2010年12月30日木曜日

『経営者の条件』②

続きです。知識と成果についてです。


・現代は知識を基盤とする組織の社会。組織社会では知識労働者は組織に貢献して初めて成果を上げられる。

・知識労働者は成果を上げるべく自らをマネジメントする。

・考えることこそ知識労働者の固有の仕事。

・知識労働者が生み出すのは、知識・アイディア・情報。


・知識労働者の生産物が意味を持つのは、他の労働者がそれをインプットとして何らかのアウトプットを生み出すとき。

・自らの知識・地位ゆえに組織の活動や業績に実質的に貢献すべき知識労働者はエグゼクティブ。

・知識労働者は意思決定をし、自らの貢献について責任を負う。

・ゲリラ戦では全員がエグゼクティブ。その状況にあるものしか決定ができない。


・エグゼクティブであるかは他人を管理しているかと関係ない。

・知識労働者は量やコストによって規定されない。成果によって規定される。

・「われわれの市場は何か」という基本的な問いを忘れると、衰退を招く市場の重要なサインを見逃すかもしれない。


・自らが成果を上げるよう意識的に努力しない限り、状況が彼らを無価値にする。

・医者はなすべき貢献が明確、しかし組織のエグゼクティブは違う。彼らはコントロールできない4つの現実に囲まれている。

①時間がすべて他人に取られる
②日常業務に忙殺される。成果と貢献に向けて働くことを可能にする基準が必要だが、日常業務にはその基準は見出せない。

③他人が彼の貢献を利用してくれなければ成果が上がらない。組織はヒトの強みを発揮させる仕組み。
④組織の中にいるという現実。組織の中には成果はない。成果はすべて外にある。


・人は少ないほど、組織は小さいほど、組織の中の活動が少ないほど組織は完全に近づく。

・最終的な決定権・拒否権を持つのは顧客。

・エグゼクティブは意識的努力をしないと組織内部に焦点を合わせる。しかも地位が上がるほど内部の問題に注意が向く。

・組織は存在することが目的ではない。外の世界に貢献することが目的。


・4つの現実は変えられない。だから成果を上げるための特別な努力が必要。

・仕事と成果を大幅に改善する唯一の方法は成果を上げる能力を向上させること。

・一分野で秀でる人は他分野では並みの能力しか持てない。


・成果を上げる方法を知ることこそが能力・知識という資源からより多くのすぐれた結果を生み出す唯一の手段。


(浅沼宏和)

2010年12月29日水曜日

『経営者の条件』①

「経営者の条件」の要約です。

本書は万人のための帝王学の書とも呼ばれています。ビジネス書のネタ本となっている確率が最も多い本の一つです。



・成果を上げる8つの習慣

 ①なされるべきことを考える
 ②組織のことを考える
 ③アクションプランを作る
 ④意思決定を行う

 ⑤コミュニケーションを行う
 ⑥機会に焦点を合わせる
 ⑦会議の生産性を上げる
 ⑧「私は」ではなく「われわれは」と考える


・①と②で知るべきことを知り、③~⑦で成果を上げ、⑧で全員に責任をもたらす。

・①なされるべきことは常に複数あるが一つに集中する。優先順位をつけてそれを守る。

・②組織にとって良いことを考える。組織にとって良いことでなければ、いかなる関係者にとっても良い話ではない。

・③エグゼクティブとは行動する者。どんな知識も行動に転嫁しなければ無意味。



・ナポレオンはアクションプラン通りに進めて勝利したことはない。しかし彼は史上例のない緻密さでアクションプランを作っていた。アクションプランがなければすべては成り行き任せとなる。

・④意思決定には4つの要素がある。実行責任者・日程・影響を受けるため決定内容を知らされるべき人・影響を受けなくても知らされるべき人。

・⑤コミュニケーションは重要。特にアクションプランについては上司・部下・同僚に示し意見を聞く。

・⑥成果は機会から生まれる。
7つのポイント 1、予期せぬ成功・失敗 2、ギャップ 3、プロセス・製品のイノベーション 4、産業構造・市場構造の変化 5、人口構造の変化 6、考え方・価値観等の変化 7、知識・技術の変化 


・⑦会議の生産性を上げる。会議の目的を決め、達成したら散会する。

・⑧トップが権威をもちうるのは、自らのニーズ・機会ではなく、組織のニーズと機会を考えるから。


・成果を上げるのは才能ではなく習慣。

・頭の良さと成果は無関係。成果は体系的作業を通じてあげる。


(浅沼宏和)

2010年12月28日火曜日

閑話休題-そうじをすると人生が変わる?

週刊ダイヤモンドに、日本初の「掃除小説」なるものの試読版がついていました。


志賀内泰弘氏の『なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?」がベースとなっているようです。


骨子は、掃除をすると色々と気づくようになり、それが仕事上の気づきとなるということです

これは当社の2S直角平行のコンセプトと同じであり、ざっと読んだ程度ですが、納得性がありました。

ちなみにお掃除重視で有名な2人の経営者の推薦の言葉が載っていたのでご紹介します。




イエローハット創業者・鍵山秀三郎

「ゴミを拾っていたら縁も一緒に拾っていた。その縁が運を開いてくれた。」


カレーハウスCOCO壱番屋創業者・宗次徳二

「掃除をやり続ければ人生が変わる。」


両者の言い分はいかにも東洋的です。しかし、私は掃除と成果との間にうまく説明できる論理があると考えています。

掃除、つまり環境整備と業績との相関関係は現場レベルではかなり信じられています。しかし、経営理論としては全く手つかずの領域なのです。

学問としての経営学の問題点は、経営者で共有されている常識の理論化すら行われていない部分が多々あることです。

当社では『2S直角平行』を切り口に掃除の理論化を進めていきたいと思っています。

『実践する経営者』⑦

経営者判断における注意事項です。


犯してはならない5つの大罪。

①利益幅と創業者利益を過信する大罪。利益幅を信奉すると競争相手に市場を提供することになる。利益幅と利益とは同義ではない。最大利益をもたらす利益幅こそ求めるもの。

②市場が受け入れる限度いっぱいに価格を設定する大罪。競争相手にリスクのない機会を提供することになる。

③コストを中心に価格を設定する大罪。有効な価格政策とは価格を中心にコストを設定すること。

④昨日の祭壇にささげるために明日の機会を屠る大罪。

⑤問題にえさをやり機会を飢えさせる大罪。最も成果を上げる人材を機会のある事業に投入し、とことん攻撃的に行動させている。


・今日の経営陣には明日の事業のための決定を今日下すという重大な責務がある。

・今日の経営の成果は主として明日のための準備として現れる。

・今日の経営成果が明らかになるのは明日である。だが高い確率で今日の経営を評価できる。以下の4つを見る。

①投資の結果を期待と比べる。

②人事の結果を期待と比べる。

③イノベーションの成果を期待と比べる。

④計画の結果を期待と比べる。


・計画とは今日の資源を明日のために使うプロセス。

・上記4つに優れた能力を持っていても、間違った事業を行っていては成果は出せない。

・5つの計器チェックによる自社の業績評価

①市場地位 :市場における地位の向上、低下、大事な市場でのシェア改善。

②イノベーションの成績 :イノベーションの成績は市場の地位にあっているか。

③生産性の成績 :各生産要素の生産性を別個に測定。ブルーカラー、事務職、スタッフ、経営管理者に分けて測定する。

④キャッシュフロー

⑤収益性 :3か月のローリング方式で経常利益を見る。


経営者にとって誤差は重要ではない。問題は絶対値ではなく傾向。トレンドを見ることが重要。


(浅沼宏和)

2010年12月27日月曜日

『実践する経営者』⑥

知識労働やコストについてです。


・知識労働の生産性をあげる4つの方法


①責任を持たせる。知識労働者のマネジメントは貢献に焦点を合わせるのだが、これがほとんど行われていない。

②貢献を評価させる。「この2~3年、会社を変えるどんな貢献を行ったか、今後2~3年で会社を変えるいかなる貢献を行うか。」について自ら評価・判断させる。

③本来の仕事をさせる。さもなければいかなる動機付けをされても燃えない。

④配置に力を入れる。


・知識労働者は強みを発揮できるところに配置する。

・肉体労働は加算できるが、知識労働者は二人いても倍はおろか一人前の仕事もできない。互いに邪魔になるだけ。

・あらゆる資源で最も高価なものは知識。学生時代に金がかかり、貢献どころか学習だけの新人時代に金がかかる。給与に見合うのに5年かかる。


・経営陣に昇進する可能性のない仕事はすべてアウトソーシングが普通になる。アウトソーシングこそ事務処理、保守管理、補助的仕事の生産性を向上させる唯一の方法。

・それらの仕事は社内で独占状態である。だから生産性を向上させる競争がない。


・マクドナルド創業者レイ・クロックは、店舗の生産性に手をつけたとき、スプーン、紙ナプキン、フライパンなどの一つ一つを設計しなおした。

・病院保守管理会社は生産性向上のために、ほうき、ちりとり、くずかご、シーツ、毛布に至るまで設計しなおす。

・フレッド・スミスがフェデラルエクスプレス社を創立した際に、荷物の集配、運搬、配達、伝票の手順を分析し、訓練に次ぐ訓練を実施した。


・コストを削減するためにリストラをすることは手順を間違っている。

・コスト削減の唯一の方策は仕事を改革すること。コスト削減は仕事の再設計の機会としてとらえなければならない。

・「どうやってこの仕事を効率化できるか」は間違った問い。「この仕事を止めたなら屋根が堕ちるだろうか」と聞くべき。落ちないなら仕事を廃止する。


・コスト削減には仕事そのものの廃止が極めて有効。廃止しても困らないものがいかに多いか驚かされる。

・事務や管理の仕事の3分の1は全く役に立たず、とうの昔に不要になっている。まったく行うべきでないことを、より効率的に行おうとすることほど非生産的なことはない。

・必要な残り3分の2の仕事も、「事業そのものにどんな貢献を行うべきか、どんな目的に役立つべきか」を問わねばならない。経営者はこれを自明の問いととらえるが、実際には誰にもこたえられない。


・費用対効果の優れた仕事は一つの目的しか持たない。一つの仕事には二つ以上の目的を相乗りさせることは非効率とコスト増をもたらす。

・コスト削減は始まりにすぎず、コスト予防が必要となる。

・コスト予防とは、たとえば年間3%以上の改善目標を持って毎年あらゆる仕事について生産性向上を図ること。

・あらゆる仕事について「この目的を達成するうえで最も簡単な方法は何か」を問う。

・コスト削減計画は失敗しやすい。コスト予防は働く人たちの積極的かつ熱烈な支持を期待できる。


・利益は存在しない。存在するのはコストにすぎない。

・企業会計上の利益は次の3つの視点から言えば定量化可能なコストである。

①資金コスト。資金にはすべてコストがかかる。

②リスクへの保険料。未来のかけ率は常に1以下。

③明日の雇用と年金の資金。

・3つのコストは互いに重なり合っている。




(浅沼宏和)

2010年12月26日日曜日

『実践する経営者』⑤

イノベーションについてです。


・小さな改善を行うのも大きなイノベーションを行うのも同じように難しい。

・イノベーションとは顧客にとっての価値と満足の創造にほかならない。

・イノベーションに優れた会社は予算からスタートしない。予算は最後に持ってくる。
会社が生き残るにはどれだけのイノベーションが必要かを明らかにするところからスタートする。


・イノベーションが埋めるべきギャップを明らかにし、そのギャップの数倍に相当するプロジェクトを用意する。するとどれだけの努力と予算が必要か明らかとなる。

・イノベーションを生むのはカネではなくヒト。量より質が大事。

・イノベーションには一流の人材がかかわること。


・イノベーションのための企画・予算・計画・管理を既存事業とは別に扱う。

・イノベーションに優れた会社は事業予算とイノベーション予算の二つを持つ。

・イノベーションは長い期間、いかなる収益ももたらさない。もたらすのはコストだけ。
しかし、突然利益を上げ始める。成功したイノベーションは投資の数百倍の収益を上げる。そもそもリスクが大きいので低い収益では割に合わない。


・イノベーションに優れた会社はイノベーションのための活動を厳しく管理する。

・「創造性」とはイノベーションを行わない者が使う言葉。イノベーションに優れた会社は仕事と自己規律についていう。

・人の作ったものは遅かれ早かれ陳腐化する。競争相手に陳腐化させられるのを待たずに自らを陳腐化させ、廃棄することを選ぶ。


・何より必要なのはイノベーションのための姿勢、体制、行動である。


研究開発10原則

①新たな製品・サービス・プロセスは損益分岐点に達したその日から陳腐化が始まる。

②自ら陳腐化させることが競争相手による陳腐化を防ぐ唯一の手だて。

③研究開発を純粋と応用に分ける19世紀的区分には意味がない。

④物理・化学・生物・数学・経済学は、それ自体研究の対象とすべき体系ではない。

⑤研究開発とは、カイゼン・展開・イノベーションの3つの活動からなる。効果的な研究開発とは3つを同時にかつ個別に追求すること。

・カイゼン :すでに成功を収めている者をさらに良くすること。コスト・品質・顧客満足などを年率3~5%向上させることを言う。具体的目標をもつ継続的活動である。

・展開 :新しい製品・サービス・プロセスを利用して、さらに新しい製品・サービス・プロセスを生み出すこと。

・イノベーション :社会・経済・人口・技術の変化を機会として利用すること。

⑥狙いは高くする。

⑦効果的な研究開発には長期と短期の成果がある。短期的成果で満足せず、長期的プロセスの第一歩としなければならない。

⑧研究開発は作業としては独立していても機能としては独立していない。知識の探求は有用性の探求でなければならない。

⑨効果的な研究開発を行うには製品・サービス・プロセスのみならず、研究プロジェクトまでも体系的に廃棄していくことが必要。

⑩研究開発も量的評価を受けねばならない。カイゼンについては目標設定と量的評価はやさしい。展開についても目標設定できる。イノベーションについては質的な評価が必要。

2010年12月25日土曜日

『実践する経営者』④

組織形態、顧客などについてです。


・経済の重心が大企業から中堅企業や中小企業に移ることは1世紀以上にわたって先進国を支配してきた潮流の逆転。

・高学歴者のほとんどは組織のために働いている。彼らの多くは組織の従業員ではなくなっている。派遣社員、アウトソーシング先社員、契約社員、パートとなっている。

・ほとんどの組織が自らにとって収益源ではない支援的業務、経営陣への道になっていない業務のすべてをアウトソーシングするようになる。



・履歴書について、これまで何を立派に行ってきたか、何を立派に行うことができるのかを書いている者は少ない。自分から何を期待できるか、何を期待すべきかについて書いている者はさらに少ない。自分をマーケティング対象として見ていない。


