2010年12月30日木曜日

『経営者の条件』②

続きです。知識と成果についてです。


・現代は知識を基盤とする組織の社会。組織社会では知識労働者は組織に貢献して初めて成果を上げられる。

・知識労働者は成果を上げるべく自らをマネジメントする。

・考えることこそ知識労働者の固有の仕事。

・知識労働者が生み出すのは、知識・アイディア・情報。


・知識労働者の生産物が意味を持つのは、他の労働者がそれをインプットとして何らかのアウトプットを生み出すとき。

・自らの知識・地位ゆえに組織の活動や業績に実質的に貢献すべき知識労働者はエグゼクティブ。

・知識労働者は意思決定をし、自らの貢献について責任を負う。

・ゲリラ戦では全員がエグゼクティブ。その状況にあるものしか決定ができない。


・エグゼクティブであるかは他人を管理しているかと関係ない。

・知識労働者は量やコストによって規定されない。成果によって規定される。

・「われわれの市場は何か」という基本的な問いを忘れると、衰退を招く市場の重要なサインを見逃すかもしれない。


・自らが成果を上げるよう意識的に努力しない限り、状況が彼らを無価値にする。

・医者はなすべき貢献が明確、しかし組織のエグゼクティブは違う。彼らはコントロールできない4つの現実に囲まれている。

①時間がすべて他人に取られる
②日常業務に忙殺される。成果と貢献に向けて働くことを可能にする基準が必要だが、日常業務にはその基準は見出せない。

③他人が彼の貢献を利用してくれなければ成果が上がらない。組織はヒトの強みを発揮させる仕組み。
④組織の中にいるという現実。組織の中には成果はない。成果はすべて外にある。


・人は少ないほど、組織は小さいほど、組織の中の活動が少ないほど組織は完全に近づく。

・最終的な決定権・拒否権を持つのは顧客。

・エグゼクティブは意識的努力をしないと組織内部に焦点を合わせる。しかも地位が上がるほど内部の問題に注意が向く。

・組織は存在することが目的ではない。外の世界に貢献することが目的。


・4つの現実は変えられない。だから成果を上げるための特別な努力が必要。

・仕事と成果を大幅に改善する唯一の方法は成果を上げる能力を向上させること。

・一分野で秀でる人は他分野では並みの能力しか持てない。


・成果を上げる方法を知ることこそが能力・知識という資源からより多くのすぐれた結果を生み出す唯一の手段。


(浅沼宏和)

2010年12月29日水曜日

『経営者の条件』①

「経営者の条件」の要約です。

本書は万人のための帝王学の書とも呼ばれています。ビジネス書のネタ本となっている確率が最も多い本の一つです。



・成果を上げる8つの習慣

 ①なされるべきことを考える
 ②組織のことを考える
 ③アクションプランを作る
 ④意思決定を行う

 ⑤コミュニケーションを行う
 ⑥機会に焦点を合わせる
 ⑦会議の生産性を上げる
 ⑧「私は」ではなく「われわれは」と考える


・①と②で知るべきことを知り、③~⑦で成果を上げ、⑧で全員に責任をもたらす。

・①なされるべきことは常に複数あるが一つに集中する。優先順位をつけてそれを守る。

・②組織にとって良いことを考える。組織にとって良いことでなければ、いかなる関係者にとっても良い話ではない。

・③エグゼクティブとは行動する者。どんな知識も行動に転嫁しなければ無意味。



・ナポレオンはアクションプラン通りに進めて勝利したことはない。しかし彼は史上例のない緻密さでアクションプランを作っていた。アクションプランがなければすべては成り行き任せとなる。

・④意思決定には4つの要素がある。実行責任者・日程・影響を受けるため決定内容を知らされるべき人・影響を受けなくても知らされるべき人。

・⑤コミュニケーションは重要。特にアクションプランについては上司・部下・同僚に示し意見を聞く。

・⑥成果は機会から生まれる。
7つのポイント 1、予期せぬ成功・失敗 2、ギャップ 3、プロセス・製品のイノベーション 4、産業構造・市場構造の変化 5、人口構造の変化 6、考え方・価値観等の変化 7、知識・技術の変化 


・⑦会議の生産性を上げる。会議の目的を決め、達成したら散会する。

・⑧トップが権威をもちうるのは、自らのニーズ・機会ではなく、組織のニーズと機会を考えるから。


・成果を上げるのは才能ではなく習慣。

・頭の良さと成果は無関係。成果は体系的作業を通じてあげる。


(浅沼宏和)

2010年12月28日火曜日

閑話休題-そうじをすると人生が変わる?

週刊ダイヤモンドに、日本初の「掃除小説」なるものの試読版がついていました。


志賀内泰弘氏の『なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?」がベースとなっているようです。


骨子は、掃除をすると色々と気づくようになり、それが仕事上の気づきとなるということです

これは当社の2S直角平行のコンセプトと同じであり、ざっと読んだ程度ですが、納得性がありました。

ちなみにお掃除重視で有名な2人の経営者の推薦の言葉が載っていたのでご紹介します。




イエローハット創業者・鍵山秀三郎

「ゴミを拾っていたら縁も一緒に拾っていた。その縁が運を開いてくれた。」


カレーハウスCOCO壱番屋創業者・宗次徳二

「掃除をやり続ければ人生が変わる。」


両者の言い分はいかにも東洋的です。しかし、私は掃除と成果との間にうまく説明できる論理があると考えています。

掃除、つまり環境整備と業績との相関関係は現場レベルではかなり信じられています。しかし、経営理論としては全く手つかずの領域なのです。

学問としての経営学の問題点は、経営者で共有されている常識の理論化すら行われていない部分が多々あることです。

当社では『2S直角平行』を切り口に掃除の理論化を進めていきたいと思っています。

『実践する経営者』⑦

経営者判断における注意事項です。


犯してはならない5つの大罪。

①利益幅と創業者利益を過信する大罪。利益幅を信奉すると競争相手に市場を提供することになる。利益幅と利益とは同義ではない。最大利益をもたらす利益幅こそ求めるもの。

②市場が受け入れる限度いっぱいに価格を設定する大罪。競争相手にリスクのない機会を提供することになる。

③コストを中心に価格を設定する大罪。有効な価格政策とは価格を中心にコストを設定すること。

④昨日の祭壇にささげるために明日の機会を屠る大罪。

⑤問題にえさをやり機会を飢えさせる大罪。最も成果を上げる人材を機会のある事業に投入し、とことん攻撃的に行動させている。


・今日の経営陣には明日の事業のための決定を今日下すという重大な責務がある。

・今日の経営の成果は主として明日のための準備として現れる。

・今日の経営成果が明らかになるのは明日である。だが高い確率で今日の経営を評価できる。以下の4つを見る。

①投資の結果を期待と比べる。

②人事の結果を期待と比べる。

③イノベーションの成果を期待と比べる。

④計画の結果を期待と比べる。


・計画とは今日の資源を明日のために使うプロセス。

・上記4つに優れた能力を持っていても、間違った事業を行っていては成果は出せない。

・5つの計器チェックによる自社の業績評価

①市場地位 :市場における地位の向上、低下、大事な市場でのシェア改善。

②イノベーションの成績 :イノベーションの成績は市場の地位にあっているか。

③生産性の成績 :各生産要素の生産性を別個に測定。ブルーカラー、事務職、スタッフ、経営管理者に分けて測定する。

④キャッシュフロー

⑤収益性 :3か月のローリング方式で経常利益を見る。


経営者にとって誤差は重要ではない。問題は絶対値ではなく傾向。トレンドを見ることが重要。


(浅沼宏和)

