2010年5月31日月曜日

ランチェスター経営について①

最近、ランチェスター経営に関する書籍が増えています。

そこで何回かに分けてランチェスター経営とはどのようなものかを解説していきます。

簡単に言うと経営戦略には「強者の戦略」「弱者の戦略」があり、中小企業は弱者であるから「弱者の戦略」をとらなくてはいけないと主張するものです。


まず、ランチェスター経営はランチェスターの法則という軍事理論を利用しています。

これはフレデリック・ランチェスターという人物が航空戦を観察したところから生み出された法則です。

この法則は第二次世界大戦でアメリカ軍の兵力配置や武器開発、兵站などに実際に応用されて大きな成果をあげています。

そしてこの法則は経営にも導入されるようになり、特にマーケットシェアにかなり具体的な目標を設定させるのに役立てられてきました。

そして、現在は中小企業向けの経営コンサルティングに利用されるようになったものなのです。

しかし、実はこのランチェスター経営というものは日本独自の経営戦略理論です。
日本式のランチェスター経営戦略は国外ではあまり知られていません。

そこで、この理論の役に立つところと気をつけるべきところを検討していきたいと思います。

おおよその説明としては、ランチェスターの法則からマーケティングの分析に利用されているところまでは経験科学的な理論です。学会発表をしても耐えうるものでしょう。

しかし、日本でビジネス書として出されているものの多くは、そこからインスピレーションを得て発想されたその著者独特の経営観といえます。

ですから、著者によってニュアンスが結構違っています。また多くの場合、ドラッカー理論を導入して書かれていると思われます。またポーターの競争戦略論やその他の著名な経営理論も巧みに取り込んでいます。

ですから市販のビジネス書は「ランチェスター経営」という名称はあまり妥当ではないと考えています。
なにせマーケティング分析以降の話は、それぞれの論者の独自のモノですし、論理的厳密性もあいまいですから。
単純に言って「ランチェスターの法則からそこまでのことが言えるのか?」という問題点があるのです。

ただし、ランチェスター経営の本を書いている人は、豊富な実例や独特の視点をお持ちの場合が多く、経営に役に立つ内容は間違いなく含んでいます。読まれて損はないでしょう。

2010年5月30日日曜日

知りながら害をなすな

知りながら害をなすな


プロフェッショナルのもう一つの倫理です。
古代ギリシアの医聖・ヒポクラテスの言葉です。

知っていながら害をなしてはいけない。悪人以外なら簡単にクリアできそうな基準ですが、よく考えてみると難易度が高い基準です。

人間は完璧ではないわけですから、それを前提として最善の仕事をしなければなりません。

そのためには自身が知っている事実については細かく考える必要があります。

ひょっとしたら、仕事上の問題やアクシデントにつながるわずかな兆候を現在の事実から、読み取ることができるのかということです。

一流は細部にこだわるといいます。それは自身が完璧ではないことを前提として、微細な事実を見落とさないという姿勢を持っているということです。

掃除や5Sのレベルが好業績企業ほどすぐれているのは、細部にこだわる姿勢を持つことが多いからでしょう。

ちなみに、環境整備にこだわり始めたころの私のデスクのワンショット(上)、と最近の業務中のワンショット(下)をご紹介しておきます。

2010年5月29日土曜日

最善を尽くす

顧客に対して必ずよい結果をもたらすという保証を与えることはできない。最善を尽くすことしかできない。

昨日書いたドラッカーのプロフェッショナルの倫理の一つです。

当たり前のことですが、外科医の事例で考えてみましょう。

福島孝徳という脳外科医がいます。

天才的なメスさばきで次々と患者を救い「神の手」とまでいわれている著名な先生です。

TVのドキュメンタリー番組でも頻繁に取り上げられていますからご存知の方も多いと思います。

私も脳腫瘍ができたらこのようなお医者さんにぜひともお世話になりたいものです。


さて、お医者さんは何万人もいるわけで、皆さんがそろって「神の手」を持っているわけではありません。

仮に福島医師以外のAさんというお医者さんが執刀をした結果、不幸にも患者さんが助からなかったとします。

福島医師であったなら助かる可能性が高かったとしたならばA医師は倫理的に許されないでしょうか?

ドラッカーの原則によればA医師が最善を尽くしている限り、倫理的には責任を負わないということになります。

ただし、A医師が自分の能力では手術は困難であると自覚し、自分より力量のある医師を手配する努力を怠っていたり、実際に手術をするにあたりあらゆる検査や検討を重ねていなかった場合にはA医師の仕事は倫理的に許されないものでしょう。

また福島医師は手術を全身全霊を込めてやられているようです。手術道具へのこだわり、入念な準備、患者さんへの説明等、どれをとっても一流のすごみがTVからも伝わります。
自身の能力に甘んじているわけではなく、福島医師のレベルにおける「最善を尽くす」を実践されていることがわかります。

最善を尽くすことには難しい問題が含まれています。次にこれを検討します。

2010年5月28日金曜日

プロフェッショナルの倫理

現在、企業研修の依頼を数件受けている関係でドラッカーの考えを再検討しています。

ドラッカーの経営論は大きく分けて二つあります。

一つは組織の仕組みを作り、戦略を立て、資源を配分し、実行していくやり方についてです。マクロの経営論といったところでしょうか。

もう一つは、個々のビジネスパーソンが直面する問題、つまり仕事をどのようにとらえるべきか、自分自身や他人とどのようにかかわるべきかという問題です。ミクロの経営論というべきものです。

