2010年8月31日火曜日

強み-強みを知るには

何かをすることに決めたら、何を期待するかを書きとめる。

9ヶ月後、1年後に結果と照合する。私は50年続けている。そのたびに驚かされる。

誰もが驚かされる。

こうして自らの強みが明らかになる。自らについて知りうることのうち、この強みこそが最も重要である。

                    『明日を支配するもの』より


私は年度初めに目標を設定しますが、たいてい達成率が3割とか4割であった場合が多かったです。

そこで数年前から月単位で成果を記録するようにして言ったら、成果達成率が大幅に上昇するという経験をしました。

この辺りは手帳活用術の領域になるのでしょうが、1年後の自分への期待を書きとめておくことは簡単なのでしてみた方がよいでしょう。

強みを知るには、長い期間での観察結果が必要ということなのですが、最初に期待を書きとめておかないと比較対象がないことになってしまいますから。

2010年8月30日月曜日

貢献-成果能力

貢献に焦点を合わせることによって、コミュニケーション、チームワーク、自己啓発、人材育成という、成果をあげる上で必要な基本的な能力を身につけることができる。

                     『経営者の条件』より


ビジネス上のあらゆる活動・行動は成果に対する貢献を意識しなければ無意味です。

目的からずれた行動は一見すると仕事をしているように見えますが、あとで成果を測定してみるとあまり上がっていなかったりします。

貢献を意識しないビジネス行動というのはありえないわけです。


組織に対する自らの貢献を問うことは、いかなる自己啓発が必要か、いかなる知識や技能を身につけるか、いかなる強みを仕事に適用するか、いかなる基準を持って自らの基準とすべきかを考えることである。

              『経営者の条件』より

貢献を意識すると、自分のビジネスパーソンとして必要なレベルが明らかになります。

大きな成果のためには大きな能力が必要です。そしてそのための長期的・計画的な学習が必要となります。

2010年8月29日日曜日

タイムマネジメント-時間の記録

時間の活用と浪費の違いは、成果と業績に直接現れる。

知識労働者が成果を上げるための第一歩は、実際の時間の使い方を記録することである。

                  『経営者の条件』より


ドラッカーは成果を上げるために最も重要な資源は時間であると考えています。

しかも、それは浪費が不可避であるという矛盾をはらむ存在です。

ですから、まず記録が大事というわけです。


時間の記録の方法について気にする必要はない。

自ら記録する人がいる。秘書に記録してもらう人がいる。大切なのは記録することである。

記憶によってあとで記録するのではなく、リアルタイムに記録することである。

             『経営者の条件』より


これが結構難しいのです。仕事が立て込むとつい忘れがちですが、私の経験上では記録していなかった時間帯は成果が上がっていない場合が多いです。

成果が上がっていれば当人が一番うれしいので必ず記入しますから。

2010年8月28日土曜日

意思決定-重要なものに集中

仕事論の5つめの要素は意思決定です。


成果を上げるには、意思決定の数を多くしてはならない。

重要な意思決定に集中しなければならない。

             『経営者の条件』より


ここでも焦点を絞るというドラッカーの基本的姿勢がうかがわれます。


まずはじめに、一般的な問題か、何度も起こることか個別に対処すべきことかを問わなければならない。

             『経営者の条件』より


もう一つ付け加えると


真に例外的な問題を除き、あらゆるケースが基本にもとづく解決策を必要とする。

原則、方針、基本による解決が必要となる。

一度正しい基本を得るならば、同じ状況から発する問題はすべて実務的に処理できる。

             『経営者の条件』より


問題解決をする際に、スキルの高いビジネスパーソンは過去の事例との共通点に注目して、その解決策を利用して解こうとします。

逆に、スキルの低い人は一つ一つを個別の事例として解こうとする傾向があるようです。

一つ一つが個別の事例としてとらえるということは、いちいち最初から検討する必要があるということで、過去の経験をいかせないということです。

ビジネスパーソンのレベルの高さは、「同じタイプの問題」としてとらえる広さに比例するように思われます。

2010年8月27日金曜日

優先順位-自らが決定せよ

仕事論の4つ目の要素が優先順位です。


なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。

機会は実現のための手段よりも多い。

したがって優先順位を決定しなければ何事もなしえない。

             『創造する経営者』より


優先順位を決めることの重要性については、今ではビジネス書で語りつくされています。

しかし、これについて提唱した初期の人物の一人がドラッカーです。



どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が必要である。

唯一の問題は、何がその決定をするかである。

自らが決定するか、仕事からの圧力が決定するかである。

             『経営者の条件』より


この話のポイントは優先順位の決定のイニシアチブは自分自身がとるべきであるということです。

仕事の流れに身を任せるのではなく、自身が自身の仕事をコントロールすることが必要ということです。

自分から動かなければ環境からの圧力が勝手に優先順位を決める羽目になってしまいます。

2010年8月26日木曜日

強み-強みと弱みについて

仕事論3つめの要素、「強み」です。

6月27日から4日間ほど強みについて検討しましたが、それは組織の強みの話でした。
今回は、ビジネスパーソン個人についてです。

何事かを成し遂げられるのは強みによってである。
弱みによって何かを行うことはできない。

         『明日を支配するもの』より


自身の強みを成果を上げるという目的に沿って使い、貢献するというのがドラッカーの考えです。

しかし、強みとは何でしょうか?


誰もが自分の強みはよくわかっていると思う。

しかし、たいていは間違っている。 わかっているのはせいぜい弱みである。

        『明日を支配するもの』より


つまり、自身の強みを見つけることがとても重要になるわけです。

しかし、弱みの問題はどうなるかというと


人は組織のおかげで強みだけを活かし弱みを意味のないものにすることができる。

         『経営者の条件』より


ドラッカーは現代社会は組織社会であり、また知識社会であると考えました。

こうした言葉の端々にそうした考え方がうかがわれます。

2010年8月25日水曜日

貢献-果たすべき貢献とは?