2010年12月27日月曜日

『実践する経営者』⑥

知識労働やコストについてです。


・知識労働の生産性をあげる4つの方法


①責任を持たせる。知識労働者のマネジメントは貢献に焦点を合わせるのだが、これがほとんど行われていない。

②貢献を評価させる。「この2~3年、会社を変えるどんな貢献を行ったか、今後2~3年で会社を変えるいかなる貢献を行うか。」について自ら評価・判断させる。

③本来の仕事をさせる。さもなければいかなる動機付けをされても燃えない。

④配置に力を入れる。


・知識労働者は強みを発揮できるところに配置する。

・肉体労働は加算できるが、知識労働者は二人いても倍はおろか一人前の仕事もできない。互いに邪魔になるだけ。

・あらゆる資源で最も高価なものは知識。学生時代に金がかかり、貢献どころか学習だけの新人時代に金がかかる。給与に見合うのに5年かかる。


・経営陣に昇進する可能性のない仕事はすべてアウトソーシングが普通になる。アウトソーシングこそ事務処理、保守管理、補助的仕事の生産性を向上させる唯一の方法。

・それらの仕事は社内で独占状態である。だから生産性を向上させる競争がない。


・マクドナルド創業者レイ・クロックは、店舗の生産性に手をつけたとき、スプーン、紙ナプキン、フライパンなどの一つ一つを設計しなおした。

・病院保守管理会社は生産性向上のために、ほうき、ちりとり、くずかご、シーツ、毛布に至るまで設計しなおす。

・フレッド・スミスがフェデラルエクスプレス社を創立した際に、荷物の集配、運搬、配達、伝票の手順を分析し、訓練に次ぐ訓練を実施した。


・コストを削減するためにリストラをすることは手順を間違っている。

・コスト削減の唯一の方策は仕事を改革すること。コスト削減は仕事の再設計の機会としてとらえなければならない。

・「どうやってこの仕事を効率化できるか」は間違った問い。「この仕事を止めたなら屋根が堕ちるだろうか」と聞くべき。落ちないなら仕事を廃止する。


・コスト削減には仕事そのものの廃止が極めて有効。廃止しても困らないものがいかに多いか驚かされる。

・事務や管理の仕事の3分の1は全く役に立たず、とうの昔に不要になっている。まったく行うべきでないことを、より効率的に行おうとすることほど非生産的なことはない。

・必要な残り3分の2の仕事も、「事業そのものにどんな貢献を行うべきか、どんな目的に役立つべきか」を問わねばならない。経営者はこれを自明の問いととらえるが、実際には誰にもこたえられない。


・費用対効果の優れた仕事は一つの目的しか持たない。一つの仕事には二つ以上の目的を相乗りさせることは非効率とコスト増をもたらす。

・コスト削減は始まりにすぎず、コスト予防が必要となる。

・コスト予防とは、たとえば年間3%以上の改善目標を持って毎年あらゆる仕事について生産性向上を図ること。

・あらゆる仕事について「この目的を達成するうえで最も簡単な方法は何か」を問う。

・コスト削減計画は失敗しやすい。コスト予防は働く人たちの積極的かつ熱烈な支持を期待できる。


・利益は存在しない。存在するのはコストにすぎない。

・企業会計上の利益は次の3つの視点から言えば定量化可能なコストである。

①資金コスト。資金にはすべてコストがかかる。

②リスクへの保険料。未来のかけ率は常に1以下。

③明日の雇用と年金の資金。

・3つのコストは互いに重なり合っている。




(浅沼宏和)

2010年12月26日日曜日

『実践する経営者』⑤

イノベーションについてです。


・小さな改善を行うのも大きなイノベーションを行うのも同じように難しい。

・イノベーションとは顧客にとっての価値と満足の創造にほかならない。

・イノベーションに優れた会社は予算からスタートしない。予算は最後に持ってくる。
会社が生き残るにはどれだけのイノベーションが必要かを明らかにするところからスタートする。


・イノベーションが埋めるべきギャップを明らかにし、そのギャップの数倍に相当するプロジェクトを用意する。するとどれだけの努力と予算が必要か明らかとなる。

・イノベーションを生むのはカネではなくヒト。量より質が大事。

・イノベーションには一流の人材がかかわること。


・イノベーションのための企画・予算・計画・管理を既存事業とは別に扱う。

・イノベーションに優れた会社は事業予算とイノベーション予算の二つを持つ。

・イノベーションは長い期間、いかなる収益ももたらさない。もたらすのはコストだけ。
しかし、突然利益を上げ始める。成功したイノベーションは投資の数百倍の収益を上げる。そもそもリスクが大きいので低い収益では割に合わない。


・イノベーションに優れた会社はイノベーションのための活動を厳しく管理する。

・「創造性」とはイノベーションを行わない者が使う言葉。イノベーションに優れた会社は仕事と自己規律についていう。

・人の作ったものは遅かれ早かれ陳腐化する。競争相手に陳腐化させられるのを待たずに自らを陳腐化させ、廃棄することを選ぶ。


・何より必要なのはイノベーションのための姿勢、体制、行動である。


研究開発10原則

①新たな製品・サービス・プロセスは損益分岐点に達したその日から陳腐化が始まる。

②自ら陳腐化させることが競争相手による陳腐化を防ぐ唯一の手だて。

③研究開発を純粋と応用に分ける19世紀的区分には意味がない。

④物理・化学・生物・数学・経済学は、それ自体研究の対象とすべき体系ではない。

⑤研究開発とは、カイゼン・展開・イノベーションの3つの活動からなる。効果的な研究開発とは3つを同時にかつ個別に追求すること。

・カイゼン :すでに成功を収めている者をさらに良くすること。コスト・品質・顧客満足などを年率3~5%向上させることを言う。具体的目標をもつ継続的活動である。

・展開 :新しい製品・サービス・プロセスを利用して、さらに新しい製品・サービス・プロセスを生み出すこと。

・イノベーション :社会・経済・人口・技術の変化を機会として利用すること。

⑥狙いは高くする。

⑦効果的な研究開発には長期と短期の成果がある。短期的成果で満足せず、長期的プロセスの第一歩としなければならない。

⑧研究開発は作業としては独立していても機能としては独立していない。知識の探求は有用性の探求でなければならない。

⑨効果的な研究開発を行うには製品・サービス・プロセスのみならず、研究プロジェクトまでも体系的に廃棄していくことが必要。

⑩研究開発も量的評価を受けねばならない。カイゼンについては目標設定と量的評価はやさしい。展開についても目標設定できる。イノベーションについては質的な評価が必要。

2010年12月25日土曜日

『実践する経営者』④

組織形態、顧客などについてです。


・経済の重心が大企業から中堅企業や中小企業に移ることは1世紀以上にわたって先進国を支配してきた潮流の逆転。

・高学歴者のほとんどは組織のために働いている。彼らの多くは組織の従業員ではなくなっている。派遣社員、アウトソーシング先社員、契約社員、パートとなっている。

・ほとんどの組織が自らにとって収益源ではない支援的業務、経営陣への道になっていない業務のすべてをアウトソーシングするようになる。



・履歴書について、これまで何を立派に行ってきたか、何を立派に行うことができるのかを書いている者は少ない。自分から何を期待できるか、何を期待すべきかについて書いている者はさらに少ない。自分をマーケティング対象として見ていない。