・パートナーシップでは命令はできない。信頼を得ることしかできない。

・パートナーシップは中小企業にとってはグローバル化、大企業にとっては多角化の手段である。

・パートナーシップは成功した後に深刻な、時には致命的な問題が生じる。パートナーシップが成功したとき、両社の目的と目標が一致していないことが明らかとなる。


・M&A成功の5条件

①買収する側がされる側に何を貢献できるか考える。マネジメント、技術、販売等。

②共通の格がある(シナジー効果)。複数の事業を結びつけるには市場か技術に共通性が必要。

③買収される側の製品・市場・顧客に敬意を持つ。

④ほぼ1年以内に経営陣を送り込む

⑤相互の人材を移動させ、昇進させる。そうして双方の人間に対し買収が「機会」であることを確信させる。


・中堅の成長企業はいずれも体系的な起業家精神と目的意識を持ったイノベーションを基本に経営されている。

・大きく変化しきってしまうまで変化は報告や統計に表れない。

・統計的に意味あるものとして現れる頃には機会として利用することはもちろん、対処することさえ手おくれ。


・変化についていく唯一の方法は自ら外に出て変化を探すこと。

・顧客がどこで、いかにして購入するかの変化を知るには、自ら市場に出かけ、顧客とノンカスタマーを観察し、馬鹿げた質問をしなければならない。


・今日、経営者に対する正しい助言は「外を歩きまわれ」である。

・昔、小売業のサービスとは店員が顧客の面倒をみることであった。今日、サービスとは顧客が店員を必要としないこと、品物を見つけるのに手間がかからないこと、聞く必要がないこと、待つ必要がないことである。

2010年12月24日金曜日

『実践する経営者』③

成長と人的資源についてです。


・中小企業が成長していくには事業にとって最も大切な活動は何かを問わねばならない。

・重要なことは人材、特に経営管理者や専門家の質を維持し、向上させ続けること。有能な人材を引き付けられなければ立ち腐れが始まる。


・ゼロ成長時にこそ仕事の内容を大きくし、挑戦し甲斐のあるものにしなければならない。特に新人の仕事は。

・成長できないのであれば事業の内容はよくしなければならない。組織には挑戦すべき目標が必要。

・10年以内に規模を倍にできないなら、資金・人・資源の生産性を倍にする目標を掲げなければならない。

・生産性の向上は常に現実的な目標であり、常に実現可能な目標である。

・軽はずみな多角化はうまくいかない。楽な商売はない。


・ゼロ成長企業の大部分は今日の平凡な事業に頼らざるを得ない。

・ゼロ成長を当然のこととしてはならない。自らの強みを問い、それを適用できる機会を問わねばならない。



・人的資源の能力を維持し、その生産性を向上させ続ける会社はやがて必ず大きな成長の機会に出会う。

・経済の推進役は急速に大企業から中堅企業・中小企業に代わりつつある。規模が大きいことの有利さはなくなった。



・あらゆる事業をイノベーション中心に組み立てなければならない。

・大企業はよりよいものになるのではなく、より独特のものにならなければならない。

・規模は機能に従う。それは適切な規模であることを意味する。

2010年12月23日木曜日

『実践する経営者』②

成長戦略についてです。


・最小限の成長目標を知らない限り成長のための方策を持つことはできない。成長も起きない。

・何を捨てるか決める。


・成長戦略の基本は機会に備えて資源を自由にしておくこと。

・今日最も成功している製品は明日には最も早く陳腐化する。

・成長戦略は集中を要求する。


・成長戦略の最大の失敗はあまりに多くの分野で成長しようとすることにある。

・成長戦略は機会のあるところに的を絞らなければならない。自らの強みが異常なほど大きな成果を生む分野に集中しなければならない。


・強みを予想される変化に適用する。機会とは外に横たわっている者ではなく、経営者が作り出すもの。


・量の増大は成長ではない。質の分析が必要。量の増大の多くは幻想。

・資源の生産性を向上させず低下もさせない量の増大は脂肪太りの恐れがある。


・ゼロ成長時代こそ本当の成長時代。この時代の成長の多くは新しい舞台で起こっている。

・成長戦略を持たないことは馬鹿げている。しかし、多くの会社のようにかつての成長時代の延長として計画を立てることは一層馬鹿げている。


・成長は新たな資金を必要とする。キャッシュフローマネジメントが必要。急速に成長しているときの利益は会計上の幻にすぎない。

・成長企業は少なくとも2、3年後の財務構造と資金調達先を予定しておかなければならない。

・成長とは質的な変化であり量の増大ではない。新しいものを生むことである。


・会計数値以外の情報、すなわち会社の外、特に市場で起こっていることについての情報が必要。

・成長を欲するならば技術・製品・市場を集中させなければならない。成長するということは並々ならぬエネルギーを要求する。

・中小企業は通常チームとしての経営陣に恵まれない。


低成長時代であるからこそ、組織としてどのような成長を望むのかを決めなければならないということであると思います。

ドラッカーいわく 「運で事業は作れない」

2010年12月22日水曜日

『実践する経営者』①

「実践する経営者」は21世紀になって編集された戦略論です。インタビューなども含められており、時代の変化に合わせた戦略論の変化を感じさせる書物です。



・中小企業の多くはイノベーションの力がない。時間がなく野心もない。人手がなく資源がない。現金もない。
社長の毎日は戦いで、体系的でもなければ経験もない。


・成功する起業家は大組織で5~8年働いた経験がある。勉強しているし道具も手に入れている。

・事業を始める者にとって5~10年のマネジメント経験が必要。

・起業家にとって一番難しいのは自分の役割を考えること。


・仕事には企業家的仕事と管理者的仕事がある。

・高すぎる報酬は問題がある。23歳で45万ドルのストックオプションを得てしまったら人間がダメになる。

・かつてマネジメントは大企業でしか使えないものとみなされていた。いまやマネジメントは文化の一部となった。

・あらゆる組織が変化せざるを得なくなった。


・社会の不確実性が増大し、確率に基づく予測という従来型のプランニングが意味を持たなくなりつつある。

・不確実性時代のプランニングではすでに起こったことで未来を作り出すものは何かを考える。

・可能性を現実へと転化するには自らの強みを機会に合わせることが必要となる。


・すでに起こった変化に強みを合わせることからプランニングが生まれる。

・必要条件は、機会に応えられるだけの知識と人材を用意しておくこと。

・未来のための予算として支出の10~12%を予算化しておく必要がある。


・ほとんどの経営者は成長を欲し、公言する。しかし戦略や方策を持っている経営者はほんの一握りに過ぎない。

・会社の規模は市場と技術との関係で適切でなければならない。

・規模が適切とは手にしている資源から最高の果実を生み出すこと。


・市場で限界的存在になってしまったら不適切な規模と言わざるを得ない。

・限界的な存在に落ち込まないために必要な成長の見方は分かれる。自らの市場をどう定義するかで変化する。しかも劇的に変化する。

2010年12月21日火曜日

ドラッカーの著書の読み方

先日のセミナーでドラッカーの著作を読むにあたっての注意点を説明させていただきました。

ドラッカーの著作は名著ですが、多少注意して読まないと読み違いをしやすい難点があります。

以下、私が気を留めているものを列挙します。


1、同じ用語にいくつもの意味がある。

例:マネジメント ①経営者 ②経営管理者以上 ③成果を上げる取り組み  ④マネジメント分野


2、同じ内容にいくつもの側面があり、それぞれ違う用語で説明する場合。

例:「貢献」は成果に対して行う重要な用語として扱われるが、貢献は広い意味で「成果」である。


3、広い意味とせまい意味がある。

例:広い意味での成果には ①直接の成果 ②価値への取り組み ③人材育成 という狭い意味の成果に分けられている。 


4、一般的な意味とドラッカー独特の意味づけがある。

例:「知識」という用語について、情報・専門知識といった一般的な意味と、「情報を成果に結びつける能力」というドラッカー独特の意味で使われている場合とがある。



こうしたことを知らないと、ドラッカーの説明が理解できない場合が多々発生します。

それぞれの用語がどのような意味で使われているかを自分なりに考えていくことが必ず必要です。

こうした思考プロセスによってドラッカー理論が頭にしみこませることができます。


さらにマネジメントの古典三部作に良く見られることですが、1950年代~60年代のアメリカの経営事情を反映している部分があります。

そうした部分は現在の状況にはそぐわなくなっていますので、意識的に区別しておく必要があります。


たとえば『創造する経営者』において多角化経営についての説明が多くなされています。それは当時の多角経営ブームの反映ですので、その点は現状に合わせて読み解く必要があります。

また同書では、成果の上がる3領域について製品・サービスの分析から始めるべきで、場合によっては市場や流通チャネルから始まるといった趣旨のことが書いていあります。

しかし、1960年代の米国企業の経済成長の状況と現在の経営環境と比べると、市場や流通チャネルの分析から始めることが原則的になったのではないかと私は考えています。

こうしたことを考えるきっかけになるのもドラッカーの優れたところだと思います。

2010年12月20日月曜日

『創造する経営者』⑩

続きです。卓越性と優先順位、機会と計画についてです。



・卓越性とは常に知識にかかわる卓越性。

・卓越性-「事業にリーダーシップを与える何らかのことを行いうる人間能力のこと」

・卓越性には色々な定義が可能。

・卓越性の定義の適切さを判定できるのは経験だけ。


・卓越性の定義は事業に弾力性や成長と変化の余裕をもたせることができるように大きくしかも集中が可能なように範囲を限定するものでなければならない。

・狭すぎる卓越性の定義をする企業は自らを貧血状態に陥れる。

・卓越性の定義が有効であるためには、実行可能であって、ただちに行動できるものでなければならない。


・卓越性の定義は頻繁に変えられない。すでにかなりの程度、従業員とその価値観、行動に体現されているから。 しかし、定期的に見直し、その都度新しく考えていかなければならない。


・なすべきことは常に利用しうる資源より多い。優先順位は企業そのもの、経済的特性、強みと弱み、ニーズについての最終評価が反映されねばならない。


・優先順位の決定はそんなに難しくないが劣後順位の決定は難しい。延期は「放棄」を意味する。


・経営計画における4つの決定

①追求する機会、進んで受け入れるリスク、許容範囲のリスク

②事業の範囲と構造、特に専門化・多角化・統合のバランス。

③目標を達成するための時間と資金。新事業の設立と買収・合併とのバランス。

④経済情勢、機会、成果目標のための計画に適合した組織構造。


・事業においてはリスクは最小にするよう努める。しかしリスクを避けすぎると最大にして最も不合理なリスク、すなわち「何もしないリスク」を負う。


付加的機会 :既存資源をさらに活用するための機会。事業の性格は変えない。 例-製紙メーカーが印刷業者向け市場から事務用コピー機市場へと進出する。

補完的機会 :事業の定義を変える。現在の事業と結合してそれぞれ別個の時よりも大きな挿話をもたらす新しい事業機会。常に少なくとも一つの新しい知識において卓越性を獲得しなければならない。通常リスクを伴う。
補完的機会は事業全体の富の創出能力を数倍にしてくれるものである必要がある。

・革新的機会 :事業の基本的性格を変える。実現のための革新が必要、かつ非常な労力を要する。第一級の資源、特に人材を充てる。多額の研究開発費が必要。利益は極めて大きくなければならない。


・あらゆる企業が中核的なものを持たねばならない。リーダー的地位に立てる領域を持たねばならない。したがってあらゆる企業が専門化しなければならない。

・企業には核が必要。あらゆる活動を一つの知識か一つの市場に統合できなければならない。

・急激に変化する市場と技術の世界にあって、必要とされる弾力性を確保するために、成果をもたらす領域を多角化しておかなければならない。

・企業は、製品・市場・最終用途において多角化し、基礎的な知識において高度に集中化しなければならない。

・あるいは知識において多角化し、製品・市場・最終用途において高度に集中化しなければならない。


・専門化と多角化のバランスは資源の生産性を大きく規定する。

・知識の大きな変化があったときには事業の範囲を大きく変える。

・卓越性の変化のあった時は専門化と多角化のバランスを変える。

・通常、川下統合は多角化を意味し、川上統合は専門化を意味する。


・専門化・多角化は影響が大きいばかりかリスクも大きい。経済的効果とリスクの二つの基準で判断する。

・新たな事業形態は事業の性格を一変させるほど大きな成果をもたらすものであること。

・事業の成長は主として内部からもたらされる。したがって時間がかかる。

・事業をマネジメントせずに財務的操作だけに頼るなら菅らざる失敗する。財務的手段は人材開発、組織開発、イノベーション、事業の方向付けや見直しの代わりを務めることはできない。


