2010年10月29日金曜日

創発戦略-ミンツバーグの理論

ミンツバーグは、その経営戦略論も独特です。

私が昔、共著で出した『キーワードで読む経営学』でミンツバーグの紹介をしたことがあります。

そこの部分を抜き出しますと






経営学で大勢を占める分析的な経営戦略論を批判し独創的な戦略概念を提起したのがヘンリー・ミンツバーグである。

ミンツバーグはアンゾフからポーターに至る経営戦略論の主流が戦略を事前に計画するものととらえている点を批判し、企業の優れた行動や風土がパターン化して新たな戦略となる「創発された戦略」の概念を提起した。

これは事前の戦略に対する事後の戦略ともいうべき考え方であり、両者のバランスの重要性が指摘された。
ミンツバーグの理論は欧米の産業界を中心に広く支持されている。

       
     (浅沼宏和 「主な経営学者・経営学説」 『キーワードで読む経営学』より)




つまり、現場の取り組みがパターン化して自然と戦略が出来上がってくるという感じの理論なのですが、日本の経営はどちらかというとミンツバーグの考えがしっくりくるでしょう。

しかし、そのミンツバーグも事前の戦略がなくてもいいといっているわけではありません。

使い勝手の良い事前の計画立案フレームワークがあった方がよいわけです。

2010年10月28日木曜日

マネジャーの役割-ミンツバーグの理論

現在、恒例の年末セミナーに向けて少しずつ準備を進めています。

セミナーではドラッカーの理論を中小企業の現場で使えるように検討した試案を発表するのですが、ドラッカー以外の理論家たちもひそかに意識しています。

なかでも、私はミンツバーグを重視しています。ミンツバーグは日本ではあまり知られていませんが、世界的にみるとドラッカーと肩を並べるビッグネームです。

ミンツバーグは経営学を高尚なものではなく、「ぶっちゃけ本当はこれが現実でしょう?」と言ってのけるタイプの人物で、そのためMBA教育には批判的です。

ミンツバーグがマネジャーの役割をまとめているのですが、なかなか奥が深いのでほんのさわりだけで恐縮ですがご紹介します。


マネジャーの3つの役割 (細分化すると10の役割がある)


・公式な権限と地位に基づいて3つの役割が導き出される。


1、対人関係における役割

①看板的役割    :各種儀式にまつわり義務
②リーダー的役割  :社員の士気を高め、鼓舞する
③リエゾン的役割  :公式の権限外の他部署やその他の人々との接触


2、情報にかかわる役割

①監視者としての役割  :多くの情報は口頭で得る。 噂や憶測も多い。
②散布者としての役割  :自分が保有する情報を部下に知らせる
③スポークスマンの役割 :情報の一部を組織の部外者に送り届ける。


3、意思決定にかかわる役割

①企業家としての役割  :担当組織を改善し、変化する状況に適応させようとする
②障害排除者の役割  :変化に伴う障害にやむなく対処する
③資源配分者の役割  :もっとも貴重な資源はおそらく自分自身の時間
④交渉者の役割     :マネジャーは相当な時間を交渉に費やす


今回はこれぐらいのまとめですが、実はミンツバーグは日本の中小経営者にとってはとてもなじみやすい考え方を持つ大物です。日本で知られていないのが不思議なくらいです。

来年以降、ミンツバーグの理論をもとにした研修なども企画していますので、ブログを通じても時々理論を紹介していきたいと思います。

2010年10月27日水曜日

閑話休題-準備に関する名言集

木を切るのに8時間もらえるのなら、私は最初の6時間を斧を研ぐことに費やす。

             ‥‥リンカーン(第16代アメリカ大統領)


成功する商売の術は、90%の準備と10%の売り込みからなる。

             ‥‥バードランド・キャンフィールド


チャンスは周到な準備をした者だけにやってくる。

             ‥‥小柴昌俊(ノーベル賞学者)


しっかりと準備もしていないのに、目標を語る資格はない。

             ‥‥イチロー


好調の時こそ次の準備をせよ。

             ‥‥佐伯旭(シャープ二代目社長)


「勝つ意欲」はたいして重要ではない。そんなものはだれでも持っている。

重要なのは「勝つために準備する意欲」である。

            ‥‥ボビー・ナイト(バスケットボール・コーチ)


チャンスが訪れる日に備えなさい。

幸運とは、準備とチャンスの出会いなのです。

            ‥‥ロイ・D・チャピン(米国の元商務長官)


どれだけの備えをしたかで結果は決まる。

            ‥‥野村克也


人生において必ず幸運が訪れます。

その幸運を逃さないように準備することが大切。

            ‥‥ジュリー・アンドリュース(女優・歌手)




段取りや準備の重要性を述べた名言集です。


たまたま10月25日に、プリマドンナの吉田都氏が引退公演の準備をしているところをNHKの「プロフェッショナルの流儀」という番組でやっていました。


満身創痍の体であるにもかかわらず、一切練習に手を抜かず、痛々しいほどの追い込み方をしている姿が印象的でした。

見守る英国人スタッフたちが彼女の気迫に圧倒されている様子がよく伝わってきました。


吉田都氏には、「舞台で100%の実力を発揮するためには、日々の練習では120%の努力を重ねていく」 という信念があるそうです。

それだけの覚悟があるからこそ、東洋人であるにもかかわらず英国ロイヤルバレエ団でトップに立てたのであると思います。


ドラッカーはプロフェッショナルとは全力を尽くすことを約束する人であると述べています。

この「全力を尽くす」という意味は文字通りであると思います。


精根尽き果てるまで取り組んだのか? これが基準になると思います。

2010年10月26日火曜日

書評-「ビジネスで一番大切なこと」②

ヤンミ・ムン教授のマーケット論の続きです。

現在のビジネスシーンでは差別化が行き過ぎて意味を失っているというのが彼女の主張でした。


・市場が成熟化しすぎると二つの傾向が表れる。一つは、競争が行き過ぎ過剰な活動が展開されて消費者の目に違いが見えなくなること、もう一つは、市場の成熟化で消費者にとってはそのカテゴリーのあらゆるブランド全体との関係になること。