・パートナーシップでは命令はできない。信頼を得ることしかできない。

・パートナーシップは中小企業にとってはグローバル化、大企業にとっては多角化の手段である。

・パートナーシップは成功した後に深刻な、時には致命的な問題が生じる。パートナーシップが成功したとき、両社の目的と目標が一致していないことが明らかとなる。


・M&A成功の5条件

①買収する側がされる側に何を貢献できるか考える。マネジメント、技術、販売等。

②共通の格がある(シナジー効果)。複数の事業を結びつけるには市場か技術に共通性が必要。

③買収される側の製品・市場・顧客に敬意を持つ。

④ほぼ1年以内に経営陣を送り込む

⑤相互の人材を移動させ、昇進させる。そうして双方の人間に対し買収が「機会」であることを確信させる。


・中堅の成長企業はいずれも体系的な起業家精神と目的意識を持ったイノベーションを基本に経営されている。

・大きく変化しきってしまうまで変化は報告や統計に表れない。

・統計的に意味あるものとして現れる頃には機会として利用することはもちろん、対処することさえ手おくれ。


・変化についていく唯一の方法は自ら外に出て変化を探すこと。

・顧客がどこで、いかにして購入するかの変化を知るには、自ら市場に出かけ、顧客とノンカスタマーを観察し、馬鹿げた質問をしなければならない。


・今日、経営者に対する正しい助言は「外を歩きまわれ」である。

・昔、小売業のサービスとは店員が顧客の面倒をみることであった。今日、サービスとは顧客が店員を必要としないこと、品物を見つけるのに手間がかからないこと、聞く必要がないこと、待つ必要がないことである。

2010年12月24日金曜日

『実践する経営者』③

成長と人的資源についてです。


・中小企業が成長していくには事業にとって最も大切な活動は何かを問わねばならない。

・重要なことは人材、特に経営管理者や専門家の質を維持し、向上させ続けること。有能な人材を引き付けられなければ立ち腐れが始まる。


・ゼロ成長時にこそ仕事の内容を大きくし、挑戦し甲斐のあるものにしなければならない。特に新人の仕事は。

・成長できないのであれば事業の内容はよくしなければならない。組織には挑戦すべき目標が必要。

・10年以内に規模を倍にできないなら、資金・人・資源の生産性を倍にする目標を掲げなければならない。

・生産性の向上は常に現実的な目標であり、常に実現可能な目標である。

・軽はずみな多角化はうまくいかない。楽な商売はない。


・ゼロ成長企業の大部分は今日の平凡な事業に頼らざるを得ない。

・ゼロ成長を当然のこととしてはならない。自らの強みを問い、それを適用できる機会を問わねばならない。



・人的資源の能力を維持し、その生産性を向上させ続ける会社はやがて必ず大きな成長の機会に出会う。

・経済の推進役は急速に大企業から中堅企業・中小企業に代わりつつある。規模が大きいことの有利さはなくなった。



・あらゆる事業をイノベーション中心に組み立てなければならない。

・大企業はよりよいものになるのではなく、より独特のものにならなければならない。

・規模は機能に従う。それは適切な規模であることを意味する。

2010年12月23日木曜日

『実践する経営者』②

成長戦略についてです。


・最小限の成長目標を知らない限り成長のための方策を持つことはできない。成長も起きない。

・何を捨てるか決める。


・成長戦略の基本は機会に備えて資源を自由にしておくこと。

・今日最も成功している製品は明日には最も早く陳腐化する。

・成長戦略は集中を要求する。


・成長戦略の最大の失敗はあまりに多くの分野で成長しようとすることにある。

・成長戦略は機会のあるところに的を絞らなければならない。自らの強みが異常なほど大きな成果を生む分野に集中しなければならない。


・強みを予想される変化に適用する。機会とは外に横たわっている者ではなく、経営者が作り出すもの。


・量の増大は成長ではない。質の分析が必要。量の増大の多くは幻想。

・資源の生産性を向上させず低下もさせない量の増大は脂肪太りの恐れがある。


・ゼロ成長時代こそ本当の成長時代。この時代の成長の多くは新しい舞台で起こっている。

・成長戦略を持たないことは馬鹿げている。しかし、多くの会社のようにかつての成長時代の延長として計画を立てることは一層馬鹿げている。


・成長は新たな資金を必要とする。キャッシュフローマネジメントが必要。急速に成長しているときの利益は会計上の幻にすぎない。

・成長企業は少なくとも2、3年後の財務構造と資金調達先を予定しておかなければならない。

・成長とは質的な変化であり量の増大ではない。新しいものを生むことである。


・会計数値以外の情報、すなわち会社の外、特に市場で起こっていることについての情報が必要。

・成長を欲するならば技術・製品・市場を集中させなければならない。成長するということは並々ならぬエネルギーを要求する。

・中小企業は通常チームとしての経営陣に恵まれない。


低成長時代であるからこそ、組織としてどのような成長を望むのかを決めなければならないということであると思います。

ドラッカーいわく 「運で事業は作れない」

2010年12月22日水曜日

『実践する経営者』①

「実践する経営者」は21世紀になって編集された戦略論です。インタビューなども含められており、時代の変化に合わせた戦略論の変化を感じさせる書物です。



・中小企業の多くはイノベーションの力がない。時間がなく野心もない。人手がなく資源がない。現金もない。
社長の毎日は戦いで、体系的でもなければ経験もない。


・成功する起業家は大組織で5~8年働いた経験がある。勉強しているし道具も手に入れている。

・事業を始める者にとって5~10年のマネジメント経験が必要。

・起業家にとって一番難しいのは自分の役割を考えること。


・仕事には企業家的仕事と管理者的仕事がある。

・高すぎる報酬は問題がある。23歳で45万ドルのストックオプションを得てしまったら人間がダメになる。

・かつてマネジメントは大企業でしか使えないものとみなされていた。いまやマネジメントは文化の一部となった。

・あらゆる組織が変化せざるを得なくなった。


・社会の不確実性が増大し、確率に基づく予測という従来型のプランニングが意味を持たなくなりつつある。

・不確実性時代のプランニングではすでに起こったことで未来を作り出すものは何かを考える。

・可能性を現実へと転化するには自らの強みを機会に合わせることが必要となる。


・すでに起こった変化に強みを合わせることからプランニングが生まれる。

・必要条件は、機会に応えられるだけの知識と人材を用意しておくこと。

・未来のための予算として支出の10~12%を予算化しておく必要がある。


・ほとんどの経営者は成長を欲し、公言する。しかし戦略や方策を持っている経営者はほんの一握りに過ぎない。

・会社の規模は市場と技術との関係で適切でなければならない。

・規模が適切とは手にしている資源から最高の果実を生み出すこと。


・市場で限界的存在になってしまったら不適切な規模と言わざるを得ない。

・限界的な存在に落ち込まないために必要な成長の見方は分かれる。自らの市場をどう定義するかで変化する。しかも劇的に変化する。

2010年12月21日火曜日

ドラッカーの著書の読み方

先日のセミナーでドラッカーの著作を読むにあたっての注意点を説明させていただきました。

ドラッカーの著作は名著ですが、多少注意して読まないと読み違いをしやすい難点があります。

以下、私が気を留めているものを列挙します。


1、同じ用語にいくつもの意味がある。

例:マネジメント ①経営者 ②経営管理者以上 ③成果を上げる取り組み  ④マネジメント分野


2、同じ内容にいくつもの側面があり、それぞれ違う用語で説明する場合。

例:「貢献」は成果に対して行う重要な用語として扱われるが、貢献は広い意味で「成果」である。


3、広い意味とせまい意味がある。

例:広い意味での成果には ①直接の成果 ②価値への取り組み ③人材育成 という狭い意味の成果に分けられている。 


4、一般的な意味とドラッカー独特の意味づけがある。

例:「知識」という用語について、情報・専門知識といった一般的な意味と、「情報を成果に結びつける能力」というドラッカー独特の意味で使われている場合とがある。



こうしたことを知らないと、ドラッカーの説明が理解できない場合が多々発生します。

それぞれの用語がどのような意味で使われているかを自分なりに考えていくことが必ず必要です。

こうした思考プロセスによってドラッカー理論が頭にしみこませることができます。


さらにマネジメントの古典三部作に良く見られることですが、1950年代~60年代のアメリカの経営事情を反映している部分があります。

そうした部分は現在の状況にはそぐわなくなっていますので、意識的に区別しておく必要があります。


たとえば『創造する経営者』において多角化経営についての説明が多くなされています。それは当時の多角経営ブームの反映ですので、その点は現状に合わせて読み解く必要があります。

