2010年4月29日木曜日

書評-「マーケティングマインドのみがき方」

岸田雅裕『マーケティングマインドのみがき方』東洋経済社、2010年  定価1,575円 

岸田氏は東大卒・NY大MBAで大手企業から研究機関、コンサルティング会社を渡り歩いてきたばりばりのエリートコンサルタントです。

本の概要は次の通りです。


・顧客を喜ばせる心(マーケティングマインド)がないとマーケティングは成功しない。
・時代の変化を読み取ることが大切。次の3つを識別する。
 ①不可避のトレンド「大きな波」 
 ②時折起きる「ゆらぎ」 
 ③その場限りの流行「ノイズ」 

・マーケティングで重要なのは「誰に」「何を」「どうやって」売るのかをはっきり決めること
・ユニクロも老若男女に愛用されている点では広いが、「ベーシックなカジュアルを安く」というニーズに絞っている点で狭い。
・万人に受けたいと思えば誰からも選ばれない。

・製品やサービスの開発には2つのやり方がある。
 ①マーケットドライビング型:顧客の声に耳を傾けず、自分の出したいものを出す。
 ②マーケットドリブン型:顧客の声に熱心に耳を傾けて、人々が求めるものを出すタイプ
・トヨタやフォルクスワーゲンは前者で、BMWは後者。しかし、BMWも顧客の声を全く無視するのではなく、「マクロの顧客の要望」が今後どう変わるかについては研究している。


本書は、時代の変化の3区分、耳を傾ける傾けないの違いがポイントであると思います。

この2点だけ知っておけばよいでしょう。

2010年4月28日水曜日

給料の3倍稼いで1人前の意味は?

よく「給料の3倍稼いで1人前」といういいかたをします。

これを簿記的に考えてみます。

決算書を判断する指標として労働分配率があります。

労働分配率とは、人件費÷付加価値で割り出した比率で、中小企業では業種によって違いがあるものの、黒字企業の平均はだいたい50%台前半から60%ちょっとぐらいの間です。

ここで人件費=給料ではありません。

給料のほかには会社負担の社会保険料、忘年会等の各種イベントや小さいところでは茶菓子などの福利厚生費などのほか、採用費や教育研修費なども人件費です。

ですから料÷付加価値でみるならば、おそらく40%台ぐらいになっているでしょう。
つまり黒字企業では社員が平均して自分の給料の2倍ちょっと稼いでいるというわけです。

しかし、新入社員等は自分の給料分の貢献をすることはまずないでしょうし、パートさん等も自分の給料分、つまり1倍程度の貢献しかしていないでしょう。

中小企業では一定の比率でこうした生産性の低い人たちがいるわけですから、「一人前」と呼ばれる人たちは彼らの分まで付加価値を稼いでこなければならないわけです。

その数値は平均である給料の2倍強よりは間違いなく高くなるはずですから、慣用的に「給料の3倍稼いで1人前」という言い方がでてきたと思われます。

ですが3倍稼ぐ1人前の人であってもおごってはいけません。

なぜなら、こうしたビジネスパーソンが成果を上げるためには会社の仕組みや、社内の多くの人たちのバックアップに依存しているからです。

雑用をこなしてくれる人が社内にいます。自分の名前だけでは飛び込めないような会社に「○○会社の山田です」と名乗れるために訪問が可能となります。高額な機械やシステムも会社が用意してくれています。営業車もあります。

こうしたことを考えると自分ひとりだけで3倍の成果を上げたわけではないことは明らかです。

逆に1人前のレベルに達していない人は自身が3倍稼いで業績に貢献する側に回ることを目指さなければなりません。

少なくとも平均的には2倍強の付加価値を全社で上げなければ黒字にはならないわけですから。

また自分自身で成果を上げない職務にある人は、成果を上げる人に対してどのように貢献できるかを常に考えなければなりません。

ドラッカーは成果を上げること、それに貢献すること重視していますがこういうことであると思います。

2010年4月27日火曜日

閑話休題-雑誌取材

今日は地元金融機関が年に1回発行している雑誌の「経済セミナー」というコーナーの取材がありました。

本来、地域経済について語るコーナーなのでしょうが、私はエコノミストではありませんからそちら方面のコメントは控えめにしました。

その代わり、このブログで検討しているような「ドラッカー経営」的な原則について具体例を交えて説明することにしました。

インタビュアーの記者さんがtたまたま私の出身大学の先輩であり、しかも学科まで同じであることがわかりました。そのおかげもあって話がとても盛り上がり、3時間ほど話し込んでしまいました。

記者さんは以前は自動車業界の専門記者であったそうで、逆にいろいろなエピソードをうかがって勉強になりました。

また当社オリジナルの「2S直角平行」による環境整備はカメラマンさんが興味をもたれたようで、何枚も写真にとっていかれました。

いったいどの写真が使われるのか楽しみです。

雑誌原稿-簿記再入門

今、ビジネス雑誌の別冊で管理者向けの簿記再入門の原稿を書いています。

会計専門家ですから、比較的決算書を読むことは多いわけですが、財務担当者ではない管理者が知っておくべき簿記や決算書の知識は何がよいだろうかと思うと中々悩みます。

また執筆期間が10日に満たないという超緊急の依頼であったため、時間の制約にも苦しんでいます。

しかし、新たな目で簿記を見直す良い機会となったと思います。

全部で10項目、32ページの内容ですからある程度焦点を絞りました。
いくつか選んだポイントを上げる

・粗利益率の意味-ビジネスモデルのもうけの構造
・運転資金の意味-黒字倒産する理由
・値引きは安易にしてはいけない理由
・「給料の3倍稼いで1人前」の簿記的意味

などです。

例えばビジネスシーンで「運転資金」をいう言葉をよく使っていても、その金額の求め方を知らなければ管理者としては困るであろうとか、人の働き方の効率性の簿記的意味であるとかを知っておけば便利かなと思い、項目を決めていきました。

また原稿が仕上がったらご紹介したいと思います。

2010年4月26日月曜日

ずさんさと怠慢

「 コンサルタントの仕事を始めたばかりのころ、私は製造についての知識がなく、マネジメントされた工場とそうでない工場を見分けられなかった。
だがすぐにマネジメントが行き届いた工場は静かであることに気付いた。逆に騒然とした工場はマネジメントされていないことを知った。
良い工場は見た目には退屈だった。混乱は予想され、対処の方法はルーティン化されている。
そのため劇的なことは何も起こらない。 」 (『プロフェッショナルの条件』より)

これはドラッカーが標準化の必要性について語っている文章です。
一見すると何の変哲もないというところがみそでしょう。

ドラッカーは「繰り返し起こる混乱は、ずさんさと怠慢の兆候である」とも述べています。

常に静かである事業所というものはないと思います。

一定水準を達成したつもりの事業所であっても、状況が変化すれば「騒然とする」に違いありません。

しかし、それは改善が必要になったというシグナルと考える必要があるということです。

2010年4月23日金曜日

ホウ・レン・ソウの考え方

ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)はビジネスパーソンの基本行動といわれています。

新入社員のころに習うものですが、延々と課題であり続けるのもこのホウレンソウの特徴でしょう。

リスクマネジメントの観点からは次のように考えられると思います。

以前、ヒヤリ・ハットをしっかり認識させ、その対策をとり続けることがリスクマネジメントの基本であると書きました。

そこから「ヒヤリ・ハット報告や改善提案の少ない人はいつか大事故を起こすだろう」という原則が引き出されました。

ホウレンソウもそこに結びつけるとより活性化するのではないかと思います。

ホウレンソウについてヒヤリ・ハットやちょっとした気づき等をださせるには「問題ありません。特別なことはなにもありません。」という報告に対して責任を持たせるとよいと思います。

