2011年12月13日火曜日

書評 「起業という幻想」

『≪起業≫という幻想 -アメリカン・ドリームの現実』 スコット・シェーン、白水社

起業家精神旺盛な米国のイメージを覆すレポートです。
概要をご紹介します。


・米国での起業は一般的イメージと違って低調。OECD諸国の中でも起業率は最下位近い。

・多くはハイテク産業ではなく、サービス・建設・小売業で起業する。

・ほとんどの起業家はライバルひしめく業界で起業する。
  ⇒失敗しやすい産業で起業することで自分を失敗に追い込んでいる。

・起業家の多くは「他人の下で働きたくない」といった理由で起業している。

・“洞察力に優れた勤勉な起業家”は少数派であり、多くは頻繁な転職者、失業者、低所得者である。つまり「できないビジネスパーソン」の比率が高い。

・起業するビジネスの大半は「平凡」。 既存の製品・サービスを提供するだけで独自性がない。

・たいていの事業所は小規模。人を雇う比率は24%にすぎず、5年以上存続しているビジネスの半分は自宅で起業し、そこにとどまったままである。

・また5年以内に自宅から別の場所に引っ越したビジネスは全体の5%に満たない。

・たいていの起業家はアイディアを綿密に吟味していない。計画的に調査に取り組んだ比率は3分の1にすぎない。

・たいていの起業家は失敗する。 自営業の半数は7年以内に会社勤めに戻る。 5年生存率は45%、10年だと29%に低下する。

・起業家のビジネスはたいてい儲からない。 平均的自営業者は平均的勤め人に比べて著しく低い。

・起業家の多くは勤め人より長時間労働をしている。

・起業する理由①: 楽観的なおろか者だから

 起業者の81%が自分の成功を信じていたが、実際には成功率は低い。

・起業する理由②: 創業者の満足

 自分のために働くことに対する満足感



全般的に言えることは日本に創業の現状と近いということです。

この結果は私の感覚からも納得性があります。

起業するということは大変であることだけは再確認できました。



(浅沼 宏和)

チームを作る

ドラッカーのマネジメント論に置いてもチームは大きく扱われています。

チームで成果をあげるために忘れてはならないことがあります。

まず、目標の設定があります。行くべき方向が明確でなければチームは意味をなしません。

次に、仕事を具体的な活動や作業に分解し、プロセスにまとめ上げ、それを役割にすることで人を組織化します。

この次に来るのがチームのマネジメントになります。

チームのマネジメント論に置いて、この目標設定と具体的な仕事にすること、役割の組織化について説明されていることが少ないようです。


無目的で役割のあいまいなチームというものはマネジメントできません。



(浅沼 宏和)

2011年12月12日月曜日

仕事の定義について

ドラッカーはあらゆることを成果に結びつけて説明することで一貫しています。


すると 仕事とは成果をあげるプロセスである と定義されることになります。

具体的には成果をあげる基本的な習慣を身につけて日々実践する必要があるとドラッカーは指摘しています。

その際に、もっとも重要視されているのが真摯です。

真摯さとは要するに「一生懸命さ」といったものです。

できるビジネスパーソンとは成果をあげる能力のある人のことですが、それに至らない人はどうするべきでしょうか?


ドラッカーは「仕事を大きくする」必要があると言っています。

これは具体的に言うと、自分の現状の能力の限界に挑戦するような仕事が必要であるということです。

これを持たなくなった時点で、人は下り坂に入るわけです。

ベテランといわれるヒトが特に注意すべきなのはこの点です。

かつての必勝パターンが通用しなくなったときに、これを打開するような高い目標設定を行えるかどうかが生き延びるために必要でしょう。


『究極の鍛錬』の著者のジョフ・コフヴァンは、一流のバイオリニストたちと平凡な人たちとの調査から、一流は累積練習量が圧倒的に多いことを見つけています。

また最高水準の業績をあげている人たちは、その地位を得るために多くの年月を要しているとも指摘しています。

つまり才能ではなく「姿勢」の問題であるというわけです。



(浅沼 宏和)