また同書では、成果の上がる3領域について製品・サービスの分析から始めるべきで、場合によっては市場や流通チャネルから始まるといった趣旨のことが書いていあります。

しかし、1960年代の米国企業の経済成長の状況と現在の経営環境と比べると、市場や流通チャネルの分析から始めることが原則的になったのではないかと私は考えています。

こうしたことを考えるきっかけになるのもドラッカーの優れたところだと思います。

2010年12月20日月曜日

『創造する経営者』⑩

続きです。卓越性と優先順位、機会と計画についてです。



・卓越性とは常に知識にかかわる卓越性。

・卓越性-「事業にリーダーシップを与える何らかのことを行いうる人間能力のこと」

・卓越性には色々な定義が可能。

・卓越性の定義の適切さを判定できるのは経験だけ。


・卓越性の定義は事業に弾力性や成長と変化の余裕をもたせることができるように大きくしかも集中が可能なように範囲を限定するものでなければならない。

・狭すぎる卓越性の定義をする企業は自らを貧血状態に陥れる。

・卓越性の定義が有効であるためには、実行可能であって、ただちに行動できるものでなければならない。


・卓越性の定義は頻繁に変えられない。すでにかなりの程度、従業員とその価値観、行動に体現されているから。 しかし、定期的に見直し、その都度新しく考えていかなければならない。


・なすべきことは常に利用しうる資源より多い。優先順位は企業そのもの、経済的特性、強みと弱み、ニーズについての最終評価が反映されねばならない。


・優先順位の決定はそんなに難しくないが劣後順位の決定は難しい。延期は「放棄」を意味する。


・経営計画における4つの決定

①追求する機会、進んで受け入れるリスク、許容範囲のリスク

②事業の範囲と構造、特に専門化・多角化・統合のバランス。

③目標を達成するための時間と資金。新事業の設立と買収・合併とのバランス。

④経済情勢、機会、成果目標のための計画に適合した組織構造。


・事業においてはリスクは最小にするよう努める。しかしリスクを避けすぎると最大にして最も不合理なリスク、すなわち「何もしないリスク」を負う。


付加的機会 :既存資源をさらに活用するための機会。事業の性格は変えない。 例-製紙メーカーが印刷業者向け市場から事務用コピー機市場へと進出する。

補完的機会 :事業の定義を変える。現在の事業と結合してそれぞれ別個の時よりも大きな挿話をもたらす新しい事業機会。常に少なくとも一つの新しい知識において卓越性を獲得しなければならない。通常リスクを伴う。
補完的機会は事業全体の富の創出能力を数倍にしてくれるものである必要がある。

・革新的機会 :事業の基本的性格を変える。実現のための革新が必要、かつ非常な労力を要する。第一級の資源、特に人材を充てる。多額の研究開発費が必要。利益は極めて大きくなければならない。


・あらゆる企業が中核的なものを持たねばならない。リーダー的地位に立てる領域を持たねばならない。したがってあらゆる企業が専門化しなければならない。

・企業には核が必要。あらゆる活動を一つの知識か一つの市場に統合できなければならない。

・急激に変化する市場と技術の世界にあって、必要とされる弾力性を確保するために、成果をもたらす領域を多角化しておかなければならない。

・企業は、製品・市場・最終用途において多角化し、基礎的な知識において高度に集中化しなければならない。

・あるいは知識において多角化し、製品・市場・最終用途において高度に集中化しなければならない。


・専門化と多角化のバランスは資源の生産性を大きく規定する。

・知識の大きな変化があったときには事業の範囲を大きく変える。

・卓越性の変化のあった時は専門化と多角化のバランスを変える。

・通常、川下統合は多角化を意味し、川上統合は専門化を意味する。


・専門化・多角化は影響が大きいばかりかリスクも大きい。経済的効果とリスクの二つの基準で判断する。

・新たな事業形態は事業の性格を一変させるほど大きな成果をもたらすものであること。

・事業の成長は主として内部からもたらされる。したがって時間がかかる。

・事業をマネジメントせずに財務的操作だけに頼るなら菅らざる失敗する。財務的手段は人材開発、組織開発、イノベーション、事業の方向付けや見直しの代わりを務めることはできない。