「問題ありません」という報告があったにもかかわらず、事故やトラブルが発生した場合、ヒヤリ・ハットを見逃した可能性が高いと想像できます。

ですから「問題ありません」という報告に対して「将来的に問題が起きないことを自分の責任において保証する」という意味を持たせるとよいわけです。何かあれば自分の責任であるということですね。

このように責任の所在を明確にしておけばホウレンソウというものの重要性が改めて実感されると思います。


私は今まで仕事をしてきて、完ぺきな仕事ができたことは一度もありません。
また、仕事に関してすべての要素を把握しているわけでもありませんし、それらが今後どのように変化していくかも不確実です。

ですから「問題ありません」という人は必ず何らかのリスクを見逃していると考えてよいと思います。

1つの仕事、面談、会合においてはかならず成果かヒヤリ・ハット(リスク)か改善提案を最低一つは見つけることを習慣化するのがいいのではないかと考え、当社の日報記入法の原則としています。


たとえばお客様と1時間面談して報告内容が「特になし」という場合、その1時間は浪費であったと自己申告したということです。
またいつもやっている仕事について特に改善をしなかった場合には、その仕事の付加価値は以前より低いと考えるという基準もあります。



ドラッカー経営では、ビジネスパーソンは自己管理が基本となってきます。

しかし、それは自分の成果を自分で説明できない限りきちんと仕事をしたといえないという厳しい考え方を伴います。

ドラッカーは、ビジネスパーソンに対して厳しい成果達成を要求します。それは単純に売上を上げるというだけではなく、リスクを減らす、生産性を上げる、など色々な側面があるわけです。

そのどれでもいいから自分で説明のできる仕事ぶりが求められるのです。

2010年4月22日木曜日

時間を管理する

ドラッカーの仕事のマネジメント論の一つの柱が時間管理です。

ドラッカーの時間管理論はテイラーの科学的管理法をホワイトカラーに当てはめようとして編み出されたものといわれています。

テイラーは、作業者の動作をストップウォッチを使って細かく分析し、標準的な作業を設定することで能率を最大化しようとした人物です。ドラッカーはテイラーの業績を最大限に評価しているのです。

ドラッカーの時間管理論とはおおよそ次のようなものです。

・成果を上げるものは仕事からスタートしない。時間からスタートする。
・何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。
・時間を記録し、管理し、まとめるという3つの段階が成果を上げるための時間管理の基本。

成果の限界を規定するものは最も欠乏した資源である時間
・時間は借りたり、雇ったり、買ったりできない。時間は簡単に消滅し、蓄積できず、すぎ去ったら決して戻らない。だから時間は常に不足する。
時間こそが本当の制約条件

・仕事で少しの成果を上げるためにでもまとまった時間が必要。細切れの時間では全く意味がない。時間は大きなまとまりにしなければならない。
・部下に肝心なことをわからせるためだけでも1時間はかかる。15分で理解させることはできない。

・知識労働者には自分で方向付けをさせなければならない。
・組織が大きくなるほど実際に使える時間が少なくなる。

・時間の管理のためにはまず時間を記録する。具体的方法は何でもよい。

・次に体系的な時間管理をする。
・①成果を生まない仕事を見つけて排除する。
・②他の人でもやれることは何かを考える。自分があげるべき成果を考える。
・③自分でコントロールできる時間の浪費の原因を取り除く。

・標準化する。それは判断力のない人間に天才的な人間と同様に仕事をさせる方法。
・繰り返し起きる混乱はずさんさと怠慢の兆候。
・システムの欠陥による時間の浪費、人員過剰からくる時間の浪費、会議の過剰による時間の浪費

最後に自由になる時間を大きくまとめる


タイムマネジメントの本はたくさんありますが、ドラッカーはその初期を形成する人の一人であると思います。

2010年4月21日水曜日

財務について-Ship勉強会

Shizuginshipのゼミナールに参加してきました。

テーマが財務ですから私にとっては専門分野になるわけですが、この場合、各業種の経営者の方たちの実感を聞くことができる点でとても勉強になりました。

ゼミナールはコンサルタントの二条彪氏が作成した小冊子を話題に行われます。


いくつか興味深かった事柄をまとめてみたいと思います。


・決算書に乗っている資産に余分なものがないか精査が必要。自社しか使えない機械等はほぼ評価¥0と考えるべき、土地も時価換算するとかなり悪いはず。
・在庫の実態にはとくに注意。
・金融機関は何を重視しているのだろうか。財務も大事だが経営者の人物・力量に注目している。

・無利子の金を借りない。身内・友人からお金を借りると人間関係を失う。保証も同じ。 (自分なら友達に金を貸すか貸さないかで議論が盛り上がる)

・経営活動にはお金を投入するのは不可欠。だが、その使い方が問題。厳しい業種にあっても適切に資金投入し、手早く回収して健全な財務を実現している企業もある。
・中小企業はもともと無駄を絞っている。コスト削減は無意味。何に対して投入しているかが大事。厳しい時でも未来投資を。

・最大の無駄は時間の無駄。しかし、このムダはなかなかなくせない。ヒトは自分の仕事を一生懸命やっているように見せたがるもの。見かけだけではムダかどうかが見えない。
・仕事が薄くなると作業が間延びする。景気が戻ってもかつての能率・生産性は取り戻せない。

・いかにして仕事が薄い時にも生産性を落とさないようにするか。
・ヒトの問題は難しい。なかなか良い人材が集まらない。


座談会形式ですので話があちこち飛びますし、上記の内容の他にもおもしろい話もたくさんあったのですが、差しさわりのない範囲でまとめると手短になってしまいました。

しかし、こうした肩ひじ張らない勉強会はなかなか良い感じです。

2010年4月20日火曜日

キリンとサントリーの統合問題

週刊東洋経済2010.4.24号にキリンとサントリーの統合失敗の分析が載っていました。

キリンはshizuginshipでよくプログラムが組まれるので私としても興味のあるところです。

統合失敗については文化の違いであるとか色々あると思います。しかし、現在の経済環境下ではあらゆる業界において統合問題が出てくると思いますので、その点に絞ってまとめてみます。




・キリンとサントリーの統合目的はグローバル競争で勝ち残るのが目的だった。
・日本のビール会社の採算性は低く、海外勢と比べると見劣りした。 -アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)の営業利益率27.8%に対してキリン5.6%(酒税抜きで6.6%)
・キリンとサントリーはここ数年海外事業を強化していた。経営統合すればより大きなM&Aも仕掛けることができた。


・サントリー佐治社長「日本のビール会社の営業利益率は低すぎる。せめて10%はほしい」
・キリンの営業利益の7割強は国内依存。サントリーは8割強。
・某アナリスト「海外に打って出るにしても、その担保となる国内でしっかり稼ぎ続けなければいけない」


・低採算の元凶は国内の過当競争。
・日本の商品開発力は世界一といわれるが、世界標準で考えると不要なほどにレベルが高すぎる。まさにガラパゴス化している
・昨年来の不況の影響で、市場をけん引してきたお茶や水の需要が急減。加えてPBが台頭し、破格破壊が進行している


