2011年5月23日月曜日

スティグリッツ教授の警告

週刊ダイヤモンド誌上において、ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ教授が原発事故と金融危機に共通するリスク問題を取り上げていました。


・原発事故も金融危機も専門家たちはいずれも「リスクは制御できる」と公言していた。

・金融界ではデリバティブやクレジット・デフォルト・スワップといった高度で革新的な金融商品のおかげでリスクは経済全体に分散させられるようになったと主張されていた。
・金融危機はかれらが社会だけではなく自分自身すら欺いていたことを立証した。

・統計学にはほとんどまれにしか発生しないが、発生すると途方もない影響が発生するというファットテール分布という概念がある。これは通称「ブラックスワン」と呼ばれている。

・金融業でも原子力産業でもこのブラックスワンを軽視してきた。

・われわれは稀にしか起きない出来事を評価する実証的基準を持っていないため、適切な判断ができない。
・特に自分の判断ミスの代償を他人が払う時には自己欺瞞に走るインセンティブが働く。

ここからスティグリッツ教授は金融業界、原子力産業それぞれのリスクを説明します。

・金融危機後の不適切な対処によって大手金融機関は「窮地に陥ったら政府に期待できる」とのモラルハザードに陥っている。過度のリスクテーキングを助長するインセンティブ構造は変わっていない。

・原子力産業も同様で原子力災害が起きた場合の社会的コストや未解決の核廃棄物処理コストの問題は隠れた公的補助金に支えられる。つまりモラルハザードを起こす。


とまあ、あまり明るい話ではありません。

ブラックスワンについては固めの本がでていますが、私はまだ読んでいませんでした。

これを機会に「稀にしか発生しないがいったん起きるとすさまじい被害の出る場合」(ブラック・スワン)について読まなければと思った次第です。


(浅沼 宏和)