2011年12月7日水曜日

ブルース・リーの名言集がビジネス・ワンポイントに紹介されていました。



増やすな 捨てろ


おまえは考えたように変わる


考えるな 感じろ


状況等気にするな 機会は己で作り出せ


常に己であれ 己を表現し、己を信じろ


俺はお前のために生きているのではない お前も俺のために生きているのではない


もともとは武道家向けの格言ですが、プロフェッショナル論になっているところがさすがにブルース・リーです。



(浅沼 宏和)

2011年12月6日火曜日

仕事は大きくする

『エッセンシャル版 マネジメント』 p.131


もっとも一般的なまちがいは、職務を狭く設計し、優れた者であっても成長できなくすることである。

数年ですべてを身につけられるほど狭く設計した職務では、欲求不満に陥る。

結局、さしたる働きもしなくなる。



仕事の設計は「その人の能力にピッタリ」ではいけないわけです。

チャレンジ性のない仕事は、その人の能力を陳腐化させてしまいます。

チャレンジ性のない仕事を何年も続けているとビジネスパーソンとして危険です。

これはもちろん経営者にも言える話ですが。


(浅沼 宏和)

2011年12月5日月曜日

日経ビジネス:カールツアイスの社長インタビュー

ドイツが誇る世界的光学機器メーカーのカールツアイス社の社長インタビューが日経ビジネス2011.12.12号に掲載されていました。


同社はドラッカーの『マネジメント』において働くこと(working)をうまくマネジメントした企業事例として紹介されています。

『マネジメント』は1973年の本ですし、紹介された内容は同社の19世紀末の成功事例です。

ということで、その続編ともなるべき内容と思いますので紹介します。

同社は上場しておらず、財団所有という珍しい法形式の巨大企業という特徴もあります。


・オリンパスの技術力はすばらしく、以前からベンチマークしていたが同社を買い取る可能性はない。
・カールツアイスは非公開企業であり、資本が潤沢にあるわけではない。だから、内部からの成長に注力してきた。これこそが強みだ。
・財団であることで四半期ごとに市場からプレッシャーを受けることがない。長期的なイノベーション計画が立てられる。
・医療やレンズなどは高度な技術が必要なので長期的視点に立つことは不可欠だ。
・非上場であるため資金調達は難しいので財務的健全性により一層気を使う。


ドラッカーが成功事例として取り上げた100年前とは色々変わっているところもあるのでしょうが、DNAがよく残されているという感じがします。

以下、ドラッカーの著作でのカールツアイスの働き方のマネジメントの部分を簡単にまとめておきます。

・仕事に必要なプロセスを分析し、それを全体にまとめ上げることで成果をあげた。
・職務の編成は実際に働いている人たち自身が行った。
・機械や工具などを働く人たち自身が設計・改良した。
・継続的訓練の導入、作業方法の改善、新製品開発、工程や技術の改良は当然行われるべきものとされた。
・製品や仕事について働く人たちに情報をフィードバックした。
・正式な雇用保証はないが、成果をあげる意欲と学ぶ姿勢があれば景気とは無関係に雇用を保証した。


カールツアイスのマネジメントはうわべの合理性よりは本質的なものを追求する伝統があるようです。


(浅沼 宏和)

2011年12月4日日曜日

行動について

11月はあまりに多忙で、ブログ更新が大幅に滞ってしまいました。

すこしずつ復活させていきたいと思います。


『マネジメント』(中)p.131


個々の具体的な状況において、行動すべきか否かの意思決定が困難なケースはあまりない。


第一に、得るものが犠牲やリスクを大幅に上回るならば行動しなければならない。


第二に、行動するかしないか、いずれかにしなければならない。二股をかけたり、間を取ろうとしたりしてはならない。



何事も中途半端はいけないということです。

行動にはトレード・オフがあり、どっちつかずということはあり得ないということです。



(浅沼 宏和)