・計画の基礎は、事業の定義、目標についての意思決定、自らの卓越性・優先順位・戦略についての意思決定。

・最初の目標設定。「いかなる成果が必要か、どこで必要か、いつまでに必要か」

・必要とされる活動を検討・評価・割り当てる資源を選択。それらの活動を具体的仕事として誰かに割り当てる。


・あげるべき成果はだれかが責任を持つべき仕事とする。

・期限を切る。

・あらゆる提案は目的と期待を明記する。

・新しい事業のための提案はすべて企業全体に焦点を当てなければならない。


以上で、ドラッカーの三大古典の一つ「創造する経営者」の戦略論を終わります。

10回に分けて原理原則を取り上げてきました。

これら一つ一つが「組織が成果を上げる」のところで説明した基本形を実行する際のガイドラインになります。

さすがに世界初の体系的戦略論であるだけに密度が濃いです。

私は経営戦略論は最後には本書が残ると思います。

これを補う戦略論はアクションの中から新たな戦略が生まれると考えるミンツバーグの理論でしょう。

2010年12月19日日曜日

『創造する経営者』⑨

続きです。ビジョンと事業の定義です。


・ビジョンとは全人格的献身ができるもの。「それを心から信じているか」「本当に実現したいか」「本当にその事業を経営したいか」を考える。

・必ず失敗するビジョンとは、確実なもの、リスクのないもの、失敗しようのないもの。

・不確実性やリスクを伴わないビジョンは現実的ではない。未来それ自体が不確実性、リスクを伴う。だからビジョンに対する信念がないと必要な努力が持続しない。


・明日は必ず来る。その明日は今日と違う。


・経営者は未来において何かを起こす責任を受け入れなければならない。

・最大の成果を上げるにはすべての仕事を一つの大きな統合された成果のための計画としてまとめなければならない。

・現在の事業の成果を上げるため、未来に新しい事業を作り上げるためにはそれぞれの行動が必要。

・あらゆる行動についてバランスの調整が必要。

・中核となる3つの意思決定 ①事業の定義  ②卓越性の定義  ③優先順位の設定


・あらゆる企業は自らの事業の定義をもたねばならない。そして事業が代価の支払いを期待できる貢献を描かねばならない。

・「それはわが社の事業ではない。」「それはわが社の仕事の仕方ではない。」というごく簡単なことでもよい。また目標についての膨大な説明でもよい。


・事業の定義が市場に供給すべき満足やリーダーシップを保持すべき領域を規定する。

・事業の定義においては具体的方法、具体的製品については何も言うべきではない。

・事業の定義が有効であるためには成長し、変化していけるだけの大きさのものでなければならない。


・事業の定義から出てくる最も重要な結論の一つは事業の規模に関するもの。「大規模を目指すべきか、小規模にとどまっているべきか」

・あらゆるものを含む言葉でしか自らを定義することができないとすれば、多く行いすぎているために何一つうまく行うことができない状態にあるとみてよい。

・事業について有効な定義をもてないことは危険信号。市場や顧客と無関係に事業を行っていることになる。


・3つの問い

①わが社の事業は何か

②わが社の事業は何でなければならないのか。

③わが社の事業は何にならなければならないか。



・事業の定義は目的を確立し、目標と方向性を設定すべきもの。それはいかなる成果に意味があり、いかなる評価基準が真に適切かを決めるもの。

2010年12月18日土曜日

『創造する経営者』⑧

続きです。ビジョンの実現についてです。ビジョンの実現とはイノベーションそのものです。


未来を築く2つの方法


①すでに起きた未来を探す。それは、人口構造、知識、他の産業・国・市場、産業構造、企業内部。


②ビジョンを実現する。すなわち自ら未来を発生させる。


・予測されているものは本当はすでに起こったものではないかと考えるべき。

・将来、どんな製品・プロセスが必要となるか予測しても意味がない。しかし、製品・プロセスについてビジョンを描き、今日と違う事業を築くことは可能。


・未来に何かを起こすことは新しい事業を起こすこと。すなわちビジョンを事業として実現すること。

・大きなビジョンである必要はない。しかし、今日の常識とは違わなければならない。

・ビジョンは企業家的、つまり富を生む機会や能力についてのものでなければならない。


・企業家的ビジョンは一つの狭い領域についてのもの。

・偉大な企業に成長させるビジョンとは簡単なもの。

・平凡なビジョンがしばしば成功する。


・アイディアは十分ある。足りないのは製品を超えて構想すること。

・製品・プロセスはビジョンを実現する道具にすぎない。


・未来に向けて投入する人材は少しで良い。ただし最高のものでなければならない。

・ビジョンが未来を築くための条件-「そのビジョンに基づいて行動を起こすことができるか、それとも話ができるだけか」


・ビジョンの実現には時間がかかる。しかし実現の暁には利益を上げて売ることができ、顧客の欲求・ニーズを満たすことができなければならない。


・ビジョンの有効性の基準は経済的な成果、業績である。

『創造する経営者』⑦

続きです。事業分析とイノベーションです。


・成果をもたらす3領域(市場・顧客、流通チャネル、商品・サービス)に欠けるもの。

①全盛期を過ぎたものに代わるべきものを開発する努力。

②機会と成功の追求

③知識 :本当に重要な新知識は?中核的知識の何を向上・進歩させるべきか?知識の再定義の必要は? ★最も重要な問い


・事業を分析すると常に事態は想像以上に悪いことが明らかとなる。

・単純な中小企業でもその日暮らしではマネジメントは不可能。目的意識に基づく体系的な計画が必要。希少な人材を最大の機会と成果に集中し、少数の適切なことを卓越性を持って行う。


・基本は強みを生かし、問題ではなく機会を求め、リスクではなく実現すべき成果に重点を置く。

・「現在」という期間の長さの決定がどんな活動を行うかを決める。

・成功すればコストをはるかに超える成果がもたらされる領域が推進すべき優先的領域。


・イノベーションとは既存のものから新しい種類の経済を生み出す未知のものを作り出すこと。

・イノベーションとは、既存の知識、製品、顧客ニーズ、市場等にすでに存在するものを、はるかに生産的な新しい一つの全体にまとめるために小さな欠落した部品を発見し、その提供に成功すること。

・イノベーションとは企業の潜在的機会を発見し、未来を築くためのもの。

・第一級の人材は最大の機会に割り当てる。二義的機会はあくまで現在の人材だけでまかなう。

・大きな機会には集中した注意力と献身が必要。


・運では事業は作れない。

・危険や弱みが事業機会の存在を教える。それらを問題から機会へと転化するとき、異常なほどの成果が得られる。ときにそうした転化は経営者の姿勢だけでもたらされる。

・企業・産業の弱みや制約は通常すでに周知であるか容易に知ることができる。

・弱み・制約を克服するイノベーションンはその企業や産業の内部の人間には不可能に見える。

・弱み・制約が克服されると経済的効果は極めて大きい。制約こそ大きな機会。


・事業において完全なバランスは組織図にしかない。生きた事業は常にアンバランスな状態である。

・市場規模や構造に変化が生じたとき、企業規模と市場との間にアンバランスが生じる。ここにも隠された機会が存在する。

・適切な企業規模は産業によって違う。技術の成熟度、市場の構造によって違う。間違った規模の企業は大きな罰を受ける。

・中途半端な規模の企業にとっての問題解決は小規模に縮小すること。


・最も深刻なケースは最小限の規模以下の企業。いかに製品が優れていても限界的存在にすぎない。

・リスクと不確実性はなくせない。明日何をするかを決めるのではなく、明日を創るために今日何をなすべきかを決めること。


未来を築く2つの方法

①すでに起きた未来を探す。それは、人口構造、知識、他の産業・国・市場、産業構造、企業内部。

②ビジョンを実現する。すなわち自ら未来を発生させる。

・予測されているものは本当はすでに起こったものではないかと考えるべき。

・将来、どんな製品・プロセスが必要となるか予測しても意味がない。しかし、製品・プロセスについてビジョンを描き、今日と違う事業を築くことは可能。

2010年12月17日金曜日

『創造する経営者』⑥

続きです。知識と卓越性に関する部分です。


・知識が事業である。製品・サービスは企業の知識と顧客の購買力の交換媒体にすぎない。

・本の中にあるのは情報。知識とは情報を仕事や成果に結びつける能力のこと。

・知識は外部、すなわち顧客・市場・最終用途に貢献して初めて有効となる。


・卓越性だけが利益をもたらす。他のものと同じ能力を持つだけでは十分ではない。

・経済的な業績は差別化の結果。差別化の源泉は企業内の人が保有する独自の知識。

・成功している企業には常に少なくとも一つは際立った知識がある。また全く同じ知識を持つ企業は存在しない。


・卓越性を発揮できることが極めて平凡なこともある。同じような仕事をする企業が多くてもある企業だけが優れた仕事をする場合もある。その企業は平凡な仕事を非凡にこなしている。

・知識分析の最善の方法は自社が成功してきたものと失敗してきたものを調べることである。


・知識の現実

①事業特有の知識の意味ある定義は極めて簡単、あきれるほど簡単である。

②知識の分析には訓練がいる。自社特有の知識を問うことは、自らを客観的・徹底的・前向きに見つめること。

③知識は滅しやすい。常に再確認、再学習、再訓練が必要。自社特有の卓越性は常に強化が必要。

④あらゆる知識はやがて間違った知識になる。あるいは陳腐化する。

⑤どんな企業も多くの知識において同時に卓越することはできない。一つの領域において有能であることも難しい。これはほとんどの企業が生き残るのにやっとで、かろうじて脱落を免れているにすぎないことを意味する。


・多くの領域において卓越することはできない。しかし、成功するには極めて多くの領域において並み以上、いくつかの領域で有能、一つの領域において卓越しなければならない。


・知識分析における問い

①わが社は適切な知識を持っているか?それは成果の上がる領域に集中しているか?

②わが社は貢献している知識に対する報酬を十分得ているか?

③わが社の知識は、わが社の製品・サービスに十分組み込まれているか?

④いかにして知識の利用法を改善できるか?欠けているものは何か?いかに入手するか?

2010年12月16日木曜日

『創造する経営者』⑤

続きです。マーケティングに関する部分です。

これをみるとドラッカーがかなり早い段階でマーケティングについて体系的なとらえ方をしていることが分かります。




・マーケティングの8つの現実

①顧客・市場を知るのは顧客だけ。顧客に聞き、見て、その行動を理解して初めて顧客がだれで、何を行い、何を買い、どう使い、何を期待し、何に価値を見出しているかを知ることができる。

②顧客は満足を買う。しかし満足は生産したり供給したりできない。満足を得る手段を使って橋渡しをするだけ。

③競争相手は同業他社にとどまらない。

④質を決めるのは企業ではない。

⑤顧客は合理的。企業はなぜ顧客が不合理に見える行動をするかを知らねばならない。

⑥顧客は企業に関心を持っていない。

⑦決定権・拒否権を持つのはだれか。顧客とは支払う者ではなく買うことを決定する者。購入の決定権者は少なくとも二人いる。最終購入者と流通チャネル。

⑧市場・用途から顧客を特定する。顧客が識別しにくい場合には市場や最終用途からスタートする。


・外部からの事業の見方の3側面。「誰が買うか」「どこで買うか」「何のために買うか」

・あらゆる企業が顧客、市場、用途のいずれかを中心に事業を定義できる。3つの側面の分析を重ねると実り豊かな洞察が得られる。

・顧客を知るための8つの問い

①ノンカスタマー(非顧客)。「自社の製品を買わないのはだれか。なぜ彼らは顧客にならないか。」

②金と時間の使い方。「顧客は何を買うか。金と時間を何に使っているか」

③価値選好。「顧客が自社から得ている満足はどの程度重要か、重要度は今後大きくなるか。」「どの分野のニーズがまだ満たされていないか。」

④提供しうる価値。「わが社の製品・サービスで本当に重要な満足を提供しているのは何か。」

⑤存在意義。「わが社は顧客の経済、事業、市場の何に左右されるのか。」

⑥商品群。「意味ある商品群は何か。」

⑦潜在的な競争相手。「潜在的競争相手になっていない者は何か。それはなぜか。」

⑧顧客の現実。「不合理に見える顧客の行動は何か。つまり顧客の現実でわが社に見えないものは何か。」

2010年12月15日水曜日

『創造する経営者』④

続きです。ドラッカーの独特のコスト管理論です。


・コスト管理の最も効果的な方法は業績を上げるものに資源を集中することである。


・問題はコストの絶対額ではなく対業績比である。いかに低コストで効率的でも業績を上げないならば浪費にすぎない。


・機会の最大限の開拓こそコストあたりの業績比をあげ、コスト管理と低コストを実現する王道。


・いかなる労力も無駄にすることなくマネジメントすることはできない。

 


