2012年9月24日月曜日

素晴らしいマイケル・ポーターの解説書


本屋さんで、マイケル・ポーターの競争戦略の実践的活用法について書かれた本が出ているのを見つけました。
 

しかも、マイケル・ポーター自身の協力によるものです。この春にポーターの入門書を書いた私としては読まないわけにはいきません。

一気に読みましたが名著です。強く推薦します。
 

〔エッセンシャル版〕マイケル・ポーターの競争戦略

ジョアン・マグレッタ 著、 マイケル・ポーター(協力) 、櫻井 祐子 (翻訳) 、早川書房、2012

 

私は執筆にあたりポーターの古い著作から近著を比較検討して、自分なりのポイントを見つけて整理を行いました。

本書はポーター自身が関わっていますので、そこに書いてある内容が私と全く違ったらどうしようとドキドキしました。私自身が一般的なポーターの理解とは違ったことも書いていたからです。
 
しかし、私の仮説の多くは間違っていないことがわかり、ホッとひと安心しました。

また、現在、ポーターについてのセミナーをやっていることもありますので、大いに参考になる部分もありました。大変良い本が出たものと思います。
 

細かくなりすぎてもなんですが、私がポーター理論のポイントと考えており、また、本書で確認できたものを幾つか書き出します。
 

1:ポーターの競争戦略論は世間のイメージとは違い、実際には柔軟なフレームワークである。特にブルーオーシャン戦略を提唱したチャン・キムやモボルニュはポーター理論を誤解しており、その話を真に受けた多くのコンサルタントも「もはやポーターは古い」と思い込んでいる。
 
2:ポーターの業界の捉え方は初期の「競争の戦略」の時に比べ柔軟になっている。業界の境界線は①地理的範囲 ②製品サービスの範囲 に注目すれば自社に戦略構築に意味有る分析ができる。

3:ポーターの活動の定義は、組織図上の職能より範囲が狭い。また、バリュー・チェーンは「競争優位の戦略」に図式化されたものを踏襲する必要はなく、自社の具体的な活動から書き出せば良い。

4:競争優位を作り出す活動システムは同じ会社について書きだしてみても人によってまとめ方が違う。だから、ポーターの著作に例示されているものと全く違った図解を行なっても問題ない。

5:戦略は事前に全て計画してから実行するという誤解がある。ポーター自身も戦略は大きな方針のもとに試行錯誤しながら生み出されるものと判断している。

 などといったものです。

しかし、私がずっと気になりつつも本書では確認できなかったことは、ポーターの理論はドラッカーのマネジメントにだんだん近づいてきている。ポーターはドラッカーの著作の影響を受けているのではないかということです。戦略論だけではなく社会的責任についてのスタンスが極めて似ていると思っています。

もちろんドラッカーを元にしつつも明らかにポーターが優れている点もたくさんあります。コア・コンピタンス(強み)やマーケット・シェアなどの意味についてはドラッカーが曖昧にしているところをズバリと解説しています。

しかし、私はドラッカーとポーターは実践レベルでは相性の良い理論であると思います。


 本書は翻訳書で、少し読みにくい文体ですが、ポーター理論を知ったつもりになっている人には一度読んでいただきたいと思います。



(浅沼宏和)

2012年5月8日火曜日

ミッションについて

アメリカのガールスカウトは、少女たちが誇りと自信を持ち、自分自身を尊重するような女性となるよう手助けすることを使命としている。

‥また、救世軍は、落伍者の烙印を押された者を市民として立ち直らせることを使命としている。

19世紀イギリスの最大の教育者と言われ、パブリックスクールを創設したラグビー家のアーノルドは、パブリックスクールの使命は無作法な少年を紳士にすることにあるとしている。

  ‥「非営利組織の経営」


ドラッカーの著書の中で最も経営者に向いている本は「非営利組織の経営」であると思います。

タイトルの印象とは違い、営利組織でこそ必要とされる知見に満ちています。

上記の例も大変わかりやすいと思います。


(浅沼 宏和)

具体的ミッションとは?

多忙のためブランクがありましたがブログを再開します。


ある病院の救急治療室には「患者を安心させることがわれわれの使命である」という標語が掲げられている。

これは、簡潔にして明瞭、かつ直截な使命の表現である。

  ‥「非営利組織の経営」より


ドラッカーはミッションの重要性を指摘しています。

それも出来る限り具体的である方がよいというわけです。

上記のミッションは明快です。

「治療」ではなく「安心」が目的であるということ、不安に駆られている患者にやさしく接し、状況を丁寧に教えるといったサービスを行うということです。


(浅沼 宏和)

2012年4月26日木曜日

家康と卜伝とリスクマネジメント

仕事でトラブルがあり、日常業務におけるリスクつぶしを改めてする必要を感じました。

そこで、ふと徳川家康のエピソードに思い至りました。

うろ覚えなので恐縮ですが、書いてみます。


家康が秀吉に従ったあとのとある戦場での話です(おそらく北條征伐)。

山道に危険な橋がかかっており、そこで多くの大名たちが立ち往生したそうです。

家康が通りかかるときに他の大名たちはこう思ったのだそうです。

「天下一の馬術の名人と言われる家康殿はどのようにこの難所を乗り越えるだろうか?」

家康がそこに差し掛かると、おもむろに馬から降り、屈強な武士に背負ってもらって橋を超えたそうです。

それを見た名将たちは「さすがは家康殿。天下一の馬の名人に違いなし。」といったということです。


このエピソードは、無用のリスクは負わない。徹底して安全策を取るのが「名人」「名将」の条件であるということです。


塚原卜伝の後継者選びにも似たような話があります。


病床の卜伝は後継者候補の3人の息子がひとりずつ呼びました。

部屋の入口の上には枕が仕掛けられており、戸を開くと上から落ちてくるようにしていたそうです。

最初の息子が入ると突然上から枕が落ちてくるので、身軽にひらりとかわしました。

二番目の息子はとっさに脇差を抜いて枕を空中で真っ二つに切りました。

三番目の息子は入る前に枕の仕掛けを見抜き、そろそろと戸を開き枕を外して部屋に入りました。

後継者はこの三番目に決まり、二番目の息子は厳しく叱られたそうです。


リスクというものの考え方は昔も今も変わらないようです。



(浅沼 宏和)

2012年4月25日水曜日

閑話休題-「時間」の名言集⑤

「月日は百代の過客にして行きかう年も叉旅人なり。」 ‥芭蕉


「時間を最も有効に利用した者に、最も立派な仕事が出来る。」  ‥嘉納治五郎


「時計の針は時間を刻んでいるのではない。自分の命を刻んでいるのだ。」  ‥安藤百福


「人の時間には限りがある。だから他人の人生を生きて時間を無駄にするな。」 ‥スティーブ・ジョブス


「いまの時間を大事にできない人は、未来の時間もきっと大事にできない。」  ‥平尾誠二



(おわり)

閑話休題-「時間」の名言集④

「時間の使い方が最も下手なものが、まずその短さについて苦情を言う。」  ‥ラ・ブリュエール


「この地上の二人の暴君。それは偶然と時間だ。」  ‥ヘルダー


「何をするにも時間は見つからないだろう。時間が欲しければ自分で作ることだ。」  ‥チャーチル


「未来はすでにはじまっている。」  ‥ロベルト・ユンク


「過去は常に今から見れば実際の過去より美しく思える。

 過去が楽しいのは、過去が今ここにないからに過ぎない。」  ‥ピーター・フィンリー・ダン


(つづく)

閑話休題-「時間」の名言集③

「充実した1時間は忘却と不注意の数世紀より価値がある。」  ‥イオネスコ


「お前がいつか出会う災いは、お前がおろそかにしたある時間の報いだ。」  ‥ナポレオン


「過去の記憶がお前に喜びを与えるときのみ、過去について考えよ。」  ‥オースティン


「朝寝は時間の出費である。しかも、これほど高価な出費はない。」  ‥カーネギー


「時間が過ぎ去っていくのではない。われわれが過ぎ去っていくのだ。」  ‥西洋のことわざ



(つづく)

閑話休題-「時間」の名言集②

「明日はなんとかなると思う馬鹿者。今日でさえ遅すぎるのだ。

  賢者はもう昨日済ませている。」  ‥クーリー


「少年老いやすく、学成りがたし。 一寸の光陰軽んずべからず。」 ‥朱子


「毎日自分に言い聞かせなさい。今日が人生最後の日だと。

 有るとは期待していなかった時間が驚きとして訪れるでしょう。」 ‥ホラティウス


「現在の一瞬はこの上なく素晴らしい一瞬である。

 現在夕食に5分遅れることは、10年間の大きな悲しみより重要である。」 ‥サミュエル・バトラー


(つづく)

閑話休題-「時間」の名言集①

「その日、その日が一年中の最善の日です」    ‥ラルフ・ワルド・エマーマン


「過去も未来も存在せず、あるのが現在という瞬間だけだ」  ‥トルストイ


「短い人生は時間の浪費によって一層短くなる」  ‥サミュエル・ジョンソン


「相談するときには過去を、享楽する時には現在を、

 何かをする時には未来を思うが良い」    ‥ジュベール


「最も難しい3つのことは、秘密を守ること、他人から受けた危害を忘れること

  暇な時間を利用すること 」    ‥キケロ


(つづく)

2012年4月9日月曜日

◇日本経済は再生する?―野口悠紀男氏の提言

週刊ダイヤモンドに野口悠紀男氏の提言が掲載されていました。要約しておきます。


・日本経済の問題は世界経済の大きな変化に産業構造が対応していないこと。
・変化とは特に中国経済の工業化。かつての日本経済のモデルを中国がやっている。
・同じ分野で競合しても中国に勝てない。生産性の高いサービス産業を見出す必要がある。

