしない。


(つづく)

書評-「マンガ 孫子・韓非子の思想」①

『マンガ 孫子・韓非子の思想』講談社、1990年  

 
たかが漫画と侮るなかれです。これはけっこう読みやすいしわかりやすいです。

私は孫子は岩波文庫本を持っていますし、ビジネス書で孫子を扱った本を何冊も読みました。

しかし、これは非常に簡潔にまとめているので帰って分かりやすいかもしれません。

岩波文庫本との併読をお勧めします。

せっかくなんで概要をまとめましょう。

まずはビジネスパーソンの必読書である『孫子』です。


≪作戦編≫

兵は拙速を尊ぶ-戦うときは短期決戦
知将は敵に食(は)む-戦上手の将軍は食糧の輸送は最低限に抑え、足りない分は敵地で調達する。
兵を知る将は民の司命なり-戦は勝つことが目的。長引かせるな。

≪謀攻編≫

用兵の法-百戦百勝は最上とはいえない。戦わずして相手を屈服させるのが最上。
政略-最高の戦略は謀略で勝つこと。最低の策は敵の城を攻めること。戦上手は戦わずして敵を屈服させる。
戦いの原則-10倍の兵力があれば包囲殲滅。5倍なら攻めまくる。2倍なら正面と背後の2方向から攻める。互角の兵力なら不意を突く。兵力が劣るなら守りを固める。兵力差が大きすぎれば退却してかわす。

統帥権-君主が軍を危機に追いやるケース  ①時期を得ない進軍・退却命令 ②むやみに口出し将兵を混乱させる ③指揮系統を無視して自ら指揮をし兵士の不信を招く。
彼を知り己を知る-敵と自分を知れば100戦100勝、敵を知らず自分を知れば五分五分、敵も自分も知らなければ負ける。

≪軍形編≫

戦略目標-用兵に巧みな将はまず有利な態勢を作り出し、敵に付け込まれないようにしてから戦うチャンスを待つ。
まず勝ちて後に戦う-戦上手はまず不敗の基礎を作り、敵に乗じる隙を与えない。そして敵をやっつけるチャンスを見落とさない。
戦いを決定づけるもの

 ①戦場と戦線の状況を判断
 ②投入兵力の配備計画をたてる
 ③兵力と物資の数量を決める
 ④双方の政治力と軍事力を比較する
 ⑤勝算を得る


(つづく)