このミクロの経営論にはいくつかの柱がありますが、その一つがプロフェッショナルについての考え方です。

ドラッカーはプロフェッショナルの倫理として次のような考えを明らかにしています。


顧客に対して必ずよい結果をもたらすという保証を与えることはできない。最善を尽くすことしかできない。


つまり、完璧であることは無理であり、ベストを尽くすということだけが約束できるということです。

当たり前の話ですね。

もうひとつの倫理原則があります。


知りながら害をなすな


知っていながら顧客に損害を与えてはならない。

これも当たり前です。

しかし、この単純な原則には深い意味があります。次回はそれを考えます。

2010年5月27日木曜日

書評-「安定経営の極意」

本部映利香著『安定経営の極意』長崎出版、2010年  定価 1470円  


著者の本部氏は16歳で起業し、結婚離婚などの人生の荒波を乗り越えて現在経営コンサルティングを行っているという異色の経歴の持ち主のようです。

ですから、体系的な経営書とは違った面白い視点が随所に見られます。

内容は「三日間の社長面談」「業務改善」「上司へのアドバイス」「経営者が陥るワナ」の4つの項目にまとめられています。

それぞれ主なものを抜き書きます。


●三日間の社長面談
・社長の5つのタイプ
 初代「背水の陣」タイプ‥危機的状況に強いが安定期に伸び悩む
 初代「好きを仕事に」タイプ‥仕事に情熱を注ぐが理想と現実のギャップに悩む
 初代「なんとなく」タイプ‥計画性も根性もない
 世襲「起業家」タイプ‥商売の勘所が分かっている。譲り受けたものを維持するのは大変
 世襲「なんとなく」タイプ‥お坊ちゃんで精神的に弱い
・経営者と従業員はわかりあえない。経営者は全体に目が行き、従業員は仕事に目が行く。仕事の目的を伝えるのがコツ
・実務経験を重視する。多くの経験がデータベースとなり勘を生む。行動が勘を生む。
・「社長の仕事は先を見ることだ。でも、その前に市場を見ることだ」
・会社の生死は経営者の気力が握る

●業務改善
・ゴミを拾い掃除する。掃除をすれば利益が上がる。
・早起きする
・従業員に粗利を意識させる
・目標合格ラインを6~7割とする
・ビジネスマナーをしっかり教える

●上司へのアドバイス
・人ではなく、業務を管理する。業務を管理していれば嫌われてよい。
・「売りたいもの」ではなく「売れるもの」を作る
・嫌われても態度を変えずプロとして仕事をする
・楽しい職場づくりを否定する。会社の業績アップと楽しい職場は両立しない。
・上司と部下でミッションを共有する

●経営者が陥るわな
・嫉妬を買わないお金の使い方をする
・経営が順調な時ほど謙虚になる
・決断しない悪癖を改める
・きちんとお金を使う
・PRのポイントを絞る。選択肢が多すぎるとお客は選べない。


紫色の部分はドラッカーの考えと同じものです。偶然かわかりませんが、「上司へのアドバイス」はドラッカー経営の「人と仕事のマネジメント」の内容に合致しています。

その他の部分に関しては、読み物としてよりはおそらく本部氏の講演のほうがおもしろいのではないかと想像しました。

特に本部氏はご自身が経営者として若いころから苦い水を飲んでいますから「経営者が陥るわな」には実感がこもった話が期待できることでしょう。

また清掃する目的が細部に目を配る心構えを作ると考えている点、その関連性で壊れ窓理論に言及している点は当社の環境整備の考え方(2S直角平行)と全く同じです。

掃除(環境整備)は経営戦略の柱なのです。

2010年5月26日水曜日

書評-「繁栄し続ける会社のルール」

小宮一慶著『繁栄し続ける会社のルール』ユナイテッドブックス、2010年   定価1,470円

例によってドラッカー度の高い小宮氏の新作です。

今回の著書はなんと日本の他、台湾・韓国・中国でも同時発売になるそうです。
もはや小宮氏は「東洋のドラッカー」の道を歩んでいるのかもしれません。

今回もかなりのドラッカー度数です。

まず、ドラッカー的なところから抜き出してみますと、

・会社が存在する理由について検討している‥ドラッカーはそれを「何によって覚えられたいか」という問うべしといってミッションの重要性に言及しています。

・ビジョンの重要性について‥小宮氏のビジョンはドラッカーの言葉ではミッションです。

・「目的」と「目標」の違い‥‥ドラッカーはゴールターゲットの違いとして述べています

・「和気あいあい」より「切磋琢磨」‥‥ドラッカーは成果に目を向けないで、和やかな会話を繰り返す会社の人間関係を「不毛」と斬って捨てています。

・利益はコスト?‥‥ドラッカーの決め台詞の一つです。場合によっては利益は条件という表現になります。


今回の小宮氏はドラッカーに加えて松下幸之助氏の思想や「ビジョナリー・カンパニー」のコリンズの書籍からの引用も使っています。

ただし、コリンズはドラッカーを尊敬する経営学者ですし、ドラッカーは日本のかつてのカリスマ経営者たちを評価している人ですから、松下氏の考え方とも親和性が高いと思います。

コリンズ氏の近著「ビジョナリーカンパニー2」では、「先にバスに乗る人を選んでから行き先(戦略)を決める」という印象的なコンセプトを提起しています。

これはレベルの高い人の選抜が戦略設定に優先するというもので、実はドラッカー理論との整合性をよく考えなければならない重要な論点を含んだ考え方です。

小宮氏の著書ではまだこの論点には深く入り込んではいません。



今回の著書では小宮氏は「お客様から見えない部分」を大切にするべきであると論じます。

見えない部分として重視すべきなのが


1、会社のビジョンや理念がいかに大切か

2、働く人にとって働きがいのある会社、働きやすい会社にするためには、どんな姿勢で臨
むべきか

3、売上高や利益など、数字に対して徹底的にこだわる


といったことであるといいます。

今回の著書は、近年、続々と出版されている小宮経営論の集大成といった位置づけのようです。

2010年5月25日火曜日

上海旅行⑥

上海万博では人気パビリオンといわれるもののどれにも入ることができなかったのは残念でした。

しかし、会場は広く、清潔で、細かいところまで行きとどいていました。

また、上海の街もますます力をつけているようで、停滞する日本から来た私は内心焦りを感じるほどの雰囲気でした。

TVのニュースでは貧富の差、偽造やコピー品の横行、食品問題等センセーショナルな部分が強調されて報道されているような気がします。

しかし、実際に来て観て中国の成長力は非常に強いものがあると思いました。

物価水準にしても日本の感覚の3分の1程度にまで近づいてきているように思います。少し前に10倍ぐらいの開きがあったことからすれば驚きの早さで日本に迫っていると思います。