・英国、米国は製造業比率が低下し、新産業が登場した。
・1990年代の大きな変化のうねりに日本は乗り遅れた。
・2000年頃には「このままではいけない」という危機感があったが、その後の景気で問題意識が後退した。

・09年の世界経済危機で問題が一気に表面化した。円高、タイの洪水、大震災などが言われるが基本はビジネスモデルの失敗にある。
・日本はデフレではない。大量生産品だけが価格崩壊しているだけ。
・日本の製造業はもはや「農業化」している。つまり補助金依存体質。

・個々の企業のレベルで従来のビジネスモデルからの脱却を図ることが必要。
・特に輸出立国モデルからの転換が必須。

・ポイント1: 政府は古いものを助けようとしないこと
・ポイント2: 規制緩和を進め、活力を使うこと

・新しい産業・企業が生まれる余地は残っている。ただし、時間が無いので人材は外国人の活用を行う。
・日本人の雇用は奪われない。パイの大きさが一定ならそうだが、人材開国で経済のパイが大きくなる。
・特に中小企業では海外の知的労働者活用の意味が大きい。英語が出来る人材を中国人などに求める。

・ただし、これらの施策にはタイムリミットがある。中国人の人件費が上がったらもうだめ。

・製造業は新興国に売るのではなく、先進国に売ったほうが良い。ソニー、パナソニックのブランドははまだ強い。
・日本の電機メーカーは液晶パネルの国内工場で大失敗した。そもそも「つくる」部分を国内でやっているからダメ。
・ただし、開発・設計・ブランドの面で強いことが必要。
・雇用の問題は明らかにある。新しいサービス産業の想像は不可欠。これが最終的な答え。


意識的に未来を開拓していかないとどうにもならないということですね。

明治の頃のようなビジョンとリーダーシップが必要ということでしょうか。

(浅沼 宏和)

2012年4月6日金曜日

リーダーよりフォロワーが重要

ドラッカーのリーダーシップ論を補完するために、しばらく軍隊のリーダーシップ論を援用します。

当面は米国海軍士官向けのテキストを使います。


‥組織化された制度上のリーダーシップの概念において、フォロワーの役割が一番大切であることをたえず脳裏に深く刻みこむべきである。

‥したがって各士官は、リーダーの弱点を探す前に、フォロワーとしての自分自身の責任を果たしているかを確かめるべきである。

‥今日リーダーたらんとする人は、まず服従することを学ばなければならない。

 『リーダーシップ ―アメリカ海軍士官候補生読本』より



ホテル王であった故・コンラッド・ヒルトンは、自身の半生を振り返り、「ベルボーイがホテル王になったんじゃない。ホテル王がベルボーイから始めたんだ。」といったのを思い出しました。

現場に近いところから始め、徐々に階段を登っていくのが適切なキャリアということなのです。


(浅沼 宏和)

2012年4月5日木曜日

目標はリーダーシップの条件

ドラッカーのリーダーシップ論では目標設定が重視されています。

しかし、これはドラッカーだけが言っているのではなく、コッターも言っていますし、米国海軍の士官候補生向けのテキストにも書いてあります。

海軍のテキストを引用してみます。


まず第一に、学窓を出たばかりの海軍士官は目標を設定しなければならない。

すなわり、航海用語で言えば、現在いる場所からこれから行こうとする目的の場所まで、自分の取るコースを海図に示さなければならない。

民間人であれ、海軍士官であれ、成功した人たちは単なる幸運や「偶然の事情」によって成功を収めた者はほとんどいないのである。

   『アメリカ海軍士官候補生読本』より



企業も、ビジネスパーソンも目標によってリーダーシップを発揮するというわけです。


(浅沼 宏和)

2012年4月3日火曜日

2S直角平行活動の法則

当社では5S活動を「2S直角平行」と名付けて実践しています。

要するに、

整理: 徹底して捨てる
清掃: 汚れ・ホコリを取る
直角平行: きっちり揃える

の3つに集約してしまい、実践性を高めようというものです。

この取組をしていく中で気がついたことを法則という形でいくつかまとめてみました。

  • 環境は1時間で乱れる
  • 自社より汚い会社は鼻につく
  • 人も会社も見た目で判断される
  • 問題は景色に溶け込んでいる
  • 綺麗な会社は社員も有能に見える
  • 見た目は業務品質に比例する
  • 問題意識は細部にあらわれる
  • 段取り不足で環境は乱れる
  • デジカメ目線にすると乱れが見える
  • 生き物(植物・蜘蛛の巣など)は放置期間を示す
  • 一箇所の乱れがすべての乱れを生む
  • あらゆる物を触って直そう
  • 環境整備は会社の身だしなみ
  • 環境整備は経営者の姿勢を示す
  • 環境整備は仕事ぶりに影響する
  • 環境整備は最高のリスクマネジメント

(浅沼 宏和)

継続訓練が必要な意味は

‥むしろ、生産性をあげるには訓練を継続することが大切であり、リーダーシップ訓練の最大の効果は―どの訓練でも同じだが―新しい知識の習得ではなく、既知のことをさらに深く学ぶことから得られるという。

  W.A.コーン著『ドラッカー先生のリーダーシップ論』


本書はドラッカー理論の中でリーダーシップについての生理を行なっているもので、なかなか良いことが書いてあります。

私も気づいていなかったことが多数あるので、愛読しています。

学ぶことは新規のものばかりではなく、すでに知っているはずのことをより深く知ることに意味があるということです。

なかなかできないことです。


(浅沼 宏和)

2012年3月29日木曜日

明晰さと単純さは違う

明晰さと単純さは同じではない。単純に見えて明晰でないことがある。複雑に見えて明晰なことがある。

   『マネジメント』より



なんだか禅問答のようです。

ドラッカーは一見して複雑に見えるゴシック建築は明晰であり、単純に見える現代の高層ビルは明晰ではないといいます。

ゴシック建築にはきちんとしたルールに則って立てられているため、中で迷うことはないそうです。

ところが、単純な構造の組み合わせでできているはずの現代のビルの中では誰もが迷いそうになってしまいます。館内の地図まで整備されている事が多いでしょう。

ドラッカーはこの話を組織にも当てはめています。


組織マニュアルの助けなしでは自らの所属、行くべきところ、位置がわからない組織構造は、無用の摩擦、時間の浪費、論争と不満、意思決定の遅れをもたらす。

そのような組織構造は成果を上げる助けになるどころか障害となる。

   『マネジメント』より



(浅沼 宏和)

2012年3月28日水曜日

ビジネスマンは10年で陳腐化する?

「技術者は10年で陳腐化する」とはよく耳にするところである。

もしそうであるならば、マネジメントにとってこれ以上に恥ずかしいことはない。

技術者が陳腐化するなどということはあってはならないことである。

知識とスキルの向上は、日々の仕事の中に組み込んでおかなければならない。

  『マネジメント』より



これは仕事に責任をもたせるうえで継続学習の大切さを強調している部分の記述です。

継続学習とはスキルの向上以上の本質的な部分での成果の上げ方に関する能力アップのことです。

継続学習によって ①イノベーションへの抵抗がなくなる ②能力が陳腐化する危険がなくなる とドラッカーは言っています。

学習するという要素がない仕事を10年続けるとビジネスマンとしては使い物にならなくなってしまいます。

そして、そのような社員を産み出してしまうことは経営者の恥ということなのです。



(浅沼 宏和)

2012年3月26日月曜日

管理とは例外を見分けることである

管理手段が適用できるのは、定型的なプロセスだけである。

管理は例外を見分けなければならないが、それらの例外を処理することはできない。

管理は、例外によって全プロセスが邪魔されないようにするだけである。

  『マネジメント』より



管理の本質が例外の発見であるということは、すべての仕事はプロセスが明確にならないといけないということです。




プロセスとは宇宙の混沌を秩序だて、現象、活動、問題、状況を定型化し、個別の決定を不要にするためのものである。

‥例外はなくせない。しかし、生産のプロセスからなくすことはできる。

それぞれ例外として別個に処理することはできる。

だが、管理に例外を処理させようとするならば、仕事のプロセスも管理のシステムも、ともに不調となる。

  『マネジメント』より


私はドラッカーの、仕事、管理、プロセス、例外、といった言葉の意味をよく考えることが業務品質を上げ、付加価値を創造することにとても役立つと思っています。

セミナーでもこの部分については特に慎重に扱うようにしています。



(浅沼 宏和)

2012年3月23日金曜日

◇お知らせ: サイバー攻撃関連書籍の広告が掲載されました

このブログでも何度かご紹介した「サイバー攻撃からあなたの会社を守る方法」が日経新聞に大きく慶されました。

さすがにこれぐらい大きい広告ですとインパクト絶大です。

サイバー攻撃はビジネスリスクの一つですが、影響の範囲や金額などのスケールが年々大きくなってきています。

中小企業といえども最低限の知識を持っていなければコンプライアンス違反に問われる時代ももうすぐそこに来ているような気がします。


(浅沼 宏和)

「これまでずっとやってきたから」は理由にならない

最終製品を所与のものとするならば、結局は「なぜこれをしているのか」との疑問に答えることもできない。

「これまでずっとやってきたから」としか答えようがない。

‥最終製品の仕様は、ユーザーのニーズと価値観によって決まるのであって、生産者のニーズと価値観によって決まるのではない。

  『マネジメント』より


日々の仕事をやっている理由が、「これまでやってきたことだから」では成果が出なくて当たり前です。

仕事は成果を明確に設定して初めて成立するものです。

そうでない仕事はすべて「流れでやっている」表面的なものに過ぎないことになります。




(浅沼 宏和)