ドラッカーの仕事論の2番目のキーワード「貢献」です。

貢献については7月29日のブログでも書きましたが、ポイントは責任です。


成果を上げるには自らの果たすべき貢献を考えなければならない。
手元の仕事から顔を上げ、目標に目を向ける。

組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。
そして責任を中心に据える。

            『経営者の条件』より


また組織の成果は個人プレーではあげられないというのがドラッカーの基本思想でもあります。



貢献に焦点を合わせることが、仕事の内容、水準、影響において、あるいは上司、同僚、部下との関係において、さらには日常の業務において成果を上げるカギである。

            『経営者の条件』より



これは野球やサッカーにおけるチームプレイの在り方を考えてみるとよりわかりやすくなると思います。

一日の仕事が終わったときに、「私は最終成果を上げるためにどのような貢献を今日行っただろうか?」と考えて、それを書き出してみると良いと思います。

意外に書けないと思いますが、それはつまり間違った仕事のやり方をしてしまった可能性があるということにつながると思います。

2010年8月24日火曜日

タイムマネジメント-時間からスタートする

成果を上げる者は仕事からスタートしない、時間からスタートする。
計画からもスタートしない。

何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。

次に時間を管理すべく、時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。

最後に、得られた自由な時間を大きくまとめる。

                『経営者の条件』より


ドラッカーのタイムマネジメント論の発想の源は、20世紀初頭のF.テイラーの時間研究です。

テイラーは工場労働者の作業を分解し、一つ一つをストップウォッチで計測し、最も効率の上がる動作に基づいて賃金のレートを決定するという革命的な方法で、20世紀の産業社会の形成に絶大な影響をもたらしました。


しかし、テイラーの時間研究はやるべきことがだれの目にも明確な古き良き時代を前提に行われたもので、「知識労働」が重視される現代では使えないというのがドラッカーの結論でした。

そこで上記のようなタイムマネジメント論が形成されていったわけです。


ドラッカーの基本的な認識は、知識労働者は十分なタイムマネジメントができていないというものです。

つまり時間の無駄やロスが多いということです。

ドラッカーは完璧な時間管理は不可能であると考えていますが、それでも大きな成果を上げるために必要十分なタイムマネジメントの方法論はあると考えました。

上記の記述はそれを手短に表現したものです。
少し整理しておきます。

①まず手帳やカレンダーなどで実際の時間の使い方を記録し、可視化する
②時間の使い方を類型化する。多くの場合、自分の予想とは違った時間の使い方であることが明らかになる。
③ムダな仕事を排除する。
④空いた時間をまとめて使うようにする。

一番重要なのは時間の使い方を記録しておくことです。正確に記録しておけば改善の視点が出てきます。

2010年8月23日月曜日

書評 「伝える力」

池上彰『伝える力』PHP研究所、2010年  定価840円


今、TVで引っ張りだこの池上氏のビジネス本です。

本書は、「話す」ことと「書く」ことの二つを伝える力の重要な要素位置付けています。

書かれている内容は特に難しい話ではなく、当たり前といえば当たり前なのですが、非常に丹念に描かれています。

普段、書くこと、話すことに慣れている私にしても自分が見落としていたことがいくつもあることに気づかされました。

私はどちらかといえば書く力のほうが優位になっているタイプです。

ですから、書くことに関する基本技術を改めて検討するきっかけになったことは収穫でした。

また、この本はそれなりのベテランであってもためになるのですが、何より高校生、大学生、20代の社会人にとっては有益であると思います。

学校では十分習得しきれなかったであろう、社会人としての基本スキルを得るのに向いているテキストブックであると思いました。

成果を上げるための5つの能力

多忙のため更新が遅れました。

現在、ドラッカー理論の仕事のマネジメントに重点を置いて検討しているところですが、ここでしばらく特に5つのポイントに絞っていこうと思います。

まず下記のドラッカーの言葉をお読みください。

成果を上げるための実践的能力は5つある。
第一に、何に自分の時間がとられているかを知り、残されたわずかな時間を体系的に整理する。
第二に、外部の世界に対する貢献に焦点を当てる。
第三に、強みを中心に据える。
第四に、優先順位を決定し、優れた仕事が際立った成果を上げる領域に力を集中する。
第五に、成果を上げるように意思決定を行う。

                        『経営者の条件』より

この説明はドラッカーの翻訳者でもある上田惇生教授も重視していて、『プロフェッショナルの原点』の目次構成もこの5つを中心にしています。

そこで、この5つをローテーションで検討していくことで、ドラッカーの仕事のマネジメントについての理解を深めていこうと思っています。

もう一度整理すると5つの視点とは

①タイムマネジメント
②貢献
③強み
④優先順位
⑤意思決定

です。

2010年8月19日木曜日

閑話休題-ホームズの探偵術

私はシャーロック・ホームズが好きで、ときどき文庫本を読み返したり録画してあるイギリスのドラマを見たりします。

ホームズは架空の人物ですが、モデルとなった人物がいます。作者のコナン・ドイルが医学生であった頃の恩師だそうです。

その恩師は患者がやってくると、何も聞かないうちにどのような人物であるかをズバズバと当ててしまったそうです。

小説の中のホームズもわずかな手掛かりから多くの推理を行います。

たとえば『青い紅玉』の中では、持ち主不明のヨレヨレの帽子を手に取って眺めながら、ワトソン氏に対してその持ち主がどのような人物であったかを説明しています。


箇条書きにしますと

・高い知性を持っている
・3年前までは裕福だったが今は落ちぶれている。
・当時は高い洞察力を備えていたが今はそれほどではない。
・資産が減るとともに素行が悪くなっている。原因はおそらく酒。
・妻は彼に愛想を尽かしている。
・彼の自尊心はまだ失われるまでには至っていない。
・主に座った生活をしている。あまり外出はしない。運動不足。
・白髪交じりの中年で数日以内に散髪している。
・髪にライムクリームを塗っている。
・家にガス灯がひかれていない。