・飲料業界は数年以内に5社程度に絞られる
・統合すれば両者にとってメリットは大きかった。
・救済型の統合であれば救済されるほうが折れればよい、しかし、両社とも基本的には右肩上がりの収益であった。
・単独でも生き残れないことはないという現実が理想を跳ね返してしまった

2010年4月19日月曜日

ドラッカー流経営の2つのテーマ

私はドラッカー経営を大きく二つに分けてとらえています。一つは経営戦略・組織構築等に代表される会社全体のマネジメント、もう一つは、成果に焦点を合わせて目標管理させることに代表されるヒトと仕事のマネジメントです。

このブログでは当初のころは会社全体のマネジメントについて集中的に話題にしてきました。それはドラッカー経営実践のためのフレームワークとして発展が遅れている分野であると感じていたためです。


しかし、年明けぐらいからドラッカー経営、バランススコアカード、ポーター競争戦略論における活動システム概念をミックスさせるやり方を着想してからだいぶ骨組みがまとまってきました。今後はこの枠組みを精緻化していきますが、ときどき進捗状況を書いていきます。


そして、これからはどちらかといえばヒトと仕事のマネジメントについての話題を多めに行っていこうと思います。

ヒトと仕事のマネジメントについてはビジネスパーソン個人としての成果の上げ方という側面がありますので割合とまとめやすい分野です。
最近、この分野の著作も続々と出版されていますので、私も現時点における考え方をまとめていきたいと思うようになりました。

ヒトと仕事のマネジメントは奥が深いと思いますが、キーワードはある程度絞られます。

 成果  貢献  集中  強み 機会 知識

細かく言えばまだ色々あるのですが、あらゆる論点はまずこれらの主要な概念と照らし合わせて考えるというのが私流のドラッカー経営論です。
ドラッカー原則主義とでもいえるようなやり方であると思っています。

原則主義を採用する良い点は、難しげな経営手法を聞いて混乱しそうなときに、これらの言葉を使って評価することができるということです。

◇花王・後藤卓也元会長の講演会

先日、Shizuginshipの研修がありました。講師は花王の元会長・後藤卓也氏です。

ブランドづくりのうまさで定評のある花王ですが、後藤氏のお話はいかにも技術畑出身という地道なものでした。

以下、私のメモをまとめたものです。



花王の理念「よきものづくり」「絶えざる革新」「正道を歩む」
・理念をうたい上げた以上、長い視点が必要。
利益ある成果を続ける強くてよい会社であること

・適切な利益を上げる⇒どう使うか? 4つの使い道 ①次の商品開発 ②社員が安心して働ける会社づくり ③適切な株主との関係 ④税金を払う義務
適切な利益を上げることは企業の義務
・財務的安定性だけを目標にしない。定性的目標の大切さ。知的資産の中でも特に人的資源。
人的資源が最も大切

会社の強さは「どれだけ多くの人が主体的にモノを考え、実行に移していけるか?」にある
・バランスシートに表れてこない「社員のやる気」をいかに引き出すか
・事業がうまくいくには『総合力』を発揮できるかどうかがポイント
総合力‥‥ニーズ・ウォンツを発掘する力、具体化する研究開発力、生産力、物流、営業力、千電力‥

・花王のヒット商品の背後には屍累々
・失敗した商品には一連の流れのどこかに欠陥があった
・ラインも重要だがスタッフも重要

・社長にスポットライトが浴びがちだが、地道な仕事をこなす現場も評価する
・仕事はどんなに美辞麗句を並べてみても脇が甘いところがあればアウト
・深める(コア技術で勝負)⇒ 広める(蓄積が生まれる)⇒ 融合する(新技術が生まれる)⇒ 技術の多面的活用という好循環

・日本は高コスト体質。ひたすら同じものを作り続けていくというやり方はもう通じない。
・知恵が足りない
・「生産サイドには生産サイドにしかわからない工夫があるはずだ」
・大企業はオーケストラ型組織ではダメ、ピラミッド型組織でなければならない。

・中間管理職不要論はおかしい、絶対に必要だ
・メッセンジャーボーイのような中間管理職はいらない
・上に立つ人のパーソナリティが大切
・リーダーは大事、資質を持った人を探し出して育てる
・リーダーの宿命「自分を伸ばすのは自分しかいない」

・情報洪水の中で判断できる人であること
・フォロワーはどうするか?貢献を考えさせる
・社員に対して言うべきこと「あなたの夢を会社の夢に合わせてください」
・具体的な夢を持っていない社員こそ今の仕事に全力を尽くすべき

・オーナー社長には信念がある。サラリーマン社長である自分とは違っている。
・オーナー企業にはがんばってもらいたい、特に後継者育成は重視してほしい
・ヒット商品が生まれるコツは好奇心だけ-「こんなことができたらいいな」
・最近は健康に関するもの以外にあまりアイディアが出てこない

・イノベーションのもとは継続的改善
地道な活動を全体最適を目指して行う
基本の徹底、健全なる危機意識が大事
「凡を極めて非凡に至る」
・リーダーが毎日同じ話を繰り返しするのは、できていないからとあきらめずに訴え続けるから


こうした考えについては、後藤氏は長年の経験から帰納的に原則を見つけ出されたようで、特に影響を受けた人物や書物はないということでした。

2010年4月17日土曜日

神田昌典氏の営業力強化法

人気マーケッター神田昌典氏が週刊ダイヤモンド2010.4.10号において営業の極意について説明していました。
肉食系営業と草食系営業を対比させている点が面白かったです。概要を書きます。



バリバリ押しまくる営業が「肉食系営業」、相手をほのぼのさせるのが「草食系営業」である。
この二つの選び方は自分の性格で考えるのではなく、商品の複雑さとお客様の見込み度に応じて使い分けなければならない。

まず複雑さについて売る商品が決まっている場合は低いと考えられる。例-一般的消費財、生徒募集、ジムやエステサロンなどの会員募集等。
逆にお客様の個別ニーズに応じてテーラーメードしなくてはならない企画提案型商品は複雑度が高い。例-保険、住宅等

一方、見込み度はお客様がその商品を購入する可能性が高いかどうかで判断する。

商品の複雑度が低く、お客も内容を理解していて、かつ見込み度が高い場合には悠長に営業をしていては売れるものも売れない。見込み度の高いお客様にはバリバリ押していく肉食系営業が向く。

反対に見込み度が低い人にはがつがつ売り込んでも嫌われるだけなので草食系営業が向いている。まずじっくりとお客様の話を聞くところから始める。

ただし、時代の流れからいって営業アプローチは肉食系から草食系へとシフトしていっている。

消費者が商品を購入するプロセスは次のように仮定される。

 関心を持つ⇒ 欲求が芽生える⇒ 記憶する⇒ 行動する

今の消費者は関心を持ったら営業マンに接触する前にネットで検索する。
さらに、行動(購買)した後にはメール・ブログ・ツイッターなどで購入した商品の情報をお互いに共有する。

関心から欲求を高め行動へとつないでいくという営業マンとして最も力量を問われる部分がネットに代行されてしまっている。バリバリ営業の環境は失われつつある。

これからはネット上で広告を打つことが重要。そのためには「You Tube」などをCMとして使うとよい。

You Tubeがマーケティングの主要ツールとなったとき、営業マンに求められるスキルは二つ。

①講師スキル :ブレゼンの映像をネットで流すので話す内容、話し方を魅力的にしなければならない。
②「ジャパネットたかた」化 :他社と同じような商品を扱っているのに売れているのは、社長や社員が画面を通じて商品のストーリーを語るから。