・過度に成熟したカテゴリーに対する消費者の態度の5タイプ

①知識豊富なカテゴリー通  ;カテゴリーに強い愛着を持ち、目が肥えているが、特定のブランドを選ばない。

②目ざとい買い物上手  ;実利を重んじる取引志向の消費者。バーゲンやポイントに詳しい。

③関心の薄い現実主義者  ;ブランドの違いに無関心。習慣・価格・便利さによって購買を決定する。

④いやいや関わる不本意な人々  ;そのカテゴリーに渋々かかわっている。親近感の欠如は混乱、ストレス、気まずさとなって現れる。

⑤理屈抜きの熱心な愛好者  ;市場が過度に成熟するとこの手の愛好者はレトロに見えるが、どの市場でもわずかに生き残っている。


・市場が飽和状態になると、消費行動は製品やブランドではなく、カテゴリー全体との関係に左右されるようになる。ブランドロイヤルティはほとんど見られなくなる。

『競争の群れ』から抜け出すには3つの可能性がある。 ①リバース・ブランド ②ブレークアウェー・ブランド ③ホスタイル・ブランド


1、リバース・ブランド   家具メーカーのIKEAが好例。

・他社が競争には欠かせないとみなしている便益の提供を控える。

・余分なものをそぎ落とすが、予想もしない形でぜいたくなものに変える。

・ともすればしみったれた製品を独特のきらめきで取り囲む。

・期待するものを取り上げ、期待しないものを提供する。

・何かは足りないが何かは多い。共存は無理だと思うものが共存している。

・競合他社とは出発点がまるで違うからこそ、何年もの間、独自の差別化に成功している。


2、ブレークアウェイ・ブランド   ソニーの犬型ロボット AIBOが好例。

・AIBOはロボットではなく「ペット」と位置づけられたため、「20万円もしたのに性能が悪いロボット」と批判されず、「うちの子はわがまま」と顧客に愛着を感じさせた。