・コスト管理は最大のコストに集中する。


・コストはその種類によって管理する。


・コスト削減の最も効果的な方法はその活動自体をやめること。コストの一部削減が効果的であることは稀。


・企業の現実を理解するには、成果をもたらす領域すべてを視野に入れる。


・コストは一つの体系。全体の流れの中で理解する。


・生産的コストはコストとして管理してはならない。機会に資源を集中することによる管理が必要。必要なのは成果管理。


・補助的コストは必要最小限度の原則に従う。


・何の成果もあげずに時間・資金・人間を使っているのは浪費的コスト。これこそ真のコストセンター。




・顧客が事業である。

・企業を外部からみる。それには体系的な作業が必要である。

・事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセス。事業の目的は顧客の創造である。

・メーカーからみると同じ市場・同じ種類の商品であるのに、顧客にとっては無関係の市場・異なる種類の満足と価値ある商品に見える場合がある。

2010年12月14日火曜日

『創造する経営者』③

続きです。製品のリーダーシップに関する部分です。


・長期の独占状態を経た後において顧客の支持を受けているような企業はまれ。競争相手が現れた瞬間に限界的な存在に変わる危険を持つ。

・あらゆる領域において卓越した行動を行うことのできる企業は存在しない。

・大企業であろうと小企業であろうと限界的存在になったのでは生き残ることはできない。

・主力製品がリーダーシップを握ることができなければ生き残ることはできない。


・市場が大きくなり、成熟するほど集中化が進む。市場が大きくなると限界的製品やメーカーの存在余地は小さくなる。

・市場でリーダーシップを握るには、外観・スタイル・デザイン・知名度・最終製品への組み入れコスト・サイズ・アフタサービス・短納期・技術指導等が大きな役割を果たす。

・高品質をうたっても市場が認めてくれなければリーダーシップは成立しない。

・市場経済のもとでは顧客が喜んで代価を支払い、優先して購入してくれることだけが経済的な成果を測定する有効な基準。


・知識労働者については人数はあまり意味がない。質の方がはるかに大事。

・卓越した業績を上げる者の数は総人員数に比例しては増えない。

・ほとんどの企業には「今日の主力商品」が一つはある。多くの場合手をかけ過ぎている。

・あらゆる企業は少なくとも一つは「明日の主力商品」をもたねばならない。それは今日すでに利益のある市場を持ち、受け入れられていなくてはならない。


・限定された特殊な市場を持つ製品は市場でリーダーシップを持つ。

・見通しはわからないが潜在的成長力が期待される市場に導入中の商品には最高の人材を割り当てる。

・今日の主力商品と同じぐらい売上があるが利益貢献のないものは昨日の主力商品である。衰退を防ぐことはできないし、その努力は割に合わない。

・顧客が代価を支払わおうとしない無意味な差別化を行っている商品がある。通常はごく限られた顧客しか買わない。


・チャンスを与えればうまくいくかもしれない商品。業績に見合う支援や資源を与える必要がある。支援を受けていないのに予想以上の業績を上げている製品ならばシンデレラ商品の可能性がある。

・製品の性格の変化、特に衰退に向かっての変化は把握すべし。

2010年12月13日月曜日

『創造する経営者』②

続きです。成果とコストの関係についてです。


・経営者の仕事は、昨日の現実を変化してしまった今日に押し付けることではない。新しい現実に合わせて変化させることである。

・既存のものは資源を誤って配分されている。

・業績の90%は業績上位の10%からもたらされる。コストの90%は業績を生まない90%から発生する。すなわち業績は利益と比例し、コストは作業量と比例する。

・資源と活動は業績に応じてではなく作業量に応じて割り当てられている。

・利益の流れとコストの流れは同量ではない。


・企業活動の評価と方向付けの見直しは常に行わなければならない。

・事業が最も成果を上げなければならないのは現在。

・業績のカギは集中。

・業績を上げるには大きな利益を生む少数の製品ライン、サービス、顧客、市場、流通チャネル、用途に集中しなければならない。


・業績を上げるにはわずかな能率向上が大きく業績を改善する分野に仕事と労力を集中しなければならない。

・人材は少数の大きな機会に集中しなければならない。

・意見対立は重要。

・市場と流通チャネルは業績をもたらす領域として製品よりも重要なことがある。製品は会計上は事業の一部だが、市場と流通チャネルは経済上でのみ事業の一部である。

・流通チャネルは製品に適合すると同時に、市場・顧客・最終用途に適合しなければならない。



・利益は売り上げに比例し、そのほとんどはわずかな種類の商品、市場、顧客によってもたらされる。

・コストは作業量に比例し、そのほとんどはわずかな利益しか生まない90%の膨大な作業から生じる。

・5万ドルの取引と500万ドルの取引のコストはあまり変わらない。100倍はかからない。

・売れない製品の設計も売れる製品の設計もコストは同じ。


・労務費は生産高ではなく時間にかかわるコスト。

・利益は利幅に回転率をかけたもの。

・事業は作業のシステムである。

2010年12月11日土曜日

『創造する経営者』①

ドラッカーの古典三部作の一つ。世界初の体系的経営戦略書である「創造する経営者」の要約をシリーズでご紹介します。


・企業が行うべき3つの仕事 

 ①今日の事業の成果を上げる
 ②潜在的な機会を発見する
 ③明日のために新しい事業を開拓する

・3つの仕事にはそれぞれ異なるアプローチがいる。しかし、切り離すことはできない。

・3つの仕事は重なり合う。一つの統合された戦略が必要。

・成果と資源は外部にある。企業内部にはコストセンターしかない。

・成果は外部の誰かによってきめられる。

・成果は問題の解決ではなく、機会の開拓によって得られる。

・成果を上げるには資源を問題ではなく機会に投じる。

・成果は有能さではなく、市場におけるリーダーシップによってもたらされる。



・利益とは意味ある分野における独自の貢献、少なくとも差別化された貢献を行うことによって得る報酬である。

・何が意味ある分野かは市場と顧客が決定する。

・価値あるものはリーダー的地位によってのみ実現される。例外は独占の利益だけ。

・業績を上げるには顧客・市場において真に価値あるものについてリーダーシップを握ること。

・「価値あるもの」とは、製品ラインの中の小さな、しかし重要な一部、あるいはサービスや流通、アイディアを早く安く製品に変える能力などである。

・リーダーシップは事業戦略において特に重要。

・いかなりリーダーシップもうつろいやすく短命である。一時的優位にすぎない。

・企業はリーダー的地位からその他大勢の地位に簡単に落ち込む。そこから限界的存在になるまであと一歩である。

・落ち込みから脱出するのは経営者の責務。それには事業の焦点を問題解決ではなく、機会に合わせなければならない。

・「通常」とは昨日の現実にすぎない。

2010年12月10日金曜日

個人が成果を上げる方法-ドラッカー流仕事論

セミナーでは同じく、個人で成果を上げる方法、つまりドラッカーの仕事論についても簡単にご紹介しました。

ドラッカーの経営論はヒトを中心においています。ですから個人が成果を上げる方法を身につけていることが重視されています。

ドラッカーは「ヒト」という資源は時間と知識でできている と述べています。

このように単純化することで具体的に仕事で成果を上げる方法が明確になります。


ちなみに、この「知識」とは、本の中に書かれているようなものではありません。本の中に書かれているのは情報であり、知識とは情報を成果に結びつける能力を指しています。


ですから、いわゆる知識労働者とは、「マニュアル・手順書に書かれていることを超えて価値ある行動を取れる人・上司の指示を超えて価値ある行動を自主的に行う人」のことを指すととらえるとわかりやすいかと思います。

ドラッカーは、

成果を上げることは習慣である。実践的な能力の集積である。 

と述べています。


その意味は、5つの具体的な項目を思考習慣にまでして、日々実践することが成果を上げる行動そのものであるということです。

その5つとは次の通りです。



①時間

時間こそ最大の制約条件。時間をまとめて成果に向けて投入する。成果が上がらないのは時間を活用せずに浪費している証拠。

②貢献意識

成果に焦点を当てて貢献する意識を持つ。そのポイントは「責任」。大きな成果を目指し、仕事を大きくし、大きな貢献をする。そこには大きな責任が伴う。あげた成果の大きさに責任を感じる必要がある。

可能性の大きさを考えれば、どれほど成果が上がろうと自分の仕事としてはせいぜい及第点ととらえること。より大きな成果が可能であったはず。

また成果に焦点を当てなければ貢献とは言わない。失敗者の方がたくさん働いている場合が多いが、彼らは成果に焦点を当てず、自分に挑戦しないため失敗するのだという。

③強みを生かす

自身の得意分野を生かすことだが、強みとは成果との関係で意味を持つ。成果が上がらないなら強みではない。

強みとは色々とチャレンジしていく中で気がつくもの。自分でできることの生産性を高め、してよいことでやる価値のあることをどんどん実行する人が強みに基づく成果を上げる人。

「とりあえずやってみる」と考える思考習慣が必要。また強みは失われやすいものなので、常に強化がしなければならず、それが継続学習の必要性となる。

④集中

一度に一つのことを行うこと。新しく何かをするときは成果の上がらないことを一つやめる。
大きな成果は集中によってしか上げられない。

⑤意思決定

これは他の四つとは次元が違う。

成果を明確にし、本質的な問題に取り組み、原則・基準を明確化すること。個々の問題解決は原則の適用にすぎない。

意思決定がないと貢献すべき対象がなく、時間の浪費が起き、強みを見つけることも出来ない。まして集中する対象もないため、行動が場当たり的なものになる。


この5つの常に意識し、習慣化している人間が成果を上げるとドラッカーは説明しています。

2010年12月9日木曜日

組織が成果を上げる方法-ドラッカー流の経営戦略論

昨日、当社の年末恒例行事であるセミナーが開催されました。

テーマは「経営者のためのドラッカー講座」です。


セミナーではドラッカーの経営論について

組織・個人が成果を上げる方法 

と理解し、それぞれの成果の上がる仕組みについて骨子の報告をさせていただきました。

まず、組織、特に企業が成果を上げる仕組みについてです。



企業の目的の定義は一つしかない。顧客の創造である。  (ドラッカー)

利益はアクションとしての顧客創造活動の適切さを測定する指標と位置づけられます。

顧客創造の成功は利益の3つの領域のバランスがとれていることと同義です。その3つとは

①市場・顧客(ニーズ・期待)、②商品・サービス(効用・価値)、そして②から①に価値を届ける役割を果たす③流通チャネル です。

この成果の3領域は、ヒト・モノ・カネの経営資源投入を成果に向けて最大限に活用する経営プロセスの『生産性』によって支えられます。

また、成果の3領域のバランスを取るための重要な二つの機能がマーケティングイノベーションになります。

マーケティングとは、成果の3領域のバランスを取る活動そのものであり、それは顧客の視点から全社活動を見ることです。

イノベーションとは、端的にいえば新しい満足の創造ですが、それは未来からみた全社活動(ほぼマーケティングと同じ意味になる)の革新を意味します。

これを具体的なアクションプランに結びつけることが経営戦略です。

骨子だけですので、それを具体的にする方法についてはドラッカーの著書を熟読する必要があります。

しかし、上のまとめを念頭に置かれてドラッカーを読めばかなり理解しやすくなると思います。

2010年12月8日水曜日

パターンの断絶

すでに起こった未来は組織の内部ではなく、外部にある。

それは、社会、知識、文化、産業、経済構造における変化である。

一つの傾向における変化ではなく、変化そのものである。

パターンの内部における変化ではなく、パターンそのものの断絶である。


             『創造する経営者』より


ドラッカーが本書を執筆したのは1964年です。

現在はその当時に比べてはるかに激しい経営環境にありますから、このドラッカーの言葉の持つ意味はよりシビアになっています。

当社の本拠地である浜松の場合、半世紀以上続いてきた「巨大輸出産業を中心とした企業城下町モデル」が崩れかけようとしています。

まさにドラッカーの言う「パターンの断絶」に直面しているわけです。

このような危機を迎えて、過去の延長上で経営を行うことは逆にリスクが高くなってしまいます。

ドラッカーは「何もしないということが最もリスクが大きい」といっていますが、何をするかを決めるのは難しい問題です。

2010年12月7日火曜日

自ら成果を上げる

自らの仕事においても、まず強みからスタートしなければならない。

すなわち、自らのできることの生産性をあげなければならない。



‥成果を上げるエグゼクティブも自らに対する制約条件を気にしている。

しかし、彼らはしてよいことで、かつ、する値打ちのあることを簡単に探してしまう。

させてもらえないことに不満を言う代わりに、してよいことを次から次へと行う。




‥実際に何らかの制約があったとしても、することのできる適切かつ意味のあることはあるはずである。

                    『経営者の条件』より


これは、いわゆる「仕事は自分で見つけるもの」というビジネス上の格言と同じ意味ですね。

できるビジネスパーソンは、与えられた仕事の中で抜きんでて打ち手の数を多くするものであるということです。


この部分を読んで、帝国ホテルの伝説の総料理長であった村上信夫シェフのエピソードを思い出しました。

村上シェフは小学校を出てすぐに帝国ホテルに厨房の下働きとして入ったそうです。

当時のシェフの世界は江戸時代の職人の世界のように厳しかったそうで、村上シェフは先輩たちから何一つ教えてもらえなかったそうです。

それどころか先輩たちは自分の技を盗まれないようにお客さんの下げたお皿に洗剤をすぐに振りかけてしまい、ソースの味見ができないようにしていたそうです。

村上シェフは自分にできることは何かを考え、鍋やボールなどの調理器具を徹底的に磨き上げたそうです。その仕事ぶりは徹底しており、厨房の調理器具はいつも新品同様であったといいます。