2012年3月22日木曜日

◆責任感と大きな仕事

アメリカの地方新聞社で実際にあったエピソードだそうです。

新米スポーツ記者が大きな取材から帰ってきた時の編集長とのやり取りです。


「記事はどこだ?」

「ありません。」

「なんだと?なぜ書かなかった?」

「試合が中止になりました。」

「試合が中止!? いったいなにがあったんだ?」

「スタジアムが崩壊したんです。」

「それじゃあ、スタジアム崩壊の記事はどこだ?」

「僕はそういった指示は受けていません。」


仕事における責任感とはその現場に一番近い人間として最大の成果を上げる行動とは何かを自分の頭で考えることです。

この新米記者にその後大きな仕事が回らなかったことは言うまでもありません。

ドラッカーは職務と任務という使い分けをしています。職務というのは名刺の肩書きの仕事で、任務というのは自身で設定する仕事です。

その現場において最大成果をあげる行動を考えるのは任務でしょう。

ドラッカーいわく

“ 一流は常に任務が職務を上回る ”


(浅沼 宏和)

2012年3月21日水曜日

◆無人島で研修?-矛盾する要望の話

研修に関する笑い話がありました。


旅行代理店に身なりの良い紳士が訪れ、窓口の担当者に話しかけた。

「 うちの息子にどんな厳しい環境でも生き抜いていけるように、本物のサバイバル力を身につけさせてやりたいんだ。

 何か適当な無人島ツアーはないかね?値段は問わないよ。

 なるべく安全で快適な奴がいいんだが。

 なにぶん息子はキレイ好きだし、あまり体が丈夫じゃないんでね。 」




この過保護エピソードぐらいはっきりしているとおかしさにすぐ気が付きますが、多くの研修が似たような趣旨で行われているような気がします。



(浅沼 宏和)

人の外にあるもの内にあるもの

仕事と、働くことは別の世界に属する。

仕事は人の外にある。仕事そのものの論理に従う。

働くことは人の内にある。働くことそのものの力学に従う。

‥仕事と働くことを統合しなければならない。

 『マネジメント』より



仕事(Work)働くこと(Working)を明確に区別したところにドラッカーの慧眼があります。

ドラッカーは知識社会において仕事と人の両方がどんどん変化していくといっています。

現在はドラッカーの生きた時代に比べても大きく違ってきているでしょう。

仕事と働くことの統合方法は自分たちで考えていかなければならないということです。

答えはドラッカーの本には書いてありません。


(浅沼 宏和)

2012年3月19日月曜日

◆ユニクロが銀座に新店舗オープン-企画力がカギ

ユニクロが銀座に新店舗をオープンしたことがニュースになっています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120317-00000103-san-bus_all


ここでのポイントは広範囲からの集客が見込めることと、賃料の高さが見合うかどうか、また店舗の広さをカバーするだけの企画力があるかどうかです。

この企画力という言葉がキーワードです。

昨年末に代官山TSUTAYAがオープンした時にも鍵を握るのが企画力である点が指摘されていました。

成熟経済における企業の成長を担う「企画力」については業種・業態を問わずにクローズアップされてくるでしょう。


(浅沼 宏和)

具体的な仕事にしないと意味がない

‥最高の戦略計画であっても、仕事に具体化されなければ、よき意図に過ぎない。

成果は組織の中の有能な人材を具体的な仕事に割り当てることによって決まる。

戦略計画は、将来において成果を生むべき活動に割り当てて、初めて意味を持つ。

さもなければ、約束と希望はあっても戦略計画は存在しない。

  『マネジメント』より


ドラッカーは、戦略は実行に移す段階が一番大変で時間がかかるとも言っています。

だいたい「計画倒れ」という言い回しがまかり通っていることからも実行の困難さは周知のことですが。

実行に移すための要になるのが最重要資源であるヒトを、どう生かすのか、という問題なのです。


(浅沼 宏和)

2012年3月16日金曜日

経営者が無責任かどうか

リスクを伴う長期的な意思決定を行いたいか、行いたくないかは問題ではない。

マネジメントはその責務からして必ず決定を行う。

違いは、責任をもって行うか、無責任に行うかである。

成果と成功についての可能性を考えて行うか、でたらめに行うかである。

 『マネジメント』より



アスリートがトレーニングメニューを決めるのは上げるべき成果から逆算して行なっています。

経営者が行うべき意思決定も上げるべき成果からの逆算に基づくべきでしょう。

仕事とは成果をあげるプロセスですから、それを責任もって組み立てるのか、適当に行うかで大きく違うということですね。

2012年3月15日木曜日

仕事とは誰かが行うもの

仕事とは誰かが行うものである。

責任と、締め切りと、成果の尺度を伴うべきものである。

 『マネジメント』より



戦略計画では成果尺度の決定が非常に重要です。

尺度を決めることが自動的に成果の大きさを決めることになり、ひいては物の見方や行動すべきことが決まります。

尺度の決定はリスクを伴う重要な意思決定なのです。

「売上10億円突破」が目標として不足であるのは、それでは何を行うべきかが全くわからないからです。


(浅沼 宏和)

◆静岡新聞で紹介されました

マイケル・ポーターの入門書を書いたことで静岡新聞の「この人」のコーナーで紹介されました。

このコーナーに登場するには目新しいことをやっている程度でそんなにハードルが高いわけではありません。

しかし、地域の人たちの目に止まりやすいコーナーですので、告知効果は抜群です。

本の売れ行きにも好影響を期待したいところです。


(浅沼 宏和)

2012年3月14日水曜日

新しい方法を開発する方が良い

戦略計画において重要なことは、第一に、目標の設定について体系的な作業を行うことである。

第二に、昨日を廃棄することからスタートすることである。

第三に、目標の達成のために努力の倍化よりも新しい方法の開発に力をいれることである。

第四に、対象とする期間を考え、必要なときに必要な成果を手にするには、いつスタートしなければならないかを考えることである。

   『マネジメント』より


マイケル・ポーターは競争戦略とは他社と違う活動をするか同じ活動を違う方法でやることであり、同じ方法で競い合うことを業務改善と名付けています。

そして競争戦略とは戦略的ポジションを作ることであると言っています。

第三の項目は、業務改善ではなく競争戦略上のポジションを作れというのと同じ事でしょう。



(浅沼 宏和)

2012年3月13日火曜日

短期と長期をどう考えるか?

計画を短期計画と長期計画に分けて考えることは間違いである。

今日の行動についての計画がある。それらの計画こそ本当の計画である。

‥‥計画とは未来を考えて今日の行動のために今日、意思決定を行うことである。

したがって、どこまで先を考えるかは問題によって異なる。

  
‥‥対象期間をどう見るかが、すでに一つのリスクを伴う意思決定である。

  『マネジメント』より


長期を3年と見るか10年と見るかで計画の中身は全く違ったものになるでしょう。

「志望大学に合格するぞ!」という場合、暗黙のうちに高校3年生の終わりにそれなりの学力をつけること、せいぜいその翌年には目標を達成することが前提となっています。

ところが、会社のビジョンを実現しようとする場合、期限を切らない会社が多いのではないかと思います。

それは戦略計画の考え方からすると間違っているわけです。


(浅沼 宏和)

2012年3月12日月曜日

◆日経新聞にてサイバー攻撃本が告知されました

トーテックアメニティ・サイバーセキュリティ研究所所長の藤原礼征氏の著書が日経新聞ででかでかと宣伝されました。


サイバー攻撃からあなたの会社を守る方法

藤原礼征著/中経出版  定価1500円+税


本書は、サイバー攻撃の危険性を煽る流行本とは一線を画した本格的な解説書です。

中小企業にとってサイバー攻撃というのは政府機関や有名企業がターゲットになる他人ごとの話のような気がします。

しかし、それは完全に間違いであるというのが藤原氏の主張です。

企業が万が一サイバー攻撃を受けた場合、そこから派生する被害については責任が生じます。

そうしたことに目を配らなければならないという現代の企業経営の難しさを痛感させてくれる本です。

最近はBCPというリスクマネジメントの考え方が出てきていますが、サイバー攻撃についての対応策も企業の責任になってくるでしょう。


ドラッカー流の社会的責任論の原則は以下のとおりです。

「野獣がおりから逃げたら飼い主に責任がある。野獣が危険なことは周知の事実である」=野獣の原則

サイバー攻撃が危険なのは周知の事実ですから企業が対応する責任があるというわけです。

本書を読むと「サイバー」という概念についてきっちりとした知識を得ることができます。



(浅沼 宏和)

2012年3月10日土曜日

昨日を体系的廃棄する

昨日を体系的に廃棄しようとすることが、すでに戦略計画である。

それは思考と行動を強いる。

しかも、新しいことに必要とされる人材と資金をもたらす。行動への意欲までもたらす。

  『マネジメント』より


ドラッカーの原理原則は、当たり前のことを突き詰めるとどうおなるかというお話ばかりです。

昨日の活動をやめると時間がうきます。それで何かをしなければならないわけです。

また何かをやめようとするためには、それが成果を生んでいないことに気がつく必要があるわけです。

それに気がついて活動をやめることは戦略計画の変更以外の何者でもないのです。


(浅沼 宏和)

2012年3月9日金曜日

リスクがあって当たり前

経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待にかけることである。


経済活動の本質とはリスクを冒すことである。

‥実は、計画が成功するということは、より大きなリスクを負担できるようになることである。

より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、企業家としての成果を向上させる唯一の方法である。

  『マネジメント』より


ドラッカーは逆に確実に失敗する方法とは、絶対確実な安心・安全な道を選ぶことであるといっています。

リスクを取らないということは、100%中身がわかっている活動を行うこと、それはつまり「昨日の活動」しかやらないということです。

未来が絶対確実に今日と違うのであれば、現在の「絶対確実」は未来において全く通用しないということです。

ただし、無闇やたらとリスキーな活動をするということではありません。

冒そうとしているリスクを理解し、最も合理的なリスクを選択することが大切なのです。

この点について、ドラッカーは「勘や経験に頼ることはできない」といっています。


(浅沼 宏和)