・意図的に製品を作りなおす。ロボットを提供するが、ペットとしての役割を果たさせる。

・新しい定義を通じて製品にアプローチするように顧客に働きかける。

・カテゴリーの境界線から飛び出そうとしながらも、その一員でいるメリットを理解している。

・スウォッチは、季節ごとのコレクション提供・セレクトショップ・芸術家によるデザイン等、ファッション業界で当たり前のことを時計業界で行った。

・スウォッチはカテゴリーの境界線から飛び出そうとしながら、その一員としての恩恵にもよくしていた。

・歩幅をギリギリまで広げる。カテゴリーから外れない範囲で原形をとどめようとする。

・枠組みを変えると違うタイプの行動を呼びさまされる。

・日常的に消費されている商品のほとんどには別の形がありうる。


3、ホスタイル・ブランド  ミニ・クーパー、ベーシング・エイプ(日本のファッション・ブランド)が好例。

・消費者にこびず、その気がないふりをする。

・消費者の意向にひるまないブランドは強い愛着を獲得する。

・自社製品の長所も短所もさらけ出し、もし気に入らないのならそれまでだと言ってのける。

・迎合や追従を拒み、製品のででこぼこを磨いて直そうとはしない。

・消費者の懸念に一切反応せず、市場のフィードバックにも反応しない。これ以上ないほど偏ったポジションをとる。

・愛憎の衝突するエリアで生計を立てている。

・希少性は重要を呼び起こす。


ムン教授は、「あらゆるビジネス戦略は最後には失敗する運命にある」という話を書いています。

ビジネスの世界では、どんな戦略であっても永遠を期待することはできないわけです。

ある程度の期間にわたって持続する競争優位を得られれば上出来と考えるべきであるというわけです。


ですので、差別化についても非常にドライな視点を持っているようです。

ただし、本書はエッセイ調で、非常に親しみやすく読みやすい本です。いわゆる「学者調」とは違いますので気楽に読めます。

ムン教授は、上記の3つの戦略は、厳密に考えないで良いとも言っています。アップル社などは、3つの戦略を同時につかっているとも述べています。

ここではカテゴリーを厳密に区分するよりも、ある程度の目安として考える方が有益でしょう。


教授の差別化論は斬新で、今後も引用されることが多くなるでしょう。



2010年10月25日月曜日

書評-「ビジネスで一番大切なこと」①

ヤンミ・ムン『ビジネスで一番大切なこと』ダイヤモンド社、2010年  定価 1500円+税


ヤンミ・ムン氏はハーバード・ビジネススクールで競争戦略論のマイケル・ポーター、破壊的イノベーションのクリステンセンと並ぶ大人気のマーケティング論の教授です。

彼女は、今の企業が行っている差別化はほどんど差別化になっておらず、せいぜい「群れ化」を促進しているにすぎないと主張します。

本書は随筆風の柔らかい文章ですが、言っていることは意表をついています。

彼女の意見は今後重要視されていくような気がしますので整理しておきたいと思います。


・ビジネスの成功のカギは競争力にある。競争力とは他社といかに差別化するかである。
 ところが、その差別化が細かくなりすぎたために無意味なものになってしまった。

・企業が激しく差別化を争うほど、その違いはプロでなければ見分けがつかないものとなる。

・雑魚の集団から抜け出し、消費者との純粋なきずなを生み出せる傑出した企業は残念なほど少ない。

・何かを測定しだすことはそれを重視すると決めたに等しい。競い合う群れが一斉にその方向に走り出す。

・よくある「ランキング」は一匹狼の存在を危うくする。


・一定の測定方法が定着すると、逸脱者、異端児、冒険者が生まれにくくなる。

・全員が同じ方向を目指せば、誰も抜きんでることはできない。


・消費者に聞くことは「競合他社が何を提供しているか」を聞くに等しい。その結果、「アウディのように走るボルボ、ボルボのように走るアウディ」が生まれることになった。

・相違点を可視化すると当事者たちは互いの違いを際立たせるのではなく、解消しようとする。

・群れに参加しようとする者は二つの要件を求められるだけ。①感知機能-周囲が何をしているか察知する ②反応性-周囲が方向転換したら、それに合わせて調整する。


・企業が熱心に差別化を競い合うほど、その違いは消費者からみて小さくなっていく。


・ビジネスパーソンは型通りで意外性のない製品の改善を加える傾向がある。

 ①よりよく新しく進化させる「付加型」

 ②選択肢が掛け算のごとく増えていく「増殖型」

・付加型にしろ増殖型にしろ、本来の目的を見失い、その改良自体が自己目的化する。過度のセグメント化、過度の競争の結果、変化そのものがコモディティ化してしまう。



・消費者はある段階まで来るとそう簡単には心を動かされなくなる。

・差別化のための努力があまりに実を結んでいない。顧客満足度も上がっていない。




差別化といえば、経営戦略の最重要概念です。その意味自体がビジネスパーソンに正しくとらえられていないというのがムン教授の主張です。

これは重要な指摘であると思います。


次回も本書のまとめを続けます。

2010年10月24日日曜日

Why型思考とWhat型思考の違い

しずぎんビジネスナビの経営レポートのベストセレクション集におもしろいものがありました。

ここでは、「頭を使っていない。考えていない」アクションをWhat型思考と位置づけ、

「良く考えた」アクションをWhy型思考と位置づけています。

What型思考の人は、目にしたもの、耳にしたことをうのみにして思考停止状態のまま行動します。

具体的には

  • 上司に言われたことをそのまま実行するだけ。一切応用が利かない
  •  お客様の要望をそのまま聞くだけ、何の疑いもなく実行する
  •  誰かがいった話をそのまま写しただけの報告書を作る
  •  規則やマニュアルをそのまま守ることだけが正しいと信じている
  •  「前と同じ」にやればすべて安全だと考えている。

といった判断・行動をする人がそれに該当するといいます。

しかし、最近では環境が激変し、こうしたWhat型思考が通用しなくなったといいます。

現在は、「正解のない」「先が読めない」になったのであり、黙っていても仕事が来る成長の時代から、自分で仕事を作り出すことが求められる時代となったといいます。

こうした時代に合うのが、常に考え抜いたアクションを行うWhy型思考の社員であるというわけです。



今となっては当たり前の話ですが、2つの類型をうまくネーミングしていると思います。

ドラッカーのコスト管理論を現在の乱気流時代に応用して考えると、既存の仕事の効率性を最大化し、資源(特に時間)の余裕を生み出し、それを将来の成果につながる分母を作り出す行動(次々と「打ち手」を出し続けること)を行うことがWhy型思考に当たるのではないかと思います。


2010年10月23日土曜日

閑話休題-NHK 会社の星

教育テレビで深夜に「会社の星」という番組をやっています。

若手のビジネスパーソンが仕事や組織の中で成果を上げる方法をバラエティー感覚で情報提供するという番組です。

私も時々視聴しています。


先日、人事担当者が具体的なビジネスシーンにおける行動を評価するポイントを問題形式で回答する場面がありました。

少し面白かったのでご紹介します。



問1 企画書を作成途中に上司から「ちょっと見せて」と言われました。







 A:「考えをまとめてから後でご報告します。」と返答する


 B:「途中ですがいかがでしょうか。」と報告する





答え: Bが高い評価。ポイントは「柔軟な行動ができる人材」であること




問2 レベルが高すぎるプロジェクトを上司から任されました。






 A:ダメもとで挑戦する


 B:自身のスキルを冷静に判断し辞退する



答え: Aが高い評価。ポイントは「困難を克服する姿勢」を見せたこと

 
 
この問題と解答は、経営者やマネジャーの立場にある人なら迷うことなく同じ回答になるでしょう。
 
つまり初歩的なレベルの状況判断です。
 
 
しかし、こうしたレベルの判断についても駆け出しのビジネスマンの判断力を磨くという意味では良いのかもしれません。
 
実際に体験しなくても、こうした問題でシミュレーションしておくことは意味があると思います。
 
 
この番組を見ていて、こうした状況判断の事例を集めた基本行動マニュアルを作成してみようかと思いました。
 
事例を集めて体系的に編集するのは結構大変そうですが、考えてみたいと思います。

2010年10月22日金曜日

タイムマネジメント-こまぎれの時間

仕事のほとんどは、わずかの成果を上げるためでも、かなりのまとまった時間を必要とする。

こまぎれでは意味がない。

                         『経営者の条件』より


この考え方はドラッカー独特のものであると思います。

一般的に、タイムマネジメントというと、細切れ時間の活用法と理解されがちです。

雑用をテキパキこなすことはもちろん否定されるべきではありません。



しかし、最大の目的である「成果を上げる」ことに注目すると、「まとまった時間をどう使っているか」が一番大事であるはずです。



時間のまとめ方や、管理の幅については業種や仕事の内容で差がつくでしょうが、時間をまとめるという活動を意識的に行う必要がある点は変わりません。

例えば、1日を午前・午後で分けて、それぞれなるべくまとまった時間投入を行うようにするやり方などが可能であると思います。

私の場合、日曜日の夜にその週の午前・午後10回分の時間の使い方のスケジュールを組んでおくことを習慣化しています。



こうして組んだ予定について週末に評価し、自分の時間の使い方(つまり成果の上げ方)が的確であったかを判断しています。

2010年10月21日木曜日

黒字社員と赤字社員 -再考

今月初めに書評を書いた「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」は反響がとても大きく、「プリントアウトして社内で回覧した」というご連絡をあちこちからいただきました。

ということで、あらためてそのキモの部分を整理し、解説を加えたいと思います。


本書が主張しているのは一言でいえば『徹底的な時間活用』です。

いいかえると「あらゆる仕事は投入時間と成果の比率を最大化するという視点から深く考えられていなければならない」ということに尽きてしまいます。

それを手を変え品を変え色々な角度から説明を加えているわけです。具体的に説明します。紫字が私の解説です。




・黒字社員は仕事のスピードがある。時間内にできるだけ多くの仕事をこなす意識が高い。


*あげた仕事の量と質で仕事を評価する。「何時間かかった」という視点は、プロダクト・アウトの視点にすぎない。仕事の評価はかけた手間(コスト)ではなく質と量できまる。


・黒字社員は時間コストに敏感 (時間と成果の比率について皮膚感覚がある)

・手待ちコストの削減も立派な利益貢献 (ムダな移動・ムダな行動・資源使用等にも敏感)


*定型業務コストは少なく見ても1時間当たり1,200~1,800円程度(一般社員)、
役員・上位役職者クラスなら時間当3,000円以上になると考える。(大企業はもっと高くなる)
次の計算式でおおまかに判断:  年収÷12÷月平均勤務日数÷1日平均勤務時間 )

