2011年6月29日水曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑫-よい人間関係

ドラッカーのマネジメントとは「成果をあげるために行動すること」です。   

ですから、よい人間関係の意味も「成果のあがる人間関係」のことになります。

成果があがっていないのであれば「和気あいあいとした楽しい人間関係」不毛な関係でしかないというのがドラッカーの考えです。

組織やチームはミッションの実現という最大の成果を目指してヒトが集まっています。

ですから、「成果はあがっていないが、人間関係は良好である」というのは言葉の矛盾なのです。

「機械の調子は最高だが、毎日故障するので使えない」といっているのと変わらないのです。

すべては成果との関係から考えるのが基本です。

良い人間関係とは、成果のあがる人間関係のことです。



(浅沼 宏和)

2011年6月28日火曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑪-適切な仕事とは

組織・チームが成果をあげるためにはメンバーに割り当てられる仕事が適切に設計されていることが必要です。

ドラッカーは「不可能な仕事、人にはできない仕事をつくってはならない」といっています。

これは成果主義型の人事制度にありがちなことですが、極端に市況が悪くなっているときに契約件数だけを成果とみなして力技で成果をあげさせようとする場合等がこれにあたります。

そのようなノルマを達成することが過半数の社員にとって困難な場合は、ドラッカーの言う「不可能な仕事」であることを疑う必要があります。

そのような状況下にあっては何が成果なのかを厳しく検討する必要があります。

これは経営者の戦略的意思決定の領域に属するものです。

こうした努力を果たさないままに「ノルマを達成せよ」と要求しても納得性は得られないでしょう。


(浅沼 宏和)

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑩-人材で決まる

組織がその人材を超えて立派な仕事をすることはできない。   
   

つまり成果の可能性は人材の可能性が上限ということです。

ヒトという経営資源にどう向き合うかはドラッカーのマネジメント論の要です。


ドラッカー「強みを生かす」ことが一番大切と考えていました。

これは個人の仕事論でも書いたことですが、好きなことを好きなようにやらせることとは全く違う意味です。

「強みを生かす」とは、成果のあがる領域で成果のあがるように全力で行動するということです

つまり、成果があがらなければ、その仕事のやり方が間違っているということです。


リーダーがチームを率いる場合、各人に大きな仕事を与えることが必要です。小さな仕事では小さな成果しかあがりません。

それではその人材の芽をつぶすことになってしまいます。大きな成果をあげるような仕事を与えることはリーダーの責任なのです。

そして、その仕事において実際に大きな成果をあげることがメンバーの責任になります。


(浅沼宏和)

2011年6月27日月曜日

ディズニーの教訓-規則よりも理念で動く

引き続いて日経ビジネス2011.6.27号の特集です。

ディズニー(オリエンタルランド)では規則よりも理念でアルバイト社員を動かす方法をとっています。


・オリエンタルランドでは全従業員に「Tips on Magic(魔法のコツ)」と書いた小冊子が配布されている。アルバイト(キャストと呼ばれる)にも配られる。
・冊子に書かれているのはマニュアルではなくディズニーの歴史・世界観・哲学・経営理念といった抽象的なもの。

・例:園内でごみ掃除をしているキャストに「何をしているか?」と聞くと、「夢のかけらを集めています」と答えが返ってきた。これはキャストが自主的に考えて答えたもの。このような例が多数ある。

・世界観を醸し出すためにキャストの1人1人が機転を利かせている。


・オリエンタルランド独自の理念「SCSE」。Safety(安全)・Courtesy(礼儀正しさ)・Show(ショー)・Efficieny(効率)の4つの重視を表明。優先度はその並び順。

・3月11日の大震災の日にディズニーでは2万人が帰宅困難となった。キャストの多くはその場に残り、食料・防寒具を笑顔で配って歩いていた。これも自主的取り組み。


理念や哲学を身につけ、共有してさえいれば、指示を待たずに判断できる。



(浅沼 宏和)

日経ビジネス-事業仕掛け人

日経ビジネス2011.6.27号で事業仕掛人について特集が組まれていました。


事業の立ち上げには大勢のスタッフと多額の資金が欠かせないという先入観を否定する特集ですね。

ドラッカーの新規事業の考え方に通じるものがあります。


事例1-アシックス:池田新・執行役員

・ランニングイベントの開催⇒初心者・女性と走り、社風を改革。

・従来のランニングショップは最先端のデザイン・機能を盛り込んだウェアやシューズを並べて消費者に売り込み、その反応を探った。
・池田氏はランニング直営店「アシックス東京」のコンセプトを、ランニング体験を最優背うさせるものとした。走る楽しみや習慣を根付かせてから商品に興味を持ってもらう戦略。