さらに遡って私が学生時代に訪れたころは100倍程度の開きでしたので、本当に時代は変わったのだなと思います。

これからは中国語だなと思い、帰りの空港で日本人向けの中国語学習ソフトを思わず購入してしまいました。

例文がすぐに耳で聴けますし、そんなに苦も無く学習できそうな内容です。

ですが、いったんソフトを開くと音量の調節ができなくなったり、途中でソフトを閉じようとしてもいくつもクリックが必要であったり、最後にエンディングのテロップを全部見なければいけなかったりと、顧客目線が全くない点はご愛嬌という感じがしました。

また、ホテルや街中の飲食店のサービスはまだまだ雑であったことと併せて、こうした細かい点に神経を生き届かせることが日本人の生命線であることを改めて実感しました。

さらに、上海と杭州、二年前の蘇州という著名観光地を訪ねてみて、日本の観光資源の優位性について確信が持てました。

日本の観光産業には特に期待したいと思います。

2010年5月24日月曜日

上海旅行⑤

上海万博は日程の関係で半日の見学となりました。

見学当日の入場客は比較的多かったようですが、その前日、前々日は7、8万人程度にまで落ち込んでいたようです。

会場はとても広大で歩くのに一苦労です。また、会場は川をまたいで広がっているため、移動には船を利用する必要がありました。

私は時間を最大限活用するため、人気のあるパビリオンを避けて入場できるところを選んではいって行きました。

北朝鮮、イラン、韓国企業連合館、中国の宇宙開発関連、中南米の合同パビリオンの5つです。
時間制約のある中では効率的な回り方であったと思います。

中でも印象的であったのは北朝鮮と、韓国企業連合館です。

北朝鮮館は日本間の近くにあります。日本館があまりに人気であきらめた人たちが来ているという感じでした。

館内はピョンヤンの風景のパネルとその前にチュチェ(主体)思想のシンボル塔の模型があったり、噴水がある程度で高校の文化祭の少し大がかりな感じといった程度の展示です。
売店では北朝鮮のパンフレットや記念切手を販売していました。

しかし、その販売員が40代のエリート風の男性で、がっちりとした体格、鋭い目つき、日本語に堪能といった様子から特殊な仕事に関係している人物のように思われたのが記憶に残っています。

また、北朝鮮館のとなりにイラン館がおかれており、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」と呼んだ2国が並んでいるという状況がなんだか不思議な感じでした。





韓国合同企業館は「サムソン館」と呼んでいい感じのものでした。
全館液晶やらLEDやらの技術を見せつける感じで徹底されており、サムソンの勢いを実感しました。







館内はとても幻想的な雰囲気でした。





2010年5月23日日曜日

上海旅行④

今回は観光的なご紹介をします。

まず上海の名所・豫園です。ここは日本で言うと浅草寺のような感じでしょうか。
古い建物とにぎやかな商店街が一体化している町です。


おいしい料理屋、高級品を売る店、偽物を売る店などなどとても賑やかです。

道行く人たちには上海市民も入れば遠方からの観光客、外国人旅行客などが入り乱れています。
特に白人の団体旅行客が多かったという印象です。


中国のお店も多いのですが外資系の店舗も多く、旅行初日の目には違和感を感じる風景でした。


もっとも帰国するときには慣れてしまいましたが。




次に杭州の です。

ここは土産物屋とB級グルメの屋台が延々と続く場所です。

時間が短かったので一通り歩くだけで終わってしまいましたが見聞きするものが色々とおもしろかったです。


まず目についたのは漢方薬の店が多いことです。

中に入ってみると症状やニーズに合わせて実に色々な薬草類が並んでいます。
何か買いたかったのですが、何がいいのか見当見つかないため見学するだけで終わりました。

また、杭州はお茶の名産地のようです。
日本にお茶を伝えたのは臨済宗の栄西であったと思います。

実際、ホテルで飲んだ杭州のお茶はほぼ日本茶と近い感じです。

しかし、風合いはどこか違う感じがしました。

2010年5月22日土曜日

上海旅行③

今回の旅では杭州にも出かけました。目的は国営企業である杭州鉄鋼集団の工場を見学するためです。


杭州までは新幹線で移動しました。日本の新幹線とほぼ同じ乗り心地です。電車が杭州に到着するまでの間に次々と巨大な町を通過し、中国の経済発展がかなり広域にわたっていることを実感しました。

しかし、新幹線とは言え、線路は高架されておらず速度も150km程度です。
日本の在来線といった感じの走りでした。



杭州は西湖の美しい景色で有名です。お昼は静岡県から進出しているなすびグループの日本料理店で食べましたが、味は日本と全く同じでした。しかし現地の人にとってはかなりの高級店になります。客層も日本人が6割で、あとは現地富裕層であるようでした。

その後、バスで1時間ほど走ったところにある杭州鉄鋼集団を見学しました。
そこは街自体が鉄工所となっており、学校・病院・消防・警察なども鉄工所が持っているというスケールでした。工場には貨物列車の線路が引き込まれており、工場から直接中国全土に製品を輸送することが可能となっています。

鉄鋼集団の売上高は400億元(日本円で約6000億円)、従業員数2万人です。聞くところによると鉄工所としては「中小企業」なのだそうです。

しかし、工場は巨大で中で野球の試合を二つ同時におこなえそうなほどの広さがありました。最初に見学した建物では真っ赤に焼けた鋼材がどんどん製品になり、巨大クレーンが次々とつるして運ぶさまは圧巻でした。