2012年3月7日水曜日

◆「サイバー攻撃からあなたの会社を守る方法」の刊行

私が顧問を務めるトーテックアメニティ・サイバーセキュリティ研究所の所長である藤原礼征氏の手による著書が3月8日に刊行されます。


サイバー攻撃からあなたの会社を守る方法


藤原礼征 著/中経出版  定価 1,500円+税


藤原氏は、理系出身であるにもかかわらずサイバー空間の社会的・政治的・法律的意味までも視野に入れた多面的な発想のできる柔軟な人物です。

この手の本は流行りモノ扱いされそうなところですが、中身の濃さからいって何年も価値を持つ定番の本になるでしょう。

「当社は中小企業だから関係ない」と決め込んでいた私も、考え方を改めないといけないと痛感させてくれる内容です。

ぜひご一読ください。





(浅沼 宏和)

計画とはタイムマシーンである

計画とは、あらゆる種類の未来を現在に集約するタイムマシーンである。

    『マネジメント』より


計画というと明日やることを今日決めるというイメージですね。

ですが、ドラッカーはそれでは未来が創りだされないと考えています。

未来は現在の活動が生み出すわけで、計画は現在のものでなければならないということです。

計画というタイムマシーンがないと未来に行けないわけです。

計画がなければ出たとこ勝負の話になるわけで、偉大な発見・発明が大変な努力から生まれるように、偉大な未来も明確な計画と必死の努力が必要ですね。



‥われわれは、明日行う意思決定について計画しがちである。楽しいかもしれないが無益である。

意思決定は現在においてしか行えない。しかし、今日のためだけに意思決定を行うこともできない。

  『マネジメント』より


ようするに明日に先延ばしするなということですね。

また短期と長期のバランスの難しさもよくわかります。

わかっていてもなかなかできないことではありますが。



(浅沼宏和)

2012年3月6日火曜日

明日のために今日何をするか?

‥戦略計画は魔法の箱や手法の束ではない。思考であり、行動である。

  『マネジメント』より


「アクションプラン」でなければならないということです。計画は行動の前提であるということです。

こうした素朴な原理を忘れてはならないということです。

具体的アクションなくして成果は生まれません。


(浅沼 宏和)

2012年3月5日月曜日

今日の延長で活動するな

今日のトレンドを単純に引き伸ばし、今日の製品、サービス、市場、技術がそのまま明日のそれであると仮定し、資源とエネルギーを昨日の防衛に使うようなことがあってはならない。

   『マネジメント』より


ドラッカーは時間軸を長期と短期に分けることの大切さ強調しています。

それはつまり長期と短期は連続していないということです。

連続していないものを扱うわけですから未来に取り組むことははっきりとした意識が必要であるということです。

マネジメントとは「外に価値を創造するために意識的に頭と体を使うこと」です。

未来は意識しなければ創りだされません。


(浅沼宏和)

2012年3月4日日曜日

閑話休題-ドラッカーとポーターは似ている?


マイケル・ポーター
ここ一年でドラッカーとポーターの入門書を書きました。

このようなビッグネームを短期間に扱う機会はそうそうないと思いますが、おかげで両者の考え方をじっくりと比べる時間を持つことが出来ました。

結論としては、ドラッカーとポーターの戦略論は似ている と思うようになりました。

経営戦略論にはいろいろなタイプのものがあります。

分類法もいろいろですが、例えば次のような分類法があります。
ピーター・ドラッカー

1、戦略計画学派:目標達成に向けてヒト・モノ・カネの整合性を取っていく
2、創発戦略学派:戦略はトップダウンで決めるのではなくミドル以下の現場での試行錯誤の結果がボトムアップされて決まる
3、ポジショニング学派:有利な戦略的ポジションを追求する
4、リソースベースドビュー:経営資源の強みを生かしていく戦略
5、ゲーム論的戦略論:ライバルや取引先の行動を読み取りシナリオを作って対処する

もちろん、ポーターはポジショニング学派の代表格とみなされているのです。

しかし、実際には程度の差こそあれ、どの戦略論もこれらの要素が全て詰まっているものです。

その中で特に強い傾向の部分が目立つというのが実態であると思います。

マイケル・ポーターの戦略論の骨格はドラッカーの「創造する経営者」に書かれている内容と殆ど変わりません。

ドラッカー自身もそのように感じていたようで、1985年の「イノベーションと企業家精神」の中で、ポーターの競争戦略論は自分の考えにヒントを得て、発展させたものであるとはっきりと書いています。

実際に、ポーターの理論は1980年の「競争の戦略」では、ガチガチの理論でしたが、その後、年をへるに従って柔軟性を高めて行きました。

イノベーションという言葉もよく出てくるようになりました。

「イノベーションには10年かかる」というドラッカーと同じ表現のところも多数見受けられるようです。


フィリップ・コトラー
そこで、私は総合理論としてドラッカーを採用し、経営戦略の各論を考える上でマイケル・ポーターを使うということが有益であると考えるようになりました。

さらに、そこにマーケティングのフィリップ・コトラーを合わせれば経営戦略を考える上で必要な要素をほとんど網羅することが出来ると思います。


(浅沼 宏和)

2012年3月3日土曜日

将棋名人・羽生善治の名言集

羽生善治名人の名言集を集めてみました



・勝負の世界では「これでよし」と消極的な姿勢になることが一番怖い。
常に前進をめざさないとそこでストップして後退が始まってしまう。


・不利な局面でもあきらめずに淡々と指していくことが勝負のツボを見出すポイントになる。


・積極的にリスクを背負うことは未来のリスクを最小限にする。


・意表を突かれることに驚いてはいけない。予想通りに進むことなど皆無といって良い。




・山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには「選ぶ」より「いかに捨てるか」のほうが有用である。


・楽観はしない。ましてや悲観もしない。ひたすら平常心で。


・安全勝ちの手を選ぶと逆転負けが起きやすい。


・複雑な局面に立ち向かったり、物事を推し進めるときは、簡単に、単純に考えることから可能性が広がる。




・判断のための情報が増えるほど、正しい決断ができるようになるわけではない。


・理解したくないと思っているものは、どんなに頑張っても理解出来ないが、許容する気持ちがあれば理解できることが増える。


さすがですね。概ねドラッカーの本に書いてあるのと同じ内容です。

(浅沼 宏和)

2012年3月2日金曜日

未来をつくる

未来は、望めばそのとおりに起こるわけではない。

未来を築くには、今、決定をおこなわなければならない。

今、リスクを負わなければならない。

今、行動しなければならない。

  『マネジメント』より


ドラッカーは、未来を考え、長期と短期をバランスさせる必要があるといっています

ここでバランスとは調和とは反対の概念であるということです。

バランスは2つの相容れないものをうまく扱うことです。

調和とはそれぞれの特性の良さをお互いに引き出していることです。

バランスは矛盾をできるだけ表面化させないという不確実な取り組みであるということです。

未来に取り組むことは現在と矛盾するということなのです。

それでも未来に取り組む必要があります。

そして、それは今行わなければならないということなのです。


(浅沼 宏和)

2012年3月1日木曜日

経営者が使うべき時間

‥もちろん小企業のトップのほとんどは、すでに外で十分時間を使っているという。

これからも外へ出てばかりいるであろう。

事実、大切な顧客には自分で会っている。借入には自分で銀行に出かけている。

しかし、彼らが必要としているのは、それら以外のものに使う時間である。

市場、機会、変化を知るための時間である。

「われわれの事業は何でなければならないか」を考えるための時間である。

必要とする時間はそれほど長くはない。

しかし、日常の現業の仕事のための時間とは違った意味で、まとまった時間が必要である。

   『マネジメント』より


これこそ経営者の最大の役目ですね。

時間管理は単純で奥が深いテーマです。


(浅沼 宏和)

2012年2月29日水曜日

社長も現場の仕事をする②

また違った事例です。


ある製薬会社が新分野への進出を図った。それまでの製品ラインではあまりに手薄と判断したためだった。

候補は幾つかあった。いずれの分野でもリーダーシップを握るには新製品の開発が必要だった。そこで3つの分野を選び、それぞれにプロジェクト・チームを編成した。

そのそれぞれにトップマネジメントの人間を一人ずつ参加させた。‥

‥それら3つの新薬開発プロジェクトはあまりに重要であって、必要な決定を必要なときに行うには、最初の段階からトップマネジメントの人間がプロジェクト・チームに参画していることが必要だった。

    『マネジメント』より


ただし、こうした事例が拡大解釈されると大きな失敗になるともドラッカーは指摘しています。

もしもその仕事が誰かができるようなものであるならばトップはタッチしてはいけないということなのです。



(浅沼 宏和)

2012年2月28日火曜日

社長も現場の仕事をする①

ドラッカーはトップマネジメントも現業の活動を行うべきと考えていました。

あるフランスの中堅消費財メーカーがヨーロッパで成功した。勝因は社長が広告を担当していたことにあった。しかも広告の制作までも行なっていた。

この社長はディーラー関係も自ら担当していた。‥

「われわれの事業は消費財販売だ。したがって業績はディーラー次第だ。どれだけディーラーを知り、どれだけディーラーに知られるかが勝負だ。‥」

この社長は、若い頃はエンジニアリングを専門にしていたにもかかわらず、今日では製造には一切関わりを持とうとしていない。

    『マネジメント』より


このエピソードにはいろいろな側面が含まれています。

トップのやるべき仕事とは何か、それまでとのキャリアとの関係をどう考えるか、など示唆に富んでいると思います。



(浅沼 宏和)