・モノより体験を売る。
・オープン3年でランニングイベント参加者は1万5千人を超えた。特に女性へのブランド訴求力が飛躍的に高まった。


事例2-ピーチ・アビエーション:井上慎一CEO

・格安航空会社(LCC)立ち上げのためにANAを退職。

・社内での新規事業ではなく新会社を設立。ANAは出資者として参加。
・「2割、3割の料金値下げなら業務改善で何とかなる。半値にするにはあらゆるものを抜本的に作り直すことが必要」(井上氏)

・「ANAの意識をきれいさっぱり捨て去る必要がある」-ANAへの依存心があるといずれは易きに流れて、目標を実現できない。



事例3-NTT西日本:木村吾郎・新ビジネス部門長


・「振り込め詐欺」が防げる世界観を動画で作り会社を説得。

・振り込め詐欺を防止するため、電話の第三者通話機能を用いるというアイディアに社内からの反対が多かった。
・高齢の親を持つ世代である社内幹部を説得するためにストーリーを描く必要があった。


割合と雑多な事例を取り上げていますが、日経ビジネスとしてはこれらの事例はいずれも通常のシャンとしての働きとは違った行動によって成果をあげているというまとめ方です。

このような動きをするタイプのビジネスパーソンを「事業仕掛人」と呼んでいるわけです。


事業仕掛人は常識にとらわれないで最も効果的な「道」を選んでいるという特徴があるということです。

そのためには、考え、創り、拓く という3つをこなすことが必要であるといいます。

1、考える :商品・事業のアイディアを具体的に考える。

2、創る  :人材・予算・時間を見極めてチームを創る。

3、拓く  :顧客が求めている者を見極めて市場を拓く。



(浅沼 宏和)

2011年6月24日金曜日

閑話休題-常盤工業のブログ

本を出してから知人から「買ったよ」と連絡をたくさんいただきました。

中には周りに勧めてくださる人もいらっしゃるようで、とてもありがたく思います。


そんな中で浜松の老舗の建設会社の市川浩透・社長のブログで大々的に宣伝していただきました。

こんなにたくさん書いていただけるとは思っておらず、感謝しきりです。


常盤工業社長・市川浩透氏のブログ



(浅沼 宏和)

2011年6月23日木曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑨-カリスマ性について

次回作の一次原稿がようやく仕上がりました。

おかげでだいぶ更新が滞りましたが、これから追いつきます。



ドラッカーのリーダーシップ論で特徴的なことは、カリスマ性を強調しないことです

ドラッカーはリーダーシップとは当たり前の仕事として捉えるべきであるといっています。


進むべき方向性を明確にし、それにどのように向かうかを明確にするということです。

特に危機に備える姿勢についてドラッカーは強調しています。


またドラッカーはリーダーは、信頼されることが必要であると言っていますが、この信頼の意味が独特です。


「信頼=好かれること」ではないというのがドラッカーの基本的なスタンスです。

では、何がポイントなのでしょうか?


(浅沼 宏和)

2011年6月20日月曜日

閑話休題-書店に並ぶ

ようやく拙著「世界一やさしいドラッカーの教科書」が書店に並びました。

浜松駅ビルのメイワンにある谷島屋書店では店頭とドラッカー・コーナーのそれぞれに並べていただけました。

「もしドラ」と同格に扱っていただいてありがたい限りです。


2011年6月19日日曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑧-継続的学習

ドラッカーは継続的な学習を重視していました。

個人についてもそうですし、会社等の組織全体についても同じように考えていました。

個人の場合、継続的な学習は責任を自覚することで自発的にやるべきものとされています。


ドラッカーの仕事論では個人は全力を尽くすものとされています。

その意味は単にその場であらん限りの力を振り絞ることの他に、力を発揮する能力を高めておくということも含まれています。これが継続的学習の必要性です。

また、責任の自覚に基づいて学習していくことは人格面を向上させることになり、人間としての重みも加わってくると考えていました。

ドラッカーは 能力開発 + 人格形成 = 自己開発 であり、その中心にあるのが責任と考えたのです。




(浅沼 宏和)