*時間を余計に費やしたら顧客に対してその分を多く請求する必要があると考える。
追加請求すべき金額は、時間コストの2倍以上(中核社員なら3倍以上)の金額が目安。

*逆に、時間を1時間短縮したら時間当たり人件費の2倍の価値貢献をしたことになる。

*人件費コストは手待ち時間だけではなく準備時間・事後処理時間まで含めて考える。

*時短で空いた時間でさらに別の仕事をこなして価値貢献をするのが黒字社員。

*黒字社員の発想は常に自身の人件費コストをもとにしており、それは行動・発言のはしばしに表れている。


・会議・ミーティング・朝礼は時間コストをかけている。黒字社員は発言への意識が高い。


*時間を使ったら貢献するのがビジネスパーソンの基本行動。会議への貢献とは発言するか実行すること

*会議等については貢献するか時間を浪費するかのどちらかでしかない。

*顧客との面談も同じ論理。面談中に意味ある発言(情報提供)もしくは課題の発見がないならば時間の浪費。面談の価値を当人が認識できなければ時間の浪費

*顧客面談・社内会議・ミーティングなど社内外のコミュニケーションでは、意識的な努力がなければ価値創出をしたことにならない。価値創出しなければその時間自体が無意味になる。

*「いい話を聞いた」だけの研修も時間の浪費


・黒字社員は自社のビジネスモデルっているがわかっている


*あらゆる行動が自社の上げるべき最終成果に向けられている。

*最終成果に向けられない時間投入はムダになる。

*その状況において価値ある行動や発言が何かが判断できる。

*時間や資源を使う意味について隅々まで意識が届いている。ほんの5分を使うことの意味、紙1枚余分に使うことの意味まで意識されている。




非常にざっくりとしたまとめですが、焦点を絞ったほうが分かりやすいと思います。
こうしてみると本書はとてもドラッカー的であることが分かります。

ここのところドラッカーのタイムマネジメント論を検討していますから、合わせてお読みいただければより理解を深めることができると思います。





タイムマネジメント-何かを伝える

何かを伝えるには、まとまった時間が必要である。

計画や方向付けや仕事ぶりについて、部下と15分で話せると思っても、勝手にそう思っているだけである。

肝心なことをわからせ、何かを変えさせたいのであれば、1時間はかかる。

                    『経営者の条件』より



ドラッカーの時間論は、成果の上がるべきところに時間を集中投入するというのが根幹です。

しかし、コミュニケーションについてはこの原則から少し外れると考えているようです。


単なる業務上の情報伝達であるならば、5分、10分でよいでしょうが、根本的な基準や方針については、その意味や満たすべき条件についてきちんと理解させねばならないということです。

これらについて時間が必要であるのは、部下が原則や方針を理解し受け入れる構えを持っている場合が稀であるからです。


ドラッカーは、人は自分が聞きたい話だけを聞く」と述べています。


原則や方針を決める人と、それを受け入れる人では立場が違います。

下位の立場の人は、上位の人間が当たり前に考えていることを理解することはできません。

そこに時間をかけるというのがドラッカーの考えです。


多くのビジネス本には、「経営者は当たり前のことを何百回、何千回と繰り返し言い続けなければならない」と書かれていますが、これはドラッカーと同じことを言っていると思います。

2010年10月20日水曜日

タイムマネジメント-屑かごに入れる書類

地位や仕事を問わず、時間を要する手紙や書類の4分の1は、屑かごに放り込んでも気づかれない。

そうでない人にお目にかかったことがない。

                      『経営者の条件』より



これは耳の痛い話です。

私が抱えている書類の4分の1がないと困るかといえば、違うとは断言できません。

私がこれらの書類を廃棄せずにいる理由は、「ないよりはあった方がよい」という消極的なものです。

ドラッカーはそのレベルの書類を指して言っていると思います。


さて、ドラッカーの話をそのまま受け止めるならば、4分の1の書類を捨てろという話になるのでしょうが、私は一工夫する必要があると思います。

それら4分の1の書類の取り扱いについて決定するという作業を書類を入手した時点で行うといったことを行うべきだと思います。


こうしたグルーピングができれば、「屑かごに放り込んでも気づかない不要な4分の1」ではなくなるということになります。


当社の環境整備のコンセプト『2S直角平行』では、捨てない書類は角を揃えて直角・平行におくことになっています



これは、「置き場所は定まらないが、少なくとも中身に目を通しています」という条件を満たしていることが視覚的にわかるようにするという考え方です。



ドラッカーの言葉と結び付けてみると、もう少しコンセプトに深掘りが必要になることが分かります。


しかし、実際問題、オフィスでは特に「直角平行」が崩れます。なぜなら、状況変化がコントロールのキャパを超えることが必ずあるからです。

したがって、常に行きつ戻りつしながらコントロールのレベルを上げていくというのが現実的な解決策であると思います。

2010年10月19日火曜日

タイムマネジメント-他人の時間

他人の時間まで浪費していることがある。

簡単にわかる兆候はなくても発見のための簡単な方法はある。

聞けばよい。あなたの仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを私は何かしているかと、定期的に聞けばよい。

答えを恐れることなくこう質問できることが成果を上げる者の条件である。

                            『経営者の条件』より


ドラッカーのコスト管理論によると、状況変化はこれまで有益であった行動が無意味になることは起こりうると前提しています。

ですから、決めた当初は意味があった活動を定期的に見直し、ムダなコストを発生させないようにすべきであるといいます。

これをコスト予防といいます。


「他人の時間の浪費」はコスト管理に関係する概念です。

チームで成果を目指す場合、ムダな活動は起きるものと考えるべきであるということです。

そして、一番手っ取り早いムダの発見法が「聞くこと」であるわけです。


しかし、質問の仕方には工夫が必要であると思います。上記のドラッカーの説明をそのまま実行したら、逆に聞かれた人は困ってしまうかもしれません。

上記の内容を誘導する質問の工夫は必要でしょう。

2010年10月18日月曜日

タイムマネジメント-権限委譲

通常使われている意味での権限移譲は間違いであって人を誤らせる。

しかし、自らが行うべき仕事を移譲するのではなく、

自らが行うべき仕事に取り組むために人にできることを任せることは成果を上げる上で重要である。

                       『経営者の条件』より



組織の成果はチームで上げることが基本です。

特に最大成果を上げるべき立場の人は、そこにできるだけ多くの時間を投入できるようにしなければなりません。

いわゆる権限移譲はこの目的を達成するために行われなければならないということです。

したがって上のレベルになればなるほど成果責任は大きくなるわけです。

そして、その下のレベルの人たちは上のレベルの人たちが少しでも大きな成果を上げることができるように貢献しなければならないということになります。


話はこのように簡単なのですが、実際に行うためにはかなりの難しさが伴います。

いずれのレベルのビジネスパーソンもそれなりに背伸びした目標設定、継続学習が必要になります。

2010年10月17日日曜日

閑話休題-社員心得

「社員心得帳」という小冊子のサンプルが送られてきました。結構いいことが書いてあるので抜き書きしておきます。


・もっと早くできないか?