・計画の基礎は、事業の定義、目標についての意思決定、自らの卓越性・優先順位・戦略についての意思決定。

・最初の目標設定。「いかなる成果が必要か、どこで必要か、いつまでに必要か」

・必要とされる活動を検討・評価・割り当てる資源を選択。それらの活動を具体的仕事として誰かに割り当てる。


・あげるべき成果はだれかが責任を持つべき仕事とする。

・期限を切る。

・あらゆる提案は目的と期待を明記する。

・新しい事業のための提案はすべて企業全体に焦点を当てなければならない。


以上で、ドラッカーの三大古典の一つ「創造する経営者」の戦略論を終わります。

10回に分けて原理原則を取り上げてきました。

これら一つ一つが「組織が成果を上げる」のところで説明した基本形を実行する際のガイドラインになります。

さすがに世界初の体系的戦略論であるだけに密度が濃いです。

私は経営戦略論は最後には本書が残ると思います。

これを補う戦略論はアクションの中から新たな戦略が生まれると考えるミンツバーグの理論でしょう。

2010年12月19日日曜日

『創造する経営者』⑨

続きです。ビジョンと事業の定義です。


・ビジョンとは全人格的献身ができるもの。「それを心から信じているか」「本当に実現したいか」「本当にその事業を経営したいか」を考える。

・必ず失敗するビジョンとは、確実なもの、リスクのないもの、失敗しようのないもの。

・不確実性やリスクを伴わないビジョンは現実的ではない。未来それ自体が不確実性、リスクを伴う。だからビジョンに対する信念がないと必要な努力が持続しない。


・明日は必ず来る。その明日は今日と違う。


・経営者は未来において何かを起こす責任を受け入れなければならない。

・最大の成果を上げるにはすべての仕事を一つの大きな統合された成果のための計画としてまとめなければならない。

・現在の事業の成果を上げるため、未来に新しい事業を作り上げるためにはそれぞれの行動が必要。

・あらゆる行動についてバランスの調整が必要。

・中核となる3つの意思決定 ①事業の定義  ②卓越性の定義  ③優先順位の設定


・あらゆる企業は自らの事業の定義をもたねばならない。そして事業が代価の支払いを期待できる貢献を描かねばならない。

・「それはわが社の事業ではない。」「それはわが社の仕事の仕方ではない。」というごく簡単なことでもよい。また目標についての膨大な説明でもよい。


・事業の定義が市場に供給すべき満足やリーダーシップを保持すべき領域を規定する。

・事業の定義においては具体的方法、具体的製品については何も言うべきではない。

・事業の定義が有効であるためには成長し、変化していけるだけの大きさのものでなければならない。


・事業の定義から出てくる最も重要な結論の一つは事業の規模に関するもの。「大規模を目指すべきか、小規模にとどまっているべきか」

・あらゆるものを含む言葉でしか自らを定義することができないとすれば、多く行いすぎているために何一つうまく行うことができない状態にあるとみてよい。

・事業について有効な定義をもてないことは危険信号。市場や顧客と無関係に事業を行っていることになる。


・3つの問い

①わが社の事業は何か

②わが社の事業は何でなければならないのか。

③わが社の事業は何にならなければならないか。



・事業の定義は目的を確立し、目標と方向性を設定すべきもの。それはいかなる成果に意味があり、いかなる評価基準が真に適切かを決めるもの。

2010年12月18日土曜日

『創造する経営者』⑧

続きです。ビジョンの実現についてです。ビジョンの実現とはイノベーションそのものです。


未来を築く2つの方法


①すでに起きた未来を探す。それは、人口構造、知識、他の産業・国・市場、産業構造、企業内部。


②ビジョンを実現する。すなわち自ら未来を発生させる。


・予測されているものは本当はすでに起こったものではないかと考えるべき。

・将来、どんな製品・プロセスが必要となるか予測しても意味がない。しかし、製品・プロセスについてビジョンを描き、今日と違う事業を築くことは可能。


・未来に何かを起こすことは新しい事業を起こすこと。すなわちビジョンを事業として実現すること。

・大きなビジョンである必要はない。しかし、今日の常識とは違わなければならない。

・ビジョンは企業家的、つまり富を生む機会や能力についてのものでなければならない。


・企業家的ビジョンは一つの狭い領域についてのもの。

・偉大な企業に成長させるビジョンとは簡単なもの。

・平凡なビジョンがしばしば成功する。


・アイディアは十分ある。足りないのは製品を超えて構想すること。

・製品・プロセスはビジョンを実現する道具にすぎない。


・未来に向けて投入する人材は少しで良い。ただし最高のものでなければならない。

・ビジョンが未来を築くための条件-「そのビジョンに基づいて行動を起こすことができるか、それとも話ができるだけか」


・ビジョンの実現には時間がかかる。しかし実現の暁には利益を上げて売ることができ、顧客の欲求・ニーズを満たすことができなければならない。


・ビジョンの有効性の基準は経済的な成果、業績である。

『創造する経営者』⑦

続きです。事業分析とイノベーションです。


・成果をもたらす3領域(市場・顧客、流通チャネル、商品・サービス)に欠けるもの。

①全盛期を過ぎたものに代わるべきものを開発する努力。

②機会と成功の追求

③知識 :本当に重要な新知識は?中核的知識の何を向上・進歩させるべきか?知識の再定義の必要は? ★最も重要な問い


・事業を分析すると常に事態は想像以上に悪いことが明らかとなる。

・単純な中小企業でもその日暮らしではマネジメントは不可能。目的意識に基づく体系的な計画が必要。希少な人材を最大の機会と成果に集中し、少数の適切なことを卓越性を持って行う。


・基本は強みを生かし、問題ではなく機会を求め、リスクではなく実現すべき成果に重点を置く。

・「現在」という期間の長さの決定がどんな活動を行うかを決める。

・成功すればコストをはるかに超える成果がもたらされる領域が推進すべき優先的領域。


・イノベーションとは既存のものから新しい種類の経済を生み出す未知のものを作り出すこと。

・イノベーションとは、既存の知識、製品、顧客ニーズ、市場等にすでに存在するものを、はるかに生産的な新しい一つの全体にまとめるために小さな欠落した部品を発見し、その提供に成功すること。

・イノベーションとは企業の潜在的機会を発見し、未来を築くためのもの。

・第一級の人材は最大の機会に割り当てる。二義的機会はあくまで現在の人材だけでまかなう。

・大きな機会には集中した注意力と献身が必要。


・運では事業は作れない。

・危険や弱みが事業機会の存在を教える。それらを問題から機会へと転化するとき、異常なほどの成果が得られる。ときにそうした転化は経営者の姿勢だけでもたらされる。

・企業・産業の弱みや制約は通常すでに周知であるか容易に知ることができる。

・弱み・制約を克服するイノベーションンはその企業や産業の内部の人間には不可能に見える。

・弱み・制約が克服されると経済的効果は極めて大きい。制約こそ大きな機会。


・事業において完全なバランスは組織図にしかない。生きた事業は常にアンバランスな状態である。

・市場規模や構造に変化が生じたとき、企業規模と市場との間にアンバランスが生じる。ここにも隠された機会が存在する。

・適切な企業規模は産業によって違う。技術の成熟度、市場の構造によって違う。間違った規模の企業は大きな罰を受ける。

・中途半端な規模の企業にとっての問題解決は小規模に縮小すること。


・最も深刻なケースは最小限の規模以下の企業。いかに製品が優れていても限界的存在にすぎない。

・リスクと不確実性はなくせない。明日何をするかを決めるのではなく、明日を創るために今日何をなすべきかを決めること。


未来を築く2つの方法

①すでに起きた未来を探す。それは、人口構造、知識、他の産業・国・市場、産業構造、企業内部。

②ビジョンを実現する。すなわち自ら未来を発生させる。

・予測されているものは本当はすでに起こったものではないかと考えるべき。

・将来、どんな製品・プロセスが必要となるか予測しても意味がない。しかし、製品・プロセスについてビジョンを描き、今日と違う事業を築くことは可能。

2010年12月17日金曜日

『創造する経営者』⑥

続きです。知識と卓越性に関する部分です。


・知識が事業である。製品・サービスは企業の知識と顧客の購買力の交換媒体にすぎない。

・本の中にあるのは情報。知識とは情報を仕事や成果に結びつける能力のこと。

・知識は外部、すなわち顧客・市場・最終用途に貢献して初めて有効となる。


・卓越性だけが利益をもたらす。他のものと同じ能力を持つだけでは十分ではない。

・経済的な業績は差別化の結果。差別化の源泉は企業内の人が保有する独自の知識。

・成功している企業には常に少なくとも一つは際立った知識がある。また全く同じ知識を持つ企業は存在しない。


・卓越性を発揮できることが極めて平凡なこともある。同じような仕事をする企業が多くてもある企業だけが優れた仕事をする場合もある。その企業は平凡な仕事を非凡にこなしている。

・知識分析の最善の方法は自社が成功してきたものと失敗してきたものを調べることである。


・知識の現実

①事業特有の知識の意味ある定義は極めて簡単、あきれるほど簡単である。

②知識の分析には訓練がいる。自社特有の知識を問うことは、自らを客観的・徹底的・前向きに見つめること。

③知識は滅しやすい。常に再確認、再学習、再訓練が必要。自社特有の卓越性は常に強化が必要。

④あらゆる知識はやがて間違った知識になる。あるいは陳腐化する。

⑤どんな企業も多くの知識において同時に卓越することはできない。一つの領域において有能であることも難しい。これはほとんどの企業が生き残るのにやっとで、かろうじて脱落を免れているにすぎないことを意味する。


・多くの領域において卓越することはできない。しかし、成功するには極めて多くの領域において並み以上、いくつかの領域で有能、一つの領域において卓越しなければならない。


・知識分析における問い

①わが社は適切な知識を持っているか?それは成果の上がる領域に集中しているか?

②わが社は貢献している知識に対する報酬を十分得ているか?

③わが社の知識は、わが社の製品・サービスに十分組み込まれているか?

④いかにして知識の利用法を改善できるか?欠けているものは何か?いかに入手するか?