2011年6月16日木曜日

閑話休題-原稿締め切り

しばらくブログの更新が滞ってしまいました。

私の目標は1日1更新なのですが、多忙になるとたまに穴をあけてしまいます。

昨日、拙著「世界一やさしいドラッカーの教科書」が刊行されたのですが、それは次回作の原稿締め切り日でもありました。

次回作は企業事例を10社も入れるのに、執筆期間が短めなので本当に厳しかったです。
これから相当手直しがいるのですが、とりあえずはホッとしています。



今年は原稿をかなりたくさん書いています。

年明けに「近代中小企業」の別冊付録でドラッカー入門を、2月にはドラッカー学会向けの論文を、3月はNPO法人東海マネジメント研究会で刊行する本の分担執筆分を、4月から5月初旬が「ドラッカーの教科書」を、5月下旬から昨日までは次回作の原稿といった有様です。

全部合わせるとA4版の用紙ですと250枚ぐらいにはなったと思います。我ながらよく書きました。

次々と締め切りがやってくる小説家や漫画家の気持ちもよくわかりました。腕組みしたまま1時間ぐらい何も浮かばないということもざらにありました。

ブログやその他の仕事上の文章などを合わせると1000枚近く書いたような気がします。

野球で1000本ノックを受けると最後にはムダな力が取れて最小の力で最大の効果のある動きができるようになるそうです。

文章力もそうなることを期待したいものです。



(浅沼宏和)

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑦-知りながら害をなすな

ドラッカーはビジネスパーソンの心構えとして「真剣かつ誠実な態度」を求めています。

その中にはプロフェッショナルの倫理基準となるものがあります。

それは「知りながら害をなすな」というものです。


これは古代ギリシアの有名な医者であるヒポクラテスの言葉だそうですが、医者に限らずすべてのビジネスパーソンの行動の指針となるべき言葉です。

簡単に言うと 知っていることについては全責任を負っている ということです。

自分自身が知っていることで他人に迷惑をかけるようなことがあってはならないということです。

これは間違った行動をしないという場合以外にも、積極的に行動しないことで他人に迷惑をかけてはならないといった意味も含んでいます。

こう考えるとこの基準はかなり厳しいものであることがわかります。

自分が知っていることの影響を予測し、可能な打ち手をすべて打たなければならないということです。

完璧な準備を要求する基準といえるでしょう。



(浅沼宏和)

2011年6月10日金曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑥-神々が見ている

ドラッカーは真剣かつ誠実な姿勢の説明として、ギリシアのパルテノン神殿を建てた彫刻家のフェイディアスの例を取り上げています。


フェイディアスの請求書の支払を拒む会計官とのやり取りはほほえましい感じがします。


その時のフェイディアスの言葉が「神々が見ている」というものでした。




この感覚は日本人にとってはなじみが深い言葉でしょう。

つまり「お天道様が見ている」という言葉とほとんど同じ意味だからです。


ここから導き出される仕事の倫理は容易に推測がつくことでしょう。



(浅沼 宏和)

2011年6月8日水曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」⑤-最善を尽くす

ドラッカーは「真剣かつ誠実な姿勢」を色々な角度から説明しています。

最も基本となるのが最善を尽くす姿勢です。


「ベストを尽くします」「最善を尽くします」とは言い古された言葉です。

誰もが何百回も使った言葉でしょう。

しかし、この意味は人によってまちまちに使われています。


ドラッカーはこうした当たり前の言葉の意味を掘り下げていきます。

最善を尽くすという言葉をどう説明したらよいでしょうか?