しかし、営業マンのすべての仕事がネットで代行されるわけではない。お客様それぞれの要望に適切かつ迅速に対応することは一層重要になる。

30分の面談をする場合、商談が終わった時点お客様にどんな気持ちになってもらいたいか、どんな言葉をかけてもらいたいか(成果)を想像してみて、相手をそのような状態に持っていくために自分は何をするべきかを考える。





言われてみればその通りという単純な話です。
しかし、営業というものの基本特性の変化を意識することと、目的を具体化して正しい打ち手をとるというマネジメントの基本が簡潔に表現されていると思います。
You Tubeの重要性については私も感じるようになっています。

2010年4月16日金曜日

◇「時代を超えて生き残るビジネス」金子哲雄氏講演会

地元の浜松信用金庫の経営者勉強会の総会でTV等でおなじみの流通ジャーナリスト・金子哲雄氏の講演会がありました。

TVでもわかるようにかなり個性的な人物で、迫力満点の話振りでした。またその話も示唆に富んだものでした。

わずか90分の講演で、私のメモが手帳で16ページにも及んだことからみても、中身の濃さはお分かり頂けると思います。



そのうち知っておくと役に立ちそうなものを列挙してみます。

・おみくじの原価は1~2円、それを神社では100円で売っている。
・ラーメンチェーンの幸楽の餃子(5ケ)の価格は220円だが、その材料原価は25円
・伊勢名物の赤福の原価は1ケ7円、10個で70円のものを700円で小売している。
・ヤマザキのパンの原価率は25%

300年以上続く企業のビジネスモデルは『暴利多売』
長命企業の特徴は高い利幅

・欧米ブランドは新商品を王族・セレブに無料でばらまく。「セレブご愛用」の肩書を付ける。
・ハーレー・ダビッドソンは無料でバイクをハリウッドスターに配る。乗ってる写真が世界を駆け巡る。
・ヴィトンのバッグの原材料費は1%
・ベンツの原価はトヨタより安い。

欧米のビジネスモデルは「いかにしてぼったくるか?」

・家電量販店の売れ筋商品のTVやDVDの儲けは値引き合戦でほとんどゼロ。実は定価で売っているコードやケーブルで儲けている。コード・ケーブル量販屋というのが本質。だがTVやDVDがなければコードやケーブルを買いに来こない。

集客商品「客を呼べるが儲からない商品」、収益商品「儲かるが客を呼べない商品」
自社の集客商品をすぐに3つあげられない会社はダメ

・コンビニ商品のほとんどは集客商品、収益商品はレジ回りに集中的におかれている。
・ヴィトンで一番もうかる商品は端切れを利用するキーホルダーやストラップ。屑が金にかわる。
・コンビニのコピー機はゴールデン商品(集客商品で収益商品)。コピーするほど原価が下がり儲かる契約をメーカと結んでいる。しかし、コピーしか置いていなければ客は来ない。ついでに買い物できるからこそコピーしに来る。

・築地市場で魚の廃棄は1日ダンプ10台分だった。それをただでもらってすり身にしておでんネタにして儲けて上場した企業が紀文。
・マクドナルドのハンバーガーは利益が出ていない。実はドリンクで儲けている。ハンバーガーが集客商品でドリンクが収益商品。
・サイゼリアのドリンクバー180円。実は1杯の原価はたった6円。ドリンクバーはほぼ丸々粗利となる。

・デパートの客は買い物を目的に来ていない。美術館・コンサート・食事等のついでによる人が多い。それを読み間違えて売り場面積を広げたデパートは売り上げを落とす。ついでに立ち寄ってもらっていると考えるべき。

付加価値をアップさせるためには一言付け加える 『魔法の一言』

・羽田空港の定食屋、サンマ定食が780円だったが、「釧路直送さんま定食980円」としたところ4倍も売れた。実は後者のほうが粗利も高かった。魔法の一言で利幅が増えた。
・吉永小百合のついでくれたビールと泉ピン子のついでくれたビールでは9割以上の人が前者をうまいと感じるらしい。


濡れ手に粟がヨーロッパ型ビジネスの基本。

多少こじ付け的なところもあったのですが、非常に目の付けどころがおもしろい人でした。
ブランディングとかマーケティングという観点に利益率という財務の視点を軽妙にブレンドさせているので、聞いていて全く飽きがきませんでした。

2010年4月15日木曜日

日報の書き方-日常業務の成果と貢献

多くの会社では日報を活用していると思います。

そこに何を書くべきかについては会社によって色々な考え方があるでしょう。

当社でも日報を使っていますが、それについて私は次のように考えています。

ドラッカー経営の視点からいえば、日報に書くべき内容は成果貢献になります。
しかし、毎日成果を上げることは難しいですし、貢献も特定しにくい側面があります。
そこで、成果や貢献に間接的につながる行動を記述することが必要になると思います。

数日前にご紹介した週刊ダイヤモンドの記事もその一つのやり方といえます。


しかし、定型的(作業的)業務についてはもうひと工夫必要です。

私はその人が頻繁に行う業務については、まずその業務が同じ仕事を行っている平均的水準より優れているか自己評価してもらうことがよいと思います。

その客観的証明として、普通のレベルの人が見落とす些細なリスクを書くことができるかで判断できると思います。

また、その業務を行うに当たっていつもと違う状況になっているのならば、それを書くことができればその注意力は水準以上と考えられます。

業務が顧客との対応を含むものであるならば、顧客の微細な変化や新しい情報などに気づくことも水準以上の取り組みです。

こうした要素が全く書かれていない場合、その仕事は並みの水準であり「目立った成果や貢献無し」と判定せざるをえません。


 「平凡な仕事はほめることももちろん、許すこともしてはならない」(ドラッカー)


これは常に抜きんでた仕事をしろということではなく、すべての仕事を平均的なレベルよりわずかでもよいから高めなさいという意味です。


私は本人が意識できない貢献は貢献ではないと考えています。本人が自覚的に行ったわずかな行動が日常業務における成果や貢献といえる部分なのです。日報にはこのわずかな部分を書けばよいのです。

小さな貢献を日々積み重ねている人は中長期で大きな貢献を行う人と考えられます。

日常業務において小さな貢献をほとんど行っていない人には大きな成果を期待できないと思います。

ドラッカーはビジネスパーソンの目標管理は自己管理であると述べていますが、それは自分自身で成果を出すプロセスを管理するという意味です。

2010年4月14日水曜日

サービス業務の品質-リスクマネジメント型の品質管理

当事務所は品質ISO(9001)のフレームワークを基本に業務ルールを作っています。

専門サービス業の業務品質を定義することは難しいのですが、私はリスクマネジメントの視点から定義をしています。

やり方としてはまずアクシデント(事故)を定義し、そのリスクをコントロールしようとするものです。

アクシデントは次の3段階に分けています。

レベル3‥最大級の損失の発生

レベル2‥相当程度の事後対応が必要

レベル1‥具体的に問題と認識できる事態の発生

品質目標をそれぞれのレベルに対して設定するのが品質管理の基本となります。
ただ、それだけでは受け身になってしまいますので、もう一工夫しなければなりません。

それがヒヤリ・ハットの管理です。

ヒヤリ・ハットというのは、アクシデント(事故)発生すれすれの事態を指します。

労働災害分野にはハインリッヒの法則という有名な原則があります。

大事故1件が起きるまでには小事故29件ヒヤリ・ハットする事態が300件発生しているというものです。
この原則を使うと明確なリスクマネジメントが可能となります。


つまり、ヒヤリ・ハットを適切に認識して、その時点で同じことが二度と起きないように具体的な対策をとります。対策をとったヒヤリ・ハットについては大事故が起きない理屈になります。