2010年12月16日木曜日

『創造する経営者』⑤

続きです。マーケティングに関する部分です。

これをみるとドラッカーがかなり早い段階でマーケティングについて体系的なとらえ方をしていることが分かります。




・マーケティングの8つの現実

①顧客・市場を知るのは顧客だけ。顧客に聞き、見て、その行動を理解して初めて顧客がだれで、何を行い、何を買い、どう使い、何を期待し、何に価値を見出しているかを知ることができる。

②顧客は満足を買う。しかし満足は生産したり供給したりできない。満足を得る手段を使って橋渡しをするだけ。

③競争相手は同業他社にとどまらない。

④質を決めるのは企業ではない。

⑤顧客は合理的。企業はなぜ顧客が不合理に見える行動をするかを知らねばならない。

⑥顧客は企業に関心を持っていない。

⑦決定権・拒否権を持つのはだれか。顧客とは支払う者ではなく買うことを決定する者。購入の決定権者は少なくとも二人いる。最終購入者と流通チャネル。

⑧市場・用途から顧客を特定する。顧客が識別しにくい場合には市場や最終用途からスタートする。


・外部からの事業の見方の3側面。「誰が買うか」「どこで買うか」「何のために買うか」

・あらゆる企業が顧客、市場、用途のいずれかを中心に事業を定義できる。3つの側面の分析を重ねると実り豊かな洞察が得られる。

・顧客を知るための8つの問い

①ノンカスタマー(非顧客)。「自社の製品を買わないのはだれか。なぜ彼らは顧客にならないか。」

②金と時間の使い方。「顧客は何を買うか。金と時間を何に使っているか」

③価値選好。「顧客が自社から得ている満足はどの程度重要か、重要度は今後大きくなるか。」「どの分野のニーズがまだ満たされていないか。」

④提供しうる価値。「わが社の製品・サービスで本当に重要な満足を提供しているのは何か。」

⑤存在意義。「わが社は顧客の経済、事業、市場の何に左右されるのか。」

⑥商品群。「意味ある商品群は何か。」

⑦潜在的な競争相手。「潜在的競争相手になっていない者は何か。それはなぜか。」

⑧顧客の現実。「不合理に見える顧客の行動は何か。つまり顧客の現実でわが社に見えないものは何か。」

2010年12月15日水曜日

『創造する経営者』④

続きです。ドラッカーの独特のコスト管理論です。


・コスト管理の最も効果的な方法は業績を上げるものに資源を集中することである。


・問題はコストの絶対額ではなく対業績比である。いかに低コストで効率的でも業績を上げないならば浪費にすぎない。


・機会の最大限の開拓こそコストあたりの業績比をあげ、コスト管理と低コストを実現する王道。


・いかなる労力も無駄にすることなくマネジメントすることはできない。

 


・コスト管理は最大のコストに集中する。


・コストはその種類によって管理する。


・コスト削減の最も効果的な方法はその活動自体をやめること。コストの一部削減が効果的であることは稀。


・企業の現実を理解するには、成果をもたらす領域すべてを視野に入れる。


・コストは一つの体系。全体の流れの中で理解する。


・生産的コストはコストとして管理してはならない。機会に資源を集中することによる管理が必要。必要なのは成果管理。


・補助的コストは必要最小限度の原則に従う。


・何の成果もあげずに時間・資金・人間を使っているのは浪費的コスト。これこそ真のコストセンター。




・顧客が事業である。

・企業を外部からみる。それには体系的な作業が必要である。

・事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセス。事業の目的は顧客の創造である。

・メーカーからみると同じ市場・同じ種類の商品であるのに、顧客にとっては無関係の市場・異なる種類の満足と価値ある商品に見える場合がある。

2010年12月14日火曜日

『創造する経営者』③

続きです。製品のリーダーシップに関する部分です。


・長期の独占状態を経た後において顧客の支持を受けているような企業はまれ。競争相手が現れた瞬間に限界的な存在に変わる危険を持つ。

・あらゆる領域において卓越した行動を行うことのできる企業は存在しない。

・大企業であろうと小企業であろうと限界的存在になったのでは生き残ることはできない。

・主力製品がリーダーシップを握ることができなければ生き残ることはできない。


・市場が大きくなり、成熟するほど集中化が進む。市場が大きくなると限界的製品やメーカーの存在余地は小さくなる。

・市場でリーダーシップを握るには、外観・スタイル・デザイン・知名度・最終製品への組み入れコスト・サイズ・アフタサービス・短納期・技術指導等が大きな役割を果たす。

・高品質をうたっても市場が認めてくれなければリーダーシップは成立しない。

・市場経済のもとでは顧客が喜んで代価を支払い、優先して購入してくれることだけが経済的な成果を測定する有効な基準。


・知識労働者については人数はあまり意味がない。質の方がはるかに大事。

・卓越した業績を上げる者の数は総人員数に比例しては増えない。

・ほとんどの企業には「今日の主力商品」が一つはある。多くの場合手をかけ過ぎている。

・あらゆる企業は少なくとも一つは「明日の主力商品」をもたねばならない。それは今日すでに利益のある市場を持ち、受け入れられていなくてはならない。


・限定された特殊な市場を持つ製品は市場でリーダーシップを持つ。

・見通しはわからないが潜在的成長力が期待される市場に導入中の商品には最高の人材を割り当てる。

・今日の主力商品と同じぐらい売上があるが利益貢献のないものは昨日の主力商品である。衰退を防ぐことはできないし、その努力は割に合わない。

・顧客が代価を支払わおうとしない無意味な差別化を行っている商品がある。通常はごく限られた顧客しか買わない。


・チャンスを与えればうまくいくかもしれない商品。業績に見合う支援や資源を与える必要がある。支援を受けていないのに予想以上の業績を上げている製品ならばシンデレラ商品の可能性がある。