2010年9月24日金曜日

再論 「三人の石工」のエピソード

ドラッカーの有名な引用エピソードが三人の石工です。


  1人目の石工に聞くと  「これで生活をしてるのさ」

  2人目の石工に聞くと  「国一番の仕事をしてるのさ」

  3人目の石工に聞くと  「大聖堂を作っているのさ」


と答えるというものです。


3人目が大きな成果を上げる者であり、2人目は組織の足手まといになりかねない者であるというのがオチになっています。1人目はほどほどの貢献といったところです。


私は今までビジネスパーソンはこの3人のどれかに分類されることが可能であり、3人目こそが中核人材であると漠然と考えていました。

しかし、そうではなくて「すべてのビジネスパーソンの中には3人の石工が住んでいる」と考えた方がよいと思うようになりました。


ある時は、ルーティーンのこなし仕事をする自分がいて、ある時は一生懸命仕事をしつつもミッションを見失っている自分がいる。

そして、ある時は中長期の視点から現在の自分を再検討する自分がいるという感じではないかと思うのです。


そうであるならば、自分の中にいる3人の石工たちを適切にマネジメントするという意識が必要になるのだと思ったわけです。

これはドラッカーのタイムマネジメント論を考えているうちに考え付いた視点です。

この仮説に立つならば、自分の中にいる3人目の石工を活躍させるために後の2人の石工を使いこなしていかなければならないことになります。

閑話休題-顧客は正しい

最近、コトラーの本を読み返すことが多くなりました。

コトラーは言わずと知れたマーケティング理論の対価です。

コトラーはドラッカーに影響を受けつつ、顧客目線の大切さを体系的にまとめた偉大な経営学者です。

コトラーの本には有名な事例があります。

アメリカの大手小売業者の社員向けの規則です。
いかにもアメリカらしいウィットにとんだ事例なのでご紹介します。


ルール1 顧客はいつも正しい



ルール2 もし、それでも顧客が間違っているならルール1に戻れ



基準や方針にはこれぐらいのウィットがあったほうがよいのかもしれません。

ルール1がすべてであることが思い知らされますね。

書評-「MBB:思いのマネジメント」

野中郁次郎他『MBB:「思い」のマネジメント-知識創造経営の実践フレームワーク』東洋経済新報社、2010年   定価1,890円


日本が世界に誇る経営学者・野中郁次郎教授を中心にまとめられた力作です。

本書は日本企業が多く実施している目標管理制度の問題点を鋭くえぐり、新たなフレームワークを提起しようとするものです。

ですが、中身についていえばこれはドラッカー流目標管理制度に他なりません。

概要は以下の通りです。


・バブル経済が崩壊し、日本企業の多くが目標管理制度、成果主義制度を導入した。
・結果的に業績向上につながったものの、社員の多くが仕事のやりがいや喜びを失った。
・成果主義・目標管理には働く人の「思い」の入る余地がない点が問題である。

・日本企業には自身の内側からのほとばしる思いを込めて創造的に仕事に打ち込むための仕組み-『思いのマネジメント』Management by Belief (MBB)-が必要だ。

・動機づけによって社員の創造性を引き出そうとするのは間違いだ。人がもともと備えている創造性を解き放つような支援が必要なのだ。

・経営の原点は、『自分は何をやりたいのか』『今何をすべきなのか』といった思い、つまり主観だ。こうした思いの集積がイノベーションを生み出すのだ。

・より質の良い「思い」でなければ、よりよい価値を生み出せない。そのためには個人の思いを組織的な思いへと磨き上げる必要がある。

『なぜその目標を目指すのか』といった根源的な問いが重要だ。企業の各単位、個人は上位目標を自分の思いと照らし合わせて自分なりの解釈を加え、自分の目標に置き換えなければならない。

・大きな思いを持って目標設定を行い、実践することが大事だ。その場合、組織の枠を意識しないことが必要だ。

・最も大切なのはトップの「思い」であり、その表明としてのビジョンである。


まったくドラッカーの経営フレームワークそのものです。

ドラッカー流目標管理制度は完全に自主管理です。その本質は成果を上げることに対する真摯さです。真摯さとは「思い」に他なりません。

いろいろな登り口はあるのでしょうが、経営原則は最終的には同じ結論に至るのであると思います。

書評-「デフレの正体」

藻谷浩介『デフレの正体-経済は「人口の波」で動く-』角川書店、2010年  定価760円


本書は日本経済の直面するデフレの意味を的確に指摘します。

徹底して人口構造に注目する視点はドラッカーと同じです。

以下、概要です。

・現在の日本経済の停滞の真の原因は、「現役世代」の減少にある。

・内需縮小の背景は「就業者人口の減少」という構造的問題である。
・生産年齢(15-64歳)が減少に転じたことが就業者数の減少につながっている。
・出生率の低下によって、毎年新卒就職者より定年退職者が多くなっている。

・日本では景気循環ではなく、生産年齢人口の増減が就業者数の増減、個人所得の総額を左右し、個人消費を上下させてきている。これが平成不況の根本原因である。

・この状況に対して日本には3つの目標設定が必要である。

①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めること

②生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす

③個人消費の総額を維持し増やす


・この目標を実現するためにはさらに3つの具体策が必要となる。

①高年齢富裕層から消費性向が高い若者への所得移転を行うこと(年功序列賃金廃止・生前贈与促進策など)