ホームズはこの推理の根拠も示していますが、それは小説で確認してください。



さて、ホームズの推理術はアブダクション(Abuduction)と呼ばれるものです。訳すと仮定的推論です。

アブダクションとは「ある事象の原因を最もうまく説明できる仮説を立てる」というものです。

ささいな手掛かりから少しずつ仮定の範囲を広げていき、本質に迫っていき、最後に決定的な仮説を立てるというのがホームズのスタイルです。

ホームズの物語はアブダクションの推し進める経過を描いているものなのです。


アブダクションは優れたビジネスパーソンは多かれ少なかれやっています。

また会計にもアブダクションは使えます。

会計情報、つまり決算書だけで企業の状態を十分知ることは難しいです。ですから周辺情報を丹念に集めて数字の行間を埋めていかなければならないと思います。会計にもアブダクションが必要なわけです。

というわけでホームズを熟読するとビジネスパーソンとしてのスキルが上がるかもしれません。

書評 「戦略の見える化」

長尾一洋『戦略の見える化』アスコム、2010年 定価1,365円


本書は良い点と悪い点があります。

まず良い点としては企業戦略というものの定義を明快かつわかりやすく書いている点です。

戦略論を読みなれている私が読んでも学ぶべき点は多かったです。

まず良い点の概要を示します。

・戦略とは、最小投入で最大成果を生む方法である。
・戦略のない会社が多いからこそ、戦略が必要になる。
・「売上をいくらにする」というのは戦略ではなく、単なる努力目標設定にすぎない。

・中小企業が「当社は人で差別化しています」というのは、せいぜい「ハキハキしている」「あいさつがいい」程度のものでしかない。それは当たり前のこと。

・会社は勝たなければいけない。会社の実態は人であるから、何年も停滞するわけにはいかない。

・戦略の独自性とは「他社がやらないこと」をすること。

・大手企業は行き詰っている。業界NO.1だけしか生き残れない。
・中小企業はもともと小さいマーケットを相手にしていたので横並びでよかった。これからは違う。

・他社がやらないこととは独自ドメインを設定すること。

・ドメインとは事業領域、戦略領域、事業分野などと言い換えられる。

例1、アメリカの鉄道会社は自社ドメインを「鉄道事業」としていたため失敗。「輸送事業」と考えていれば違ったはず。

例2、かつて日本の映画会社は自社ドメインを「映画事業」としていたため失敗。「エンターテイメント事業」ととらえるべきだった。

・ドメインには商品・サービスに注目した物理的ドメインと機能・効用に注目した機能的ドメインがある。
・戦略の基礎は機能的ドメインを設定すること。

・戦略はある程度軌道に乗るまでは既存社員で頑張るのがよい。
・社内向けメッセージと社外に発するメッセージは違う。顧客や取引先にはきれいにデフォルメしたメッセージを送る。

・メール、ブログ、ツイッターによる情報発信はいずれ訪れるブレークスルーのための下積み。

・戦略には正解がない。だから検証が必要。
・検証は早ければ早いほどよい。

・一度決めたことは何としてもやりきるという強いリーダーシップが必要。

といった感じです。

長尾氏は戦略ドメインの定義の由来は1960年にハーバード大教授のセオドア・レビットが書いた論文によると述べていますが、ドラッカーはそれより6年早く事業ドメインについて述べています。

学会ではレビットが初めてなのですが、実務界ではドラッカーのほうが早く影響力もあります。

また、次に悪い点を書きます。

長尾氏が本書で具体的にあげている戦略がよくありません。

長尾氏はバランススコアカードを使っているのですが、内容が陳腐です。

具体的には

鮮魚店を戦略ドメインとして「メタボ対策事業」としたうえで、

財務の視点: 売上高50億円、経常利益2億円
顧客の視点: 「おいしい魚が食べたい」「健康にいいものが食べたい」「ダイエットしたい」「かっこよく行きたい」
業務プロセスの視点: 鮮度アッププロセス、メタボ・健康レストラン開発、健康研究プロセス、フィットネスクラブ開発、ファッションアドバイスサービス
人材と変革の視点: 鮮魚スペシャリスト養成、店舗運営ノウハウ確立、フィットネスクラブのM&A、ファッション専門家人材育成、

となっていて下から上へと因果関係が結ばれることになっています。

今度学会発表する予定ですが、バランススコアカードの因果関係には無理があります。
特に顧客の視点から財務の視点への因果関係には飛躍があります。

結局そこの論理があいまいなので、実現可能性に「?」マークがついてしまうわけです。

このバランススコアカードの構造的な問題点についてはまた改めて書きたいと思っています。

また長尾氏は自身のコンサルティング会社の20年後のビジョンとして

顧客数40万社のコンサルティング会社という目標設定をしています。
これは不適切な目標設定です。

日本の法人企業数は約200万社(青色申告法人ベース)で、その20%を囲い込むということです。ほぼ独占企業体になろうとするということになります。

ドラッカーは業種によって適正規模が異なると述べていますが、コンサルティング会社の適正規模ははるかに小さい規模です。

問題解決方法、戦略設定方法には好き好き、や向き不向きがあります。それにもかかわらず20%のシェア設定をすることは現実味が乏しいと思います。

例えば私がラーメン屋を開業するとしてシェア20%をとることなど不可能です。飲食店などが他社を圧してシェア20%などはありえません。好みは人それぞれですから。それと同じことだと思います。

これだけ戦略について分かりやすく説明できる長尾氏の戦略事例に魅力が乏しいのは不思議な感じがします。

2010年8月17日火曜日

書評 「業界のセオリー」

鹿島宏『業界のセオリー』徳間書店、2010年  定価1,470円



本書は各業界のセオリーを集めた本です。特に深みがあるわけではないのですが、各業界なりの独特の感覚がわかって面白いです。

全部で200のセオリーが入っていますが、全部はかけませんので目についたものを中心に抜き書きします。



・困った時は動物と子供 (広告)
・売れる商品には適量がある (食品)
・オレンジ色は食欲を刺激する (食品)

・要約できない脚本にヒットなし (映画)
・トップのいすは3つある (芸能)
・ヒット商品は多数決から生まれない (飲料)

・人気商品は付属品で稼げ (小売)
・混んできたらBGMのテンポをあげろ (外食)
・「私も使っています」で信頼を得よ (販売)

・あいさつには名前をつけろ (接客)
・値引きは二個目の商品から (スーパーマーケット)
・家を売るなら奥さんを口説け (不動産)