しかし、同じ結果を起こすようなヒヤリ・ハットがまた起きたら、その対策では不十分であったわけですから、さらに別の対策を講じます。
これを継続的に行っていれば、大事故発生以前のヒヤリ・ハットの段階でリスクを抑え込むことができるわけです。

日報などによってヒヤリ・ハットを継続的に報告してもらうことをルール化しておけば、細かい改善を行うことも自動的にルールとなるわけです。

ヒヤリ・ハットとは一言でいえば「異常」のことです。

人間の行う作業では必ず異常なことが発生します。しかし、一見するとささいな出来事なので、スキルの低い人は流してしまう傾向があります。

こうした傾向を持つ人は「問題ありません」という発言の多さや日報への記載内容からすぐにわかります。

「問題ありません」という報告をずっと続けている人は、突然レベル2や3のアクシデントを発生させる可能性があると考えられます。


ここから、「問題ないのは大問題」という原則が引き出されます。


これが当社の考えるリスクマネジメント型の業務品質管理の基本思想です。

この考え方はISOにもかなり役に立ちます。

2010年4月13日火曜日

織田信長のマネジメント力-軍事費用

信長は最晩年において、常時10万人の軍勢を動かしていました。

この軍勢の維持コストを考えてみたいと思います。

津本氏によると、10万人の軍勢の1か月の食費は1万5千石であるそうです。
信長は他の戦国大名と違って、常備軍を持っていましたから農閑期に軍事行動を休むということがありません。したがって年間の食費が18万石になります。

この他に彼らの給料が少なく見て一人2石で、合計20万石です。

その他、馬の飼料他諸経費が相当額かかっていると考えると、軍隊の経常費用は年間60~80万石程度であると考えられます。その他、非経常費用が50~100万石はかかるでしょうから都合、110万石~180万石を年間軍事費用と推定しました。

京に上ったころの信長の軍事費用と比べてみても、石高との比率はだいたい実効税率約50%、sらにその税収の40~50%弱が経常コストとなっていると考えられるわけです。(晩年の総石高700万石程度とみる)

他にも安土城を作ったり、いろいろな経費を使っていますから、商業勢力からの軍事費用(矢銭)の徴収や土木事業についての諸大名への割り当てが相当あったと考えられます。


また、軍隊の経常的な維持コストはどの大名でも基本的に同じであると考えられます。

すると、武田信玄が最晩年に京に上るとき、その子供の武田勝頼が長篠の戦の際に動かした軍勢の費用は甲斐・信濃の2国しか持たない武田軍にとって長期的行動が不可能であることが割り出せます。

信長は信玄と家康が浜松で戦った際に(三方が原の戦い)は、あまり援軍を送っていません。
信玄の軍は3万人ですから、1か月の軍事費用が少なくとも1万石はかかります。

しかも食料については甲斐の国から運んでこなければならず、3か月分の食糧1万5千石を運ぶロジスティックスを維持することは困難であると考えられるわけです。経済的に言って、信玄は京都に上って軍勢を維持することは不可能であったといえます。

食費・人件費・その他諸経費だけに注目するだけで、戦国大名の可能な行動範囲を割り出せるという視点は津本氏独特のものと言えるでしょう。ちなみに、10万人の食費とロジスティックスに着目する点は津本氏の考えですが、あとの計算は私がフェルミ推定に基づいて行いました。

信長の天下統一活動をコスト計算してみると色々なことが分かってきますね。

2010年4月12日月曜日

ドラッカー経営のアクションシート

週刊ダイヤモンドのドラッカー特集で、1週間の活動を検討するシートが掲載されていました。

一般的に「マンダラチャート」と呼ばれる縦横3マスずつのマトリックス・シートの中央に「今週は何点だったか? 今週を一言で表現するとどうなるか?」という問いの答えを書く欄となっています。それを埋める前にその判断材料となる8個の要素を書くわけです。

その8個の要素とは以下のようなものですが、それぞれドラッカー流の仕事の管理法のカギとなる視点を集めています。


成果‥今週の具体的成果は何ですか?
集中(アクション)今週集中してやったことは何ですか?
廃棄‥今週やらなくてもよかったことは何ですか?
学び‥今週学んだことは何ですか?
出会い(外への貢献)今週の価値ある出会い、貢献は何ですか?
機会(情報)今週の有益情報・機会は何ですか?
・アイディア・ひらめき‥今週のアイディア・ひらめきはなんですか?
改良・変革(勇気)今週改良・変革・勇気チャレンジしたことは何ですか?

これは、なかなか良くできています。当社の日報では、外部(顧客)との合意や気づき、社内での合意や約束、ヒヤリハットカイゼンという3つのブロックで報告することになっていますが、上記視点はそのための切り口として有益であると思いました。

当社(TMA)の目標管理シートの使い方

当社では月間目標管理シートというものを使っています。

これはドラッカー流の目標管理を実践の場で使えるように工夫したものです。


まず、目標管理を年サイクルではなく月単位で行うこととしています。
年サイクルは、経営環境が変化しやすい昨今では現実的ではありません。アクションプランについてある程度見通すことができるのは1カ月であると考えています。

目標は完全に自己管理です。通常行っている業務ではなく、その月にチャレンジしようと思うことを5つ以内で選び、その目標について期待する成果を書いておきます。
そして1か月後に結果を評価し、期待と見比べるという作業をするわけです。

このシートは1年間に12枚たまります。そこに書かれたものがその人が計画し実行した結果のすべてというわけです。成果を本人に「見える化」してもらう仕組みです


また、このシートの下半分は、「予期せぬ出来事」を書く欄になっています。

これはドラッカー経営独特の表現ですが、普段から深く、細かく仕事について考えて、自主的に次々と手を打つ人には次々と予期せぬ出来事が起きます。

そしてその予期せぬ出来事こそその人の「強み」を現すものと考えられるのです。この予期せぬ出来事のうち成果と言える部分にランク付けし、3つの段階で★をつけるようにします。

すると1ヶ月間に色々なことが起きる人もいれば、ほとんど何も起きない人に分かれてきます。
これによって普段の仕事の取り組みの深さが「見える化」されてきます。

ドラッカーは成果を上げるのは各ビジネスパーソンに課された責任であると考えています。ですから全社目標に照らして自身が最大限に成果を上げられるように個人目標を設定するのが基本になるわけです。

そしてそのプロセスは各人が可視化する義務を負います。自身が明らかにできない成果は組織として認識できません。その結果については本人にフィードバックする仕組みを作ります。

この目標管理シートは試行錯誤をしている最中ですので、またさらなるレベルアップを図る予定です。
ただし、この書式であってもドラッカーの意図は十分体現していると確信しています。