②専業主婦など有償労働をしていない女性の就労を促進し、企画や経営に参画する助成を増やすこと

③訪日外国人観光客・短期定住客を増加させること


人口構造の変化こそ確実な未来を示すことをドラッカーは強調しています。

このように単純にまとめてしまうと、帰ってこの予測の確実さがひしひしと感じられます。

最近の対中問題の様子からして、安全保障という視点も入れないといけないと思われます。

2010年9月21日火曜日

意思決定-スタート

意思決定についての文献のほとんどが事実を探せという。

だが、成果を上げる者は事実からスタートできないことを知っている。

誰もが自分の意見からスタートする。

               『経営者の条件』より


これは「リスクをとる」という意思決定の本質から出てくる話です。

不確実な選択肢の中から一つ選ぶことはリスクを伴います。

不確実なものは確率で表せませんからそこは仮説、つまり意見からスタートすることになるわけです。

仮説を立てて実行しながら修正を加えていくことを、仮説的推論といいますが、マネジメントとは仮説=意見からスタートすべきものであるとドラッカーは言うわけです。

仮説は迅速に訂正する必要があるという帰結を伴います。「君子は豹変する」べきであるわけです。

優先順位-挑戦

挑戦の大きなものではなく、容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果は上げられない。

‥‥自らの名を冠した法則や、新たなコンセプトは生み出せない。

成果を上げる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないとする。

                           『経営者の条件』より


目標設定を大きくすることが成果を上げる第一歩であり、そのために優先順位を決める必要があるというわけです。

そして、目標設定を大きくするために機会に焦点を当てる必要が出てくるわけです。

現在のように経済状況が停滞しているときに何を機会ととらえるべきかは難しい問題です。

市場が縮小しているときには論理的に言って機会は少ないはずです。

しかし、成果を上げるためには比較して機会の多い領域に手をつけなければならないというわけです。

2010年9月20日月曜日

強み-知的傲慢

知的傲慢を改め、自らの強みを十分に発揮するうえで必要な技能と知識を身につけなければならない。
                       『明日を支配するもの』より


「強み」を十二分に発揮し、成果につなげるということはとても難しいことだと思います。

せっかくの強みも活かすようにしなければ宝の持ち腐れです。

「強み」が成果に結び付くために必要な準備をしなければなりません。

そのためにどのような技能・知識が必要になるかは自分自身で考えろということです。

「強み」におぼれて努力を怠る者は、淘汰されざるをえません。

現在、強みがよく出ていても、3年先に備えた勉強をしなければ、来年、再来年は危うい状況になっているでしょう。

2010年9月19日日曜日

貢献-可能性の追求

自らの可能性を問うことは、可能性を追求することである。

そう考えるならば、多くの仕事において優秀な成績とされているものの多くが、

その膨大な可能性からすればあまりに貢献の小さなものであることが分かる。

                 『経営者の条件』より



可能性はあまりに大きいということです。

ですから、「結構いい成績だ」と自分で考えてみても、それで満足してはならないということです。

超一流の打者は3割打ち、二流は2割6分なわけです。差はたった4分です。

しかし、一流の3割打者であっても7割のミスを犯しています。

可能性として考えると4割は十分ありうるはずですね。それを理解すべきであるということだと思います。

ドラッカーは、過去の最高傑作は何かと聞かれ「次回作だ」と答えました。

チャップリンも「次回作だ」と答えています。

超一流の名声を確立し、あくせくする必要のない作曲家のヴェルディは、それでも晩年に難局を作曲した理由を問われて、「今までずっと失敗してきたので挑戦した」と答えました。

いずれも可能性としての成果の大きさを十分理解している発言です。

閑話休題-世界経済の現状

週刊東洋経済2010年9月25日号で、日本経済の現状と世界各国から処方箋を学ぼうという特集が組まれていました。
以下、新興国についてかいつまんでまとめます。


●自由貿易網競争が幕開け。ASEANを中心に拡大。

・ASEAN10カ国の輸出は日本の1.3倍
・FTA(自由貿易協定)カバー率がアジア主要国より日本は低い。
・焦点は広域FTA構想

●韓国から学ぶ新興国開拓。

・韓国の1人当たりGDPは日本の43%。10年前(29%)から急速に差が縮まった。
・存在感の大きい家電製品(サムスン電子・LGエレクトロニクス)。
・通貨危機に伴う構造改革実施。生き残った旧財閥系企業はトップダウンで事業の選択と集中。
・グローバル市場を見据えた人材育成。
・徹底した「現地化」