2012年2月27日月曜日

仕事が動くか人が動くか

仕事は常に何らかの形において組織化される。

職能別組織とチーム型組織のいずれかの設計原理に基づいて組織される。

職能別組織とチーム型組織の双方を必要とすることも多い。

    『マネジメント』より


ドラッカーの組織論はこの二つのバリエーションとして組織を捉えているのです。

この二つは対極にある組織なので、調和させることは出来ず、せいぜいバランスを上手く取ることを行い続けることしかできないのです


職能別の場合には仕事の段階やスキルの間を仕事が動いていきます。人は動かないのです。

ところがチーム型の場合、仕事が固定されます。

各種のスキルとツールを持つ者が、ひとつのチームとしてビルの設計や研究開発などの仕事を遂行するとされるのです。


(浅沼 宏和)

2012年2月25日土曜日

閑話休題-マネジメント手法としての5S

来月の『工場管理』に当社の5Sの取り組みについての記事がのります。

数年前から提唱している「2S直角平行」のコンセプトについての解説をしたのですが、最後のまとめでマネジメントと5Sについてまとめてみました。

最初の原稿の分量が足りなかったので急遽付け足したものなのですが、まとめてみると改めて5Sは重要であると思いました。



5、マネジメント手法としての5S

 当社ではマネジメントを「成果をあげるために行動する方法論」と定義している。成果とは外部に価値を創造することであり、行動するとは意識的に活動していくことである。そして、仕事とは成果に向かうプロセスである。成果へのプロセスからの逸脱を発見することが管理の本質である。

 管理が意味をなすためには基準・原則・プロセス・計画などのようにはっきりとした形を作る必要がある。5Sとは管理が意味をなすような環境の形を作り出すことであるように思われる。整備された環境は例外の発見を容易にする。そこにこそ5S活動の本質があると考えている。

 5S活動は逸脱の発見を視覚的に容易にする手段である。P.F.ドラッカーは「よい工場は退屈である。予想外のことは何も起きない。」と述べているが、それはプロセスがきっちりと作りこまれ、管理レベルが高い水準にあることを意味している。

 こうした点から5Sは企業目的そのものではなく、あくまでも目的実現のための手段というべきものである。しかし日常業務と密接な関係を持ち、管理の実効性を確保するためには不可欠な活動なのである。

ドラッカーはよい管理手法の条件として、①効率性 ②意味性 ③適切性 ④精密性 ⑤適時性 ⑥単純性 ⑦実用性 の7つを上げている。これは要するに最小の手間で最大の成果を目指すという視点であり、5S活動もそのようなものとして捉えるべきである。当社の提唱する「2S直角平行」はこうした視点に合致する取り組みであると考えている。

Sは形骸化しやすい活動である。だからこそ5Sの本質を見据えつつ経営効果に常に目を光らせる姿勢が必要になる。5Sを成果にいたるプロセスからの逸脱を防止する実践的なマネジメント手法として位置づけて今後も積極的に取り組んでいきたい。



(浅沼 宏和)

ゼネラリストのほうがよい

‥有機化学や国際金融取引についての助言活動では、マーケティングや購買の人間ではいかに教師としての資質があろうとも不適である。

しかし、助言活動の多くの分野において、学ぶ意欲があり、顧客のことを考え、貢献する責任を負うゼネラリストのほうが、その分野の専門知識をもたない素人をばかにし、しかも努力をしないスペシャリストよりも優れた仕事をする。

        『マネジメント』より


これは組織内の活動の分類上、助言業務というものについてのドラッカーの記述です。

当社は専門サービス業でもありますから、この助言業務の意味合いについてドラッカーから多くの示唆を得ています。

当社では本業ですが、顧客企業においてはアウトソーシングされた助言業務という位置づけになるわけです。

したがって当社社員はゼネラリストであることを目指さなければなりません。


(浅沼 宏和)

2012年2月24日金曜日

トップマネジメントの仕事

ビジョンを描き、基準を設定し、その基準に照らして仕事ぶりをチェックするという活動はトップマネジメントの仕事である。

‥小企業でさえこの仕事を必要とする。

小企業では、独立した仕事として組織する必要はない。

      『マネジメント』より


私はセミナーで「あなたが昨日上げた成果を説明できますか?」とよく聞きます。

首を傾げる方は経営者により多い傾向が有るようです。

トップの仕事の責任は重いことは言うまでもありません。

しかし、具体的仕事内容が見えにくいのもトップの仕事の特徴です。

トップの仕事を明瞭にすることはトップ自身が行なっていく責務でしょう。

ドラッカーの本にはそのための視点が数多くあります。


(浅沼 宏和)

2012年2月23日木曜日

組織の中核的活動を知るには?

ドラッカーは組織づくりはミッション・ビジョンから始まると考えています。

チャンドラーの有名な命題 『組織は戦略にしたがう』 のままということです。

そして、組織は活動の分析からスタートするといっているのですが、何が中核的な活動であるかを知らなければならないのです。

それが以下の3つの問です。

①組織の目的を達成するには、いかなる分野において卓越性が必要か?

②いかなる分野において成果が上がらないとき深刻な打撃となるか?いかなる分野に弱みがあるか?

③わが社にとって重要な価値は何か?


こうして見つかる活動を基幹活動と呼びます。

この基幹活動が組織の重みを担うのです。


(浅沼 宏和)

2012年2月22日水曜日

未来についての解答はない

未来に関して解答は存在しない。

    『マネジメント』より


事業上の問題についての解答はつねに判断を伴います。

それは不完全であり、リスクのあるものであるものです。

必要とされる行動が何か、またそのコストはどうかといったことについていくつかの選択肢から選ぶことが出来るだけなのです。

何か正解があるかのような考えをお持ちの方もあるようですが、間違っています。



(浅沼 宏和)

仕事を小さくすると人は麻痺してしまう

小さく設計した仕事は、人と組織を知らぬ間に麻痺させる。

           『マネジメント』より



無意識に仕事を小さくする人は仕事で自己実現しようとする気持ちがあまりない人でしょう。

こうした人は、よくいえば要領が良いのでしょうが、中長期的には生き残るのが難しくなるでしょう。

マネジャーは部下をこのような事態に陥らせないようにする責務があります。



数年で全てを身につけられるほど狭く設計した仕事では、欲求不満に陥る。

結局、さしたる働きもしなくなる。

いわば職にありながら引退も同然となる。

変化、イノベーション、新しい考えに抵抗するようになる。

自らの安全にとって変化が良いことであり得ようもないはずがないからである。

大きな貢献をしていないということを自覚するがゆえに、常に不安を感じている。

                    『マネジメント』より

ということですね。

いわゆる抵抗勢力というものの本質を言い当てているでしょう。

人はチャレンジしなくなると老いると言いますが、仕事を大きくすれば自動的にチャレンジすることになるわけです。



(浅沼宏和)

2012年2月21日火曜日

◆「世界一やさしいマイケル・ポーター『競争戦略』の教科書」の刊行

3月7日に私の次回作が刊行されます。

世界一やさしいマイケル・ポーター「競争戦略」の教科書

浅沼宏和著/ぱる出版、1,575円


第1章 競争戦略とは何か
第2章 「業界」と競争戦略 :5つの競争要因
第3章 3つの基本戦略と業界環境別の競争戦略
第4章 「活動」と競争戦略 :バリューチェーン、活動システム、フィット
第5章 「立地」と競争戦略 :ダイヤモンド理論とクラスター
第6章 「社会」と競争戦略 :共通価値の創造


ポーターは難解なのですが、できるだけシンプルにまとめました。



(浅沼 宏和)

予定通りには行かない

決定後の状況が想定通りに進展することは少ない。

最善の意思決定さえ思わぬ障害にぶつかり、あらゆる種類の想定外の事態に遭遇する。

しかも、最も優れた意思決定さえ、結局は陳腐化する。

したがって、成果からのフィードバックがない限り、期待する成果を手に入れ続けることはできない。

                                  『マネジメント』より


目標や基準が持つ意味はここにあります。

単純なことからスタートすれば良いと思います。


予定通りに行かないことが戦略が不要である理由にされることがよくありますが、アクションプランとしての理解が不足しているように思います。

そしてアクションプランは実行後のフィードバックがあって初めて意味を持つことになります。

フィードバックとは「うまくいかなかった」という事実に直面する作業でもあるわけで、心理的抵抗感があるものだと思います。

そこがハードルになるでしょう。



(浅沼 宏和)

半分の行動はない

半分の行動はない。半分の行動こそ常に誤りである。

                     『マネジメント』より


何事も中途半端はいけません。


(浅沼 宏和)

2012年2月20日月曜日

◆はましん塾にてドラッカーセミナー

はましん経営塾にてドラッカーセミナーの講師を務めて参りました。


http://hmcnews.hamazo.tv/e3474040.html


私ははましん塾のOB会員なのですが、昨年、ドラッカー関連本を出版した関係で依頼を受けたわけです。

普段会う人達の前でお話をするのはなんとなく気恥ずかしさがあります。


(浅沼 宏和)

大きな問題以外は手を付けない

「何もしなければどうなるか」という問に対して、「何とかなる」との答えが出るときには手をつけてはならない。

頭痛の種ではあっても、大きな問題でなければ手をつけてはならない。

                        『マネジメント』より


これはなかなかできないことですね。

ドラッカーはこうもいっています。


ローマ法は、為政者は些事に執着すべからずといった


大抵の問題は何もしなくてもうまくいくわけではないですが、何もしなくても取り返しがつかなくなるわけではないということです。

なかなか難しい価値は何ではありますが。



(浅沼 宏和)

2012年2月19日日曜日

完全な意思決定などない

完全な意思決定などありえない‥

必ずどこかで代償を払わされる。必ず何かは我慢させられる。

両立不能な目標、対立する意見、矛盾する優先順位をバランスさせなければならない。

                                    
                                         『マネジメント』より


意思決定は常に矛盾のバランスを目指すものです。

ですから、不完全なわけです。

「なんとかバランスがとれている」といったところがせいぜいであるわけです。

こうした事情を踏まえずに「完璧な意思決定」を追求するのは時間の無駄です。


(浅沼 宏和)