・製品の性格の変化、特に衰退に向かっての変化は把握すべし。

2010年12月13日月曜日

『創造する経営者』②

続きです。成果とコストの関係についてです。


・経営者の仕事は、昨日の現実を変化してしまった今日に押し付けることではない。新しい現実に合わせて変化させることである。

・既存のものは資源を誤って配分されている。

・業績の90%は業績上位の10%からもたらされる。コストの90%は業績を生まない90%から発生する。すなわち業績は利益と比例し、コストは作業量と比例する。

・資源と活動は業績に応じてではなく作業量に応じて割り当てられている。

・利益の流れとコストの流れは同量ではない。


・企業活動の評価と方向付けの見直しは常に行わなければならない。

・事業が最も成果を上げなければならないのは現在。

・業績のカギは集中。

・業績を上げるには大きな利益を生む少数の製品ライン、サービス、顧客、市場、流通チャネル、用途に集中しなければならない。


・業績を上げるにはわずかな能率向上が大きく業績を改善する分野に仕事と労力を集中しなければならない。

・人材は少数の大きな機会に集中しなければならない。

・意見対立は重要。

・市場と流通チャネルは業績をもたらす領域として製品よりも重要なことがある。製品は会計上は事業の一部だが、市場と流通チャネルは経済上でのみ事業の一部である。

・流通チャネルは製品に適合すると同時に、市場・顧客・最終用途に適合しなければならない。



・利益は売り上げに比例し、そのほとんどはわずかな種類の商品、市場、顧客によってもたらされる。

・コストは作業量に比例し、そのほとんどはわずかな利益しか生まない90%の膨大な作業から生じる。

・5万ドルの取引と500万ドルの取引のコストはあまり変わらない。100倍はかからない。

・売れない製品の設計も売れる製品の設計もコストは同じ。


・労務費は生産高ではなく時間にかかわるコスト。

・利益は利幅に回転率をかけたもの。

・事業は作業のシステムである。

2010年12月11日土曜日

『創造する経営者』①

ドラッカーの古典三部作の一つ。世界初の体系的経営戦略書である「創造する経営者」の要約をシリーズでご紹介します。


・企業が行うべき3つの仕事 

 ①今日の事業の成果を上げる
 ②潜在的な機会を発見する
 ③明日のために新しい事業を開拓する

・3つの仕事にはそれぞれ異なるアプローチがいる。しかし、切り離すことはできない。

・3つの仕事は重なり合う。一つの統合された戦略が必要。

・成果と資源は外部にある。企業内部にはコストセンターしかない。

・成果は外部の誰かによってきめられる。

・成果は問題の解決ではなく、機会の開拓によって得られる。

・成果を上げるには資源を問題ではなく機会に投じる。

・成果は有能さではなく、市場におけるリーダーシップによってもたらされる。



・利益とは意味ある分野における独自の貢献、少なくとも差別化された貢献を行うことによって得る報酬である。

・何が意味ある分野かは市場と顧客が決定する。

・価値あるものはリーダー的地位によってのみ実現される。例外は独占の利益だけ。

・業績を上げるには顧客・市場において真に価値あるものについてリーダーシップを握ること。

・「価値あるもの」とは、製品ラインの中の小さな、しかし重要な一部、あるいはサービスや流通、アイディアを早く安く製品に変える能力などである。

・リーダーシップは事業戦略において特に重要。

・いかなりリーダーシップもうつろいやすく短命である。一時的優位にすぎない。

・企業はリーダー的地位からその他大勢の地位に簡単に落ち込む。そこから限界的存在になるまであと一歩である。

・落ち込みから脱出するのは経営者の責務。それには事業の焦点を問題解決ではなく、機会に合わせなければならない。

・「通常」とは昨日の現実にすぎない。

2010年12月10日金曜日

個人が成果を上げる方法-ドラッカー流仕事論

セミナーでは同じく、個人で成果を上げる方法、つまりドラッカーの仕事論についても簡単にご紹介しました。

ドラッカーの経営論はヒトを中心においています。ですから個人が成果を上げる方法を身につけていることが重視されています。

ドラッカーは「ヒト」という資源は時間と知識でできている と述べています。

このように単純化することで具体的に仕事で成果を上げる方法が明確になります。


ちなみに、この「知識」とは、本の中に書かれているようなものではありません。本の中に書かれているのは情報であり、知識とは情報を成果に結びつける能力を指しています。


ですから、いわゆる知識労働者とは、「マニュアル・手順書に書かれていることを超えて価値ある行動を取れる人・上司の指示を超えて価値ある行動を自主的に行う人」のことを指すととらえるとわかりやすいかと思います。

ドラッカーは、

成果を上げることは習慣である。実践的な能力の集積である。 

と述べています。


その意味は、5つの具体的な項目を思考習慣にまでして、日々実践することが成果を上げる行動そのものであるということです。

その5つとは次の通りです。



①時間

時間こそ最大の制約条件。時間をまとめて成果に向けて投入する。成果が上がらないのは時間を活用せずに浪費している証拠。

②貢献意識

成果に焦点を当てて貢献する意識を持つ。そのポイントは「責任」。大きな成果を目指し、仕事を大きくし、大きな貢献をする。そこには大きな責任が伴う。あげた成果の大きさに責任を感じる必要がある。

可能性の大きさを考えれば、どれほど成果が上がろうと自分の仕事としてはせいぜい及第点ととらえること。より大きな成果が可能であったはず。

また成果に焦点を当てなければ貢献とは言わない。失敗者の方がたくさん働いている場合が多いが、彼らは成果に焦点を当てず、自分に挑戦しないため失敗するのだという。

③強みを生かす

自身の得意分野を生かすことだが、強みとは成果との関係で意味を持つ。成果が上がらないなら強みではない。

強みとは色々とチャレンジしていく中で気がつくもの。自分でできることの生産性を高め、してよいことでやる価値のあることをどんどん実行する人が強みに基づく成果を上げる人。

「とりあえずやってみる」と考える思考習慣が必要。また強みは失われやすいものなので、常に強化がしなければならず、それが継続学習の必要性となる。

④集中

一度に一つのことを行うこと。新しく何かをするときは成果の上がらないことを一つやめる。
大きな成果は集中によってしか上げられない。

⑤意思決定

これは他の四つとは次元が違う。

成果を明確にし、本質的な問題に取り組み、原則・基準を明確化すること。個々の問題解決は原則の適用にすぎない。

意思決定がないと貢献すべき対象がなく、時間の浪費が起き、強みを見つけることも出来ない。まして集中する対象もないため、行動が場当たり的なものになる。


この5つの常に意識し、習慣化している人間が成果を上げるとドラッカーは説明しています。

2010年12月9日木曜日

組織が成果を上げる方法-ドラッカー流の経営戦略論

昨日、当社の年末恒例行事であるセミナーが開催されました。

テーマは「経営者のためのドラッカー講座」です。


セミナーではドラッカーの経営論について

組織・個人が成果を上げる方法 

と理解し、それぞれの成果の上がる仕組みについて骨子の報告をさせていただきました。

まず、組織、特に企業が成果を上げる仕組みについてです。



企業の目的の定義は一つしかない。顧客の創造である。  (ドラッカー)