こうした姿勢は先輩たちに認められ、ソースが残ったままのお皿が村上シェフのところに来るようになったといいます。もちろん村上シェフはそのソースをなめ、必死でその秘密を見つけたのです。

こうした姿勢が村上シェフを、エリザベス女王の舌すら驚かすほどのトップ中のトップへと導いたのだと思います。

できる社員、黒字社員、エグゼクティブ‥いい方は様々ですが、抜きんでたビジネスパーソンにはその場でやれることを数限りなく行う積極性があると思います。

乱気流時代

今週開催するセミナー準備やら、突発的な相談ごと等への対応で、ブログに間を空けてしまいました。

年末になって静岡県西部エリアはますます不況色が強くなってきたような気がします。

こうした不安定な状況をドラッカーは『乱気流時代』と名付けています。


・われわれが直面している時代は『乱気流時代』である



・過去の趨勢にもとづいたプランニングは無効である


・新しい出来事に向けて態勢を整えておくことはできる
 
 
これが1980年にドラッカーが述べた内容です。
 
ドラッカー信奉者であるマーケティング理論家のコトラーは、
 
 
・好景気と不況が順番にやってくる時代は終わった



・予想外の大きな衝撃が以前より高い頻度で起きる


・リスクと不確実性はかつてないほど増えている


・絶え間ない乱気流と、いっそうのカオスが進行する時代


・企業の脆さを最小限に抑え、機会を生かすことが求められる

 
 
と、ドラッカー理論の精緻化をおこなっています。
 
これは2009年のことで、時代が30年隔たりがありますから、やはりコトラーの方がしっくりきますね。
 
 
両者に共通するのは、時代が厳しくてもやれることはあると考えていることです。
 
打ち手が全くないと認めることは、自身が淘汰されることを甘んじて受けることになってしまいますから、当然こう考えなくてはならないわけですね。

2010年12月3日金曜日

意思決定-原則と方針

成果をあげるエグゼクティブは、原則や方針によって一般的な状況を解決していく。

そのため彼は、ほとんどの問題を単なるケースの一つとして、すなわち単なる原則の適用の問題として解決していくことができる。


                『経営者の条件』より


問題の背後にある「真因」を探すことが問題解決の基本です。

そうした真因に対する態度が原則や方針になります。

原則や方針を定めることで、多くの問題が同じタイプの問題として明快に片づけられていきます。



もうひとつ、心すべき重要な点があります。


‥意思決定を行う者は、常に非定型的なこと、異常なことが起こっていないかを調べなければならない。

そのためには「観察されるものは正しく説明されているか、すべて説明されているか」を問わねばならない。

              『経営者の条件』より


私はとくに、すべて説明されつくしているか?を問うことが大事であると思っています。


説明できる範囲が広ければ広いほどリスクはつぶされているということになります。


リスクマネジメントの基本、「すべて説明できる」ということです。

2010年12月2日木曜日

意思決定-必要条件・再考

意思決定には必要条件を明確にすることが求められます。

必要条件があいまいなままだと、状況が変化したときにその意思決定が不適切であることがわからなくなってしまいます。


『経営者の条件』に次のような事例が載っています。


第一次大戦のときにドイツは『シュリーフェン計画』という戦略構想を持っていました。

ドイツの西にはフランスがあり、東にはロシアがありました。

シュリーフェン計画とは、フランスとロシアに挟み撃ちにされた場合にどう戦うかを決めたものでした。

計画では、弱敵である東のロシアにはわずかの兵力で対応し、強敵フランスに対しては短期間で大打撃を与えるために大軍を投入することになっていました。

この計画ではフランスを打ち破るまではロシアがドイツ国内に侵入することを容認することになっていました。

実際に第一次世界大戦がはじまり、この計画は実施されました。

しかし、予想外にロシア軍の進撃速度が速く、東の地域の人々から救いを求める声が上がりました。

この計画を立てたシュリーフェン元帥は、ロシアの進撃速度は遅く、フランスを撃破するまでの時間が十分あることを必要条件としていました。

シュリーフェン元帥の必要条件は明確でしたが、彼の後を継いだ者たちは単なる戦争技術者にすぎなかったため「必要条件を満たさない以上、戦略を変更する必要がある」ことに気がつきませんでした。

そのため、軍事上の最大のタブーである兵力の小出しの投入という過ちを犯し続けました。

こうして必要条件を失ったシュリーフェン計画を維持しようとしたばかりに、西部戦線では兵力の大量投入によるフランスの撃破に失敗し、東部戦線では兵力を十分補給できず、ロシアを食い止めることはできなかったのです。

これ以後、ドイツは場当たり的な応急措置を行い続け、敗北へと突き進んだのです。


必要条件を明確にしておかないと、「都合の悪いことは起きない」という間違った思い込みのもと行動し続け、最後には大失敗をすることになってしまいます。

今回の事例の場合、たとえば東部戦線を後退させてロシアの補給線を伸び切らせること。
さらに、ロシアの後方を攪乱して東部戦線を膠着状態で維持し、その間に西部戦線で決戦を挑むという戦略などが考えられると思います。

2010年12月1日水曜日

意思決定-基本的な問題の兆候

基本的な問題の兆候にすぎない問題がある。

仕事の中で起こってくる問題のほとんどがこの種のものである。

たとえば在庫についての決定は決定ではない。決定の適用にすぎない。問題は一般的である。

生産活動についての決定のほとんどが同様である。


                  『経営者の条件』より


これはトヨタでいうところの現象と『真因』の関係と同じ意味であると思います。

トヨタでは真因を発見するために「なぜ?」を5回繰り返すことで有名です。



問題の表面を見るだけなら、数百の問題はすべて違う問題に見えます。

しかし、真因に注目するならば、すべて同じ問題の現象にすぎないということがほとんどであるとドラッカーは指摘します。


生産管理部は月に数百の問題を処理する。

だが問題を分析すれば、そのほとんどがより基本的な問題の症状にすぎないことが明らかになる。


1人1人の生産管理技術者はこのことに気づきにくい。毎月数回、蒸気や高熱液体パイプの継ぎ手を直している。


‥全体に手をつけない限り、いつまでも問題は解決しない。パイプ漏れの手当てに膨大な時間を取られ続けるだけである。


                 『経営者の条件』より


根本的な問題=真因を見つけ、解決することは重要な意思決定です。

2010年11月30日火曜日

意思決定-ケネディの場合

現在、『経営者の条件』を読み直しています。

その中の意思決定の部分は、いわゆる戦略的意思決定に焦点を絞って詳しく説明がなされています。

事例としてアメリカの政治家を取り上げることが多いのですが、それがそのまま現在の日本の政治に当てはまるように思えます。

ドラッカーはケネディ政権の政策はほとんど失敗したと指摘します。

閣僚の優秀さにもかかわらず、ケネディが成功したのはキューバのミサイル危機への対処についてだけであって、その他については全く何もできなかったといいます。


ドラッカーによるとその原因は、ケネディ「原則や方針を策定せず、あらゆる問題をその都度解決することにこだわった」ためであるといいます。


ここからドラッカーの次の原則の重要性が浮かび上がります。


真に例外的な問題を除き、あらゆるケースが基本の理解に基づく解決策を必要とする。

原則、方針、基本による解決を必要とする。

‥多く見られる間違いは一般的な問題を例外的な問題の連続としてみることである。

‥解決についての基本を欠くために、その場しのぎで処理する。結果は常に失敗と不毛である。

            『経営者の条件』より


現在の民主党政権で失敗が連続して起きているのは、菅内閣がケネディーと同じ過ちを犯しているためのように思われます。

2010年11月27日土曜日

◇年末セミナーのご案内 「経営者のためのドラッカー講座」

当社恒例の年末無料セミナーのお知らせです。




-『もしドラ』から一歩先に進みたい-

  経営者のためのドラッカー講座




日時: 12月8日(水) 18:45-20:15
場所: アクトシティ浜松コングレスセンター53・54会議室
料金: 無 料


今年はP.F.ドラッカーがブームとなった年でした。

そこで2010年を締めくくるにあたり、ドラッカーの入門編を企画いたしました。

「もしドラ」を読んでドラッカーに興味をもたれた方、これまでドラッカーを学ぶ機会のなかった方のご参加をお待ちしております。


テーマ1: ドラッカーはどんな人物か?


   
ドラッカーの略歴
なぜドラッカーは重要なのか?
ドラッカーの本のどれを読めばいいのか?



テーマ2: ドラッカーの経営戦略論


 
事業の目的とは何か? -マーケティングとイノベーション-
戦略計画とは何か?
『浅沼方式ドラッカー戦略マップ』の提案



テーマ3: ドラッカーの仕事論

プロフェッショナルとは何か? -ビジネスパーソンの心構え-
成果を上げる5つの視点



*セミナー終了後には近くの居酒屋で気軽な懇親会を予定しています。ご希望の方はぜひご参加ください。(3千円以内)

*参加希望者はメールにて当社までお知らせください。 info@tma-cs.jp

*詳細は当社HPをごらんください。

閑話休題-ノーベル賞受賞者の名言

ビジネスワンポイントに書かれていた名言をご紹介します。


・基礎的な能力を持ち正しく夢を持って50年追い続ければ夢は実現する。 ‥根岸英一                               

・一日生きることは一歩進むことでありたい。  ‥湯川秀樹

・勇気とは窮地に陥った時に見せる気品のことである。  ‥ヘミングウェイ


・常識とは18歳までに身に付けた偏見のコレクション。
 知性は方法・道具に対しては鋭い観察眼を持っているが、目的・価値については盲目。
                               ‥アインシュタイン

・人類の大半が愚かであると考えると広く受け入れられている意見はばかげている可能性が高い。
                               ‥バートランド・ラッセル

・人間は理由もなしに生きていくことはできない。 ‥カミュ

・自分を本当に納得させることができれば人を納得させることは簡単。 ‥利根川進

・決して誤ることがない者は何事もなさない者だけである。 ‥ロマン・ロラン

・幸福になる秘訣は努力そのものに快楽を見つけることである。 
 幸福になる必要がないと思い始めた日から私は幸福を感じるようになった。
 目が見える人間は見えることがいかに幸せかをほとんど感じずに生きていく。
                                  ‥アンドレ・ジッド

2010年11月26日金曜日

エグゼクティブとは?

今日の組織では、自らの知識あるいは地位のゆえに組織の活動や業績に実質的な貢献をなすべき知識労働者は、すべてエグゼクティブである。

‥知識労働者は意思決定をしなければならない。
‥自らの貢献について責任を負わねばならない。

                       『経営者の条件』より


なかなか難しい文章ですね。

エグゼクティブとは今風に考えるならば、レベルの高いビジネスパーソンといった感じでしょうか。

エグゼクティブは自身の責任においてものごとを判断しなければならないというわけです。

ドラッカーはこのようにも言っています。


ゲリラ戦では全員がエグゼクティブである。


ジャングルで敵と遭遇しても司令部に指示を仰ぐことはできません。

その場で高度な判断を迫られることになるわけです。しかも、その責任の取り方は自身の命をかけるというものですから、特殊部隊の隊員等は全員エグゼクティブになるわけです。



ドラッカーは医療チームもエグゼクティブの集団であると考えています。

医療現場では医師や看護師のほかにもさまざまな職種のプロフェッショナル達がいます。

1人の患者に対して実に多くのプロがかかわるわけですが、彼らは具体的な細かい手順まで相互に伝えあっているわけではありません。

「患者さんを治す」という共通のミッションのもとに治療計画を理解し、それぞれが責任を果たすために最高の仕事を行います。

彼らは責任に基づいて行動するわけで

ですから、患者さんの治療に失敗したとしても「患者さんは死んでしまったけど、私の仕事は最高だった。」というわけにはいきません。

しかし、ビジネスシーンではこういった話がよく出ます。

ドラッカーはこのような人を『二番目の石工』と呼んでいます。

2010年11月25日木曜日

成果を上げる者

成果をあげることはエグゼクティブの仕事である。

‥エグゼクティブは常になすべきことをなすことを期待される。

すなわち成果を上げることを期待される。




‥頭の良い者がしばしばあきれるほど成果をあげられない。

彼らは頭の良さがそのまま成果に結び付くわけではないことを知らない。

頭の良さが成果に結び付くのは体系的な作業を通じてのみである。


                『経営者の条件』より


ドラッカーの成果を上げることについての記述です。

ドラッカーは成果を上げるには5つの基礎能力が必要であると述べています。

そして、その5つを身につけることは習慣の問題であり、頭の良さとは無関係であると考えています。

その5つとは次のようなものでした。

①タイムマネジメント
②貢献を考える
③強みを生かす
④集中する
⑤意思決定する

こうして並べると少しわかりにくいところがありますね。

色々なドラッカー本が最近でていますが、この5つの関係をすっきり説明できている本はまだありません。

当社の年末セミナーではこの5つの関係を簡単に図式化してご紹介しようと思っていますが、まだうまい具合にいっていません。

当日ぎりぎりまで内容を詰めたいと思っています。

2010年11月24日水曜日

卓越性の概念

卓越性だけが利益をもたらす。

    『創造する経営者』より


ドラッカーの重要な概念に卓越性があります。

卓越性とは、一言でいえばものすごく優れているという意味です。


この卓越性について誤解しやすいのは、一芸にさえ秀でていればよいと勘違いしてしまうことです。


ドラッカーは、弱みにこだわらず強みに集中せよとも言っていますので、これが言い訳に使われる危険があるのです。

別の記述を引用します。

多くの領域において卓越することはできない。
しかし、成功するには多くの領域において並み以上でなければならない。いくつかの領域において有能でなければならない。
一つの領域において卓越しなければならない。