2012年2月18日土曜日

トップが腐ると組織が腐る

組織が偉大たりうるのはトップが偉大なときだけである。組織が腐るのはトップが腐るからである。
「木は梢から枯れる」との言葉通りである。したがって範とすることのできない者を高い位置につけてはならない。

                          『マネジメント』より


まったくもって御尤もです。

ドラッカー経営ではトップが最大成果を上げる責務を負っています。


(浅沼 宏和)

失敗はトラブルや怠慢とは違う

信用してはならないのは、決して間違いを犯したことのない者、失敗したことのない者である。

そのような者は、無難なこと、安全なこと、つまらないことにしか手を付けない。

‥‥そのようなことでは、組織の意欲を失わせ、士気を損なう。

                          『マネジメント』より


誤解してはならないのは失敗とはチャレンジして成功しなかったという意味です。

やるべき仕事を怠ることや、全力を尽くさなかったことによって発生したアクシデントとは違う意味であるということです。

失敗はチャレンジする者にだけおきることです。


(浅沼宏和)

ドラッカーが評価した日本の難局突破能力

日本の歴史で際立った特徴となっているものが、難局における180度の方向転換の能力である。

   
                              『マネジメント』より


これはドラッカーが日本を評した言葉です。

具体的な事例として次のことをあげています。

・16世紀にキリスト教を世界で最もスムーズに受け入れたくには日本である。

・17世紀に一転してキリスト教を禁止して徹底に成功したばかりか鎖国も成し遂げている。

・19世紀半ばにまた一転して開国とキリスト教の受け入れている。

このように日本はそれまでと正反対の取り組みを成功させる能力が高いといっています。


さて、現在は難局であると思います。

ドラッカーが賞賛した我が国の能力は今回も発揮されるのでしょうか。



(浅沼宏和)

2012年2月14日火曜日

プロ7箇条

ビジネスポスターのパンフレットが来たので中身を見てみるとなかなか良いことが書いてありました。


【プロ7箇条】

1、プロとは仕事に全力を尽くす人である

2、プロとは自分の仕事に誇りを持つ人である

3、プロとは先を読んで仕事をする人である

4、プロとは仕事にムラのない人である

5、プロとは笑顔で気配りができる人である

6、プロとは成果に責任を持つ人である

7、プロとは能力向上のために努力する人である


ごもっともなことです。

この原則にはドラッカーのにおいが濃厚ですね。

明らかにドラッカーの本にそのまま書いてあるのが、1、2、6、7、です。

5は日本式というところでしょうか。



(浅沼宏和)

真摯さ、成果、足りない能力を補う個人のイノベーションがキーワードになっていますね。

2012年2月7日火曜日

TSUTAYAの創業者・増田宗昭氏の強み

現在、TSUTAYAのビジネスモデルについて調べています。

色々な企業事例と同様にここもリーダーのマネジメント能力が傑出しています。

増田宗昭氏は1951年生まれ。

大学卒業後に、アパレルの鈴屋に入社。

二年目で軽井沢ベルコモンズの立ち上げプロジェクトを任され成功しました。

その後、鹿児島ベルコモンズの立ち上げをしますが、こちらは大失敗。採算ベースに乗せるまで現地で指揮を取りました。

この間に、相続した土地を年収の10倍の借金をして賃貸マンションに建て替え、仮に入居者ゼロでも返済が可能なように空き地に立て看板を立てる等して有能な経営者の片りんを見せていました。

32歳の時にお姉さんが喫茶店を開業するので併設して貸しレコード屋をオープン。

大繁盛したため33歳で脱サラし、実業家としてスタート。創業2年目でフランチャイズ事業に着手して後はとんとん拍子でした。

ここで私が注目するのは増田氏が独立するまでに約10年あったこと。その間に次の経験をしているということです。

①大プロジェクトの成功

②大プロジェクトの失敗と後始末

③個人でリスクを取ったビジネスの実行

④小規模での事業

脱サラまでにこの4つを経験していたことが大きな強みであったことは否めません。

私は個人も組織もイノベーションには10年かかると思っているのですが、増田氏の事例もその法則に当てはまるようです。


(浅沼 宏和)

リーダーと信頼

リーダーたる第三の要件は信頼が得られることである。

‥そもそもリーダーに関する唯一の定義は、つき従う者がいるということである。

信頼するということはリーダーを好きになることではない。常に同意できるということでもない。

リーダーの言うことが真意であると確信を持てることである。

それは真摯さという誠に古臭いものに対する確信である。

リーダーが公言する信念とその行動は一致しなければならない。

‥もうひとつ、古くから明らかになっていることとして、リーダーシップは賢さに支えられるものではない。一貫性に支えられるものである。


        『経営者の条件』より


ということです。

つまりカリスマ性がなく、好かれていない有能なリーダーがありうるということです。

リーダーは、リーダーシップを具体的な仕事とみて、責任を強く自覚し、一貫性のある真摯な姿勢をもつ必要があるのです。



(浅沼 宏和)

2012年2月5日日曜日

リーダーシップとは責任

リーダーたることの第二の要件は、リーダーシップを地位や特権ではなく責任とみることである。

‥真のリーダーは、他の誰でもなく、自らが最終責任を負うべきことを知っているがゆえに、部下を恐れない。

ところが似非リーダーは部下を恐れる。

‥優れたリーダーは、強力な部下を求める。部下を激励し、前進させ、誇りとする。

部下の失敗に最終的な責任を持つゆえに部下の成功を脅威とせず、むしろ自らの成功ととらえる。


         『経営者の条件』より


マッカーサーはうぬぼれが強い人であったようです。逆に、リンカーンやトルーマンは劣等感を持っていたとのことです。

このようなタイプの違うリーダーたちに共通していたのは、まわりに有能な部下たちを集めていたことです。

えてしてリーダーは自分より凡庸な部下を集める傾向がありますが、ドラッカーは本当のリーダーはそのようなものではないといっています。


(浅沼 宏和)

2012年2月4日土曜日

効果的なリーダーシップ

効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。

リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である。

   
  

              『経営者の条件』より


ここからリーダーシップとは私が個人の仕事論の原則、組織の経営戦略として説明している内容そのものであることがわかります。

リーダーシップとは雰囲気的なものではなく、あくまでも具体的・実際的な仕事なのです。


(浅沼 宏和)

2012年2月3日金曜日

リーダーにカリスマ性はいらない

リーダーシップはカリスマに依存しない。

アイゼンハワー、マーシャル、トルーマンの3人は稀なほど強力なリーダーだった。

だが、いずれも爪の垢ほどもカリスマ性を持っていなかった。 (以下、アデナウアー、リンカーン、チャーチルが列挙される)

大事なことは、彼らが正しかったことだった。

カリスマ性はリーダーを破滅させる。柔軟性を奪い、不滅性を盲信させ、変化不能とする。


      『経営者の条件』より


ドラッカーはリーダーシップとは仕事である”と言っています。

仕事とは成果に向かうプロセスです。


つまりリーダーシップとは成果を明確にして、そこに向かうプロセスを段階に分けて、具体的な課業や役割を定めて、役割を配分し、必要な能力を開発し、全力で取り組むということなのです。


やるべきことが明確であれば人格的な影響力を駆使する必要もないわけで、仕事の成果が不明瞭で、そのプロセスがますます不明確であればどうにもならないということなのです。

中身がなくてカリスマ性があることほど困ることはありません。

ドラッカーはそうした英雄の例として、ヒトラー、アレクサンダー大王、ケネディを上げています。

リーダーシップを仕事とみることで、資質や個性の違いがあっても成果を上げることができるわけです。


(浅沼 宏和)

閑話休題-執筆のリズム

昨年から今年にかけて執筆の量が数倍に増えました。

特に単著を立て続けに刊行したことで、作家さんの苦労が多少感じられるようになりました。

私の場合、本の執筆は次のような感じになるようです。


ステップ1
出版が決まり、企画書の内容に沿って各種の書籍・資料を大量に読み込む。このインプットは知的好奇心が満たされ、大変な割には楽しくやれる仕事です。


ステップ2
締め切りが気になるようになり文章を書きだす。これが本当に大変で、「こんなような話でまとめたい」を具体的な文章にするのが大変です。
理想と実際の文章のギャップに悩まされ、ちょっとつまづくと挫折して本をまた読み込むという行きつ戻りつが続きます。


ステップ3
締め切りが迫ってくるとハイテンションになります。およそこの時期が10日~2週間ぐらい続きます。
精神が高揚してきてかけそうな気がどんどん湧いてくるのですが、あとちょっとのところで言葉が出てきません。
そこでジョギングに出かけたり入浴したりして気分を変えて少しずつ文章を絞り出すということを繰り返します。
睡眠も極端に少なくなり体力的にもかなり消耗します。このステップを1か月続けることは不可能です。


ステップ4
なんとか締め切りに合わせて文章が出来上がります。私は納期までにできる限り内容を高めるという方式なので、納期遅れがあったとしても数日から1週間といったところです。
提出した直後は極度の解放感で景色が明るく見えます。


ステップ5
ハイテンションの状態から通常の状態に戻ると、精神的な落ち込みが来ます。
「もっとうまく書けたはずなのに」という思いが次々と起きてきて自己嫌悪になります。
またハイテンションの状態で思いついた文章については、おおよその内容は思い出せるのですが、具体的な記述はどんどん忘れていきます。
数日すると何を書いたのか自分でもわからない状態になります。


ステップ6
ゲラがあがってくると少し自信を取り戻します。なにせレイアウトがきれいになりますので文書もよく見えてきます。
ゲラチェックをするのですが、自分の文章なのに「へえ~」「そうなのか!」「なるほど!」と独り言をいったりします。
不思議な話ですが自分が書いた文章ではなく他人の文章を読んで添削している感じになります。