さらに移動して、次の工場では電炉のオペレーションルームに入ることができました。しかし、ここは企業秘密が多いということで写真撮影はできませんでした。
鉄工所も外国企業とだけではなく国営企業同士の競争も激しいのだそうです。

オペレーションルームの向こうでは真っ赤に溶けた鉄鋼がまじかに見られすごい迫力です。

ここで気がついたのはこの工場はISO9001を取得しており、壁に5Sのルールが書かれた大きなパネルが掲げられていたことです。
オペレーションルームの5Sには13の原則があり、それぞれの原則が守られているかをチェックするサイクルまで書かれていました。
実際、オペレーションルームだけではなく、工場全体もかなりきれいな状態を保っていました。


その後、オフィスエリアに移動して工場長の話を聞くことができました。
町全体のジオラマを前に、この企業がどのように発展してきたかを誇らしげに話す工場長の姿と現在の中国の成長ぶりが重なって見えました。

あとで通訳の人に聞くと「みなさんが3年後にいらっしゃれば驚くほどここも変わっていると思いますよ。」と話されていたようで、その話が印象深く記憶に残りました。

2010年5月21日金曜日

上海旅行②


上海に前回来たのは2008年12月でした。


私は学生時代の1986年にも上海に来ていたので、その時からの変貌ぶりには茫然とするものがありました。特に浦東地区には森ビルを中心にいくつもの高層ビルが立ち並び、香港やNYに迫るほどの印象を受けました。

その頃、上海万博に備えて建築ラッシュが始まっていました。ちょうどリーマンショックの直後でしたが市内では100Mごとに建築現場があり、1Kmに一つは大規模な整備が行われているという印象でした。

それがわずか1年余りでほとんど完成していたようで、市内の印象がさらに大きく変化していました。
こぎれいでおしゃれな大都会という印象がより強くなっていました。


今回感じたのはその都会ぶりというよりは「変化率」の大きさです。これほど急速に変化し続ける中国の底知れない成長力は、頭ではわかってはいましたが生で見てみると空恐ろしさを感じました。
マスコミ報道で言われていたように高速道路のライトアップが無駄であるとか、貧しい住宅街をキレイな塀で囲い込んでいるという話は本当で、街を車で普通に走っているとあちらこちらでそれを見ることができるわけです。

しかし、そうしたことを臆面もなく実行できる中国政府の強さは、日本政府と比べてみると特に際立つように思われます。


問題点は多々あるのでしょうが、強いリーダーシップを持つ中国は間違いなく強国への道を歩くのでしょうし、日本は好むと好まざるとにかかわらず「強い中国」に注目しなければならないと痛感した次第です。




2010年5月20日木曜日

上海旅行①

静岡銀行(Shizuginship)の研修旅行で上海に出かけてきました。


今回は万博を見たほか、杭州の国営製鉄所を見学してまいりました。

何回かに分けて今回見聞できたものをレポートしたいと思います。

いくつか先にまとめておきますと。




・上海は2年前と比較してもかなり街並みが変化している。全体的に垢ぬけた印象。

・小売業等の商業店舗の数が非常に多い。ただし、客入りが必ずしも多いわけではない。

・上海万博は人気パビリオンに客が集中している。印象としてかつて日本の大阪万博の時ほどの熱気はないと感じられた。

・上海の周辺都市の経済力もかなり大きくなっている。

・全体的に変化の速度が並みはずれた速さを保っている。

値引きは厳禁③

値引きには応用バージョンがあります。「過剰サービス」という名の値引きです。


駅ビル等にはよくおしゃれなマッサージ店が入っています。
疲れたビジネスマンやOLなどでにぎわったりしています。

色々なメニューやコースがありますが、基本的には時間の長さで料金が高くなる仕組みになっています。

たとえば
10分コース 1000円
30分コース 3000円
1時間コース 5000円
といった感じです。

最初に3000円の料金を支払えば30分きっかりで終了します。3000円しか支払っていないのに「今日は暇だから1時間やって上げますよ。」ということはまずありません。

お客さんのほうも3000円しか払っていないのに1時間のサービスを期待することはありません。

しかし、ビジネスシーンでは「3000円しか支払っていないのに1時間のサービスを提供した」ということが当たり前のようにおきています。

これは「時間はコスト」という感覚が欠けているためです。マッサージの例で言うならば、1時間のサービスで2000円の値引きをしてしまうことになるわけです。

会社の業務でかける時間もマッサージ店でかける時間も同じコストであるという感覚を身につける必要があるでしょう。

2010年5月19日水曜日

値引きは厳禁②

値引きは「利益の値引き」と同じなので慎重に行う必要があると昨日のブログで書きました。

具体例をあげます。

100万円の商品を売るとします。

お客さんが、悩んでいるのを見て営業マンが思いきって10%の値引きを行うとします。

営業マンは「100万円の商品を90万円で売ったけど、成果の90%を上げたから問題ないな」と考えてしまう傾向があります。

しかし、この商品の原価が75万円であったとすると、10万円の値引きは粗利益25万円に対してなんと40%になるわけです。

つまり彼は独断によって本来会社があげるはずであった成果の40%を失ってしまったのです

値引き10万円は、粗利益率の逆数をかけた売上高に相当します。

この場合、 10万円×100万円(売上)÷25万円(粗利益)=40万円  となります。

いいかえると、今回の商品とは別に新たに40万円分の商品を売らなければ、値引きのダメージを取り返せないのです。

ですから値引きは厳禁なのです。

2010年5月18日火曜日

値引きは厳禁①

昨日と同じく「管理者のための簿記再入門」の内容からです。

値引きは会社にとって損であることはいうまでもありません。

しかし、値引きがどれだけ財務的なダメージを与えるかわかっていない営業マンもいるようです。

簿記的な知識をもっていると値引きは厳禁という意味がわかります。


中小企業等で営業のルールがしっかりしていない場合には、営業マンが勝手に値引きしてしまうことがよくあるようです。

営業マンの意識としては「売り上げたんだから少しぐらい値引きしてもいいだろう」という感じになるようです。

しかし、この営業マン「値引き=売上の値引き」と勘違いしているのです。
実際には値引き=利益の値引き」と考えなければならないのです。

値引きをしますと売上高がその金額だけ減少します。しかし、それだけではありません。
費用は全く変化しませんから、売上から費用を差し引いた利益も同じ金額だけ減少するのです。