        『創造する経営者』より


単純化すると

卓越分野1 : 有能な領域数個 : 並み以上の領域多数

というわけです。

前にこのブログで私はハインリッヒの法則から 大成果1:小成果29:積極的打ち手300
みたいな比率が成立するかもしれないという仮説を書きました。

これがドラッカーでは、卓越・有能・並み以上という概念に同じようにピラミッド型の階層構造が成立すると書かれているわけです。

この記述に気付いたのは昨日ですが、以前に読んだときには気づきませんでした。


ドラッカーの著作の特徴は読み返すごとにこうした発見があることです。

ちなみに私がここで書いていることは、どのドラッカー本にも出ていないと思います。

ドラッカーは読めば読むほどマネジメントについての自分なりの基準や原則が頭に浮かぶようになっています


さて、ドラッカーの卓越性の法則(私の勝手なネーミングです)によると、私の法則は次のように書いた方がいいのかもしれません。


大成果1つに対してその数倍から数十倍の小成果があがり、その背景には数限りない積極的な打ち手が存在する。

打ち手は自身の努力で実行できる。卓越するビジネスパーソンは打ち手の数が限界的ビジネスパーソンを大きく上回る。

2010年11月23日火曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」⑥

だいぶ長く連載しましたが今回でおしまいです。


・本当の意味で粘り強い人は精神的・肉体的にどんなに疲労しても絶対に屈しない。猛烈な努力をすることによって成功することを予期している。彼らは常に真剣勝負を挑む。


・人はみな時に失敗する。失敗が本当に悪いものとなるのは、それをあきらめる口実に使うときだけ。


・逆境に立ち向かう姿勢を持つ。逆境は自分を見つめなおす絶好の機会。


・あなたは自分の運を作り出している。あなたは自分の決定に基づいて自分に起こることを作り出している。


・絶対に負けないという強い意志を持つ。


・逆境のときこそ基本に立ち返ることが重要だ。


・自分のビジョンに自信を持つ。失敗の原因は、目標そのものが間違っているのではなく、単にやり方がまずいことが多い。


・どのような状況であれ誠実に行動する。自分がいつも評価されていることを自覚し、今日の失敗を明日につなげるようにしなければならない。

・人生に対処するには常に前向きでなければならない。それが正しい方法だからというのではなく、それが唯一の方法だから。

・どんな努力家でも「これで成功だ」と思ったとたん、怠け癖がついてしまう恐れがある。あなたの旅が終わることはない。

・仕事であれ私生活であれ、多くの人はひたむきに努力して業績を上げたとたん、坂道を転げ落ちるように衰退する傾向がある。


・なぜあの一流企業は衰退したのか?最大の理由は成功の美酒に酔いしれたから。


・あなたは自分と一年契約を結び、それを毎年更新する必要がある。それによって怠け癖を防止し、努力を継続し、最高の自分でいられる。

・何かを成し遂げたら記録する。そして何が効果的であったのか自問自答する。

・成功して努力をやめるなら成功は災いのもととなる。

・成功を収めても常に改善に努めなければ生き残れない。


以上で、本書のまとめはおしまいです。

内容的にはまるでドラッカーの『経営者の条件』ですね。

スポーツマンが『経営者の条件』を書きなおしたような印象を受けました。

2010年11月21日日曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」⑤

つづきです。


・あなたはプレッシャーのかかる状況を乗り越えた子供時代のチャレンジ精神を取り戻す必要がある。

・心に疑念が生じないように万全の準備をする。

・ストレスを最小にする7つの方法

①物事を広い視野でみる
②規律に従う
③今日のプレッシャーに立ち向かうことに集中する
④大きな課題を細分化する
⑤ネガティブな人間に振り回されない
⑥実行に費やす時間を増やし、不平に費やす時間を減らす
⑦プレッシャーを有効に使い、能力を発揮する

・プレッシャーに対処する方法は、自分の課題を整理して優先順位を付け、時間を有効に活用すること。

・偉大な選手は才能と練習によって成功できることを知っている。最高のパフォーマンスができるように毎日、自分にプレッシャーをかけて勝つ訓練をしている。

・失敗への恐怖を利用すれば大きな力を発揮できる。自分にプレッシャーをかけることはあらゆる状況で有効だ。

・成否を分けるのは「粘り強さ」だ。

・粘り強さとは「絶対にあきらめないこと、不屈の精神で絶えること、何があっても継続すること」

・成功者に共通する特徴。年間を通じて「新年の抱負」に取り組むこと。これこそ粘り強い人が実行していること。




書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」④

続きです。


・コミュニケーションの技術とは、人に適切に接して自分の目標の達成を手伝ってもらうと同時に、その人たちの目標達成を手伝うこと。

・あなたの目標は、自分がいつも正しいことではなく、双方が勝つようにすること。

・単に命令するのではなく、ほんの数秒間理由を説明するだけで相手の心理に天と地の違いが生じる。

・本当に重要なのは、相手の成功を手伝いたいという誠実な気持ちを強調すること。


・全体の利益とは何かを理解させる。個人の目標の一部を犠牲にしなければ全体の利益は得られない。

・職場での問題解決は、敵対的になるのではなく、状況を分析し、気がかりなので解決したいということ。


・「練習すれば完璧になる」という格言は不正確。完璧な練習によってはじめて完璧になる。

・偉人達が非凡な業績を上げたのは、運命や神の思し召しではなく、非凡な規律に従ったから。

・賞賛するなら誰でもできる。成功の秘訣はロールモデルを研究して長所を取り入れること。


・自分流を作り上げる。見習うべきロールモデルを絶えず探し求め、自分のやり方を常に改良する。

・成功に近道はない。ロールモデルを探すとき、安易な方法を使っている人を手本にしてはならない。


本書は、かなりドラッカー的な内容です。ドラッカー度80%以上ですね。

ただ、文体がスポーツで成果をあげた人特有の端的なものなので、ドラッカーに比べてかなりわかりやすい点がよいと思います。

2010年11月19日金曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」③

ここまでのまとめからしても本書はレベルが高いです。

著者のピティーノ氏がNBAでトップ中のトップである以上、当然といえば当然ですが。

スポーツ界の著名人は、例外なくNO.1を目指しています。ですからそこで結果を出している人はやはり違うところがあります。

しかし、ピティーノ氏の場合、その発言はそのままビジネス界で応用できるものばかりです。

ビジネス界の場合は、すべての人がNO.1を目指しているわけではないので、成果を上げる本質的な原則が見えにくくなっています。



・間違った習慣では向上しない。悪い習慣を繰り返せば、目的達成の障害になり、成功を収めることができなくなる。

・悪い習慣とは自分の利益にならない習慣。

・職場における悪い習慣
①注意力が散漫。 :私用電話、ダラダラして生産性を落とすなど
②開き直る  :反省しない
③時間通りに出勤する  :始業時間は本気モードに入る時間
④無駄話をする  :時間と労力の無駄
⑤私生活を職場に持ち込む。  :集中力を失う

・仕事のプロは集中力を乱さない。気分のむらがなく、いつも高いレベルで働くことができる。

・記憶に頼らず、すべてのことを書きとめる。

・もし、一日を充実させたいなら意思と規律が必要になる。毎日計画性を持ち、具体的な目標を設定しなければならない。

・すがすがしい気分で仕事をするコツ。後回しにしたくなることを真っ先にする。

・普段から体を鍛えておく。35歳以上の年齢になるとエネルギッシュに見えなくなる。そうではないことを自分で証明しなければならない。

・第一印象を良くする。身なりは自己イメージの表れ。人々がそれをもとにあなたを判断することを忘れてはならない。

・あなたが目指すべきことはすばらしい第一印象を持ってもらうこと。自身の個性を出すと同時に、規律に従っているという印象を与えるよう努力すべき。


・ぶっつけ本番では成功はおぼつかない。オフのときでも勉強して準備しておかなければならない。

・相手のことはよく知っておく。知らない人と仕事をするときは噂で判断するのではなく、綿密に調査しなければならない。

2010年11月18日木曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」②

仕事が立て込んでいたため、しばらく間が空いてしまいましたが書評の続きを書きます。


・努力こそが成功に不可欠な要素だが、短期的目標に向かって努力することは自分を強くするための訓練である。

・低い目標を達成して満足してはいけない。意欲的な人はかなり高いレベルにまで目標を上げ、それを達成する方法を確立する。

・精神力とは、楽しくないときでも全力を尽くすこと。


・ポジティブな姿勢を維持する。私たちはポジティブな姿勢を維持するように日ごろから自分を律しなければならない。

・自分の気分をコントロールする。私たちは朝起きた時に自分の気分を選ぶことができる。

・多くの逆境に直面すればするほど、ますますポジティブにならなければならない。


・ネガティブな人間の言動には警戒が必要だ。彼らは失敗体質なのだ。

・かかわるべきではない3種類の人
  ①職場で世間話をしたがる人
  ②午後は早退して遊びに誘う人
  ③あなたを仕事中毒と呼び、そんなに働かずにのんびりしようよという人

・真の友人であるならば、あなたの目標達成の邪魔になることはしない。

・変化はチャンスととらえる。ポジティブな人は変化を刺激的なものとみなし、自分の仕事を脅かすのではなく発展させる要因と考える。

・現在を大切に生きる。過去への後悔や未来への心配ではなく現在の課題に集中することは大きな恩恵をもたらすポジティブな態度。

2010年11月13日土曜日

閑話休題-中国事情

ご時勢がら中国への注目が集まっています。

当社の本拠地・浜松でも海外シフトの流れの中で中国のビジネス環境についての情報が入ってきます。

最近、当社社員が受講した中国ビジネスセミナーでの情報をまとめます。


・注目都市は大連。インフラが整備され、そのうち北京と3時間半で結ばれる。
・大連には日本語をしゃべれる人材が多い。日系企業への就職希望の若者が多い。

・中国はあくまで共産圏。すべては共産党次第。
・恥をかくことを嫌う国民性。自分のプライドを最重視している。

・「土産(みやげ)」の風習。意味は日本と同じだが、相手からの土産で自分の価値を知る。安価な土産は絶対にNG。
・日本に対して優越感情を持っている。日本は初戦敗戦国。中国の属国という意識。中華思想。

・中国は完全な男女平等。男尊女卑発言に注意。

・造られた半日でも。デモに参加するとお金がもらえる。
・80年代、90年代の若者には反日感情が少ない。
・反日番組いつもどこかの局でやっている。

・貧富の差が激しい。8億人が貧しく、1億人が富裕層。
・沿岸部と内陸部の格差が激しい。

・人件費が高騰中。沿岸部では軒並み10~30%上昇。
・富裕層でもプアーな消費。贅沢品は別として日用品は普通のものを使用。
・食の安全への意識は高まっており、日本のコメ10kgで3万円もする商品がよく売れている。

・大連は人口800万人。仙台より寒く、冬はマイナス20度ぐらい。
・大連には東北3省から人が集まってくる。

・大連の成長率は中国トップで15%以上。
・東北地区最大の不凍港がある。中国全体でも7番目。さらに巨大港を建設中。


・改革開放政策の最初も大連だった。


・中国人は情に厚いが、情を勝ち取るまでに時間とお金がかかる。
・拠点がないと信頼を得られない。

以上が、資料の概要です。



次にセミナーについてですが、募集30名のところ、参加申し込みが14名、実際参加者は10名でした。40-60代の男性中心で、ほとんどが経営者と思しき人たちです。

・GDP成長率10%を堅持する方向。人民元切り上げには時間がかかりそう。
・国営銀行の不良債権が増えている。原因は融資乱発。不名誉な話なので報道が少ない。
・日本企業の買収は今後も進みそう。

・オンラインビジネスは日本以上に発展している。日本企業が成功しているのは健康食品や化粧品など。

・中国から日本に送金するときの手数料が高い。香港の銀行を通すと比較的安い。
・社会保険料が高い。本人の手取り給料が1000元になるためには1700元の人件費がかかる。(会社負担500元・本人負担200元)

・治安が悪く、空き巣が多いため戸建て住宅の需要が少ない。マンションに住むのが基本。

・中国で法人を立ち上げるには専門業者に頼むべき。2-3カ月でできる。



ということです。

現在、中国に進出する計画はありませんが、ビジネス事情を知っておくことはますます重要になるでしょう。近い将来何らかのかかわりは出てくると考えています。

私は近年、2度上海に行きましたが上記の内容は半分以上知りませんでした。多面的な情報収集の必要性を感じました。

今年は、アジア圏の各国のビジネス事情をレクチャーしてくれるセミナーにも行く予定ですので、またまとめたいと思います。

2010年11月12日金曜日

書評-「成功をめざす人に知っておいてほしいこと」①

リック・ピティーノ 『成功をめざす人に知っておいてほしいこと』ディスカバートウェンティーワン、2010年  定価 1,470円


リック・ピティーノ氏はバスケットボールの名監督なのだそうですが、私は全く知りません。

しかし、本書の内容は素晴らしいものです。

ビジネスパーソンが成果を上げるのに非常に有益であるのはもちろんですが、ドラッカーの仕事論と非常に多くの部分が重なっています。

またイチロー語録とも近い内容で、それがさらにビジネスマン向きにアレンジされているといった印象です。

ともかく一読の価値はあります。内容が大変素晴らしいので、何回かに分けてご紹介します。


・低い自尊心はその人の成功を妨げる恐れがある。自尊心が低いと目標が定まらず、すぐ挫折する。
・自尊心が成功の土台となる。自信を取り戻すには強みを意識すること。

・自尊心の大部分は「自分が成功に値する」と確信できるかどうかに左右される。
・人のせいにしているうちは伸びない。業績のいい人は単に運がいいのではなく、ひたむきに努力している。
・努力が道を切り開く。いいわけは負け犬根性の表れ。