ステップ7
本が完成します。きれいな装丁を見ると気分が晴れやかになります。しかし、読んでくれた人がどんな反応をするのかが気になるようになります。
本屋さんで自分の本を手に取っている人を見かけると買ってくれるかどうか気になってずっと観察してしまいます。


まあ、こんな感じです。




(浅沼 宏和)

◆マイケル・ポーター入門書を刊行します

史上最強の経営戦略家として名高いハーバード大教授のマイケル・ポーターの入門書を刊行します。

マイケル・ポーター
出版社は、去年に「世界一やさしいドラッカーの教科書」を刊行したぱる出版です。


http://pal-pub.jp/new.php


ドラッカー本の企画を進めていくさなかで、次はポーターでという話になり、前回の本から9か月後に「世界一やさしい~」の第二弾を出すことができることになりました。


マイケル・ポーターは1980年代にスーパースターになった人で、当時のほとんどのコンサルティング会社はポーターの理論をツールに使っていたほどです。

有名な5つの競争要因
その後、「ポーター理論は静態的で、現実の変化に対応していない」といった批判などを受けて、大ブームといった状況は収まりました。


しかし、今、日本でひそかにマイケル・ポーターの再評価が進んでいるのです。

一番のきっかけとなったのは、ワタミフードサービスの渡邊美樹氏がNHKの番組で自身の「座右の書」として紹介したことです。

ワタミの渡邊美樹氏
その影響で、専門書の中でもとりわけ高価なポーターの本が売れるといった事態が起きたのです。

星野リゾートの星野よしはる社長もポーターを愛読しているようですね。

おかげで私も大人物の理論をまとめる機会を得ることができました。

マイケル・ポーターはとても分析的でロジカルな体系を提示している人ですので、なるべく元の思想をそのまま伝えるように苦心しました。


あの壮大な理論体系を192ページのビジネス書に押し込むことはとても難しく、削り場所を選ぶのに四苦八苦しました。


「この一冊を読めばポーター理論の基本的な部分がすべてわかる」ことを目標としています。

その通りになるといいのですが。



(浅沼 宏和)

2012年2月1日水曜日

社長の仕事は知識労働の典型

私はセミナーで「昨日あげた成果を説明できますか」という質問をしています。

深々とうなずく人よりも首をかしげる人のほうが多いようです。

聴講者の多くは経営者ないし後継者の方です。したがって現業の仕事ではない場合が多いのですが、かえって現場の人のほうが簡単に説明できるでしょう。

「昨日は朝から工場で働いていました。時間当たり200個の部品を作り、不良はありませんでした。」

実に明瞭です。

現代のような知識社会ではこのような明瞭さが失われているわけで、知識労働の最たるものが経営者の仕事です。

最大成果をあげるべく行動しなければならないはずですが、意外とするべきことが明瞭ではなく、日々発生する事態に対処している時間が長くなるようです。


知識労働者においては時間の活用と浪費の違いこそ成果と業績に直接かかわる重大な問題である。

        (『プロフェッショナルの条件』より)

私はセミナー向けのネタ作りに成功企業の経営分析をよくしますが、うまくいっている企業は経営者のマネジメント力がきわめて高いことがわかります。

会社の強みとして最も必要なのは経営者の能力であると思います。


(浅沼 宏和)

◆韓国版-「世界一やさしいドラッカーの教科書」刊行

今年の4月に世界一やさしいドラッカーの教科書の韓国語版が発売されます。

現在、アジアでは急激な経済成長を受けてビジネス書のニーズが高まっているようです。

それに対応するだけの執筆者の数が足りないため、中国や韓国では日本のビジネス書を翻訳して刊行する流れがあるようです。

日本の書き手にとって、韓国語版、中国語版はステップアップのために欠かせない関門であるそうで、そうした機会をいただいたことはありがたく思います。


(浅沼 宏和)

2012年1月30日月曜日

現代的なチーム型組織

ドラッカーの組織論は、すべての組織は職能別組織チーム型組織の組み合わせでできているというものです。

一般的にはそのように言われていませんが、私はドラッカーの著作の分析からそのように判断しています。

そして後期の著作で示された「情報型組織」とは現代的なチーム型組織です。

職能別組織の長所は安定性・継続性・経済性であり、短所は柔軟性・革新性です。チーム型はその反対になります。

さらにチーム型組織では自律性・自主性が重んじられ、各人の責任がその分だけ重くなります。多様なプロが集まる集団なのです。

以上を踏まえて情報型組織についての記述を読んでみましょう。

情報型組織は責任に基礎を置く。

‥情報型組織は、組織内の個人と部門が、自らの目標、優先順位、他との関係、意思の疎通に責任を持つときのみ有効に機能する。
したがって、情報型組織においては、みなが「いかなる貢献と業績が期待されているか」「何が責任か」‥‥を問わなければならない。

従来の組織は軍をモデルにしている。ところが情報型組織はオーケストラに似ている。

‥情報型組織は自由寛大な組織ではない。規律の厳しい組織である。それは強力かつ決定的なリーダーシップを必要とする。

‥情報型組織がもっとも必要とするものは現場からトップにいたるまで自己規律と責任の上に立つリーダーシップである。


このように情報型組織は基本的にチーム型組織の特性を持っています。



(浅沼 宏和)

ドラッカーの情報型組織とは

‥未来の組織は急速に現実のものとなりつつある。それは情報を中心とする組織、つまり情報型組織である。

  (『プロフェッショナルの条件』より)


ドラッカーの組織論は、職能別組織とチーム型組織によって組み立てられています。

しかし、後になると情報型組織という概念が提起されています。

これについて、多くの解説書も取り扱い方法に困っているようです。

しかし、よくよく文章を読んでみると情報型組織というのは現代におけるチーム型組織の理想のモデルであるということが分かります。

職能別組織が情報を媒介することで大幅に簡略化されるということ、さらに情報ベースでチーム編成がなされることであることが分かります。

このように理解すると組織編成について具体的な方法論が導き出しやすくなります。


(浅沼宏和)

2012年1月28日土曜日

チームの必要性

‥強い企業は業務の流れをリエンジニアリングし、各プロセスに責任を負う部門横断的なチームを作っている

      (フィリップ・コトラー『マーケティング・マネジメント』)


ドラッカーと親交が深かったコトラーの言葉です。

つまり職能別組織といえどもチームが必要であるということです。

しかし、ここで問題が出てきます。

職能別組織とチームは正反対の性格のものであるということです。

安定性・継続性・経済性に優れるが柔軟性に欠ける職能別組織、柔軟性に富み新たな価値創造に向くけれど安定性・経済性に欠けるチーム型組織。


ここから一つの教訓が出てきます。

完璧な組織構造は存在しない


これこそ組織論の基本原理です。

正しい組織とは成果の上がっている組織のことであり、間違っている組織とは成果の上がらない組織です。

組織の原理は単純です。実行するのが難しいのです。



(浅沼 宏和)

2012年1月27日金曜日

名刺の肩書きの意味は?

ビジネスマンの名刺の肩書きはほぼ職能別組織における位置づけを示しています。

営業主任、製造部課長、経理部長などがその例です。

職能別組織は成果から逆算したプロセスを段階別に再編成したものです。さらにそれがスキル別に分けられています。

こうした役職は安定性が高いものです。

毎日の業務はどんどん変化しているはずですが、毎日肩書きが変わるわけではありません。

こうした安定的部分がないと組織は崩壊してしまいますから、役職が明確であることは重要なのです。

しかし、それだけでは足りません。

職能別組織で定められた仕事は安定的ではありますが、仕事を大きくしていきながら地震を成長させるという面で弱いのです。

ドラッカーは「仕事は大きくしなければならない」といっていますが、それはビジネスパーソンの成長のために不可欠なことなのです。


(浅沼 宏和)

マンモスを狩るための組織、ピラミッドを建設するための組織

先日、ある会社の社員研修でドラッカー流の組織論を解説してきました。

組織論というと、なんだか複雑そうですが、ドラッカーは組織について説明しています。

ドラッカーは組織の基本的なパターンは二つであり、あらゆる組織はその二つの組み合わせによって出来上がっていると考えているようです。

一つは、古代エジプトのピラミッドを建設するために使用された組織です。今風にいうと「職能別組織」というものです。

職能別組織とは仕事のプロセスを段階に分けて、さらにスキル別に人を振り分けて組織化するものです。

目標が明確で、やるべき仕事が明確な仕事に向く組織形態です。

経済性・安定性に優れますが柔軟性・機動性・チャレンジ精神に欠ける弱点があります。セクショナリズムも発生します。


もう一つは、原始時代にマンモスのハンティングに使われた組織です。今風にいうと「チーム型組織」というものです。

機動性・柔軟性に富み、イノベーションに向いていますが、経済性にかけ安定性にも欠けています。


あらゆる組織はこの二つの混合型です。二つとして同じ組織はありません。ここを押さえておくことが組織論のかなめになります。



(浅沼 宏和)

目標のもとに違うタイプのプロフェッショナルが集結し目標を達成しようとするものです。

2012年1月23日月曜日

中企業は二流の事業に手を出して失敗しやすい

ドラッカーは企業規模を判断するために、中核的人材の数で見るべきという提言をしています。

中核的人材が15人程度までが小企業、50人程度までが中企業、それ以上が大企業です。

したがって業種や個々の企業の事情で変わってきます。

もっとも単純に人数だけで判断すると間違うので、あくまで総合的判断が必要ですが。

中企業の場合、たいていはそこまで大きくなった強みのある事業があります。

こうした場合、ついつい他の事業に手を出して失敗をしやすい点を注意しています。


中企業は二流の事業に手を出して失敗しやすい。中企業はすでにそれぞれの分野で一流である。

他の企業にはできないことを楽にこなしている。したがって自信過剰となっている恐れがある。

(「マネジメント」より)