企業の営業利益はたいてい数パーセント程度です。10%以上あるような企業は好業績といえます。

つまりすべての売上について1割引きにした場合、ほとんどの企業は赤字に転落するのです

この点について理解していない営業マンが安易な値引きに走るわけです。

値引きについては入念な方針を決めて、それを守らなければならないのです。

簿記のテクニックは経理マン以外は覚える必要はありませんが、簿記的なセンスはすべてのビジネスパーソンに必要不可欠なのです。

2010年5月17日月曜日

給料の三倍稼いで一人前

「近代中小企業」という雑誌の別冊として管理者向けの簿記再入門についての原稿を書きました。

今回は32ページ分の分量を1週間の期限で書いたのでかなりハードでしたがどうにかまとまりホッとしています。ほんの数日前にも書いたのですが、原稿が仕上がりましたので改めて書きます。

その中で「給料の三倍稼いで一人前」という章を設けて、その簿記的な意味について解説しました。概要はこうです。


経営指標に労働分配率というものがあります。人件費の総額を会社の付加価値総額というものです

簡単に言うと売上高から仕入・外注費を引いた金額です。

なぜそれが付加価値かというと、仕入・外注費は会社の外でつけられた価値で、それ以外は会社がつけた価値とみることができるためです。

つまり労働分配率とは、会社の生んだ価値のうち人に回ったコストということです。優良企業ほど低くなることが知られています。


黒字の中小企業の場合、業種によっても違いますがだいたい労働分配率は50%台です。

ところで人件費=給料総額ではありません。人件費には会社負担の社会保険料、福利厚生費なども入ります。ですから黒字企業の給与総額は付加価値総額の40%台になります。

つまり黒字企業は社員全員で自分たちの給料の2倍ちょっとぐらいを稼いでいる(付加価値を上げている)ということになります。

社員にはベテランもいれば新人・パートさん等がいます。新人は仕事を覚えている段階であり、給料分を稼いでいません。パートさんは裏方的な役割の場合、せいぜい給料の1~2倍程度の稼ぎでしょう。

ですから中核社員は給料の3倍以上稼ぐのが黒字企業の条件となるわけです。

この辺りがあまり理解されていないようで、自身の給料の二倍ぐらい稼ぐとなんだか会社に貢献しているような気になりますが、それでは赤字になってしまいます。

給料の三倍稼いで一人前という表現は簿記的に適切な表現なのです。

2010年5月16日日曜日

平日の「ちょっと贅沢」に勝機

日経ビジネス2010.5.10号に平日のちょっとした贅沢にビジネスチャンスがあるという特集が組まれていました。

概要は以下の通りです。

・休日の消費は2007年を境に落ち続けている。
・逆に平日消費が活況を呈しつつある。
・注目は「平日のちょっと贅沢な消費行動」-“デイリープレミアム消費”

・ex.森永乳業のアイスクリーム「PARM」
・ex.サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」
・ex.浅野味噌の「ちょっと贅沢な味噌汁」

・平日のちょっと贅沢がうける背景には2008年秋のリーマンショック以後長引いている節約に対する消費者の疲れと飽きがある。

・ユニクロの2010年3月売上高が前年同月比で83%に落ち込んだ。これは消費者の節約志向の変化と見る向きが多い。
・ニトリも3月の売上高が5.4%減。

・逆に百貨店の売り上げ減少幅が縮小。長く続いた冬の時代に雪解けの兆しか。

あくまでも「兆し」といったレベルの話です。

しかし、これがトレンドになるのであればマーケティング戦略の立て直しを迫られる話となるでしょう。

2010年5月15日土曜日

「整理」について考える③

福島氏も成果のための整理という考え方を持っています。 

TMAの2S直角平行の意味は

整理=いらないものを徹底して捨てる
清掃=よごれ・ホコリを隅々まで取る
直角平行=見えるものをすべてそろえる

なのですが、オフィスでは特に最後の直角平行がポイントです。

直角平行になっていれば美観が優れているだけではなく、「触った」という事実が見える化されているわけです。

「触った」ということはチェックしたということです。直角平行状態が保たれているならば、業務がコントロールされているということになるわけです。

これが最大限の成果を上げるための環境整備の在り方であると考えます。

福島氏の整理の考え方と私の整理の考え方は非常に似ていると思います。

福島氏も「前よりも良くなればそれでよい」と書いていますが、私もセミナーなどでそのようにいっています。スパイラルアップの考え方です。

福島氏の本にはこうした原則的な考え方とは別にテクニック的なこともたくさん書いてあります。

たとえば

・取りだしたいものを目立たせる
・いっぱいになったら取捨選択してストックする
・アクセスの多いものほど手の届く範囲に置く
・横にしないで立てておく
・一目でわかるように色を使う
・見える化する(透明で中身の見るようにする)
・同じことに使うものをまとめておく
・仕事道具は厳選して使う

といった感じです。

具体的テクニックについても原則的な考え方のもとに各事業所ごとに決めていけばよいでしょう。

2010年5月14日金曜日

「整理」について考える②

「 ‥なぜ整理というのができないかというと、第一に時間をかけることに見合った価値が出ないと考えるからでしょう。」

ごもっともです。私も中小企業のオフィスエリアの環境整備は最大成果をあげるために行われるべきと考えます。

「 ‥きちんと片づけられていることが、整理なのではなく、きちんと仕事ができるように整っている。そこには理といいますか、考えが一本きちんと通っていることが大切だということです。 」