本書ではドラッカー、チャップリン、ヴェルディの言葉からその意味を掘り下げています。


本書を読むと、最善を尽くすとはなかなか厳しい意味があることがお分かりいただけると思います。


(浅沼 宏和)

2011年6月7日火曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」④-真剣かつ誠実な姿勢

拙著ではドラッカーのマネジメントとは成果をあげるために行動することである」と定義するところからスタートしています。

で、次に具体的な話に入りたいところですが、その前提となる心構えの話になるわけです。

ドラッカーは20世紀においてマネジメントという新しい科学分野を切り開いた人物ですが、最後の最後に立ち戻ってくるのは心構えです。

ドラッカーはその心構えをIntegrity(真摯さ)と表現しています。


真摯さという表現は日常的にはあまり使いませんから、私の本では「真剣かつ誠実な姿勢」という表現に変えました。


こちらの方が「まじめにがんばる!」というニュアンスが伝わるのかなと思ったからです。

こんな心構えは当たり前に聞こえるかもしれませんが、ドラッカーはこうした言葉についても「なぜ当たり前なのか?」「それは何を意味するのか?」を掘り下げるのです。

ドラッカーの本のすごさは誰が読んでも当たり前の話を限界まで掘り下げていくことなのです。


ビジネスパーソンの心構えはとても大切ですから、本書でも3つの角度から説明を加えました。


(浅沼 宏和)

2011年6月6日月曜日

◆拙著刊行のお知らせ

世界一やさしいドラッカーの教科書

浅沼宏和著 / ぱる出版

定価:1,500円+税


四六版 210ページ 刊行日6月15日

ISBN978-4-8272-0644-9

1章 なぜ、ドラッカーのマネジメントが仕事に必要なのか

2章 仕事で成果をあげるための基本ルール

3章 リーダーシップで成果をあげる鉄則

4章 経営戦略を実行して最大成果をあげるために必要なこと

5章 マーケティングとイノベーションの実践ルール

6章 マネジメントの基本を押さえて“未来”を作り出そう


最近、ドラッカーの入門書が多数出ていますが、本書は体系的であることと、基本原則に焦点を絞っている点でタイプが異なるものとなっています。

学生でも読めるようにやさしい文体にしましたが、内容自体は決して初歩的ではないと思います。

コンセプトとしては「社長が社員に読ませたくなる本」というものです。

ぜひ、ご一読していただければと思います。


*地元浜松では、谷島屋書店、BOOKアマノ、イケヤなど大型書店の各店舗の店頭に並べていただけることになりました。静岡も含めますと30店舗以上の店頭に並びます。




(浅沼 宏和)

リスク対応に関する新しい考え方

日経ビジネス2011.5.30号では事業継続対応策についての特集が組まれていました。


事例1:日本コカコーラ 「リスクは毎年洗いなおす」

・シナリオは想定にすぎないので、細かな決まり事より対応力を磨くことが大事。

・全社リスクを毎年洗いだし、対応策を追加していく。

・リスクは発生可能性と影響度をそれぞれ5段階評価し、脆弱と判断されたら対策計画・責任者・期限を決める。



事例2:富士通 「年200回の訓練」

・災害や事故の対応・行動計画を決め、グループ全体で年に200回の訓練を実施する。

・想定外の事態が起こりうると考えて、人の力現場の力でカバーできるような訓練プログラムを実施している。

・事業継続能力の要素を「ハード=予防・減災対策」「ソフト=行動計画」「スキル=対応能力」



事例3:今野製作所 「1枚の紙で復旧計画」

・SCOR(サプライ・チェーン・オペレーション・リファレンス・モデル)と呼ばれる業務プロセスの記述書によって受注生産工程をみえる化する。

・SCORでは、計画、購買・調達、製造、配送、返品の5つに分ける。それぞれの中身はD1(見込み生産品の配送)、D2(受注生産品の配送)、D3(受注設計生産品の配送)に分類。

・SCORチャートを震災でダメージを受けた工場の復旧手順の検討に利用。

・中小企業には綿密な計画は不要。自社の規模や業種に合った独自の手法でやればよい。


他にも2つの事例がありましたが、各社各様です。

しかし、共通して言えることは大災害の時は事前の理屈どおりにいくとは限らないので、その時その時の柔軟な行動が大切であるということです。

それについて、次のような記事がヤフーに掲載されていました。


避難開始まで40分=保護者に説明会―児童74人死亡不明の大川小・宮城


 東日本大震災の津波で在籍児童74人が死亡、行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校は4日夜、同市内で、震災後2回目の保護者説明会を開いた。避難の経緯を調査した市教育委員会は、地震から避難開始まで約40分かかったことを明らかにした。

大川小学校は、地域の避難場所に指定されていたことと、集まってくる住民や保護者とのやり取りや点子等の手順をマニュアル通りにやっているうちに時間が経ってしまい、津波に多くの児童が飲み込まれるという悲惨な結果になってしまったわけです。