中企業はやはり大企業に比べて資源に乏しいという問題を抱えています。ですから中企業の成功の鍵も「集中」にあるわけです。

二兎を追う者一兎をも得ずという感じでしょうか。

ドラッカーは次のようにも言っています。

中企業とは、特定の重要な分野においてリーダー的な地位にある企業である。

ということは、社員数だけで見てもいけないわけですね。

強みの状況についても考えないといけません。


(浅沼 宏和)

2012年1月22日日曜日

見えてはいるが見てはいないもの

小企業の経営資源は制約されています。

ドラッカーは特に役割の組織化を行うことが大切であると言っています。

そこで、考えるべきなのは基幹活動なのだそうです。


小企業は事業目的の実現に必要な活動が何であるかを明らかにし、それを誰かに担当させることが必要となる。

さもなければ、基幹活動のいくつかが力を入れられることなく放置されたままとなる。

‥基幹活動については誰もが口にしていながら、誰も注意を払っていないことが明らかとなる。

見えてはいるが見てはいない。そうしてほおっておいている。


(「マネジメント」より)

ドラッカーは当たり前のことであるからこそ、逆にほおっておかれてしまうのだと言っています。

基幹活動は言葉で表現して担当者を決めなければ実行されません。


(浅沼 宏和)

小企業は成功できない?

小企業にも戦略が必要であることは明白ですが、ここからドラッカーはちょっと厳しい主張をしています。


現実にはほとんどの小企業が戦略を持たない。

機会中心ではなく問題中心である。

問題に追われて日々を送る。

だからこそ小企業の多くが成功できない。


(「マネジメント」より)


小企業はあらゆる経営資源が足りていないわけですが、この話からすると最も欠落しているのが経営者の能力ということになります。

小企業が成功する理由はひとえに経営能力にかかっているということですね。


(浅沼 宏和)

小企業にも戦略は必要

戦略が必要なのは大企業だけという意見は今だによく聞かれます。

これは戦略という言葉の定義の問題であり、「誰に、どんな価値を、どのように届けるか」を決めて、その具体的実行法を明確にするのが戦略であるならば、個人事業であっても必要です。

ドラッカーは

小企業は戦略を持たなければならない。

小企業は限界的な存在にされてはならない。

その危険は常にある。

したがって際立った存在になるための戦略を持たなければならない。

有利に戦うことができるニッチをみつけなければならない。

(「マネジメント」より)


特に小企業はニッチに生きる具体策を持つということですね。


(浅沼 宏和)

2012年1月21日土曜日

利益より売り上げ③

特集を読んでいくと、グローバル競争を展開する大企業を想定した話になっています。

ドラッカー理論で考えて納得のいく部分を上げますと


1、コスト管理はコスト削減ではなく成果の最大化であるという視点が入っている

コスト削減は未来の競争力を失う可能性につながります。最も重要な商品サービスのボリュームを増やす、つまり投入資源に対する成果の最大化を目指すことが大事であるということです。


2、EVA(経済的付加価値)の否定

これは要するに短期における成果とコストの差額を大きくする視点ですので、先行投資という考え方を重視しろというは話です。
「戦略とは現在と将来のバランスをとることである」というドラッカーの視点からすると直近の利益の犠牲をどのように行うかは重要です。
先行投資なくして将来の利益はありません。


ということで、ドラッカー的な観点からするとしっくりきそうな気がします。

しかし、ポーター的に考えるとまだよくわかりません。

1、ニッチではなくナンバーワンを目指すべき

これですとポーターの言うパフォーマンスエクセレンスの追求という泥沼の戦いになるような気がします。
ニッチという概念の定義の仕方の問題のような気もしますが、誤解も生じそうです。


2、国内市場が縮小しているのだからグローバルに戦え、それには売り上げ重視だ。

企業の強みを生み出すのが産業集積(クラスター)であるとすると、海外展開は中長期的には国内を弱体化させる気もしますが、この点、まだ私も整理がついていません。



特集を総括すると、いろいろな前提仮説が入っているようで、結論としては安直な気もします。

前向きに受け取るとするならば「昔の勝ちパターンを思い出して、現代風に生き返らせろ」といったことでしょうか。


(浅沼 宏和)

利益より売り上げ②

続きです。


利益偏重経営の4つのウソ


ウソ① 利益確保こそ企業存続の条件 →ホント:縮小に均衡なし、衰退の始まり

事業が伸び悩む企業は縮小均衡に走りがち。単なるコスト削減や他社の物まねでは新規事業を展開する余裕もなく、新たな市場開拓もままならない。これでは均衡どころか衰退の一途。


ウソ② ニッチ市場を狙え →ホント:ニッチ市場こそ優勝劣敗の厳しい市場

ニッチ市場でトップシェアを狙えるのは優れた中核技術を持つ企業に限られる。市場がニッチであるほど負けると危険。「優れた技術でオンリーワン企業」というのは結果論だ。やはり目指すはナンバーワン。


ウソ③ 高付加価値が利益の源泉 →ホント:高付加価値だけではもうからない

海外市場では「高機能」「品質重視」だけではビジネスの規模は限られる。富裕層ではなくボリュームゾーンを狙うのがよい。


ウソ④ 海外市場は利益重視 →ホント:成長市場ではシェアを優先

特に成長を見込める新興市場ではまず売り上げ確保にまい進するのがグローバル企業だ。




(浅沼 宏和)

2012年1月20日金曜日

利益より売り上げ①

日経ビジネス2012.1.23号に興味深い特集がありました。

利益より売り上げ -さらば縮小均衡路線-

です。

もし、そのとおりであるならば、ドラッカーのニッチ戦略の考え方やポーターのポジショニング理論とも関係してきますので、私としては一定の整理が必要になります。

ということで、まずは日経ビジネスの特集の趣旨をまとめて、その後、検討を加えていきたいと思います。


・利益なくして企業の存続はない。だが、極端な利益優先の先に未来はないのでは?


・かつて「売上高至上主義」は日本企業の強さの源泉だった。売り上げ増とは消費者の支持の表れであり、新たな雇用を生み出す原動力。


・日本全体に漂う利益偏重。小さくまとまるムードを変える時が来た、今あえて利益よりも売り上げ重視を提言する。




・有名企業を分析すると過去5年間の累積営業利益は増収重視型(売り上げ重視)のほうが増益重視型よりも多い。


・売り上げ重視、シェア重視の経営にかじを切ることは、必死でコスト削減に取り組む日本企業に有効だ。


・目先の利益より売り上げを伸ばすことに力を入れるべき。


・持続的利益を得るために最も重要なことはトップラインを伸ばすこと。コスト削減は手を付けやすいがそれで利益率アップしても限度がある。


・国内企業は国内市場での順位ではなく、世界市場でシェア上位を目指すという気概と具体的方策が必要だ。(A.T.カーニー日本代表・梅沢氏)


・シェア拡大といった成長路線をあきらめ、短期的な利益確保に走る国内企業が増えているのは、海外勢との厳しい競争に打ち勝つための具体策が見えないという事情がある。


・マーケットの目も気になる。


・多くの企業が系絵指標として取り入れたEVA(経済的付加価値)が短期志向を生んだ。必要な先行投資が実施されていない企業は少なくない。

・利益を最大化するためにはボリュームを増やさないといけない。国内が低迷しているので、海外市場で規模を拡大するしかない。

・1960年代、米国企業の多くが利益率重視で、日本企業は売り上げ・シェア重視だった。米国企業は「三流の手法」とみていたが、その後日本企業は急成長した。

・先進国経済の不振と新興国経済の勃興というパラダイムシフトが起きつつある今、利益を優先するよりまず売り上げやシェアの拡大を追求すべき時代になった。



つづく



(浅沼 宏和)

イノベーションには10年以上かかる

先週、マイケル・ポーターの入門書の原稿ができあがりました。
こうした大物をまとめようとするとわが身の力量の乏しさを実感します。


ポーターを半年以上読み込んでいて気が付くのは、ドラッカーに似ている部分が多いということです。

最近、特に気に留めているのはイノベーションにかかる年数がどちらも10年以上ととらえていることです。

原則: イノベーションには10年かかる

ドラッカー現在のビジネスで成果を上げることを「マーケティング」 将来に成果を上げる取り組みを「イノベーション」と考えているようです。

そして、このイノベーションのためには10年単位の時間が必要といっています。

マイケル・ポーターは、競争優位は戦略的ポジションを確立することによって得られる

そして、その戦略的ポジションはさまざまな活動が組み合わさったシステム(活動システム)によって生み出されると主張しています。

強力な活動システムの構築には試行錯誤が必要であり、したがってイノベーションには長期間が必要であるといっています。

その期間が10年です。

私はポーターはかなりドラッカーを意識しているような気がしています。

いずれにしても10年計画で行うものがイノベーションであり、その間、さまざまな打ち手は実行しなければなりませんが、大筋の方向性でぶれてはいけないということです。


変化への対応と称して右往左往することはどちらも厳に戒めています。


(浅沼 宏和)

行動の意味-意識的かどうかがポイント

マネジメントの意味の補足です。

私の考えるマネジメントの定義は

外に向けて最大限の良い影響をもたらすように頭と体を意識的に使うこと


です。

頭と体を意識的に使うことが「行動する」ということです。

ここでポイントになるのが「意識的」という部分です。

無意識に行っていることは行動ではなく「動作」と考えます。

もちろん、ある成果を目指して確立された動作が必要である局面は多いでしょう。

しかし、その動作が目的意識を持って行われていないのであれば、それは惰性であって行動とは言えないものと考えます。


(浅沼  宏和)