前にこのブログで佐藤可士和氏のサムライオフィスと㈱武蔵野のオフィスは対極にあると書きました。

徹底してモノがないサムライオフィスを安易にマネをしてはいけないとも指摘しました。

それはオフィス環境は最大成果のために環境を整えるべきであるからです。そのために通すべき一本の筋とは経営方針・事業方針というべきものでしょう。

「 ‥結論を言うと、整理の効果に見合う時間をどうかけるかということです。いや、整理の効果に見合わない時間をかけてはならないということです。 」

これはドラッカー経営におけるコスト管理の要諦である費用対効果ないしは対業績比の視点です。

時間と効果のバランスを絶妙にすることこそ「絶妙な整理」であると考えます。

2010年5月13日木曜日

「整理」について考える①

福島哲史著『絶妙な「整理」の技術』明日香出版、2007年 定価1,365円 

今回は書評というよりは、福島氏の整理についての考え方をご紹介しながら、TMAの「2S直角平行」のコンセプトより深めたいという企画です。

何回かに分けて行いたいと思います。

「 ‥私の知る限り、仕事のできる人は、片付けるのをあまり得意とはしません。というより、整理を最優先しないのです。

もし、そういう人の机やそのまわりがきちんとしているとしたら、それは、人の目に触れるところで、あるいは部下のいる手前、やむなく外側からそう見えなくしているのです。

‥そういう人は、いったん整理をしはじめると、徹底してチリ一つ残さないところまでやります。つまり、本当は片づけるのも大好きできれい好きなのです。それよりも仕事を優先させていくので、散らかってしまうということです。 」

なかなかうがった見方です。

また福島氏は次のように付け加えます。

「 ‥多くの仕事を並行して、どんどん先取りして進めなくてはいけない現代においては、整理は仕事を邪魔しないために、最低限、取り組まなくてはいけない、必要悪といえるからです。

整理できていなくても、仕事ができていればよい。しかし、仕事を素早く、しかもきちんとするためには、最低限の整理は必要だということです。 」


私も大筋で福島氏の見方に異論はありません。

私たちTMAでは「中核社員のデスクは乱れやすい」と考えます。

ですからデスク周りから不要物を取り払い、すべてのモノを揃えておき、仕掛中の書類が紛れないようにしておくべきと考えています。

デスクからあらゆるものを取り払うのではなく、デスクの上にあるものをコントロールしている状況を維持しようとするわけです。

2010年5月12日水曜日

イチロー名言集

たまたま手元にイチローの名言を集めた冊子があったので抜き書きしておきます。さすがです。


・手抜きをして存在できるものが成立することがおかしい

・何かを長期間、成し遂げるためには、考えや行動を一貫させる必要がある。

・やってみて「ダメだ」とわかったことと、はじめから「ダメだ」と思うことは違う。

・練習で100%自分を作らないと打席に立つことはできません。

・自分で無意識にやっていることを、もっと意識しなければなりません。

・少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事。

・小さいことを積み重ねるのが、とんでもない所へ行くただ一つの道だと思っています。

・「やれることはすべてやる」。それを毎日継続して行うのは一番苦しいことであり、とても大変なことである。でも、それをちゃんとしていれば、結果が出ていない時でも後悔せずに満足できる。

・びっくりするような好プレイが勝ちに結びつくことは少ないです。確実にこなさなければならないプレイを確実にこなせるチームは強いと思います。

・進化するときというのは形はあまり変わらない。だけど見えないところが変わっている。それが本当の進化じゃないですかね。

・調子が悪い時こそ全力でプレーすることが大事。

・しっかりと準備もしていないのに目標を語る資格はない。

・キャンプでいろいろ試すことはムダではありません。ムダなことを考えて、ムダなことをしないと伸びません。

・僕は天才ではありません。なぜかというと自分がどうしてヒットを打てるのかを説明できるからです。


こういうと語弊があるかもしれませんが、イチローの言葉とドラッカーの言葉には似ているところがたくさんあります。

正しい考え方、深い思考、最大限の努力、真摯さ といった要素がイチローの言葉に漂いますが、それはドラッカーが一流のビジネスパーソンが身につけるべきものと考えているものと同じだからだと思います。

2010年5月11日火曜日

礼儀の原則

ビジネスパーソン向けの基本行動をまとめた小冊子の『礼儀をきわめる10カ条』の特集がなかなかよくまとまっていましたので、要約しておきます。


1、礼儀は社長が求める意思統一‥すべてはお客様のため、会社を倒産させないため

2、たった今から「礼」を身につけよ‥自分を律し続けなければあなたは礼儀知らずのままだ

3、「挨拶・返事」で意欲を見せる‥挨拶を軽視する者が上から認められることはない

4、「お辞儀・感謝」をスムーズに言う‥感謝の気持ちはつねに現在形。「ありがとうございました」とはいわない

5、大きな声を出す‥いま出している3倍以上の声を出せ。やる気は声の大きさに比例する

6、いい笑顔を作る‥疫病神のような表情の人に近づこうとはだれも思わない

7、気をつけの姿勢を習慣づける‥だらだらとした態度は目立つ。シャキッとせよ!