・売上が落ちたら値段を上げろ (おむつメーカー)
・声かけが盛んなスーパーは売れる (流通)
・汚い工場から名品は生まれない (製造)

・アフタフォローは上客を呼ぶ (保険)
・会社の業績はトイレでわかる (コンサル)
・オーナーがこだわりを捨てると店ははやる (空間プロデュース)

・金持ちは貧乏人から物は買わない (宝石商)
・プロジェクトが行き詰っても増員するな (ソフトウェア)
・出店は競合店の近くがいい (居酒屋)

・商品の色は3色に絞れ (商業デザイン)
・提案は3つ出せ (ソフトウェア)
・段取り八分、仕事二分 (大工)

・他業界からミスを学べ (パイロット)
・作業記録を開示せよ (航空)
・発想はポジティブに、詰めはネガティブに (広告)

・家具店は外車ディーラーの近くがいい (家具)
・うまい人より早い人が生き残る (放送作家)
・きれいなトイレは汚せない (スーパーマーケット)

・見積書は二つ持て (商社)
・メモのうまい美容師はカットもうまい (美容師)
・お客は靴と時計で見抜け (ソムリエ)

・プレスリリースは1枚にまとめろ (広報マン)
・お久しぶりですね、は三流 (バーテンダー)
・ファーストクラスは態度がぶれない (CA)

・不器用な職人ほど大成する (大工)
・皆が嫌がる仕事ができて一人前 (町工場)
・お座敷では毎日の行いが出る (花柳界)

・評論家は深く掘り下げると広くなる (マスコミ業界)
・準備のないところにチャンスは来ない (舞台俳優)



練られた原則は詳しい説明がなくてもおおよそ意味がわかりますね。

他業種の原則でも使えそうなものはいろいろとあります。

2010年8月16日月曜日

書評 「ビジネス書大バカ事典」

勢古浩爾『ビジネス書大バカ事典』三五館、2010年  定価1,680円



面白い本です。
勢古氏は、ビジネス書の中にはまともなビジネス書といかがわしいビジネス書、つまり「もどき」の2種類があるといいます。

そして、現在、一世を風靡している著名なビジネス書の著者たちは「もどき」であるとしてめった切りにしています。

かなり独断の論評ですが、痛快でもあり、また結構当たっている部分が多いと思います。

かなり分厚い本ですが、「ここまで言って大丈夫か?」という感じの内容ですし、とてもおもしろいのでそんなに読むのが骨ではありません。


特に勢古氏が批判するのは、苫米地英人、本田健、石井裕之、神田昌典、勝間和代、本田直之、斎藤一人、小林正観といった超売れっ子ライター達です。

特に最初の三人はひどく、次の三人も程度問題で「もどき」であるといいます。


いずれの場合も、ビジネス本を商売と割り切って書いている点が特徴で、最近ではネタ切れになっているか、イメージアップを図るためにスタイルを変化させたりとさらに内容が悪くなっているといいます。

確かに、勢古氏の批判も一理ありますが、エンターテイメントと割り切って読めば問題ないでしょう。
しかし、安直なビジネス本ばかり読むビジネスパーソンは問題があるでしょうね。

これに対して勢古氏が高く評価するのは、ビジネス界の荒波を乗り切った経営者の自伝です。
本書で推奨されているのは

松下幸之助 『道をひらく』『商売心得帳』
本田宗一郎 『スピードに生きる』
石橋信夫  『不撓不屈の日々』(大和ハウス工業創業者)
小倉昌男  『経営学』(ヤマト運輸2代目経営者)
稲森和夫  『人生と経営』(京セラ創業者)
岡野雅行  『俺が、つくる!』(わずか6人の町工場主ながら6億円の売り上げを誇る)
永守重信  『情熱・熱意・執念の経営』(日本電産創業者)
青木定雄  『社長の哲学』(MKタクシー創業者)

などです。


これらの本の半分以上を読んでいませんが、ユニクロの柳井氏の本等からも大をなした経営者の自伝は役立つことは実感しています。

私も機会を見て読んでいきたいと思います。



浅沼宏和
        

書評 「仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか」

小松易『仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか』マガジンハウス、2010年  定価 1,300円+税



私は最近、オフィスや工場の環境整備について研修することが多くなりましたので、同様のテーマを扱う本は関心があります。
本書はその中でも良書です。

小松氏はオフィスの環境整備と仕事の能力との間に相関関係があると考えています。私も同感です。


・オフィスの雑然とした状況は取引先・お客さまなど外部の人から見られている。
・ホコリに気がつかない社員は仕事において問題意識・改善意識が低い。

といいます。全くその通りです。そこで小松氏は

・会社の汚れは社員の意識の低さの表れである


といいます。
人はうまく環境に適応してしまうので、低い環境整備レベルにも適応してしまいます。そしてそのレベルは仕事のレベルに反映するのです。

ドラッカーはさらに厳しく、環境整備のレベルは経営者の品質意識を反映するとまでいっています、同じ意味といえます。


さらに小松氏は、会社を訪問するチェックポイントとして玄関マットの乱れを上げます。すぐ乱れやすいところが整えられているかを見るわけです。

当社では2S直角平行というコンセプトを打ち出していますが、基本的視点は小松氏と同じであると思います。



そこで当社としても参考になる小松氏の意見を抜き書きます。

・片づけができる社長は仕事が早い。仕事の基本は「すぐやる」こと。
・デスクの状態がパフォーマンスに連動している。
・片づけで「気づく」力がつく

「 会社の環境整備の活動で、止まっている書類や道具の整理整頓すらできない人が、日々刻々変化する経営状況やお客様を相手にすることがどうしてできようか。」



この他、細かいテクニックが紹介されていますが、環境整備は仕事の成果と相関関係があるとだけ押さえておけば、後はどのようなテクニックを利用してもよいでしょう。

2010年8月14日土曜日

書評 「銀行融資を3倍引き出す!小さな会社のアピール力」

東川仁『銀行融資を3倍引き出す!小さな会社のアピール力』同文館出版、2010年  定価1,575円


本書は中小企業の銀行対策本ですが、わかりやすく、しかも普段の経営で気をつける部分などの実践的な指摘があり、とてもよいと思います。


・決算書は過去のデータ。企業の強み、将来性、可能性は決算書に表れない。さまざまな長所を自分からアピールするべき。
・金融機関は忙しくなりすぎたため情報収集力が極端に落ちている。