●インドから学ぶIT教育

・高等教育の充実で優秀な人材を多数輩出。
・理系文系を問わず実利思考。実務遂行能力に重点。

●ブラジルのバイオ燃料戦略

・近年、バイオエタノールを燃料にした自動車が本格普及。
・ガソリンとバイオエタノールをどんな比率で混ぜても対応できる「フレックス車」の誕生。
・バイオエタノールは温室効果ガス削減の視点から注目。

●中東のポスト石油戦略

・埋蔵量の限界を見据え、脱石油依存を進める。
・中東諸国では新エネルギー導入に向けた動きあり。イメージ戦略的側面も。

●中国から学ぶ経済活性化

・人民元改革、規制緩和で内需型に転換できるかがポイント
・人民銀行は臨機応変な対応をとる手段をもはや持っていない。消費者物価の上昇がさらなる状況悪化をもたらす。
・消費刺激には労働分配率を現在の40%から55%程度に引き上げる必要がある。従来型の低賃金成長モデルには限界が来ている。

●シンガポールから学ぶ観光

・客数よりも消費額を重視。
・会議・企業旅行・展示会の誘致
・カジノ解禁


どれも「学ぶ」というよりも、新興国の戦略的特徴といったところですね。

私個人としてはライバルとしては韓国とタイが、対市場戦略としては中国が気になります。

2010年9月18日土曜日

タイムマネジメント-考えることに使う

時間の使い方を知っている者は、考えることによって成果を上げる。

行動する前に考える。

繰り返し起こる問題の処理について、体系的かつ徹底的に考えることに時間を使う。

                 『現代の経営』より


ドラッカーの口癖は「Think out」(徹底的に考えろ)であったそうです。

行動の前に時間をとってよく考えることは結局時間の節約になるとドラッカーは考えています。



時間の活用と浪費の違いは、成果と業績に直接現れる。

                『経営者の条件』より


そして考えた結果の時間の使い方の良しあしは、結局上げた成果・業績で測るしかないわけです。

どのように言い訳をしようとも、成果を上げていないという事実は見逃してはいけません。

2010年9月17日金曜日

閑話休題-ビジネスワンポイント

当社ではお客様に毎月「ビジネスワンポイント」というポスターをお渡ししています。

ちょっとした格言やいい言葉が書いてあり、結構ためになります。

今月号に書いてあったもので二つほど実例を挙げたいと思います。

テーマは 「気をつけたい社外でのバッドマナー」 というものでした。



一つ目 『大声で取引先のうわさ話』
 
大声で取引先の個人名を出して噂話。壁に耳あり障子に目あり。


当社の事例をあげます。

10年以上前ですが、当社に入社直後のパートの女性が、行きつけの居酒屋さんの大将に仕事で知った顧客の会社の内容を漏らすということがありました。

ウソのような話ですが、その大将は女性が秘密を漏らした会社経営者の身内だったのです。その話を大将から聞いた顧客企業は当然当社にクレームをつけてきました。
その後当社も大慌てで対応することとなりました。