 ①ゴールまでをイメージしているか?
 ②スケジュールに余裕はあるか?
 ③早め早めに着手しているか?
 ④遅れる要因をつぶしているか?
 ⑤1人で抱え込まず報告・相談しているか?

・孫子に学ぶスピード第一の教え

「兵は拙速を聞くも、いまだ巧の久しきをみざるなり」
=戦いに勝つにはスピード第一。のんびり丁寧にやって勝てたためしはない。

・スピード対応で業績アップ
 クイックレスポンスはお客様への最高のサービスです。


・伸びる会社の5つの合言葉 (トヨタ)

 ①まず、やってみる
 ②「なぜ」を5回繰り返す
 ③者に聞くな、物に聞け
 ④原価は計算するものではない、下げるためにある。
 ⑤育ててもらって製品は育つ

・「作業」と「仕事」はここが違う。

 同じことを反復するだけなのが作業、常に改善・改良に努め一つ上を目指すのが仕事

 言われたことやマニュアル以外のことをしないのが業、頭を使い顧客満足のため臨機応変に対応するのが仕事
 
・あなたは会社の代表選手

・メモと復唱でミスを防ぎましょう。

2010年10月15日金曜日

タイムマネジメント-必要のない仕事

する必要のまったくない仕事、時間の浪費である仕事を見つけ、捨てなければならない。

すべての仕事について、まったくしなかったならば何が起こるかを考えればよい。

何も起こらないが答えであるならば、その仕事はただちにやめるべきである。

                               『経営者の条件』より


ルーティーンワークは、もはやそれが何のために行われているのかを検討することなく行われていることがよくあります。

それを始めた当初には意味があったことでも、状況が変化すると意味を失う場合がよくあります。


ドラッカーのコスト管理論「コスト予防」という概念があります。

コストが浪費に代わる前に、予防するというのが単純な意味ですが、これはタイムマネジメントと関係しています。

意味あるコストが浪費に変わるのは環境が変わったためです。

ですからコストはほおっておくといつか浪費になってしまうものなのです。


浪費になる前に予防するというのがコスト管理論の原則なのです。


それをタイムマネジメントに当てはめてみると、意味を失った仕事を止めるということになるわけです。

2010年10月14日木曜日

書評-「コトラーを読む」④

コトラーの続きです。



・製品を売るためにはどこで売るか(販路=チャネル)が大切。

・チャネルの選定は非常に重要。製品とチャネルの相性を考えないとマーケティング戦略との整合性が取れなくなる。

・想定した顧客がどんなチャネルを求めているかを考える。

・チャネルも顧客であり、大切なパートナー。彼らの販売意欲を高める必要がある。



・プロモーションを行うには目的を明確にする必要がある。販売促進とブランド力強化ではプロモーションが異なる。

  • 製品の知名度・認知度の向上
  • 売上向上
  • 新規顧客づくり
  • 既存顧客満足度の向上
  • 企業の信頼性・規模・好ましいイメージの形成。
  • ブランド力の形成・維持
  • 既存製品のリニューアルの告知・利用の促進

(おわり)

2010年10月13日水曜日

◇年末セミナーのお知らせ 「経営者のためのドラッカー入門」

当社恒例の年末無料セミナーのお知らせです。



-『もしドラ』から一歩先に進みたい-

  経営者のためのドラッカー講座




日時: 12月8日(水) 18:45-20:15

場所: アクトシティ浜松コングレスセンター53・54会議室

料金: 無 料


今年はP.F.ドラッカーがブームとなった年でした。
そこで2010年を締めくくるにあたり、ドラッカーの入門編を企画いたしました。
「もしドラ」を読んでドラッカーに興味をもたれた方、これまでドラッカーを学ぶ機会のなかった方のご参加をお待ちしております。



テーマ1: ドラッカーはどんな人物か?
   
  • ドラッカーの略歴
  • なぜドラッカーは重要なのか?
  • ドラッカーの本のどれを読めばいいのか?

テーマ2: ドラッカーの経営戦略論
 
  • 事業の目的とは何か? -マーケティングとイノベーション-
  • 戦略計画とは何か?
  • 『浅沼方式ドラッカー戦略マップ』の提案

テーマ3: ドラッカーの仕事論

  • プロフェッショナルとは何か? -ビジネスパーソンの心構え-
  • 成果を上げる5つの視点


*セミナー終了後には近くの居酒屋で気軽な懇親会を予定しています。ご希望の方はぜひご参加ください。(3千円以内)

*参加希望者はメールにて当社までお知らせください。 info@tma-cs.jp

*詳細は当社HPをごらんください。

 


(ドラッカー実務家)

2010年10月12日火曜日

書評-「コトラーを読む」③

コトラーの続きです。

 

 

 
・市場を細分化した後は、他社より優位性を発揮できる場所(ポジション)を決める。
 -競争優位のためのポジショニング-

 
・他社にない魅力を生み、他社に対して優位に立てるかを考える。

 

 
・競争優位性を考える基準

  • 重要度
  • 他社・他社製品との違い
  • 優位度
  • 伝達力
  • 先取り性
  • 入手できる度合い
  • 収益性

 顧客の便益(ベネフィット)と価格の関係でみる成功するポジションは5つ。

 ベネフィット大・高価格 ‥イメージの優位性がポイント。高級ブランドが好例
 ベネフィット大・同価格 ‥自社だけのベネフィット創出がポイント。デジタル家電業界が好例
 ベネフィット同・低価格 ‥ひと手間かけておく。ブックオフが好例
 ベネフィット小・低価格 ‥無駄を削り価格を安くする。
 ベネフィット大・低価格 ‥一見難しそうだが可能。書籍を紙ではなく電子ファイルで販売する等