・「ビジネスローン」という商品は決算書をコンピューターで分析するだけで融資を決定するため、行員の審査能力を落としている。

・支店長は「人間性の分かっている、付き合いの深い社長をなかなかむげにできない」と思っている。自分からつながりを作ろう。
・保証協会の保証のある融資ではなく、プロパー融資を狙うべき。

・企業が思うほど銀行はメインバンクとしての立場を気にしていない。融資量が一番多い銀行がメインバンクではない。
・メガバンクと都道府県のトップ銀行は特に「数字」と「実績」を重視する。

・取引銀行名で企業のステータスが上下する時代は終わった。複数の金融機関と付き合おう。
・年商5億円未満の企業は、最低でも1行の地域金融機関と付き合っておくべき。

・不景気で融資先が減っているメガバンクや地方銀行は、地域金融機関が重点先としている年商5~10億円程度の優良顧客に照準を合わせて攻勢をかけている。ただし、大事にされるのは初回取引時だけ。

・情報提供料の多さと融資成功確率は比例する。
・決算書に乗らない情報が融資を決める。(人事教育・新商品サービス・新規取引先・モチベーション・取り組んでいる経営改革・財務以外の自社の強み)

・「売り上げ見込み」「予想損益計算書」は不可欠な資料。

・資料を求められても怒るな、喜べ。
・同じ資料でも言い方一つで結果が変わる。一番に強調すべきは「資金調達を急いでいない」ということ。

・「しがらみ」を感じさせる人間関係構築が大事。会えば会うほど「しがらみ」ができる。
・キーマンは「融資担当役席」。月に一度は融資担当役席の顔を見る。

・融資担当役席に毎月面談できるツールが「月次事業報告書」。決算報告でさらに関係強化。

・頻繁に会えば貸し渋りも貸し剥がしも怖くない。ランクを分ける『心理的抵抗』とは構築された良好な関係。

・銀行が貸したくなる人のポイントは人間性。借りたものは必ず返そうと思っている人かどうか。

まずは見た目を整える。

・当然行わなければならないことを普通に行う。5S、挨拶等は重要。

・有能な後継者の存在は無条件で有利に働く。



要するにきちんとした経営を行っていれば借りやすいということでしょう。

2010年8月13日金曜日

伊藤邦雄教授の論考

8月12日の日経新聞朝刊に一橋大の伊藤邦雄教授の論文が掲載されていました。

伊藤教授は会計学会の大物ですが、マネジメントについても造詣が深く、日経新聞と組んで企業のブランド価値評価等を行ったりしている人物です。

今回の論文は日本企業の衰退の原因を簡略にまとめ、その対応策について提言しています。

以下、概要をまとめます。



日本の長期にわたる衰退の原因は、グローバル化の遅れ、ガラパゴス化、先端製品のコモディティー化等色々と考えられるが、根本的な原因は『失われた10年』にある。

90年代に企業はITや組織改編によって分権化を進め本社をスリム化した。打つ手も適切だった。
しかし、部門間の壁は厚くなり、連携が働かなくなった。

社員の視野も狭まり、成果主義の下で目標達成が最優先された。その結果、部分最適化が日本中を覆うようになった。

もともと日本は自分の職務を明確に規定せず、他部署やメンバーと柔軟に連携するチームワークが強みだった。それが失われてしまった。

90年代は企業競争のパラダイムが変化し、個々の事業部が自己利益を追求して合理的行動をとれば全体が最適化されるという発想になった。だからこそ部分最適化が進んだ。

しかし、このパラダイム転換は「部分」と「部分」の対立を生んだ。

そもそも部分最適化ができない企業は生き残れないが、全体最適化ができない企業は勝ち残れない。
会社経営は事業部の利害を超えた全社的最適を実現することだ。


提言1
90年代以降はスペシャリストがもてはやされたが全体最適型人材を早急に育成すべきだ。
部分を全体最適システムとして構築できる人材が必要だ。

提言2
全体最適の範囲を拡大すべきだ。今後は営業・開発・物流など他領域にも広げるべきだ。

提言3
大企業がベンチャー企業との連携を怠ってきたことを反省すべきだ。

提言4
既存産業の異業種連合を促進することだ。




全体最適という概念はドラッカー理論の中心概念でもあります。

伊藤教授は、日本企業は「モノ作り」の強みに特化し、事業システムを構成する「部分」の強みばかりを磨いてきたが、それが利益を生み出す源泉を狭めることになってしまったと主張しています。

全体最適というのは、環境変化に対してより柔軟な対応を可能にする仕組みであると思います。

2010年8月12日木曜日

書評 「企業とは何か」②

昨日に続いてドラッカーの「企業とは何か」を検討します。

本書には、ドラッカー理論の基本的概念のいくつかが詳しく説明されています。

いくつか取り上げてみたいと思います。

企業存立の要件

「まず組織として存続することが必要である。
したがって、利益をあげつつ財サービスを生み出すことが、企業を評価するうえでの必須の尺度である。」


大量生産の原理

①共通部品の集合としての製品設計
②初歩的作業だけで的確・迅速に生産できる部品の設計
③部品の生産と組立作業の統合(組織編成・生産工程設計・部品の流れの設計)
④多人数の訓練

あらゆる作業は大量生産の対象となりうる。


コストとシェア

業績の尺度としてコストとシェアを重視する。
コストは生産性の指標であり、生産性を低下させれば好況による増益があろうと責任が問われ、不況による減益があろうと評価されるべき。
消費者の意志こそ製品の客観的尺度であり、シェアはそれを示す。市場が縮小していてもシェアを増やすなら評価されるべき。