当社の教育不足を痛感した事例です。

こうした事態を予防するために会社の飲み会は壁で仕切られた個室のある店でしかやらないという顧客企業もあります。

地方ですとそれぐらい気を配る必要があるのかもしれません。



二つ目 『社用車で乱暴運転・違法駐車』

社名入りの車なので逆宣伝効果抜群


先日街で見かけた事例をあげます。

道路の交差点で右折して対向車線を横切ろうとした大型車両(クレーン車)に、対向車線を走ってきたトラックが接触するという現場にでくわしました。

私のすぐ横で起きた事故なので顛末を良く見ていたのですが、原因は対向車線を走っていたトラックのスピード違反と信号無視でした。

しかし、接触した瞬間、トラックに乗っていた二人の若い男性が窓から脅すような口調で大型車両に罵声を浴びせかけ、乱暴な運転で大型車両を追い回し始めました。

私が見たのはここまでなのですが、その車両にはしっかりと地元で名の知れた会社の社名がしっかりと書かれていました。


もちろんその事故を見ていたのは私だけではありません。その場にいた通行人全員がその会社の若い社員の暴言を耳にしたわけです。

私はその会社の教育訓練レベルを疑ってしまいましたが、おそらく目撃者全員がそう思ったことでしょう。



こうした事例はいずれもビジネスパーソンとしての心構えの悪さの表れです。

この手の失策は取り返しにくいので、十分気をつけないといけませんね。

しかし、ドラッカーは「真摯さ」は教育ではどうにもならないと言っていますので、なかなか難しいことなのかもしれません。

書評 「トヨタの社員は机で仕事をしない」

若松義人『トヨタの社員は机で仕事をしない』PHP新書、2008年  定価714円  

米国におけるリコール問題で味噌がつきましたが、なんだかんだいってもトヨタはレベルの高い企業です。

トヨタ系のコンサルタントとして有名な若松氏の著作をまとめてみます。

さすがですね。ビジネスパーソンの基本行動が網羅されています。



・間接部門社員の言葉「私の目標は、自分の仕事がなくなるまで改善し続けることです。仕事がなくなったら別の仕事を見つけて改善します。」
・間接費を減らすには人減らしではなく、能力を増やさせることだ。→多能工化


・知識、マニュアル、システムよりも「意識」が仕事を決める。
・ビジネスライクとは、数字で動くのではなく、心から動くこと。
・多忙は熱意の表れではない。改善不足の証拠である。


・大野耐一の言葉 「せめて、1日1時間ぐらい仕事をしてくれないか」
・時間の無駄に気をつけろ。与えられた時間を精一杯使わないのは時間の無駄だ。
・トヨタは決定に時間がかかる。実行前に、目的・手段・リスク対応等をとことん検討するから。


・デスクワークは資料の無駄を徹底的になくすこと。
・過去の実績をベースに「将来こうなります」と予測・計画することは無意味。現在と将来から目標を立てる。


・無理も工夫してやればムラ・ムダをなくせる。
・現場から人を抜くときは優秀な人から抜け。
・状況に合わせて規則を変える。それが改善だ。


・業績が低迷する企業は現場環境が荒れている。まず環境を整えると色々と変化が起きる。
「現地・現物」-しろうとが現場で「ムダだ」と感じることが本当のムダだ。
バッド・ニュース・ファースト -悪い情報ほど最速で届ける。


・情報改革は「現場は見たのか?」に帰着する。
・従わせられない指示は指示が悪い。
・対立点は限界点ではなく、出発点だ。


・「もっと汗をだす」ではなく「もっと知恵をだす」
・「課題なき報告」「フォローなき解決」を認めない。


・難しい課題を与えて、必死になって知恵を出すことで人は成長する。
・書類にするからスピード・鮮度が落ちる。高騰の簡潔明瞭の報告がベスト。


・セミナー参加報告に、「何が良かったか?当社の課題解決にどう使えるか?いつから実行するか?」がなければ報告とは認めない。


・PDCA(計画・実行・点検・改善)にThink(考える)を加えろ。
・大野耐一の言葉 「俺に言う通りにやるやつはバカ、やらないやつはもっとバカ、もっとうまくやるやつが利口」


・大きな改革よりは小さな改革を「まずは試しにやる」ところからスタートするのが一番いい。
・改善にはニーズが必要だ。「誰のために、何のために」がないと改善ごっこになる。


・仕事は常に後工程のやりやすさを考える。
・ △ 頑張ったんだから評価してくれ  ◎ 評価されるように頑張ろう


・「自分」は労働力ではない。「自分」はコストだと考える。
・変化のリスクをとってでも前進せよ。

7つの習慣-フランクリン・コヴィー

最近、とても忙しかったのでブログの間隔が空いてしまいました。これから、遅れた分を追いつかせていきます。

少し前の週刊ダイヤモンド2010年9月4日号に自己啓発の分野で有名なフランクリン・コヴィーの7つの習慣が特集されていました。

「7つの習慣」はとても有名ですので、この機会にまとめておきたいと思います。

7つの習慣とは、一言で言うと「よりいい聞い成果を上げて、より幸せな人生を送るための普遍的法則」ということです。
時代、人種、年齢、性別を問わず、すべての人日にと当てはまるとされています。