・新製品の成功率は日本も欧米も約20%程度


・新製品の成功率を上げる条件

  • 製品が高品質
  • 顧客にとって利用価値が高い
  • 新しいブランド価値を提供
  • 製品コンセプトが明確
  • 社内の協力が得られている
  • 新製品開発の社内プロセスが円滑
  • 市場と顧客を十分理解している
  • 他社にない優れた価値を提供

・現代は顧客に答えを聞こうとしても、顧客は答えを持っていない時代。顧客を観察する力を育て、仮説を立てること。

・定量調査は過去は知ることができるが、未来は教えてくれない。


コンセプトとは、製品のアイディアを顧客が理解できる言葉で説明したもの。


(つづく)

2010年10月10日日曜日

書評-「コトラーを読む」②

コトラーの続きです。




・企業を好きになると常連顧客となり、継続的に商品を買ってもらえる。


・顧客が「ごひいき」になる心理を顧客ロイヤルティという。

・既存顧客を維持し、中でも特に購入率や利用率が高い顧客を自社に引き付けることが経営安定には不可欠 -カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)

・CRMでは優良顧客には手厚いもてなしやサービスを提供する。



・マス・マーケティングとは、すべての人を顧客に想定してビジネスをすること。昔はモノ不足であったので、マス・マーケティングで良かったが、現在では市場の細分化が必要。


・市場の細分化(セグメント)とは、自社に最適な顧客を設定し、その顧客に向けた製品・サービス・販路・コミュニケーションを考えて効率を高める方法をとること。



・小さい市場やすき間市場では中小企業が有利になる。


・市場をさらに細分化し、顧客それぞれのニーズや好みに合わせて展開することを個別マーケティングという。


・ビジネスを成功させるには、顧客を明確に決めることが必要。うまくいかないビジネスは顧客設定があいまい。


・ビジネスをするとは、顧客がどんな、階層か、ライフスタイルか、性格なのかを考えること。


≪生活者の行動を読む視点≫
  • 日常品か非日常品か
  • 顧客が求めるベネフィット‥品質・サービス・利便性・商品供給のスピード
  • 使用量が多いか少ないか
  • そのブランドに愛着があるか
  • 商品に関心を持つか、欲しいか
  • 商品に関心があるか
  • 商品に対して友好的か敵対的か


(つづく)

2010年10月8日金曜日

書評-「コトラーを読む」①

酒井光雄『コトラーを読む』日経文庫、2010年   定価 903円


日経文庫ですが、マーケティングの大家・コトラーの理論がコンパクトにまとめてありますので、しばらくこれを連載したいと思います。

コトラーは大家ですが、いかんせん著書が分厚すぎてビジネスパーソンが熟読して実践するには大変です。

本書はうまくまとめられていますので、これをさらに要約していきます。



・企業も個人も自らの価値を高めない限り将来が保証されない時代となった。

・マーケティングとは個人の能力拡張と自己実現にも応用できる。

・マーケティングとは、顧客の価値と満足を理解し、創造し、伝え、提供すること。

・企業の立場からは、顧客を満足させて、利益を得ること。


≪マーケティングの基本概念≫

生産概念‥生活者は暮らしに役立ち、手ごろな価格の商品を求めているという考え方。いくら安くても商品に魅力がなければ生活者は指示してくれない。

製品概念‥生活者はどこよりも優れた品質や機能の製品を求めているという考え方。

販売概念‥販売活動やプロモーションを行うことで生活者は商品を購入してくれるという考え方。

マーケティング概念‥生活者の願望や欲求を把握し、自社商品を通じて価値を創造し、生活者に満足を提供するという考え方。

社会的マーケティング概念‥生活者に最高の価値を提供しながら、企業は社会と調和して人々の幸せを向上させるという考え方。



・企業にとって顧客とは、モノを売りつける相手ではなく、企業の収益を生み出す源泉。生涯にわたりパートナーとして大切にすべき存在である。-顧客起点の発想-


・経済が成熟すると既存顧客の重要性が高まる。顧客の生涯価値(ライフタイムバリュ)を重視する。 *新規客を獲得するコストは既存顧客維持のコストの5倍になる。

・既存顧客を大切にする。 スーパーの事例: 「ルール1 お客様は正しい ルール2 もしお客様が間違っているならルール1に戻る」


・他社と比較して期待以上に優れていると感じてもらえないと他社に乗り換えられる。コストと価値のバランス

≪顧客が感じるコスト≫

金銭的コスト‥支払った金額
時間コスト ‥入手するのに費やした時間
エネルギーコスト‥商品の使用に伴って必要な電力などのコスト
心理的コスト‥入手に際しての心理的手間や負担

≪顧客が感じる価値≫

製品の価値‥製品が顧客にもたらす価値
サービスの価値‥HPの使いやすさ、電話対応、接客など一連の顧客対応で認められる価値
社員の価値‥顧客に接する社員がもたらす価値
イメージ価値‥商品の印象・企業のブランドイメージなどの価値


・顧客満足について、万人を満足させることはできないので、自社の中核を担う顧客の設定が重要になる。‥ターゲット顧客の設定

・ターゲット顧客に感動を提供できれば、企業のブランド価値は確実に高まる。

・ブランド価値を向上できれば価格競争という不毛の地に、独自の企業ポジションを築くことができる。


(つづく)

2010年10月7日木曜日

タイムマネジメント-スピードは価値

先週、3回に分けて紹介した「東大卒でも赤字社員、中卒でも黒字社員」はなかなかインパクトがあったようで、そこをプリントアウトして管理者に周知させたというご連絡をいただきました。


成果を上げるビジネスパーソンの基本的な構えは常に採算を考えているということです


ビジネスとは資源を投入して成果を得る活動ですが、その最も重要な資源であるヒトを投入するとは時間を投入することに他なりません。


ですから生産性の指標は、時間当たりの成果ということになるわけです。

ちなみに「東大卒でも~」には黒字社員か赤字社員かをチェックするテストがついていましたのでご紹介しておきます。

1、「かなり」や「少し」といった言葉をよく使う
2、「業界別・給料全比較」などの特集雑誌に目がない。
3、「会計本」は読んだが仕事への活かし方が分からない。
4、仕事は気分が乗ったものから取り掛かる。
5、会議では自ら発言することはほとんどない。

6、根拠はないが自分の会社はつぶれないと思う。
7、どんくさい新人は辞めればいいと思う。
8、自分の給与なら「会社の売上がいくら必要なのか」を知らない。
9、自社のビジネスモデルが答えられない。
10、会社の利益を上げる方法を10個答えられない。