特に大きな組織や行政で見受けられる問題点だと思いますが、本来の目的ではなく「決められた手順は何か」という本末転倒なことに注意が向いてしまうということです。

ドラッカーの意思決定論では、「意思決定の際に明確化した必要条件は何か?」を重視することになっています。必要条件が満たされない場合には意思決定の内容を改定する必要があるということです。

この場合、「大川小が安全な程度の震災であるならば」マニュアル通りでよかったわけです。

津波警報がスピーカーで地域に流されていた状況でマニュアル通りにこだわった対応は失策であったといわざるをえません。



(浅沼 宏和)

2011年6月5日日曜日

閑話休題-クリステンセン教授の近況

現代のイノベーション理論の第一人者と言えばハーバート大のクリステンセン教授です。

教授は現在、重い病の床にあるそうです。

日経ビジネス2011.6.6号にクリステンセン教授の近況と、日本の災害に対する教授のエピソードが掲載されていました。

ところで、クリステンセン教授の提唱しイノベーションのジレンマという概念の概要は以下の通りです。


1.優良企業は顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進め、ニーズのないアイデアについては切り捨てる。
イノベーションには従来製品の改良を進める持続的イノベーションと、従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがある。
優良企業は持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせており、破壊的イノベーションを軽視する。




2.優良企業の持続的イノベーションの成果はある段階で顧客のニーズを超えてしまい、顧客はそれ以降においてそうした成果以外の側面に目を向け始め、破壊的イノベーションの存在感が無視できない力を持つようになる。



3.他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損してしまい、優良企業は自社の地位を失ってしまう。

 
つまり優良企業は自社の勝ちパターンによって首を絞められることになるという話です。
 
日本製の携帯電話のガラパゴス現象などには当てはまるかもしれませんね。
 
クリステンセン教授は病の中で被災に苦しむ日本の経営者からの手紙に対して次のような助言をしたそうです。
 
おおよそ次のような内容です。
 
私は病と格闘するなかで絶望的な気持ちになっていたが、他の人に奉仕をする心を忘れていた。
 
私の不幸の原因は私の自己中心的な考え方にあって、自分自身を“復興”するプロセスを通して、幸福とは私利私欲、私心を捨てて初めて手に入るものであることに気がついた。
 
人の命ははかない。人生で最も大切なことは後回しにしてはいけない。「いつの日にか」という日が必ず訪れるという保証はどこにもないのだ。
 
 
イノベーションの大家であるクリステンセン教授の助言にはイノベーションに全く触れていないというのが印象的です。
 
クリステンセン教授の言いたいことは、限りある命を与えられた人間がなす「仕事」の目的を見つめなおそう、今の日本人ならその意味が分かるはずだということのようです。


(浅沼 宏和)

2011年6月4日土曜日

閑話休題-ユニクロの告訴

先月、私が長々と解説した「ユニクロ帝国の光と影」の内容をめぐり、発行元の文芸春秋社をファーストリテイリングが告訴したそうです。

ポイントは、ユニクロではあたかも低賃金で過重な労働を課しているかのように書いたことが事実に反するということです。

あの本では、柳井氏が偏屈な経営者であるため、身内が次々と去っていくという趣旨の批判が書かれていました。

私はその意見には反対で、あれだけの企業を起こすには強烈な個性が必要だったと思うのです。

たしかに柳井氏の目標設定はものすごく高いのでついていくにはなかなか大変でしょうが、それで批判されるのもどうかなという感じです。

柳井氏はドラッカー経営を提唱していますが、同じくドラッカー信奉者である江副浩正氏のリクルート社は社員が次々と入れ替わっていて、そこでの修行を生かしてみな大きく羽ばたいているわけです。



今回の告訴のポイントは労働者に対して過酷な扱いをしているということで、これはグローバル企業にとっては見過ごせない話です。

特に海外の工場での過酷な労働環境の放置は、1990年代にCSR上の大問題となったテーマです。

私の認識ではユニクロは業績好調を受けて待遇は業界内でかなり良いほうと認識しています。
ただ本書はユニクロの経営戦略の歴史がとてもわかりやすいので、その辺は熟読させていただきました。


(浅沼 宏和)