1、主体性を発揮する

一言で言うと、決して他人のせいにしないこと。
他人を批判するエネルギーを、自分自身を変えることに集中する。
自分が変わり、自分が選択することを意識する。

2、目的を持って始める

自分が誰に何といわれたいか?それこそがミッションである。
人生最期の姿を思い描き、それを念頭に置いて今日という一日を始める。
そうすれば、自分のミッションを成就するために今日、明日、来週、来月に何をすべきかがおのずと明らかになる。

3、重要事項を優先する

最も効果的な時間管理は「第2領域(重要だが緊急でない)」の予定を意図的に重視する。
コヴィー博士は「1日単位で予定を立てると、目先の用事に振り回される。1週間単位で計画を立てれば、第2領域の時間も十分に確保できる」と述べている。

4、WIN-WINを考える。

長期的な人間関係は「両方が勝たなければ両方の負けになる」とコヴィー博士は言う。
お互いにとって有益な解決策を考える。

5、理解してから理解される。

WIN-WINを実現するためには、相手の置かれた立場を正しく知ることが重要になる。
最初に自分の立場、主張、利益、経験を話すのではなく、相手の話を聞いてみること。

6、相乗効果を発揮する

相違点を認め、尊重すること。
自分と違う意見の中にこそ、相乗効果を生むチャンスが隠されている。

7、刃を研ぐ

ビジネスパーソンは忙しさにかまけて自身の肉体・知性の鍛錬を怠っている。
「肉体」については規則正しい生活・適度な休息・運動が効く。
「知性」については読書が一番良い。


こうしてみるとコヴィー博士の7つの習慣はドラッカーの成果を上げるビジネスパーソンの在り方とかなり重なっていることが分かります。

2010年9月13日月曜日

タイムマネジメント-万能薬はない

われわれは、時間管理について霊験あらたかな万能薬を求める。
速読法の講座への参加、報告書の1ページ化、面会の15分制限等等である。

これらはすべていかさまである。

これこそ時間の無駄である。

                『現代の経営』より


実に耳が痛い話です。なにせ私は全部やりましたので。

ドラッカーのタイムマネジメントの基本は最も成果の上がる仕事に対して時間をまとめて投入することです。

これらのテクニックがいけないという本当の意味は、これらのテクニックが目的化してしまうことであると思います。

最も重要な仕事に対してはこれらのテクニックは意味をなしません。

しかし、瑣末な問題に対しては効果があるような気もするのですが、要検討です。

意思決定-必要条件

意思決定においては、決定の目的は何か、達成すべき目標は何か、満足させるべき必要条件は何かを明らかにしなければならない。

                    『経営者の条件』より


意思決定の必要条件を満たさなければ、適切な実行をすることができません。

この辺りをあいまいにしてとりあえずスタートを切ってしまうと、いくら労力をかけても意味がありません。

私は先日、ISOの品質目標を定めないままに膨大な手順を作成しようとしている会社の事例に触れる機会がありました。

これではせっかくの努力が実を結ばないと思います。

2010年9月11日土曜日

閑話休題-学会発表

9月9日、東京文京区の東洋大学にて開催されていた日本会計研究学会全国大会にて発表をしてまいりました。

ドラッカーの事業戦略をバランススコアカードの戦略マップのようなフォーマットを使って表現しようとするものです。

これは意外と穴で、これまでどなたも発表していないテーマです。

聴衆は20人ちょっとでしたが、学会の大御所が副数名参加しており、非常に緊張しました。

セミナーや研修講師をやる時と違い、無表情でかつ声の抑揚も抑え気味にしたため、大変疲れました。

質問時間では大御所のS先生から手厳しい突っ込みを受けましたが、実務的有効性については特に問題視されなかった点はよしとしたいと思います。

写真は、お仕事で出張中のT社I本部長がわざわざ来ていただき、撮ってくださったものです。

ありがとうございました。

2010年9月6日月曜日

閑話休題-マーケティングとイノベーション

今週、学会発表でドラッカーの事業戦略論とバランススコアカードの戦略マップを統合するフレームワークを発表してきます。

このアイディアを検討していく中で、ドラッカーのマーケティングとイノベーションのコンセプトの位置づけについての私の理解が変わりました。

マーケティングとイノベーションはドラッカーが企業の成果を生む二大機能と位置づけています。

ですから、私はこの二つを成果を生じる領域、それを支えるプロセスを生産性の領域、さらにそのためのヒト・モノ・カネの資源を調達する領域という3つの区分を考えていました。