8、整理・整頓に人格があらわれる‥整理・整頓のレベルであなたの管理能力が評価される

9、人の話をしっかり聞く‥「私はあなたの話を真剣に聞いています」と態度姿勢で示せ

10、履き物をそろえる、椅子を入れる‥そんなことをしなくてよいと思っている、その意識をたたき出せ


どれもよくいわれていることですが、こうしてまとめて原則としておくとよいかもしれません。8と10は当社の2S直角平行の環境整備のコンセプトと同じです。

2010年5月10日月曜日

書評-「立ち上がれ中小零細企業」

小林延行著『立ち上がれ中小零細企業』ディスカバートゥエンティ、2010年  定価1050円

小林氏は長野の中小企業の社長です。長年、大手企業の下請けに甘んじてきた結果、経営危機に陥り、そこから「ノーを言わない営業」を武器にして経営を立て直したという人物です。

小林氏は非常に物事を体系化する頭脳の持ち主のようで、本書は中小企業の現状についてかなり本質をついていると思います。

また、中小企業政策についての提言もしていますが、説得力があります。

本書は特に中小製造業の経営者はぜひ読まれたほうがよいと思いました。

まず、小林氏は大企業の倫理観について厳しい批判をします。大企業は平気で中小企業の技術を盗むというのです。

工場を見学し、写真を撮り、それを自社で行えるようにした後でその会社との取引をやめてしまう。こうした姿勢を延々と続けてきたため、大企業と中小企業の関係はWIN‐WINではないというのです。

そこから小林氏は中小企業の生き残りの方策を模索します。

中小零細が下請けから脱するためにすべき7つのこと

①技術力の確立

②ノーと言わない営業

③顧客ニーズを満たして特許出願

④「匠」の技を機械に置き換える

⑤中小零細同士でコラボする

⑥広告・宣伝・展示会への出展

⑦行政関係機関からの応援を得る

この詳細については触れませんが、小林氏は日本の中小零細製造業の未来について「なんとかなる」という考え方を持たれているようです。

ただ、今の製造業が厳しい状況にある理由については

「 この失われた10年というのは、何も考えずに『ただただ安く造れる』という理由だけで海外に進出した企業が、結局、地元にさまざまなノウハウ・技術を伝授する結果となり、それらのメーカーの追い上げに戸惑い、恐れ、翻弄され自信を失ってしまった10年という見方もできるのではないか 」

と厳しい評価を下しています。

私はモノづくりの第一線で成果を上げている小林氏の実感のこもった本書の提言にはかなり信憑性があるように感じました。

2010年5月9日日曜日

書評-「残念な人の思考法」

山崎将志著『残念な人の思考法』日経プレミアシリーズ、2010年  定価893円


刺激的なタイトルの効果もあり、なかなか売れているビジネス書です。

体系性という点ではいまいちなのですが、個別のエピソードや視点は非常に切れがあります。

本書ではダメなビジネスパーソンを「残念な人」と位置づけています。

そのモチーフとなる考え方は、仕事の成果=プライオリティ(考え方)×能力×やる気
のうち、プライオリティがダメな人は成果が出ないというものです。

まずこの方程式は稲盛和夫氏の提起する方程式そのままです。これを前提にしていろいろなエピソードをちりばめてあるのですが、体系性がないため活用しにくいかもしれません。

しかし、なかなか面白い話もありますので、以下、私が関心を持った部分を列挙します。


・「作り出す仕事」と「こなす仕事」の二極化は拡大している。上のポジションを目指すなら、「作り出す仕事」ができる力を身につけること。つまり、徹底的に「考える」のだ。

・労働力を投入すること=仕事 ではない。

・アウディのディーラーは顧客の車を預かったら必ずぴかぴかに洗って返す。きれいな車が町を走ることは広告になると考えるから。

・二流は積み上げ方式で考え、一流は市場全体から考える。(=『二流は掛け算で考え、一流は割り算で考える』)

・言い訳している限り店は寂れていく。

・「顧客のえり好みをせず、呼ばれたら迅速に対応し、要望に可能な限り答える営業担当者」は「残念な人」かもしれな。それは顧客にとってだけ理想的な人であり、会社にとって理想的ではない。

・任せられない人とは、期限内に、期待した水準の仕事を仕上げてこない人。

・小さな約束を守れない人と大きな約束はできない。

・就職活動における残念な人の志望動機-「とにかく会ってみればわかります」「御社の○○を評価します」「前の会社はひどい会社でした」「前職はハードすぎて」「協調性、行動力、忍耐力、‥‥等があります」「厳しい環境に身を置きたい」「御社を最後の職場にしたい」

・成功のもとは成功である。


といったところです。

前提が稲盛和夫氏の方程式で、あとはところどころがドラッカーです。例えば、「成功のもとは成功」とは強みに焦点を当てろというドラッカーの言葉と同じです。

また別のところでは「問題に集中するな、機会に集中せよ」とはドラッカーの言葉そのままです。

しかし、本書はアクセンチュアという大手コンサル出身者の独特の問題解決手法も垣間見える点は興味深いところです。

仕事と付加価値

ユニクロ柳井氏の仕事観と小宮一慶氏の仕事観は似ています。

どちらもドラッカー信奉者であるので当たり前といえば当たり前ですが。

柳井氏は知識労働者を非常に重視する経営者です。

柳井氏流の表現ですと「自営業の意識」で働く店長が知識労働者なのだそうです。

つまり最終責任を自分が負っていることの自覚を持ち働く人のことです。

小宮氏は仕事と作業についての違いは「やる気」の違いと言っています。

私はそれについて高付加価値が仕事、低付加価値が作業であるといいかえました。
さらに別の言い方ですと、その人にしかできないものが仕事、誰にでもできるのが作業です。

たとえば町のうどん屋さんの中には10人以上のお客さんの注文を耳で聞くだけで覚えこんで、全く間違いのない女性がいたりします。あまりの神業ぶりにTV番組で取り上げられたりします。
この人は「仕事」をしているわけです。

小さなうどん屋の注文取りというありふれた業務であっても抜きんでることが可能であるというわけです。

どんな小さな役割であっても「仕事」になる可能性があると思います。

2010年5月8日土曜日

ユニクロ柳井氏の社員観②

柳井氏はユニクロの店長は知識労働者であると考えています。

「 お客さまと一番近い場所にいるのは店舗の販売員や店長ですからね。
‥‥お客さまのことを一番わかっているのは店舗の従業員。だからすべての正解は、本部にではなく店の現場にあるというのが、私たちの考え方なんです。 