ドラッカー特集 -週刊ダイヤモンド

週刊ダイヤモンド2010.4.17号では大々的にドラッカー特集が組まれました。

なんと40ページに及ぶ大特集です。

表紙も、前に書評で紹介した『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』そのままです。

インタビューには人気アイドルのAKB48のメンバーが選ばれる等、ビジネス系雑誌としては破格の取り上げ方といえます。

ドラッカーの人生を詳細に取り上げた年表やら、日本の経営者に及ぼした影響やら、果ては現在ドラッカー経営を推進している中小企業経営者をたくさん取り上げたりという点で、今後のドラッカー経営の発展を予感させるものでした。

私も急ぎ内容を咀嚼し、改めてご紹介したいと思います。

2010年4月9日金曜日

織田信長のマネジメント力-鉄砲の値段

京に上った信長は、突如、越前の朝倉氏を攻めます。しかし、背後にいた浅井氏の裏切りに会い、散々な負け戦となりました。
その後、改めて浅井・朝倉連合軍を姉川の戦いで撃破しました。36歳の時です。

そこから信長の苦難の戦いが始まります。浅井・朝倉の他、比叡山、石山本願寺、武田信玄、摂津の三好三人衆によって包囲網が形成されました。

さて、信長の経済感覚についてのエピソードです。


後の長篠の戦いが有名ですが、すでに姉川の戦いのころには信長は鉄砲を1500丁ほど所有しており、有名な3段撃ちも行っていたようです。

鉄砲隊を3つのグループに分けて次々と撃たせるので、戦場では常に500発の弾丸が敵に注ぎこまれるわけです。

津本氏は慶長年間の鉄砲の値段が1丁9石であったことから、生産力の低かった姉川の戦いのころの値段はその倍の18石ぐらいであったと推定しています。

そして、足軽一人の年収は2石弱でしたから、鉄砲1丁は足軽10人分の年収に相当すると述べています。
つまり現代風に言うなら鉄砲は高級外車とほぼ同じ値段であるというわけです。鉄砲の効果に疑問を持つ武将が多かった中で、それを1500丁も購入する信長の着眼は鋭かったと言えるでしょう。

1500丁の鉄砲の値段はだいたい3万石弱ぐらいです。信長が京に上ったときの直接支配地が尾張(名古屋市周辺)と美濃(岐阜県)であるとすると石高約110万国です。そのうち税収50%として、さらに家臣に3分の2を配分しているとすると、信長自身の収入は20万石弱です。

おそらく他の商業に対する課税等が莫大な金額になると思いますが、それを考慮しても3万石も鉄砲に費やす大名は他にいないでしょう。

新しい戦術を生み出すことへの不退転の決意が表れていると思います。「リスクをとっている」ということですね。

2010年4月8日木曜日

故ドラッカーと経営学

書類を整理していたところ、日経新聞の2005年11月18日の経済教室の切り抜きが出てきました。内容はドラッカーの死去を受けての追悼論考です。

昨年はドラッカー生誕100周年でしたし、最近、ドラッカーの再評価が進んでいる状況ですので、改めてその内容をまとめてみたいと思います。

論者は、世界に通用する数少ない経営学者である一橋大・野中郁次郎教授でした。

まず、総論として次のように書いてあります。


11日に死去した経営学者ピーター・ドラッカー氏の最大の功績は「マネジメント」など組織と経営に関する新しい概念を生み出したことだ。それを可能にしたのは、科学的な分析にかたよらず、自らの多彩な経験に基づく直感を重視した、卓越したバランス感覚である。

以下、まとめていきます。


・ハーバート大のレビット教授(マーケティングの世界的権威)は「すべての西洋哲学はプラトンの業績の脚注にすぎないというが、それは経営学におけるドラッカーについてもあてはまる」と述べている。


・おそらく世界の企業経営者に最も読まれているのはドラッカーの著作である。


・しかし、内容の鋭さゆえに批判も受けた。彼は自身を文筆家と称し、著作は定理やモデル、脚注を取り入れるという学術的スタイルをとらなかったためジャーナリストにすぎないというのである。


・批判の多くはドラッカーの見解をきちんと分析したうえでの批判ではなく、その内容の先見性を見落としている場合が多かった。


・ドラッカーの最大の功績は、社会や企業の現場を冷徹に観察し、組織とマネジメントの概念を導き出したことにある。普通に使われている「経営戦略」「事業部制」「目標管理」「民営化」といった概念はドラッカーが生み出した。


・当時の先端企業GMにかかわった経験から『会社という概念』が書かれ、GEやIBMなど一流企業へのコンサルティング経験から名著『現代の経営』が書かれた。

・彼の出発点は政治学の分野であり「直観」による認識の重視はそこから来ている。彼の著作における鋭い分析は歴史学の知識と政治学の概念を基盤としている。

・政治学では分析能力だけではなく、文脈(状況)を洞察する「直観」力が重視され、多様な学問の成果を応用することが求められる。

・ドラッカーは社会現象の分析において「分析」と「直観」のバランスが卓越している。

・ドラッカーは高度経済成長期の日本とであって大いに触発されている。また、デミングやデュランらとともに日本企業の経営改善に大きく貢献した。

・ドラッカーが日本に親近感を抱いたことと、日本の歴史や文化が文脈依存で「感覚的」であることと無縁ではない。

・ドラッカーは企業を含めたあらゆる組織は社会的貢献がその存在意義であると一貫して主張している。そして利潤動機ではなく価値観・倫理が重要であると指摘する。

・市場原理主義者や効率優先の経営者が多い現状を容認せず、経営の本質とは何かを改めて自問すべきである。



以上が、野中教授による論評です。

私はもともと政治学を学ぶことからスタートしたのですが、大学入学当初、教授から「政治学は諸科学の王様である」と聞かされたことを思い出しました。

政治学は体系性が乏しく、大学新入生程度の知識では学問としての目的が見えにくいものでした。

またその後大学で読まされた本も、プラトン、マックス・ウェーバー、ホッブス、ルソー、モンテスキューといったように哲学・啓蒙思想・社会学の古典的名著が多かったのですが、「いったい、こんなもの読んで何の役に立つのか?」と当時は思ったりもしました。

しかし、こうした深掘りする読書の習慣ができたおかげでその後も哲学書や歴史書を抵抗なく読めるようになり、継続的に読み続けてきたことは今の仕事でも役に立っています。

現在、ドラッカーの著作を読みつつ、実務における現象を深く考えることを日々行うことが多くなったわけですが、かつての回り道のような読書が結局近道であったように思えます。