賃金の決定要因

「賃金についての客観的な基準はひとつしかない。生産性である。
 ‥生産性の向上によらない賃上げは欺瞞であり、やがて働く者自身に害をなす。」


利益について

・経済活動とは、その本質からして未来に対する賭けである。そこにはリスクが伴う。
利益とはリスクに対する保険料であり、生産拡大に必要な投資の原資である。

・利益以外に経済活動の成否の尺度がありうるとすることはナンセンスである。

2010年8月11日水曜日

書評 「企業とは何か」①

P.F.ドラッカー『企業とは何か』ダイヤモンド社  定価2,100円


1946年に書かれたドラッカーの名著です。

ドラッカーは当時の米国最大の企業であるゼネラル・モーターズ(GM)の経営と組織を1年半かけて調べ抜いて本書を書き上げました。

この本は単なるGMの経営紹介本ではなく、GMという米国を代表する企業を分析して、企業という存在の意味、産業社会の現状について明らかにするものです。


この本の発刊された当時、GMの経営陣は非常に憤慨し反発したそうです。

本に書かれたドラッカーの提言を無視するだけではなく、本書の存在自体について発言することすらGM内部ではタブーとなっていたそうです。

一方、トヨタやGEは本書の内容に注目し、経営実践に取り入れていったということです。

ドラッカー経営の正しさは、その提言を採用した企業の成長と無視した企業の没落という形で後年証明されました。

この本にはドラッカーの最大の業績である1954年の『現代の経営』、そしてそれに続く『創造する経営者』『経営者の条件』で整理されている見解の初期段階の構想がはっきり示されています。

骨太な本なので、なかなか読むのが大変なのですが、ドラッカーの思想の形成過程がわかって面白かったです。

せっかくなので、ドラッカーの主要概念について本書でどのように紹介されているか、次回にのブログでいくつか紹介したいと思います。

2010年8月10日火曜日

書評 「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」

林總『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』ダイヤモンド社、2006年  定価1,575円



名古屋のブックオフでたまたま見つけて購入したのですが、大当たりでした。

本書は会計実務家必読です。


タイトルが変わっていますので、中身が薄そうに聞こえますが、本書の内容はかなりハイレベルで、会計専門家でも十分満足できる内容です。

また、マネジメントの本としても優れていて、私がインパクトを感じた命題が10個以上含まれていました。

命題のレベルもよく練れていて高く、これを生みだすのに長い思索を経ていることがわかります。

以下、インパクトのある命題を抜き書きます。

・会計の使命は会社の活動を「可視化」すること。

・絶対的に正しい決算書は存在しない。

・大トロは儲からない。仕入れた大トロが現金化する速度は1カ月。コハダは即日現金化する。この速度の差。

・会計はキャッシュフローと利益概念を用いて行動計画の実行可能性を検証するツール。

・「蒲田の餃子屋のオーナーは不況のなった時にどれだけ損をするか考える。
 銀座のフレンチのオーナーは不況といえども圧倒的な差別化で顧客を絶え間なく引きつけなければならない。」 -損益分岐点分析から割り出した結論

・ブランド価値とは見えない現金製造機のこと。

・バランスシートの左の資産を実態以上に膨らませれば、右にある利益もその分増えたように見せかけられる。 ―粉飾決算の基本原理

・殺風景な工場ほど儲かっている。

・一流の蕎麦屋には無駄がない。これは生産現場の普遍的原理といってよい。

・可視化とは異常点が目に飛び込んでくる状態のこと。

・会計数値で異常を見つけたら、そこを突破口にするのだ。現場に行き、関係者の話を聞き、とことん原因を突き詰める。

・シャーロックホームズの目と行動力を持つことが大切なのだ。

・会計知識だけで数字の裏側は絶対に見えない。


本書のスタンスには共感を覚えます。

会計専門家は会計知識を前面に出しがちなのですが、私はそのスタイルでは限界があると考えています。

会計の限界を明確に示し、その神格化を排除する姿勢はとてもよいと思います。


また、偶然ですが私もシャーロックホームズ的な思考法がビジネスパーソンに有益であると考えており、セミナーなどでもそう言ってきました。

ホームズの思考法はアブダクション(仮説的推論)と呼ばれるもので、ある現象を適切に説できる仮説を導き出すというものです

優れたビジネスパーソンは例外なくアブダクションの能力が高いと思います。


このアブダクションは会計の専門知識とは違った能力であり、アブダクションの能力を高めなければ決算書から意味ある情報を見出すことは難しいと思います。

アブダクションは場合によっては「こじつけ」と言われたりするものですが、適切な学習によってその技能を高めることが可能であると思います。

アブダクションについては、また別途に説明したいと思います。

2010年8月9日月曜日

書評 「社長になる人はなぜゴルフがうまいのか?」

西田文郎『社長になる人はなぜゴルフがうまいのか?』かんき出版、2010年   定価1,470円




最近売れている本の一つです。

私はゴルフをやらないので、逆にタイトルが気になり購入しました。

本の帯にはかなり刺激的な説明が書いてあります。



もし石川遼選手がビジネスマンになっても必ず成功するだろう。
なぜなら彼には半端なく稼ぐ社長たちと共通する力があるからだ!



こんな文句にひかれて購入した人が多数であると思います。

しかし、結論から言いますと本書は典型的な自己実現本であり、またメンタルコントロール本です。

内容的にはありきたりです。

つまり、

1、大きな夢を持ち、その実現を信じ込む。
2、目標を具体的にする。

あとはゴルフなどを例にとってメンタルコントロールのテクニックを伝授するというものです。

メンタルをフィジカル同様に鍛えるというコンセプトは、『メンタル・タフネス』以来の定番のテーマです。

しかし、本書には、ネーミングのうまさ、切り口のうまさがあります。秀逸であると思います。

内容はありきたりですが、それを今風の雰囲気を加えて説明している点もとてもうまいと思いました。

文章の雰囲気も手軽で読みやすい感じがします。

2010年8月8日日曜日

書評 「ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣」

美月あきこ『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』祥伝社、2010年 定価 1,470円


筆者はもとCAで、ファーストクラスに搭乗する数々の成功者の共通点を真似することで成功に近づこうと主張しています。

ファーストクラスに乗れないレベルの人間を見下す記述が多々見受けられ、その点ではあまり好感を持てませんでした。

しかしながら、成功者に共通する特徴という面では参考になりますので、その点に絞ってご紹介します。


・寸暇を惜しんで仕事をする人間はファーストクラスにはいない。
・メモ魔が多い。というよりメモを取らない人間がいない。どんな紙にでも気にせずメモをとる。
・機内での過ごし方までCAにメモで指示をする人もいる。