だから柳井氏は「店舗=考える人」という図式を描いたわけです。考える人とは知識労働者のことです。

「 ずっと売る側にばかりいると、自分の店を客観的に見られなくなってくることがあるんです。
‥‥忙しい店舗だと、どうしても細かい部分に目がいかなくなってエントランスに草が生えたり、POPが傾いていてもきづかなかったりすることもあるんです。 

こうした現場観のもとに柳井氏の社員観は形作られているようです。

現場の人間の意識水準が低ければ企業のレベルが低いままにとどまってしまうということです。

また柳井氏は「知識労働者とは自分で考え、マニュアルに書かれていないこと、言われていないことを自ら行う人のこと」であると述べています。

この細部に目がいくという点が重要であると思います。細かい改善やヒヤリ・ハット(インシデント)を見つける人は細部に目が行く人であるといえます。

そこで人材のレベルは改善提案数・ヒヤリハット(インシデント)報告数に比例するという命題が成立すると思います。

2010年5月7日金曜日

ユニクロ柳井氏の社員観①

柳井氏は現場の仕事は毎日毎日改善されていくべきだという考え方の人です。

「 特に変化のない企業では、日常の業務をこなしているということだけで評価されてしまう傾向があります。
昨日の仕事と同じことを今日もやって、それなりに真面目に働いていれば、ある程度の評価を受け、年齢を経ればそれなりの立場につくことになる。
先ほど、終身雇用制を含めて日本企業のいい部分がマンネリ化していった、と僕は言いましたが、マンネリ化形骸化とはそういうことなんですよ。 」

柳井氏はドラッカーの知識労働者という概念を重視しています。

ユニクロの店長は知識労働者でなければならないというのが柳井氏の信念です。

また柳井氏はプロフェッショナルになるためには、与えられた仕事だけをこなすのではなく、自分で仕事を見つけるようにならなければダメであると言っています。

その前提となるのが
「未来に向かって成長していくことをやめた企業は、企業としては成り立たない」
という考えです。

こうした企業観をもとに、知識労働者としての社員の在り方についての考えをまとめているようです。

しかし、柳井氏によればユニクロといえども「知識労働者と呼べる店長は10人に1人」なのだそうで、人材育成の難しさがうかがわれます。

2010年5月6日木曜日

ユニクロ柳井氏の現場論

「 一見したところ、同じ商品のように見えるかもしれませんが、じつはユニクロでは毎日毎週、修正を繰り返しながら本当にいい商品を店に送り出しているんです。 」

これは柳井氏が知識労働者としての店長の役割について語った際に述べている言葉です。
この言葉は日常的な仕事についての正しい姿勢を示すものであると思います。

私は以前、京都の老舗の漬物屋のご主人が

「お客さんはうちの味を『変わらないね』といってほめてくださる。
実はうちの漬物は江戸時代から比べると全然違うものになっている。
それどころか毎年微妙に違う。『変わらないね』といっていただくために毎年変えている。」

とおっしゃるのを聞いて感銘を受けたのですが、同じ話であると思います。

つまり、同じ商品をなんの改善も加えずに出し続けることはあってはならないということです

お客さんはどんどん変化していくわけですから、その変化に対応し、場合によっては先取りまでしなくてはならないわけです。

また柳井氏は

「 一番厳しいお客様がお店に入ってきて、店や従業員たちを見てどんなふうに感じるかをシミュレーションしてみなさい 」

とも言っています。

これを1日3回やればその店は必ず最高の店になるそうです。

日々の微細な改善の積み重ねが現場力を高めるという考え方は製造業のみならず、あらゆる業種で当てはまることであると思います。

2010年5月5日水曜日

柳井正氏のドラッカー経験

ユニクロの柳井正氏は最初からドラッカー経営の信奉者ではなかったようです。

初めてドラッカーを手にしたのは大学生のころであったそうですが、記憶はほとんどないとのことです。

ジャスコの社員として社会人のスタートを切り、数年で実家の紳士服店とカジュアルショップを引き継いだ時に、わずか数名の社員のマネジメントにも苦労した時に改めてドラッカーを読んだのだそうです。

25歳のころだったそうですが、その時も感動するほどではなかったそうです。

その後、現在のユニクロの原型のビジネスを始め、いざ上場にまでこぎつけたころにドラッカーを読んだときに、初めてドラッカーの本当のすごさを理解することができたと述べています。

書評-「ドラッカー思想と現代経営」

宮内拓智・小沢道紀編著『ドラッカー思想と現代経営』晃洋書房、2010年  定価2,625円


本書はドラッカー学会立命館支部の関係者の論文集です。
およそドラッカー理論を正面から扱っている学術的文献はごく限られています。

こうした論文集が出版されること自体、ドラッカーに対する世間の評価の変化の大きな兆候といえるでしょう。

本書は14名もの研究者の共著であるため、ドラッカーへの理解はまちまちです。

非常に深い視点から考察している論文は3分の1程度です。それ以外は自身の研究テーマにドラッカー的味付けがなされているというタイプのものです。

それでもドラッカーの全集を読んでいるような人には参考になる本であると思います。
ドラッカー理論の学問的位置づけについての意見が、いくつも見受けられ、それはとても参考になりました。

ただし、実践的なヒントを期待する向きにはあまり向かない本です。

私個人としてはドラッカーのイノベーション概念についてシュンペーターのイノベーション概念やクリスチャンセンの破壊的イノベーション概念との対比を行っている論考です。

おそらくシュンペーターとクリスチャンセンは今後ずっと重要な経営学者であり続けるでしょうからドラッカーと対比してくれている文献は刺激的です。