2011年6月3日金曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」③-成果がすべて

「世界一やさしいドラッカーの教科書」(ぱる出版、定価1,500円+税)は高校生でも読めるぐらいの文体で書かれています。

内容は決して初歩的ではありませんが、多くの方に読んでいただき、仕事で少しでも大きな成果をあげていただくためには「読みやすさ」が必要であるからです。


特に出だしの1~3章はドラッカーの基本原則を限界ギリギリまで単純化することに挑戦しました。


やさしい話も何度も色々な角度から重ねて説明しました。


頭に焼き付けていただくことを重視したからです。

ビジネスパーソンは成果がすべてです

「こんなにがんばったんだ」という話はいいわけでしかないというのがドラッカーの基本的な視点です。

こういうと勘違いされそうなのですが、「営業ノルマが達成できない=ダメ人間」という単純な話ではありません。

成果の中身は何ですか?ということなのです。

自分が目指している成果をはっきり言葉にして認識している人は少数派であると思います。

これが具体的でないと行動の目的が定まりませんから自然とこじんまりとした仕事ぶりになってしまいます。

最終的な成果は重要ですが、そこに至るまでのマイルストーン(一里塚)も成果としてみることができるかもしれないということです。


(浅沼 宏和)

2011年6月2日木曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」②-本のコンセプト

拙著「世界一やさしいドラッカーの教科書」(ぱる出版、定価1,500円+税)のコンセプトは「社長が社員に読ませたくなる」というものです。


すべてのビジネスパーソンには成果が求められています。


ドラッカーのマネジメント論の定義は「成果をあげるために行動すること」です。


ですからすべてのビジネスパーソンはマネジメントの基本を身につけていなければならないことになるのです。


ビジネスパーソンは具体的な仕事のやり方の他に、成果をあげるために必要な基本行動を教えてもらう機会はあまり多くないと思います。

本書はそういったニーズに応えられるようにまとめました。

ビジネスパーソンの正しい構え方入門といった感じでしょうか


ドラッカーのマネジメント論のすごいところは、成果をあげる基本原則について業種・時代・地域や国を問わないところです。


ドラッカーのマネジメントの基本を押さえたうえで個別の技術や知識を身につけることで、ビジネスパーソンとしてより大きくなれるのではないかと思います。

そうした原則を生来の勘の良さで身につけている方も多いと思いますが、圧倒的多数は教えてもらわない限り、そうしたことが身につかないと思うのです。

本書はおそらく経営者の方が読むと「その通り!」と思うはずです。「社員がこの通りに行動してもらえたらどんなに良いだろう」と感じられると思います。

ですから本書のコンセプトは「社長が社員に読ませたくなる」なのです。

文体も限界ギリギリまでやさしくしました。

高校生でも読めるぐらいのイメージにしたのは幅広い読者層をターゲットにしたからです。

これは編集者さんからのアドバイスでした。



(浅沼 宏和)

2011年6月1日水曜日

「世界一やさしいドラッカーの教科書」①-最低限必要なドラッカー論

6月15日に拙著「世界一やさしいドラッカーの教科書」が刊行されます。(ぱる出版、定価1,500円+消費税)


そこで、著者である私自身による解説を行おうと思います。


内容としてはあくまで本の補足説明ですから、「このブログを見たらもう買わなくていいや」とはいわずに是非ご購入くださるようお願いいたします。



ドラッカーのマネジメント論を体系的にまとめることはとても困難です。

市販のすべてのドラッカー本と同様に、拙著も簡略化によって、ドラッカー自身の思考のきらめきが失われるという大きな欠点を抱えていると思います。


その代わり本書では「実践するために最低限必要なドラッカー論とは何か」にはこだわってまとめています。


そこで中心となるのがドラッカーのマネジメント論の定義です。



本書では、マネジメントとは成果をあげるために行動していくこと と定義しました。


意外なことですが、定義を明確にしているドラッカー本は少数派です。

しかし、これを定義しないとドラッカーのマネジメント論は体系化できないのです。

この定義を行わないと、バラバラの知識を並べるだけの本になってしまいます。

拙著の場合、この定義に基づいて、個人、チーム、会社のいずれにおいても行動を成果に結びつけるという視点でまとめることができました。

成果という点では組織が大きくなるほど成果も大きくなります。拙著でも仕事についての身近な観点から会社全体へと話を進める流れにしてあります。


(浅沼 宏和)