利益はアクションとしての顧客創造活動の適切さを測定する指標と位置づけられます。

顧客創造の成功は利益の3つの領域のバランスがとれていることと同義です。その3つとは

①市場・顧客(ニーズ・期待)、②商品・サービス(効用・価値)、そして②から①に価値を届ける役割を果たす③流通チャネル です。

この成果の3領域は、ヒト・モノ・カネの経営資源投入を成果に向けて最大限に活用する経営プロセスの『生産性』によって支えられます。

また、成果の3領域のバランスを取るための重要な二つの機能がマーケティングイノベーションになります。

マーケティングとは、成果の3領域のバランスを取る活動そのものであり、それは顧客の視点から全社活動を見ることです。

イノベーションとは、端的にいえば新しい満足の創造ですが、それは未来からみた全社活動(ほぼマーケティングと同じ意味になる)の革新を意味します。

これを具体的なアクションプランに結びつけることが経営戦略です。

骨子だけですので、それを具体的にする方法についてはドラッカーの著書を熟読する必要があります。

しかし、上のまとめを念頭に置かれてドラッカーを読めばかなり理解しやすくなると思います。

2010年12月8日水曜日

パターンの断絶

すでに起こった未来は組織の内部ではなく、外部にある。

それは、社会、知識、文化、産業、経済構造における変化である。

一つの傾向における変化ではなく、変化そのものである。

パターンの内部における変化ではなく、パターンそのものの断絶である。


             『創造する経営者』より


ドラッカーが本書を執筆したのは1964年です。

現在はその当時に比べてはるかに激しい経営環境にありますから、このドラッカーの言葉の持つ意味はよりシビアになっています。

当社の本拠地である浜松の場合、半世紀以上続いてきた「巨大輸出産業を中心とした企業城下町モデル」が崩れかけようとしています。

まさにドラッカーの言う「パターンの断絶」に直面しているわけです。

このような危機を迎えて、過去の延長上で経営を行うことは逆にリスクが高くなってしまいます。

ドラッカーは「何もしないということが最もリスクが大きい」といっていますが、何をするかを決めるのは難しい問題です。

2010年12月7日火曜日

自ら成果を上げる

自らの仕事においても、まず強みからスタートしなければならない。

すなわち、自らのできることの生産性をあげなければならない。



‥成果を上げるエグゼクティブも自らに対する制約条件を気にしている。

しかし、彼らはしてよいことで、かつ、する値打ちのあることを簡単に探してしまう。

させてもらえないことに不満を言う代わりに、してよいことを次から次へと行う。




‥実際に何らかの制約があったとしても、することのできる適切かつ意味のあることはあるはずである。

                    『経営者の条件』より


これは、いわゆる「仕事は自分で見つけるもの」というビジネス上の格言と同じ意味ですね。

できるビジネスパーソンは、与えられた仕事の中で抜きんでて打ち手の数を多くするものであるということです。


この部分を読んで、帝国ホテルの伝説の総料理長であった村上信夫シェフのエピソードを思い出しました。

村上シェフは小学校を出てすぐに帝国ホテルに厨房の下働きとして入ったそうです。

当時のシェフの世界は江戸時代の職人の世界のように厳しかったそうで、村上シェフは先輩たちから何一つ教えてもらえなかったそうです。

それどころか先輩たちは自分の技を盗まれないようにお客さんの下げたお皿に洗剤をすぐに振りかけてしまい、ソースの味見ができないようにしていたそうです。

村上シェフは自分にできることは何かを考え、鍋やボールなどの調理器具を徹底的に磨き上げたそうです。その仕事ぶりは徹底しており、厨房の調理器具はいつも新品同様であったといいます。

こうした姿勢は先輩たちに認められ、ソースが残ったままのお皿が村上シェフのところに来るようになったといいます。もちろん村上シェフはそのソースをなめ、必死でその秘密を見つけたのです。

こうした姿勢が村上シェフを、エリザベス女王の舌すら驚かすほどのトップ中のトップへと導いたのだと思います。

できる社員、黒字社員、エグゼクティブ‥いい方は様々ですが、抜きんでたビジネスパーソンにはその場でやれることを数限りなく行う積極性があると思います。

乱気流時代

今週開催するセミナー準備やら、突発的な相談ごと等への対応で、ブログに間を空けてしまいました。

年末になって静岡県西部エリアはますます不況色が強くなってきたような気がします。

こうした不安定な状況をドラッカーは『乱気流時代』と名付けています。


・われわれが直面している時代は『乱気流時代』である



・過去の趨勢にもとづいたプランニングは無効である


・新しい出来事に向けて態勢を整えておくことはできる
 
 
これが1980年にドラッカーが述べた内容です。
 
ドラッカー信奉者であるマーケティング理論家のコトラーは、
 
 
・好景気と不況が順番にやってくる時代は終わった



・予想外の大きな衝撃が以前より高い頻度で起きる


・リスクと不確実性はかつてないほど増えている


・絶え間ない乱気流と、いっそうのカオスが進行する時代


・企業の脆さを最小限に抑え、機会を生かすことが求められる

 
 
と、ドラッカー理論の精緻化をおこなっています。
 
これは2009年のことで、時代が30年隔たりがありますから、やはりコトラーの方がしっくりきますね。
 
 
両者に共通するのは、時代が厳しくてもやれることはあると考えていることです。
 
打ち手が全くないと認めることは、自身が淘汰されることを甘んじて受けることになってしまいますから、当然こう考えなくてはならないわけですね。

2010年12月3日金曜日

意思決定-原則と方針

成果をあげるエグゼクティブは、原則や方針によって一般的な状況を解決していく。

そのため彼は、ほとんどの問題を単なるケースの一つとして、すなわち単なる原則の適用の問題として解決していくことができる。


                『経営者の条件』より


問題の背後にある「真因」を探すことが問題解決の基本です。

そうした真因に対する態度が原則や方針になります。

原則や方針を定めることで、多くの問題が同じタイプの問題として明快に片づけられていきます。



もうひとつ、心すべき重要な点があります。


‥意思決定を行う者は、常に非定型的なこと、異常なことが起こっていないかを調べなければならない。

そのためには「観察されるものは正しく説明されているか、すべて説明されているか」を問わねばならない。

              『経営者の条件』より


私はとくに、すべて説明されつくしているか?を問うことが大事であると思っています。


説明できる範囲が広ければ広いほどリスクはつぶされているということになります。


リスクマネジメントの基本、「すべて説明できる」ということです。

2010年12月2日木曜日

意思決定-必要条件・再考

意思決定には必要条件を明確にすることが求められます。

必要条件があいまいなままだと、状況が変化したときにその意思決定が不適切であることがわからなくなってしまいます。


『経営者の条件』に次のような事例が載っています。


第一次大戦のときにドイツは『シュリーフェン計画』という戦略構想を持っていました。

ドイツの西にはフランスがあり、東にはロシアがありました。

シュリーフェン計画とは、フランスとロシアに挟み撃ちにされた場合にどう戦うかを決めたものでした。

計画では、弱敵である東のロシアにはわずかの兵力で対応し、強敵フランスに対しては短期間で大打撃を与えるために大軍を投入することになっていました。

この計画ではフランスを打ち破るまではロシアがドイツ国内に侵入することを容認することになっていました。

実際に第一次世界大戦がはじまり、この計画は実施されました。

しかし、予想外にロシア軍の進撃速度が速く、東の地域の人々から救いを求める声が上がりました。

この計画を立てたシュリーフェン元帥は、ロシアの進撃速度は遅く、フランスを撃破するまでの時間が十分あることを必要条件としていました。

シュリーフェン元帥の必要条件は明確でしたが、彼の後を継いだ者たちは単なる戦争技術者にすぎなかったため「必要条件を満たさない以上、戦略を変更する必要がある」ことに気がつきませんでした。

そのため、軍事上の最大のタブーである兵力の小出しの投入という過ちを犯し続けました。

こうして必要条件を失ったシュリーフェン計画を維持しようとしたばかりに、西部戦線では兵力の大量投入によるフランスの撃破に失敗し、東部戦線では兵力を十分補給できず、ロシアを食い止めることはできなかったのです。

これ以後、ドイツは場当たり的な応急措置を行い続け、敗北へと突き進んだのです。


必要条件を明確にしておかないと、「都合の悪いことは起きない」という間違った思い込みのもと行動し続け、最後には大失敗をすることになってしまいます。

今回の事例の場合、たとえば東部戦線を後退させてロシアの補給線を伸び切らせること。
さらに、ロシアの後方を攪乱して東部戦線を膠着状態で維持し、その間に西部戦線で決戦を挑むという戦略などが考えられると思います。

2010年12月1日水曜日

意思決定-基本的な問題の兆候

基本的な問題の兆候にすぎない問題がある。

仕事の中で起こってくる問題のほとんどがこの種のものである。

たとえば在庫についての決定は決定ではない。決定の適用にすぎない。問題は一般的である。

生産活動についての決定のほとんどが同様である。


                  『経営者の条件』より


これはトヨタでいうところの現象と『真因』の関係と同じ意味であると思います。

トヨタでは真因を発見するために「なぜ?」を5回繰り返すことで有名です。



問題の表面を見るだけなら、数百の問題はすべて違う問題に見えます。

しかし、真因に注目するならば、すべて同じ問題の現象にすぎないということがほとんどであるとドラッカーは指摘します。


生産管理部は月に数百の問題を処理する。

だが問題を分析すれば、そのほとんどがより基本的な問題の症状にすぎないことが明らかになる。


1人1人の生産管理技術者はこのことに気づきにくい。毎月数回、蒸気や高熱液体パイプの継ぎ手を直している。


‥全体に手をつけない限り、いつまでも問題は解決しない。パイプ漏れの手当てに膨大な時間を取られ続けるだけである。


                 『経営者の条件』より


根本的な問題=真因を見つけ、解決することは重要な意思決定です。