0~1=人財 2~4=人材 5~7=人在 8以上=人罪  ということだそうです。




先日のタイムマネジメントの検討では、成果を生む時間は3分の1、その準備に3分の1、ロスが3分の1ぐらいとみなすという基準を出しました。


タナベ経営の『問題解決の5S』には、営業マンの場合、就業時間の中で付加価値を生む唯一の活動である商談の時間が平均10%を切る企業は赤字であり、黒字企業なら商談時間が15~20%程度あると書いてあります。


中には短い時間で手際よく受注をとる営業マンもいるのでしょうが、やはり商談時間の長さと成果は平均的には比例すると考えるべきでしょう。


事務処理時間と移動時間の無駄を圧縮できれば成果を上げる時間が増えることは間違いありませんから。


すると、こうした最も成果の上がる時間をどのようにひねり出すかが日常業務における勝負ポイントになるというわけです。

2010年10月6日水曜日

書評-「小さな会社がNo.1になれるコア・ブランド戦略」

加藤洋一『小さな会社がNo.1になれるコア・ブランド戦略」PHP、2010年  定価 1,365円



・価格競争に巻き込まれるのはブランドがないから。

・売れ行きが悪いのはブランドがないから。

・小さな会社は高付加価値型でしか生き残れない。そのためにはブランドが必要。

・長期的成功にはブランドが必要。

・小さな会社のブランド・ゴールは 「○○だったら、△△会社だよね。」 といわせること。

・小手先のテクニックに走ると底の浅さが見透かされる。

・自社のコアとギャップがあるお客様を集めてはいけない。

・自分の業界内のライバルをまねるとブランドはできない。

・大企業のブランド戦略を真似してはいけない。小さな会社は泥臭いブランド戦略をとる。

・コア・ブランド戦略の大きな流れ

 ①社長のコアを見つける
 ②コア・テクノロジー、コア・プロセスの明確化
 ③ブランディングする商品・サービスの選定
 ④商品・サービスのシュガー・コート
 ⑤ライバルの商品・サービス調査
 ⑥マーケティング施策の見直し
 ⑦ブランド浸透リサーチ
 ⑧ブランドの維持と他展開

①社長のコアを見つけて伝える。ぶれない軸を作ること。価値観を明確にする自分の棚卸をする。


②小さな会社の成功要因は、お客を集める仕組み、人材を育成する仕組み、ビジネスモデル、お金が増える財務の仕組み の4つ。  
   
*コア・テクノロジー、コア・プロセスとはドラッカーの言う「強み」のようなものらしい。

③もともと収益性の高い商品をさらに高める方向が小さな会社に向いている。小さな市場でオンリーワンとなる道を選ぶ。

④「おいしそう」と思われるようにお客様目線で考える。五感に訴える情緒的ベネフィットを打ち出すことが重要。起きた事実を少しだけ背伸びして伝えるのがコツ(ティーアップ)。最低半年に一度はティーアップすること。

⑤業界でのポジションを確認すること。検索ランク上位企業、目立つ広告媒体に登場する企業、自社が認めている企業。

⑥マーケティング活動をお客様目線で見直す。

⑦ブランドが浸透したかの調査は絶対必要。

⑧ブランド作りがうまくいったら、さらに深く掘ることと横展開を行うこと。

2010年10月5日火曜日

書評-「だれかに話したくなる小さな会社」

浜口隆則・村尾隆介『だれかに話したくなる小さな会社』かんき出版、2010年  定価1,400円+税


独特のブランディング理論を展開する本です。なかなか鋭いと思います。



・営業活動をしてもそこには価格競争しかない。お客さまから探しに来てもらうようにする。

・お客さまではなくファンがいる。

・拡大志向よりしあわせ志向。

・成功を分かち合える仲間がいる会社、事業自体が社会貢献的な会社。


・はやりすたりに左右されない経営をするためには、会社をその地域や業界におけるブランドと呼べる存在にする必要がある。

・ブランドを目指すと決めたら、会社自体の価値を上げることを経営者は徹底すべき。

・時代が変わっているといえる7つのポイント
 
①商品の短命化
②商品レベルの向上と飽和化
③マス市場の消滅
④人口の減少
⑤価格競争
⑥情報化とグローバル化
⑦労働市場の流動化

・小さな会社のブランド戦略はデザイン主導の部分戦略ではなく、全体戦略であるべき。

・新しいカテゴリーを作ることがブランドへの早道。


・ちょっとした不便を解消してあげれば立派に新しいカテゴリーとなる。

・小さな会社はポジショニング戦略が大切。ライバルひしめく激戦区から少しだけずれた所に着目する。

・ブランド力はフォーカス力。自社の仕事をほぼワンフレーズで説明できるようにする。

・自社のポジションを時代に合わせて少しずつずらす。


・人が応援したくなるのは自社の仕事を愛し、使命感を持って一生懸命行っている会社。

・「ただ毎日普通に仕事をしているカリスマ的会社」というものは存在しない。


・ビジネスとは「伝える」作業。

・名は体を表す。いいネーミングがあればキャッチコピーはいらない。

・小さい会社のブランド戦略とは「会社の分かりやすい化」


・会社を輝かせるのはスタッフ。スタッフは自分が「ブランドの体現者」であるとの自覚を持つ。

・小さな会社こそリッツカールトンのようにクレド(信条)が必要。

・クレドの例-「雪が降っても自分の責任」 (強い責任感をもたないといけないという例)


・クレドは職場の口癖。

・繰り返すこと=社長の責任

・「人は幸せだから笑っているのではない。笑っているから幸せなのだ。」


・目配り、気配り、心配りができるスタッフがいる会社がいい会社。

・価格を下げるのではなく価値を上げる。

・利益を上げることから逃げてはいけない。


・「喜んでもらうこと」が商品

・お客様を先に好きになる。

・1回の売り上げではなく、一生での売り上げを重視。


・会社の方向性には会社の使命、将来像、価値、存在理由のすべてが含まれている。


内容はオーソドックスですが、無駄をそぎ落としたわかりやすい文章であると思います。

前にコトラーのマーケティングで上げた例もクレドであるとおもいます。

ルール1、お客さまは正しい。
ルール2、もしお客様が間違っている場合にはルール1に戻る

というアメリカの大手流通業者のちょっとほほえましい社員の行動原則のことです。



結局、全力を出した真っ向勝負だけがビジネスパーソンの格を決めるということです。

会社も同じで全力で真っ向勝負を挑まないといけないということですね。

2010年10月4日月曜日

書評-「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」③

香川氏の著作の続きです。  







・人材採用は大がかりな投資。 在職年数×平均年収=投資額


・有名企業の付加価値額と平均給与額の比率 (参考資料)
    