ですが、これではドラッカーの説明と多々矛盾が生じるのです。

そこで、ドラッカーの本を読み返したところ私の誤解が明らかになりました。

まず、ドラッカーのマーケティングとは簡単に言うと「顧客目線で見た企業の全部(創出価値・プロセス・資源)というわけです。

つまり、マーケティングは成果・プロセス・資源をすべて支配する原理なわけです。

またイノベーションとは、そのマーケティングを未来のあるべき状況とのギャップからとらえなおすものであるということです。

ですから、マーケティングはイノベーションによって包括されてしまうわけです。

最初、バランススコアカードの最終目的をマーケティングとイノベーションにしようとしたのですが、どうにもうまくいきませんでした。

そこで最終的には成果の生まれる領域を、顧客・市場、製品・サービス、流通チャネル の3つに整理しました。これはイノベーションの目標ですが、マーケティングの目標でもあります。これを成果の3つの区分とすることで整合的な説明が可能になりました。

2010年9月4日土曜日

書評-「新しい現実」②

ドラッカーは現代史におけるもっとも重要な2つの事件として、1857年のセポイの乱と1867年の明治維新を上げます。

セポイの乱は、世界の「西洋化」を決定づけ、明治維新は「非植民地化」を決定づけた画期的なものであったといいます。

日本の明治維新は西洋をアジアから追い出し、植民地勢力の権威の失墜をもたらしたというのです。

そして最後に残った植民地大国が1989年当時のソビエト連邦であったというわけです。

ドラッカーは、ソビエトの崩壊の理由を民族主義と反植民地主義は必然の流れで、政府がそれを押しとどめることはできないと見抜いたわけです。

当時、ソビエト連邦の人口の半分は非ヨーロッパ人であり、しかもアジア人であったわけです。さらにその半分はイスラム教徒であるという事情から、ソビエト連邦は体制を維持できるはずはないと論理的に思考したわけです。

実際にこの本が出た直後にソビエトは崩壊したわけですし、その理由もまさにその通りでした。

2010年9月3日金曜日

書評-「新しい現実」①

P.F.ドラッカー『新しい現実』ダイヤモンド社、1989年 


これはドラッカー本の中でも異色の本です。

1989年時点で世界の今後を予測したものですが、恐ろしいほど正確に将来を見抜いています。
2010年の時点で読み直しているからこそ、ドラッカーの炯眼ぶりに恐れ入ってしまいます。

本書は、知人のS社のK常務のお宅にお邪魔した際に、父君の形見の品の中にまぎれていたものを「浅沼さんはドラッカー好きだからぜひ読んでよ。」といわれてお借りしているものです。

私は通常はドラッカー本の中でも経営よりのものに目が行ってしまうため、こうした社会批評的なものを読むと、自身のドラッカー理解の浅さを痛感します。

せっかくの名著なので数回にわたってご紹介していきたいと思います。

まず、冒頭は1989年当時のソビエト連邦の将来像の予測です。

本書執筆当時はゴルバチョフのペレストロイカの時代であったのですが、その失敗を断言しています。

そしてソビエト連邦の崩壊は確実であり、その原因は民族主義と反植民地主義であるとしています。

その後の経過は全くその通りになったことはご承知の通りです。

2010年9月1日水曜日

優先順位-仕事からの圧力

仕事からの圧力は、未来よりも過去に起こったものを、

機会よりも危機を、外部に実在するものよりも内部の直接目に見えるものを、

さらには、重大なものよりも切迫したものを優先する。

                  『経営者の条件』より


ということは、未来、機会、外部、重大なもの選ぶことが大切ということです。

しかし、なかなかそのようにいきません。優先順位の決定は、腹のくくりが必要というわけです。


優先順位の分析については、多くのことが言える。

しかし、優先順位の決定について最も重要なことは、分析ではなく勇気である。

                『経営者の条件」より


これがなかなかできないので、みな困るわけですね。

視線を目標に向けるというのがまず必要になると思います。