・健康管理に気を使っている。食事にも非常に気を使う。
・朝の時間を大事にしている。ルーティーンワークは午後に回している。

・新聞は必ず読んできている。だから機内で朝刊を読みたいというリクエストがない。
・読書家が多い。13時間で8冊読んだ客もいた。伝記・歴史小説を読む人が多い。

・自身の衣類を非常に丁寧に扱う。
・靴は人目に付かない場所にそろえる。汚れた靴の中を見せるのを失礼と考える人が多い。

・ペンを持っていない人はいない。自身のペンについてのこだわりも強い。
・手帳はシンプルなものを使う人が多い。

・非常に聞き取りやすい声の人が多い。
・姿勢の良さが目立つ。

・自身の要望を伝えるのに「予告」と「確認」を行う人が多い。
・クレームの伝え方も洗練されている。

・第一印象がよく。第二印象(声・姿勢・顔)はさらに良い人が多い。

・顔相がよい。両目の大きさが同じで黒眼が輝いている。顔色がよくつやがある。山(額・鼻・頬・顎)がしっかりしていて小鼻が張っている。

・自分のポジションに応じた人脈を持っている。自分の周りにいる人10人をピックアップし、10で割ると現在の自分の格を示す。

などなどです。

成功者の共通点というわけでしょうが、参考にはなりますがそれ以上のものではありません。

ここに書いたことぐらいを押さえておけば十分でしょう。

2010年8月7日土曜日

閑話休題-石工の話

三人の石工の話はドラッカー経営ではとてもよく引用されます。

1人目は「石を積んでいる」と答え、2人目は「国一番の石工の仕事をしている」と答え、3人目が「大聖堂を立てている」と答えるという話です。

これはバリエーションが色々あり、古代エジプトでピラミッドを作る話や古代ローマの城壁建築の話になったりします。

最近、また別のバージョンを見つけたのでご紹介しておきます。


大工たちがカンナで木を削っていました。

若い新人に「あなたは何をしているのですか?」と聞くと

 「木を削っています。」 と答えます。

次に先輩職人に聞くと

 「柱を作っているんです。」 と答えます。

次にベテラン職人に聞くと

 「家を建てているんです。」 と答えます。

最後に棟梁に聞くと

 「家族の楽しい団欒の場を作っているんですよ。」 と答えました。


このバージョンでは登場人物が4人に増えています。

棟梁は建物の果たす目的を意識しているということになりますが、古代ローマ・ヴァージョンでは城壁づくりを「町を守る仕事をしています。」と答えることになっています。

4人のほうがよりわかりやすいですが、3人のほうが味わい深いように思えます。

2010年8月6日金曜日

仕事のやり方

有能であった人が新しい仕事に就くと急に凡人になる。


彼らは新しい任務についても前の仕事で成功したこと、昇進をもたらしてくれたことをやり続ける。


そのあげく役に立たない仕事しかできなくなる。


彼らは無能になったのではなく、間違った仕事のやり方をしているためそうなっている。


                  『プロフェッショナルの条件』より



これは好成績によって昇格した人のための戒めですね。

任務が違えば仕事のやり方は違います。

新たな仕事については、そのあげるべき成果と貢献の在り方を考え直さなければなりません。

また、任務が同じでも状況が変わった場合には今までの仕事のやり方を根本的に見直さなければなりません。

昔の成功体験が忘れられず、その方法が陳腐化した後もいつまでもそのやり方にこだわり続ける人がいます。

どこかでそれに気がつかないとビジネスパーソンとして終わってしまいかねません。心しておく言葉ですね。

2010年8月5日木曜日

成果についての考え方

ドラッカーの成果の考えは明確ではありませんので、『プロフェッショナルの条件』の中から関連する記述を抜粋してみましょう。


・ものごとをなすべき者の仕事は成果を上げること。しかし、成果を上げている者は少ない。
・肉体労働者は能率を上げればよい。知識労働者は組織の目的に貢献して初めて成果を上げることができる。

・知識労働者は成果を上げるべく自らをマネジメントしなければならない。
・ものごとをなすべき者はエグゼクティブである。現代社会ではすべての者がエグゼクティブである。