ドラッカーの体系も比較的難解とはいわれますが、上記の著作に比べたら情報雑誌並みの読みやすさです。

私がドラッカーを読んで、共感できる理由もその政治学的な背景にあるのではないかとふと思いました。

2010年4月7日水曜日

織田信長のマネジメント力-美濃奪取から京に上るまで

桶狭間で戦いに勝った時期の信長は、ある意味政治的・軍事的に比較的に安定している時期であったといえると思います。

しかし、そこに安住することなく強国の美濃(岐阜県)・斎藤氏との戦争に突入していきます。

信長が奪い取った美濃の岐阜城(稲葉山城)⇒



企業で言うならば、中堅企業になり経営の安定性はでてきたものの、隣町の同規模のライバル会社との競争を決断したといったところでしょうか。

以下、その頃のマネジメント・エピソードです。


・木下藤吉郎、滝川一益のような身分の低い人間や他国出身者を登用し始めた。

・美濃の征服に不退転の姿勢を示すため、国境沿いの山である小牧山に本拠地を移した。

・隣国の三河の領主である徳川家康と攻守同盟を結び、東からの脅威を取り除いた。

・尾張一国をほぼ手中に収めたころ、妹のお市の方を浅井長政に嫁がせ、美濃を挟撃する体制を作った。

・美濃の有力豪族を味方に引き入れ(調略)、本拠地の稲葉山城(岐阜城)を孤立させた。

・美濃攻略後、加納市場を楽市・楽座(自由市場)とし、商業の繁栄によって自身の政権基盤を安定させようとした。

・最大の強敵・武田信玄との間に当面戦争を起こさないような外交手腕を発揮した。

・京への通路である伊勢地方の平定のため、軍事・外交両面作戦を実行した。息子・信孝を神戸氏の養子とした。

・越前に亡命していた足利義昭を岐阜に招き、彼を報じて大義名分とし、大軍を率いて京に上った。

・信長は将軍となった義昭から堺、大津、草津に代官をおく許しを得た。いずれも交通の要衝であり、かつ商業地域であった。領地支配より商業支配を優先した。

・信長は近畿地方の支配地の関所を撤廃した。広範囲の商品流通圏を成立させる第一歩であった。

・信長に反抗的であった堺の町衆を屈服させ、非常に多額の軍用金を拠出させた。

・貨幣経済を浸透させるため、粗悪な貨幣を排除し、かつ米などによる物々交換を厳しく禁止した。違反者を出した町は全員斬られるという重刑であったため急速に政策が浸透した。

・将軍義昭を傀儡として扱う信長の態度により、将軍との関係が悪化した。

・南蛮人との接触により、西欧文化を吸収した。


尾張統一後の信長は、単に軍事的に優れた作戦を実行する以上に外交能力によって大軍を率いることができるようになっています。

また、そのために巨額の軍事費が必要となることから、資金調達について強く意識するようになっています。

こうして信長は競争に勝ち抜き中堅企業から大企業へと駆け上がったわけです。

マネジメントの悩みも運転資金の不足、新市場獲得、新製品開発などを大きなスケールで同時にこなさなければならない経営者といった感じになっています。

ベンチャー起業家として華々しくデビューしたみたいですね。


ヒト(人的資源)の不足は従来の門閥を打破し能力主義とすることや外交関係によって解消し、資金の不足は商業勢力との協調政策・恫喝政策によって乗り切ろうとしてるわけです。

他方、政治家・行政家としての活動も活発化しています。彼は美濃征服ののちに「天下布武」を表明し、はっきりと天下統一を志向するようになりますが、京に上ってのちは次々と具体的政策として実行しています。

(つづく)

2010年4月6日火曜日

織田信長のマネジメント力-桶狭間の前後

司馬遼太郎の本で信長が主人公であるのは「国取り物語」です。

補足的な小説としては「新書 太閤記」(豊臣秀吉)、「功名が辻」(山内一豊)、「播磨灘物語」(黒田官兵衛)、「覇王の家」(徳川家康)などがあります。

しかし、いずれも信長の尾張一国の統一戦についてはあまり詳しく書かれていません。


桶狭間以前の信長は尾張国内に同等規模の豪族・親族がいくつもあり、尾張における自身のリーダーシップ確立までについても相当苦労を重ねています。

この時期の信長は、個人事業的な小規模企業を継承し、地域内のライバルとの競争に悪戦苦闘する中小企業の経営者に似ているように思います。



信長の父・織田信秀は、尾張の守護大名・斯波氏の家来で守護代の織田氏のそのまた家来という小豪族でした。
突出した器量によって尾張の半分の支配力を持つようになっていたわけです。

しかし、信秀は信長がわずか17歳の時に急死してしまいましたので、以後、信長は10年にわたり尾張統一戦を戦い続けたわけです。
 

その間、守護代の織田氏との抗争、美濃の斎藤氏との戦い、弟・信行との権力闘争、柴田・林・佐久間ら重臣の謀反という修羅場を全て乗り切り、父と同様の尾張半国の支配権をやっとつかんだのがほぼ25歳の時です。
 ⇒尾張統一時の居城・清州城跡

争いがごく小規模なので、一般にはあまり知られていない時期ですが、その直面する問題の困難さは相当なものがあります。

現代でいえば高校生から大学院卒ぐらいまでの年頃にこの難局を乗り切ったのですから、その経営能力は抜群です。

そして27歳の時に桶狭間で今川義元を破ったわけです。

この間に、戦場での勇気、合理的戦法、外交交渉の巧みさ、経済観念の高さ、強烈なリーダーシップのいずれについてもなみなみならない能力を発揮しています。また、その能力は一貫して向上し続けています。

いくつかエピソードをあげます。


・今川の最前線の砦を守る武将について、偽情報を流して今川義元に信じさせて処刑させた。

・2倍の兵力を持つ今川方の武将と正面から戦って打ち破り、近隣の豪族たちを従わせた。

・商業地域の津島の商人たちから莫大な軍用金を徴収する代わりに各種特権を与えた。

・毎年、梅雨時に氾濫を繰り返す木曽川の治水のために強力な統一政権を求める農民層の支持を獲得した。

・家臣ではない豪族たち(蜂須賀小六等の川並衆)に知行の代わりに関所の自由通行権を与えて協力させた。

・3万の今川勢に対してわずか5千の軍勢で勝つため、最前線の砦をおとりとして使い犠牲にした。その代わり今川の軍勢の戦線を伸び切らせ、義元の本隊を孤立させて奇襲可能な状況を作った。

・桶狭間の戦いで勝利した信長は最大の功労者を義元を打ち取った武将ではなく、義元の本隊の位置情報をつかんだ武将とし、莫大な褒美を与えた。


このようにかなり若いころから信長は政治・経済・商業・軍事・情報管理について高度な判断能力を示していました。

(つづく)

2010年4月5日月曜日

織田信長のマネジメント力-「下天は夢か」

だいぶ前に小説家の津本陽氏が日経新聞で連載していた「下天は夢か」の文庫本板(一~四)を古本屋で偶然見かけまとめ買いし、読み直してみました。



織田信長の生涯を扱ったものですが司馬遼太郎とは違い、一貫して流れているのは信長の政策を経済原理的にとらえていることです。

司馬遼太郎と違って、ジャーナリスティックな書き方のため、小説としての魅力には少し乏しいのですが、歴史ファンが読むと「なるほど」という内容が多々含まれています。
アマゾンでみると、厳しい書評が多く載っていますが、ビジネスパーソンにとってはなかなか興味深い内容であると思います。

そこで、津本氏の著書を通じて織田信長の事績をマネジメントの観点から少し考えてみたいと思います。

今回、小説を読み改めて考えてみたのですが織田信長の人生は大きく分けると次のような段階があると思います。

1、尾張半国を継承したものの同族との激しい内戦を繰り返し、桶狭間で今川義元を打ち取るまでの時期

2、美濃を平定し、足利義昭を奉じて京に上るまでの時期

3、朝倉攻めによって浅井長政が裏切り、義昭も信長への不満から石山本願寺、武田、上杉などを語らって信長包囲網を形成し苦しめられた時期

4、武田信玄が死に、義昭を追放し、徐々に政権基盤を安定させ安土城を築いた時期

5、各方面に軍団を派遣し、天下統一に向かいつつあったのに本能寺で明智光秀によって滅ぼされるまでの時期

いずれの時期も信長は違った困難な課題に挑んでいるのですが、司馬遼太郎の小説は楽しく読めるものの、こうした内容を詳しく知るには不十分なものでした。

司馬遼太郎の小説ではさらっと触れているだけの戦いが非常に紙一重の状況であったりすることが津本氏の本ではよくわかります。

また津本氏の信長観は、さすがに日経新聞で連載していただけあって、経営レポート的な側面が多くあります。
たとえば武田信玄が家康を撃破したのち、京に来れなかった理由も経済的に示していますし、信長の態度もそれを読み切っているからとされています。その説明は目からうろこという感じでした。