               1人当粗利益  平均給与    比率 
 
 キリンHD         2,545万円    976万円    2.6倍
 花王            1,980万円    772万円    2.6倍
 サイバーエージェント  1,648万円    577万円    2.9倍
 ファーストりテーリング  3,094万円    768万円   4.0倍
 三菱東京UFJ銀行    4,329万円    787万円   5.5倍
 楽天            3,928万円    681万円   5.8倍
 武田薬品         6,008万円    953万円   6.3倍
 任天堂          1億3,000万円  893万円   14.6倍



・赤字社員は転職しても赤字社員

・赤字社員から仕事を習うと赤字社員になる。

・転職した場合、3か月で能力を示し、4か月目から黒字社員にならなければ失敗。

・ドラッカーの理論による黒字社員の5つの能力

 ①時間管理⇒無駄な時間をなくし、時間当たりの生産性を意識する。
 ②貢献   ⇒顧客のため、会社のため、部署のためという貢献を意識する。
 ③強み   ⇒会社の強み、部署の強み、自分の強みで顧客、会社、組織に貢献する。
 ④優先順位⇒どの仕事に力を入れるか、真っ先にやるか、等を意識する。
 ⑤成果(利益)⇒会社の利益につながる意思決定をする。




私は会計的には香川氏とほとんど同じ数値を割り出しています。考え方も非常に似ていると感じました。

というよりも、論理的に計算していくとやはり同じ結論に至ることがはっきりしたと思います。
これで、私も自信を持って意見を述べていくことができると思いました。

最後にドラッカーの成果を上げる5つの視点を上げていたところなどは思わず笑ってしまいました。

結局、投入資源に対して成果を最大化するためには最重要資源であるヒトの生産性を高めること。それはタイムマネジメントに尽きることを本書ではずっと主張しているわけです。

ドラッカーも、「まずは時間から始める」といっているように、黒字社員は時間の感覚が非常に鋭敏であるということです。
そして、努力は成果達成に向けられるべきであるということです。



書評-「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」②

香川氏の著作の続きです。 




・ホウレンソウとは『ムダな時間を削減する』こと。


・黒字社員はカラーコピーはつかわない。カラーコピーが白黒の10倍のコストであることがわかっている。

・黒字社員は自社のビジネスモデルが分かっている。「何を(商品)」「誰に(顧客)」「どのように(流通チャネル)」を意識しているので、常に会社の利益につながる行動がとれる。


・黒字社員には常に最悪の状態への対策がある。赤字社員は責任回避に奔走する。

・会社の4種類のジンザイ

人財  利益に大きく貢献する黒字社員。将来の幹部。


人材  利益に貢献する黒字社員。与えられた役割はそつなくこなす。


人在  ただ存在している赤字社員。いてもいなくても同じ。


人罪  ネガティブ発言で悪影響を振りまく赤字社員。リストラ候補。



・手待ちコストの削減も立派な利益貢献

・8人で1時間会議したら1人の1日分の人件費コストがかかる。会議・ミーティングで発言しない社員は赤字社員。

・1件の仕事にどれだけ時間を使ったか? 

 何度も通って売上以上の交通費を使う  ‥「移動大好き君」
 顧客ニーズが分からず何度も見積書を作成する  ‥「空回り君」
 上司に依存し何度も同行を求める   ‥「親離れできないチャン」

・社員1名の採用コストは100万円以上。赤字社員はこの意味がわからない。

・残業してでもやるつもりの仕事は就業時間の1.25倍の価値を生まなければ損失。ダラダラ残業をする社員は赤字社員。

・売上を上げても資金繰り(売掛金回収)を考えないなら赤字社員。

・赤字社員は会社の3人に1人はいる。



2010年10月3日日曜日

書評-「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」①

香川晋平『東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員』経済界、2010年  定価 800円+税


香川氏は会計士の立場から社員の採算感覚についてまとめています。これは財務にかかわる人間は必読です。


私は今年『簿記再入門』を書いたときに、「ビジネスパーソンは給料の3倍稼ぐ必要がある」ことを会計的に説明しました。

私の論理を簡単に説明しますと、黒字の中小企業の労働分配率は少なくとも50%前後以下であり、給与額面から言うと40%台であること。

この事実から企業は従業員平均で給料額面の2.5倍程度の付加価値を生む必要があり、中核的な人材ならば当然3倍の付加価値を生む必要があることが論理的帰結であること。

そして、この付加価値を生む基本的視点は、投入資源とそこから生み出される成果の比率を最大化することにあり、そのポイントが時間管理にあることを示しました。 (ドラッカーのコスト管理論)



香川氏の著書は、数字的な結論は私と全く同じです。せっかくですので香川氏の説明の中からとてもいい部分をまとめていきましょう。



・発言に具体性を欠き、数字ではなく「かなり」「少し」という表現を多用する社員は赤字社員。

・「オレの時給はマックの店員並み」という社員は赤字社員。黒字社員は自分が貢献した利益額を考える。


・黒字社員の発想法の例 - 上司のサポートを積極的に行い「君のおかげだ。」と言われた。
そこで、上司の営業成績(粗利)500万円アップ分の貢献2割と考えて、貢献額100万円と考えた。
すると給与額面25万円の3倍の75万円を上回ること25万円であり、自分は黒字社員であると判断した。


・黒字社員は1つの仕事の時間効率を気にする。例えば、25万円÷20日÷8時間=1,600円/時間


・1時間当コストをはるかに上回る価値を生まなければならない。
与えられた仕事を終業時間まで引っ張る「ダラダラくん」、追加仕事を振られないよう常に忙しそうにしている「演技派ちゃん」は時間当たり給与の感覚がないので、1000円の経費申請書作成に平気で1時間を使う。


・黒字社員はスピードアップを常に意識する。できるだけ多くの仕事を就業時間内でこなそうとする。


・黒字社員は各仕事に求められる精度、自分の時間当たりコストがわかっているため「どの程度の時間をかけるべき仕事なのか」をすぐに計算できる。