・エグゼクティブは自らの貢献について責任を負わなければならない。
・ゲリラ戦では全員がエグゼクティブである。

・知識労働は量やコストによって規定されない。成果によって規定される。部下の数や管理的仕事の多さは基準とならない。

・仕事や成果を大幅に改善するための唯一の方法は、成果を上げるための能力を向上させることである。

・成果を上げることは一つの習慣である。習慣的な能力の積み重ねである。

・成果を上げるには貢献に焦点を合わせなければならない。貢献に焦点を合わせることで、組織全体の成果に注意を向けるようになる。



こうしたことから私は経営者・管理者レベルの成果の「見える化」の問題を色々と考えています。

ごく単純な話としては、成果があがったらスケジュール帳に★をつけていくという方法が良いと考えています。最高の成果なら★★★をつけます。

ちなみに、私は7月中の成果は全部で43ありました。三ツ星が1、二つ星が11、一つ星が31でした。


この場合、成果とは顧客もしくは当社のイメージにプラスに寄与する出来事と定義しています。
3つ星は新規の仕事の受注ないしそれに準ずる価値の創出です。

このようにするとカウントできますし、スケジュール帳の午前・午後単位の効率性評価と合わせると、次月以降の改善点が浮かび上がってきます。


このテクニックは「習慣的な能力の積み重ね」というドラッカーの考えに合致していると思います。

2010年8月3日火曜日

成果を上げるスタイル

成果を上げる人とあげない人の差は才能ではない。

いくつかの習慣的な姿勢と、基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である。

                 『非営利組織の経営』より


この習慣的姿勢と基礎的な方法について明示されていないため、ドラッカーのいろいろな表現をもとにして考えなければなりません。


まず、習慣的な姿勢としては、できる限りのことを行うということであると思います。

プロフェッショナルの倫理は最善を尽くすことですが、最善を尽くすとは自身のできることはすべてやりつくすということです。

これ以上、ほんのわずかな努力の上積み、集中力の発揮、事前の準備はできないかを常に自身に問う姿勢であると思います。

次いで、基礎的な方法とは成果に対する自身の役割を明確化する思考であると思います。

これは現時点では仮説ですので今後のブラッシュアップが必要です。

書評 「近江商人学入門」

末永國紀『近江商人学入門」淡海文庫、2004年  定価 1,260円 


近江からは続々と商売上手が登場しました。

また、日本生命、高島屋、伊藤忠、丸紅、トーメン、ニチメン、武田薬品、日本生命など数多くの企業は近江商人の系譜をひいています。

さらに、近江商人は「売り手よし、買い手よし、世間よし」として知られる三方よしの思想を生んだことで、日本におけるCSRの源流の一つといわれています。

私は東海マネジメント研究会の活動の一環で滋賀県の近江商人記念館を訪ねたこともあり、近江商人には強く関心を持っています。

基本的には、なぜ滋賀県の片田舎に本拠地を置いたままで富豪になることができたのだろうかということに関心を持っています。

以下、本書の中からキーワードを列挙しておきます。

持ち下り商い
近江商人の基本は行商でした。上方の商品を天秤棒にぶら下げて地方に下り、今度はその地方の物産を仕入れて上方で売りさばくという、往復ともに商売になるというノコギリ商いからスタートしました。

卸行商
最初は少ない元手しかありませんので、天秤棒で商品を担いで行く持ち下り商いをするのですが、商売先の土地で有力者と知り合いになり、信用ができると、そこに馬や船で大量に商品を送るようになります。
自身で担ぐ天秤棒には身の回りの品だけをぶら下げて出向くようになり、地域の商人たちを集めて委託販売などの商談を行いました。

行商団体
商人同士の過当競争を避けるために、地域ごとに行商団体を組織しました。
そして債権回収や情報収集などの役目を果たす特約旅館制度などを設けました。

諸国物産まわし
こうして資産を築くと、近江商人は複数の地方に出店を開きました。出店は商品の輸送・保管場所として前線基地の役目を果たし、そこからさらに枝店が広がりました。
そして出店同士の情報交換から各地方の物資の価格差を利用して大規模な物資の流通を行いました。


すぐおわかりになるでしょうが、総合商社と同じビジネス形態です。

多くの商社の原型が近江商人であるのも当然です。

江戸時代のようにテクノロジーが発展していない時代にこれほどの先進的経営を行っていたことは驚きです。

その他、各地方に根付き、そこで酒造や織物などの事業を展開し、成功した人も多かったといいます。

また近江商人は、複式簿記制度をもっていたこともわかっていますし、独特の人材募集・育成制度を持っていたこともわかっています。

近江商人はこうした卓越したビジネスを行ってきましたが、基本的には薄い利益で信用を築き、人一倍勤勉に働くという王道の商売を行っていました。
私はこうした精神がドラッカーに通じるものがあると思っています。

近江商人については継続的に研究していきたいと思っています。

2010年8月2日月曜日

成果について

成果とは百発百中ではない。

百発百中は曲芸である。

成果とは、長期にわたって業績をもたらし続けることである。

                        『マネジメント』より



ドラッカー経営学の最重要概念の一つが成果です。

しかし、ドラッカーは成果について詳細な定義を行っていません。ですから、成果についてドラッカーが語ることから類推するしかありません。

上の定義からも、成果とは長期的視点に基づくものであることが分かります。



成果を上げる人たちは、気性や能力、職種や仕事のやり方、性格や知識や関心において千差万別である。

共通点はなすべきことを成し遂げる能力を持っていることだけである。

                      『経営者の条件』より



なすべきことを成し遂げるとは やるべきことをもれなく実行すること。細部に目が行き届いていること であると私は理解しています。

当たり前のことを当たり前にできることが成果能力であると思います。

2010年8月1日日曜日

書評 「ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階」

ジェームズ・コリンズ『ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階』日経BP社、2010年  定価 2,310円


ビジョナリーカンパニーの続々編です。

コリンズはドラッカーの影響を強く受けている人物ですので、基本的な企業観はドラッカーと同じです。

本書は大企業を想定して書かれていますが、そのエッセンスは中堅企業、中企業レベルには当てはまると思います。

・企業の衰退は次の5つの段階をたどる。

①成功から生まれる傲慢 :成功することで現実の厳しさから隔離される。勢いがあるのでまずい決定や規律の喪失があってもしばらく前進できる。  

②規律なき拡大路線 :あまり業績を上げられない分野に進出する。卓越性を維持できるペースを超えて成長しようとする。

③リスクと問題の否認 :内部では警戒信号が多数つみあがってくるが、外見的な業績が十分に力強いので心配なデータをうまく説明してしまう。

④一発逆転の追求 :急激な衰退がだれの目にも明らかであるため、一発逆転を狙ってしまう。

⑤屈服と凡庸な企業への転落か消滅 :財務力が衰え、士気が低下し、偉大な将来を築く望みをすべて放棄する。


こうした衰退のプロセスに陥らないためにコリンズは、規律ある人材、規律ある考え、規律ある行動 の3つを重視することを提唱します。

特に、規律ある人材を選ぶことができるかが重要になるといいます。ここにドラッカーの考えが大きく反映しています。

規律ある人材について、コリンズはドラッカーの思想を受け継いで次のように述べています。


不適切な人材はこれこれの「肩書き」をもっていると考えるのに対して、適切な人材は自分はこれこれに「責任」を追っていると考えることである。


また責任ある人材は、「どのような仕事をしているのですか?」という質問に対して「私はこれこれについて最終責任を負っている。」という回答ができるといいます。

規律なき人材はこの質問に答えられないとコリンズはいいます。