また忘れてしまわないうちに何回かに分けて私が読み取った内容をお伝えしたいと思います。

2010年4月4日日曜日

◇学会活動(名古屋)

久方ぶりに日本会計研究学会の中部部会に出かけてきました。



今回の会場は名古屋大学です。



日本会計研究学会は、学会の中でも最大規模のもののひとつで、私はだいたい2年に1度のペースで全国大会で発表しています。

今回は地方部会ですが、報告は2件で、医療安全管理とIFRS(国際財務報告基準)実務の現状というものでした。


医療安全管理のコスト問題については、内部統制専門家として非常に興味があるテーマです。


また、IFRSは今後数年、すべての上場企業の財務実務を振り回すであろう題論点ですし、発表者が私の地元の有力企業・ヤマハ発動機の財務担当者の方ですので、一度聞いておこうと思っていました。

医療安全管理のコストはほぼ利益と同額になるという点で、今後、医療以外におけるコスト管理問題についても示唆に富むものでした。

IFRSは中小企業には直接影響しませんが、間接的には今後非常に大きなインパクトがあります。実務家の言葉の端々に、難題が山積みになっている状況がうかがえたので、わざわざ出かけた甲斐がありました。



名古屋大学は何度か門の前を通ったことがありますが、中に入ったのは初めてです。
国立大学特有の敷地の広さが気持よかったですね。

学会終了後に建物の外に出ると、ちょうど学生の帰宅ラッシュに行き当たったのですが、全体的に地味な学生が多いようでした。一昔前の学生といった感じでしょうか。

その後、NPO東海マネジメント研究会でご一緒している藤田泰正理事長と合流し、その恩師である米国在住の経営学者・経営コンサルタントの森田保男先生を囲む懇親会に出席してきました。

70歳を超えて国際的に活躍されている先生のお話は非常に勉強になりました。

また、先生を囲む多彩な顔ぶれの皆さんのお話もなかなかおもしろかったです。普段聞くことのできない話を聞く機会は大切だと感じた次第です。

2010年4月3日土曜日

鳩山政権の相続税構想

日経ビジネス2010.4.5号は相続税についての特集が載っていました。

相続税の問題は中小企業の事業継続性に直接かかわる大論点です。

ということで特に鳩山政権の相続制構想について簡単に説明しておきたいと思います。



・「自由主義国家が私有財産を否定するような制度を作ることは好ましくない。しかし、現状は昭和21年度なみの格差が生じている。「貧困の世襲」を直すという目的で、相続税制の見直しが必要。」(野田佳彦財務副大臣)

・「相続税」から「遺産税」への移行を検討中。つまり、相続財産から税金を天引きし、残りの財産を相続人に分ける仕組みにする大転換をしようということ。

・相続税の対象は現在、国民の4%程度だが、これを10~15%程度に拡大することを検討。

・1000万円以上の金融資産から一律5~10%程度を徴収することを検討。

・現在50%の最高税率を引き上げることを検討。



こうした鳩山政権の構想について日経ビジネスは、カナダ、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、マレーシア、シンガポール‥といった国には相続税がない点を指摘します。

これらの国が相続税を課さない背景には事業承継の妨げになってはならないという考えの他、広く海外から事業家や富を集めたいという目論見があるというわけです

民主党内にも、担税力のある個人や企業が資産課税のない香港やシンガポールに拠点を移していることを懸念する話が出ているようです。

しかし、それでも相続税増税の議論が避けて通れないという判断の裏には、消費税増税を国民に納得させるには、まず『金持ち増税』を行うという民主党の判断があるようです。

いずれにしてもかなり長期的ビジョンと大局観が必要であると思われますが、政権の基盤が揺らいでいる現状ではなかなか好手がみつかりにくいのではないかと思います。

2010年4月2日金曜日

一流になる力⑦

少し間が空きましたが、小宮一慶氏の「一流になる力」の最後に、補足的な原則を上げておきます。

・自分でコントロールできることには全力を尽くせ

現在の状況を他人のせいや不運のせいにして、自分ができる努力を放棄する人は自分の人生を主体的に生きているとはいえないことになります。

こうした考えの人は何をしてもうまくいかないだろうといいます。

・「仕事をコントロールしているか」という問いは「時間をコントロールしているか」という問いでもある。

時間を制する者は仕事を制するわけです。

・月間目標を立てることから始める。

月間目標を立てる→年間目標を立てる→より長期の目標を立てる。というのが適切な目標設定のステップであるといいます。
この考えは期せずして当社の考え方と一緒です。会社としては中期目標、年度目標を考えていますが、当社では目標管理の基本は月間目標においています。

2010年4月1日木曜日

書評 「ビジョナリー・カンパニー」

ジェームズ・コリンズ&ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』日経BP社、1995年 定価2,039円 


だいぶ昔の本ですが、1990年代の経営書としては5本の指に入る名著です。
私は、今、この続編を読んでいるので一度ご紹介しておきます。


著者たちは本当に優れた企業とそうでない企業を比較して、その違いをまとめています。以下、概要です。


・ビジョナリー・カンパニー(以後、VCと表記します)とは未来志向の企業、先見的な企業のことであり、同業他社から広く尊敬を集めている企業と定義される。

・VCの経営者は時を告げるのではなく時計を作る。つまり、組織を築く。

・素晴らしいアイディアは出発点ではない。VCの出発点は平凡な商品であることが多い。

・究極の作品は会社。VCは長距離レースで勝つ亀であってウサギではない。VCの創業者たちはどこまでも粘りぬいてあきらめない。

・カリスマは必要ない。VCの経営者には控えめで思慮深い人物が多い。

・基本理念を維持して進歩を促す。VCは単なる金もうけを超えた基本的価値観と目的意識を持っている。時間の経過とともに戦略・製品・組織などあらゆるものが変わっていくが、ただ一つ基本理念だけは変わらない。

・VCを構築する5つのカギ
  1. 社運をかけた大胆な目標を持つケネディが「月に人間を着陸させる」と宣言したことで計画は猛烈に前進した。
  2. カルトのような文化を持つ。VCは自分たちの性格・存在意義・達成すべきことを明確にしているので厳しい基準に合う社員だけが働ける。
  3. 大量のものを試して、うまくいったものを残す。ウォルマートが店舗の入り口に品の良い老人の「挨拶係」をおいたところ、万引きが激減した。
  4. 生え抜きの経営陣を持つ。ポイントは基本理念の継承。
  5. 決して満足しない。明日にはどうしたら今日よりうまくやれるのか」を常に問う。


ビジョナリー・カンパニーの著者のコリンズはドラッカーを尊敬しています。本のあちこちにドラッカー的な要素が垣間見られます。

また続編を読み終えたらご紹介します。