・批判されても信念を貫く。ただし、自身のやり方に問題があれば改善しなければならない。
・苦しい時に辛抱し、信念を貫くことが重要。

・間違った努力はしない。自分が得意なことで才能を発揮するのがよい。

・年をとるほど変化を求める必要がある。年をとるとやり方が固定し、それにこだわることに快適さを感じるようになる。そうするとリスクを取れなくなる。時代のニーズに応じて変化を遂げる以外に繁栄の道はない。

・自分は成功すると信じても、そのための努力をしていないなら、夢は永久に実現しない。自尊心は自分がそれに値すると確信できて初めて本物になる。

・夢を持つ人は平凡な人生で満足しない。しかし、ひたむきに努力して規律に従わなければどんな夢も空想にすぎない。

・夢は目指すべき理想であり、実現したい新生活。目標は、達成すべきことを明確に示す日々の青写真。

・長期的な成功は日々の小さな勝利が積み重なったものである。日々の成功を積み重ねることが重要。



2010年11月11日木曜日

週刊ダイヤモンド「みんなのドラッカー」②

日本の有名経営者たちのドラッカー評です。


山崎製パン・飯島延浩社長


・ドラッカーの5つの質問のうち、3つを重視している。
「私たちの使命は何か?」
「私たちの顧客はだれか?」
「私たちの顧客の求めるものは何か?」






資生堂・福原義春名誉会長


・組織にとっては、リーダーを育てることの方が、製品を効率よく低コストで生産することよりも重要である。
・『もしドラ』で終わるな。原点を読むことで自らの血肉となる。解説本を大量に読むよりもドラッカーを何冊か読んでほしい。一度ではなく何度も読んでほしい。


ということで、是非ドラッカーの著作を読んでいただければと思います。

山崎製パンのドラッカー経営については日経ビジネスでも最近触れられていました。

ここで5つの質問というのは

『経営者に贈る5つの質問』

という著作にまとめられた、経営者が自社の経営について自問自答するために、ドラッカーの経営論を集大成したものです。

実にシンプルですが奥の深い質問です。しかし実際の活用には難しい面があります。

そこで、私は5つの質問の階層構造を図式化したうえで、経営戦略作成に便利な戦略マップを工夫してみました。

12月の当社セミナーでその体系とツールをご紹介します。

2010年11月9日火曜日

週刊ダイヤモンド「みんなのドラッカー」①

週刊ダイヤモンド2010年11月6日号の特集タイトルは『みんなのドラッカー』でした。


大々的な特集でしたが、ここでは、識者のドラッカー評をまとめたいと思います。



「人の上に立つ人間には教養が求められる。経営者は幅広く深い知識と経験を備え、適切に判断・アドバイスしなければならない。だからドラッカーはマネジメントを教える上で教養も重視した。」

          山脇秀樹(ドラッカースクール学部長)




「ドラッカーは偉大なマネジメント思想家だが、他の思想家の理論も取り込みながら思想を発展させた。」⇒テイラー、メイヨー、バーナード、シュンペーター等

          ジョセフ・マチャレル (ドラッカースクール教授)





ビジョナリーカンパニーで世界的に有名なジム・コリンズのドラッカー評
  1. ドラッカーの次の言葉で進路を決めた 「君は永続する経営思想を作りたいのか?それとも永続する経営コンサルティング会社を作りたいのかね?」
  2. ドラッカーは社会を生産的にするためではなく、社会を人間的にするために書き続けた。
  3. IBMは成長したから不況期に雇用を維持したのではない。雇用を維持したからこそIBMは成長したのだ。ただし、適材適所な配置ができる完全雇用でなければ意味がない。
  コリンズはピーターの弟子といってよい人物です。


「日本でドラッカー・ブームが起きているそうですが、そこにはノスタルジアもあるでしょう。
40~50年前は経済も社会環境も今ほど複雑ではなかったからです。」

「ピーターは米国・日本の企業は中国・韓国・インドなどの隆盛を見極めるべきと言っていました。先進国は明確な目的意識を持たないとそれらの国々の後塵を拝することになるとみていました。」

「読者がうまく理解できなかったのはマネジャーは単にビジネスにかかわるだけではないということです。マネジャーはコミュニティ内の関係性をマネジメントする人間でもあります。」

「テクノロジー時代においては、個人・企業の仕事の質は前例のないタイプのものとなったので、そこに多くの投資が必要になることをピーターは見抜いていました。」

「ピーターがどうしてあれだけ幅広い知識を養ったのか見当がつきません。ただ、目についた印刷物はすべて読むという並はずれた読書家だったことは確かです。」

         ドリス・ドラッカー (ドラッカー夫人)

    一番身近な人の話は大変参考になりました。



「米国ではピーターの著作の読まれ方にはおおよそ二つのスタイルが混在している。

一つは、ピーターの哲学・考え方に心から賛同し、自らの組織で実践に移して成果を上げている人たちである。

もう一つは、あくまでイメージ作りの一環としてピーターの哲学や考え方を取り入れているというポーズをとる人たちだ。
たとえば、目先の利益を追求するために口先だけでピーターのフレーズを使う。あくなき利潤追求の方便として使っている節がある。」

       リック・ワルツマン (ドラッカー・インスティチュート・エグゼクティブ・ディレクター)


ドラッカーの言葉はウィットにとんだ警句といった色彩もあるので、確かに安直な引用がされやすい側面がありますね。

2010年11月8日月曜日

戦略プランニングについて-ドラッカーとミンツバーグの比較

先週、せっかくミンツバーグの戦略論をまとめましたので、ここでドラッカーの戦略計画論と比較してみます。

以下、ドラッカーの戦略プランニングに関する見解です。


・未来は望むだけでは起こらない。必要なものは戦略計画である。

・戦略計画は魔法の杖ではない、思考であり資源を行動に結びつけるものである。手法ではなく責任である。

・戦略計画は予測ではない。未来を予測できないから戦略計画が必要なのだ。

・企業は予測の基礎となる可能性そのものを変えなければならない。



・「不確実な明日のために今日何をなすべきか」

・経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実性に賭けることである。

・より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、起業家としての成果を向上させる唯一の方法である。


・戦略計画とは何か

①リスクを伴う起業家的な意思決定を行い

②その実行に必要な活動を体系的に組織し

③それらの活動の成果を期待したものと比較測定するという連続したプロセス


・最善の戦略計画さえ、仕事として具体化しなければ、よき意図にすぎない。

・成果は、組織のなかの主な人材を割り当てることによってきまる。


                  『エッセンシャル板 マネジメント』より



ミンツバーグとドラッカーの戦略計画についての理論は非常に近いことが分かります。

ただし、ミンツバーグは創発戦略、つまり自然と出来上がってくる戦略を明確に重視している点がドラッカーと違うところです。

この点についてはミンツバーグが優れていると思います。


ただし、戦略計画についてのまとめ方はドラッカーの方が断然優れています。

こうした警句のうまさはドラッカーの特徴です。



ドラッカーは、戦略計画と戦略思考は同じであると考えています。
ミンツバーグは別物と言っているわけですから、一見すると意見が分かれているように見えます。


しかし、これは言葉の定義の問題にすぎません。両者は、ほぼ同じことを言っていると考えてよいと思います。

書評-「15分あれば喫茶店に入りなさい」

斎藤孝 『15分あれば喫茶店に入りなさい』幻冬舎、2010年  定価 1,365円


私は東京にいた時、1日最低1度は喫茶店に入っていました。多い時には5回ぐらい入りました。

ですからタイトルを見て、だいたい斎藤氏の言いたいことが想像できました。

また、本書では相変わらずの斎藤節が炸裂しています。

以下、印象的な部分を抜き出しておきます。


・喫茶店で垂直思考(自分の深いところで思考を進めること)を深める。

・インターネットは水平思考は促すが、垂直思考は深まらない。

・なぜ垂直思考が必要か?現代人はかつてないほど高い生産性やクリエイティブな価値を生み出すことが求められている。


・負荷をかけないと思考力が伸びない。頭に負荷をかける場所が喫茶店。

「15分」は仕事をするのに十分な時間。1分1秒を無駄にしないで集中する。

・喫茶店でわざわざ何百円ものお金を払うのはコーヒーに対してではなく、「空間を買う」ため。



・日常生活から切り離されることでメンタル・コンディションが整う。

・喫茶店は掘り下げて語りやすい場所。集中した話がしやすい。

・喫茶店にはライブ感がある。ライブ感のある空間では集中しやすい。



・考え事は喫茶店のほうが進む。

・喫茶店は自宅でも職場でもないニュートラルな場所。ニュートラルだから本から刺激を受けやすい。

「懸案事項が多い人は仕事ができる人」。逆に、今引っかかっていることがない人は成果を期待できない。

・懸案事項のリストを作れること自体、レベルが高い証拠。


・喫茶店は大人が勉強する場所である。

・スターバックスは大人の勉強に向いている。



まとめはこれぐらいにしておきます。

本書は当たり前といえば当たり前のことしか書いてありません。

しかし、知的生産の方法論を具体的に書いてあります。また、間違ったやり方が何かもわかるようになっています。


箸休め的なビジネス書ですが、なかなか実用的です。


斎藤氏は、かなり深い話をあっさりと書くという力量のある書き手です。

上のまとめを読むと大した話じゃなさそうですが、例によって決して本書も浅くはありませんでした。


ただし、買わなくても立ち読み程度で十分役立ちます。

2010年11月6日土曜日

◇ ドラッカー理論による事例分析-デンソン社

ドラッカーのマーケティングとイノベーションのための質問によって成功企業の戦略を整理します。



デンソン (埼玉県)

金型反転機というオンリーワン商品を大手メーカーの海外工場に納入




1 顧客はだれか

・プラスチックかダイカスト用の大型の金型を使用する工場



2 顧客は何を買うか

・安全な金型反転作業 (金型は大変重いので反転作業は危険)

・作業効率向上

・場所をとらないこと


3 顧客はどこにいるか

・トヨタ、パナソニック、新日鉄など大手企業の製造部門

・海外に展開した日本企業の現地工場


4 事業はどうなるか

(省略)


5 事業はどうなるべきか

・製造業の海外シフトをにらみ、海外売上比率を高めるべき。

・円高への対応を図るため、モデルチェンジによる低価格化を図る。

・金型以外の重量物を納入先のニーズに合わせて反転できる特注品に対応する。





戦略のまとめ(ミッション)


他社の追随を許さない独自技術の開発

経営資源を開発に集中し、リピーターを確保

海外の日系企業や商社との強固な関係を構築



デンソンのように、オンリーワン商品を持つ企業は、ゆるぎない戦略ポジションが維持しやすいと思います。


こうした商品が売れているうちに次の商品を生み出さないといけないわけですが、デンソンの場合、金型以外の重量物を視野に入れているようです。

商品の横展開とでもいえる方向性ですね。

同社が、金型反転機に乗り出したきっかけは、顧客からの要請にこたえるためといういわば偶然であったようです。


その意味では、デンソンはミンツバーグの創発戦略を成功させた事例であるといえます。


ただし、近年の戦略ポジションの取り方は上記のように計画性を持ってきていますので、事前と事後の戦略のバランスがよく取れている事例と言えるでしょう。

2010年11月5日金曜日

戦略計画と戦略思考の違い-ミンツバーグの理論

ミンツバーグは血の通った戦略論を目指しているように思います。

強みと弱みを分析して計画的に作り上げる戦略はあまり血が通っていないと考えています。

形は美しいが実行が難しいというたぐいの計画です。

以下、ミンツバーグの論文の抜粋です。


・戦略プランニング(1960年代に脚光を浴びた)は今なお健在だが、もはやその土台は崩壊している。

・戦略プランニングと戦略思考が異なることが理解されていない。
戦略プランニングが戦略思考を台無しにした結果、マネジャーたちはビジョンと数字合わせを混同している。


・戦略思考とは、マネジャーがあらゆる情報源から学んだことを検索し、そこで学びとったものをビジネスの方向性に沿った形でビジョンへ統合させること。


・戦略策定の誤ったイメージは、午前中にミッションに関するプレゼン、午後には自社の強みと弱みに関する報告、夕方までには戦略の策定‥‥というもの。
戦略思考はこれと対照的に統合(インテグレーション)である。そこには直感と創造性が関係する。


・戦略プランニングの3つの誤り

 誤り① 予測は可能である 

 ・アンゾフは誤差プラスマイナス20%の精度での予測を重視するができるはずがない。

 誤り② 戦略家は戦略課題とは別世界に存在できる

 ・効果的な戦略は偶然と熟慮の両方の産物である。
 ・どんな戦略もある程度の柔軟な学習とある程度の体系的思考の組み合わせである。

 誤り③ 戦略策定プロセスは定型化できる

 ・定型化とは分析・運用手続き・最終的な行動に至るまでを合理的・連続的に処理すること
 ・学習プロセスによる戦略策定はこれを逆のプロセスをたどることがある。
 ・定型化されたステップでは非連続的変化を予測したり、斬新な戦略を創造することは不可能。


・戦略を策定することは自己完結できるプロセスではない。戦略会議という名称を設けたからと言って戦略が策定できるわけではない。


・戦略策定は一つの組織を管理・運営するために必要なすべてが相互に絡み合うプロセスなのだ。


・戦略策定プロセスを恣意的に定型化するよりも、むしろより自由度を与えるべきだ。


ミンツバーグはこのように戦略策定を親しみやすいものにしようとしています。

また、戦略は現場との接点で生まれる視点から次のようにも述べています。

‥‥要するに、日常に存在する微細な事柄に無関心であってはならないのだ。


これには全く同感です。


当社の環境整備研修では、「オフィスの特定のエリアが急に乱れた場合、事業の状況が変化し、昨日までの仕事のやり方に何らかの不適合が発生した可能性を疑う必要がある」と教えます。

ミンツバーグもやはりわずかな異常や変化を見落とさず、それを手掛かりに戦略を形作る視点を持っているようです。


当社では 環境整備は戦略に従う という命題を提唱していますが、ここからすると

環境整備は戦略を生み出す ということも言えそうです。

それぞれ違う局面についての表現ということになります。

この仮説はさらに検討していきたいと思います。


 

2010年11月4日木曜日

戦略の作られ方-ミンツバーグの理論

またミンツバーグです。

戦略というと、知性的な戦略家が室内で静かに黙想しながら練りあげるといったイメージになりがちです。

ですが、中小企業などではそんな作り方をしている企業は少数派でしょう。

「なんとなくがんばっていたら、ひょんなことからこういうことになってしまった」といったほうが多いのではないでしょうか。

ミンツバーグはそうした戦略を「創発戦略」と名付けています。

そして、計画的な戦略とのバランスが重要であると述べています。



・戦略は試行錯誤しながら形成されていく。


・戦略は策定される場合もあれば、自己形成される場合もあるということである。
言い換えれば、戦略は状況変化に即して形成されることもあれば、
戦略立案から実施段階へと連続するプロセスを経て、論理的に策定される場合もある。



・戦略は日常的な末端の活動から遠く離れた組織の高次元において作成されると考えるのは、因習的なマネジメント論における最大の誤りの一つである。

 

・プランニング(計画化)は学習を排除するが、創発は統制を排除する。
もし、一方に偏りすぎると、どちらの方法もその意味を失う。
学習と統制は結びついていなければならない。



・純粋なプランニング戦略と純粋な創発戦略は一本の線上の両極にあり、
したがってクラフティングは、この線上のどこかに位置することになる。


・優れた戦略は、およそ思いもよらない場所で生まれたり、
考えもしなかった方法で形成されたりする。
したがって、戦略を策定する唯一最善の法など存在しない。



このように、ミンツバーグは事前に計画を立てるという戦略立案方法と、
自然と出来上がってくる、いわば事後的な経営戦略という二つの戦略が対極にあると考えています。

自然と出来上がってくる戦略で動くというのが、いわば中小企業的な感覚です。

そのためミンツバーグは日本の特に中小企業経営者にはしっくりくるはずです。

ただし、ミンツバーグは次のようにくぎを刺しています。


・変化を求め続ける人たちがいる。一つのアイディアから他のアイディアへと転々とし、一つ所に落ち着かない。
このような人たちの場合、特定のテーマとか戦略とかは一向に現れる気配はなく、独自の能力を開拓することはおろか、発展させるには至らない。


やはり、「行き当たりばったりでは限界はあるよ」ということです。

ということで、次回はミンツバーグの戦略論についてさらに深掘りします。

2010年11月3日水曜日

◇ ドラッカー理論による事例分析-コーナン・メディカル社

雑誌の企業事例を元に、私なりにドラッカー理論で整理してみます。


(TKC出版『経営者の四季』2010年12月号より)


ここで紹介する1~3がドラッカーによるマーケティングのための質問。4と5のギャップがイノベーションの質問になります。


ドラッカーはここからさらに8つの目標(マーケティング・イノベーション・生産性・ヒト・モノ・カネ・社会的責任・必要利益)を導き出すわけですが、当社ではそれを独自の戦略マップに整理してから行うことを提唱しています。


戦略マップを掲載できませんのでここでは5つの質問の回答までをまとめています。


このように経営雑誌等の企業紹介をドラッカー経営戦略論で整理すると戦略策定のよいトレーニングになると思います。


コーナン・メディカル社(西宮)

売上高10億円、社員53名

甲南大学のカメラ愛好家集団が母体。半世紀前に創業。使い切りカメラの原型も同社の初期の成果。現在、眼科系医療機器における世界屈指の優良企業との評価。



1 誰が顧客か?


・世界の白内障患者(最終顧客)


・白内障患者を手術する世界中の医者(顧客and流通チャネル)


・技術の事実上の世界標準の決定に影響力を持つ世界の公的機関(流通チャネル)


・信頼できる各国の代理店(流通チャネル)


 *流通チャネルも広義の顧客


2 顧客は何を買うか?


・患者は、安心できる白内障手術を買う


・医者は、現場の意見を十分取り入れた使い勝手の良い機械を買う。


・公的機関は、お墨付きを与えるに足る機械の信頼性を評価する。


・代理店は売り込みをしやすい機械を選ぶ。


 *顧客は効用を買う



3 顧客はどこにいるか?


・世界中にいる。


・今後は特に中南米などの開発途上国にいるようになる。



4 事業はどうなるか?



(省略)



5 事業はどうあるべきか?(イノベーション)



・「創りたいものを創る」‥創業当初からのチャレンジ精神


・開発に特化し、ファブレス体制を構築する。


・眼科分野だけではなく、鼻・耳など首から上の器官の病気予防の検査機械を開発する。


・海外売上比率を6割以上にする。





戦略の概要というのはこの程度の記述で十分わかると思います。

本当に良い戦略とは寝ているとき、入浴の時、トイレにいる時、歩いている時などにふと思いつき、手早く骨格をまとめることができる程度のものだと思います。


それを具体的な目標に落とし込む時には詳しい検討が必要になりますが、戦略の根幹は20~30分程度でまとめることができるはずです。



12月8日の当社セミナーではユニクロの事例をドラッカー戦略マップを利用してご紹介します。

2010年11月2日火曜日

「予期せぬ成功」の起こし方

前回はハインリッヒの法則から「何もないことは大問題」という命題が導かれた話をしました。

今回は、その逆バージョンです。


ドラッカーは 『強みは予期せぬ成功によって知ることができる』 と述べています。

そこから「何もないことは大問題」は、良い結果が出ないことにも言えるのではないかと考えました。


なぜ予期せぬ出来事(思わぬ良い結果)が起きないのか、つまり「成果」が得られないのか?

この「成果」という言葉をハインリッヒの法則の「事故」と置き換えることができるのではないかと考えました。

それを表現すると次のようになります。


1つの大成果の後ろでは29の小さな成果があり、さらにその背景には300件のちょっとした工夫・打ち手が存在する。


たとえば営業の場合を考えてみます。


大きな契約が1件とれた場合を大成果とします。

すると契約が取れなければ成果が上がっていないのでしょうか?それは違うと思います。例をあげましょう。

・今まで門前払いだった相手の担当者が話を聞いてくれるようになった。

・話は聞いてくれていたがそっけなかったのに、最近では笑顔で色々話をしてくれるようになった。

・役職がより上位の人が話をしてくれるようになった。

・相手からかかってくる電話が増えた。


といった状況変化があれば、それは「小さな成果」と考えてよいと思います。

どの程度を成果と見るかについては見解は分かれるでしょうが、打ち手の数より小さな成果の数はより少なくなり、大成果はさらにそれよりはるかに少なくなるという論理は否定できないはずです。


小さな変化を起こすためには、ほんのちょっとした気遣いや打ち手を数限りなく打つ必要があります。

当たり前のことを当たり前のレベルでしかやらなければ小さな成果すら生み出せないでしょう。



小さな打ち手の数を増やすことはいくらでも工夫の余地があります。小さな打ち手をたくさん打っているかは本人にしかわかりません。

ですが、それは現象としては「小さな成果」の発生、つまり予期せぬ(良い)出来事が起きていることで外からも確認できます。



すると『できるビジネスパーソン』は次のような人であることになります。


できるビジネスパーソンとは、ときどき大きな成果を上げ、
継続的に小さな成果を上げ、日常的には小さな打ち手と工夫を積み重ねる人である。



成果と打ち手の関係がはたして1:29:300になるかはわかりませんが、おそらく良いことも悪いことも兆候と結果の関係という意味ではそんなにかわらないと推測しています。

2010年11月1日月曜日

何もないことは大問題

私の口癖の一つに 『何もないことが大問題』 というものがあります。


これはもともと労災の統計的法則であるハインリッヒの法則から思いついたものです。


ハインリッヒの法則は、ヒヤリ・ハットの法則などとも呼ばれたりします。


死亡事故1件が発生する背後に傷害事故が29件発生している。さらにその背後には300件のヒヤリ・ハット(インシデント)が発生しているという法則です。

そこでヒヤリ・ハットをつぶし続けていけば、大事故の発生は起きないという仮定を置き、細部にこだわる日常的管理を行っていくという考え方です。


ビジネスにおいては、大きな失敗やトラブルを定期的に起こす人は「何も問題ありません」という発言を多くする傾向があります。

この「何も問題ありません」という言葉は、「ヒヤリ・ハットが見えません」と言う意味です。本当に問題がないわけではありません。



日本の製造業に品質の大切さを教え込んだ、エドワード・デミングが次のような言葉を残しています。


『そもそも大きな問題というのは、問題を抱えていることを自覚していない人たちのところにあるものだ。』



ハインリッヒの法則の話に戻しますと

小さなヒヤリ・ハットが300件積み重なると確率的に大事故が発生するわけです。


「何も問題ありません」という言葉の背後にある小さな違和感やズレの見落としが300件積み重なったときに大きなトラブルが起きるわけです


細かい違和感を見落とすことは許してはならないのです。

また、そこから私はハインリッヒの法則の逆パターンを思いつきました。

それについて次回解説したいと思います。

ドラッカーと人材開発

日曜日にNPO東海マネジメント研究会の定例勉強会があり、㈱アドウィルの村木氏による発表がありました。


村木氏はキャリア開発に力を入れており、今回、ドラッカー理論をベースにした新しいコンセプトのたたき台を提供してくれました。


キャリアの観点から人材の「自己重要感」を重視し、「気づき」を切り口とすることだそうです。


そしてそこにドラッカーのイノベーション理論を導入するということでした。


と書くと、なんだか難しげですが、ポイントはドラッカーの「予期せぬ出来事」の概念に注目しているところです。


村木氏は、日々の気づきからスタートするためにサプライズ分析なる方法を提唱しました。

つまり、

・最近、意外にうまくいったこと

・最近、意外にうまくいかなかったこと

・最近、起きていること


これらを直感的に見つけるところから分析をスタートさせるのです。そしてそこに本人の強みを見つけたり、取り組み方の良い点悪い点を考えさせるきっかけとしたりするよ言う者のようでした。

最終的なゴールとしてイノベーションを起こさせ、達成感を満たすようにするということでした。


実行プロセスには多々問題があるとのお話でしたが、私は有益なアプローチとであると思いました。


私も人材開発は、予期せぬ成功に注目するのが最も良いと思っていました。


ですから、当社の場合、月単位で作成する目標管理シートで最も重要な情報を「予期せぬ出来事」の記述ととらえています。


予期せぬ出来事(特に小さな成功)は本人の強みを生かした主体的な活動の中で発生します。

ずっと仕事を続けていて自身の仕事から「サプライズ」が起きない場合、その仕事への取り組み方自体が陳腐になっているのではないかと考えるべきなのです。


予期せぬよい出来事は、主体的な仕事をしている人にしかおきません。


当社の場合、目標管理シートが年間12枚提出されるわけですが、そこに書かれていることが本人の認識している成果であるわけです。

そこに何も書いてなければ、本人は成果を上げていないという自己認識をもっていることになります。

村木氏の場合、自身に起きたサプライズを掘り下げていくことで、人材開発を行おうと考えているわけです。

これはドラッカーの言う本来の意味での目標管理制度の発想に近いと思います。



成果は自分自身で認識してもらう。

予期せぬよい出来事が起きるように些細な行動に工夫を凝らす。



こうしたことを自分自身で行うことがビジネスパーソンとしての付加価値をあげる早道であることを理解してもらう必要があります。

ドラッカーは企業は成長する経済か、大きく変化する経済のもとでしか存在できないと言っています。

経済が成長しない現在、変化は自分自身で作らないといけません。1個人としてできる最も効果的な取り組みは「予期せぬ出来事」への注目になると思います。

2010年10月29日金曜日

創発戦略-ミンツバーグの理論

ミンツバーグは、その経営戦略論も独特です。

私が昔、共著で出した『キーワードで読む経営学』でミンツバーグの紹介をしたことがあります。

そこの部分を抜き出しますと






経営学で大勢を占める分析的な経営戦略論を批判し独創的な戦略概念を提起したのがヘンリー・ミンツバーグである。

ミンツバーグはアンゾフからポーターに至る経営戦略論の主流が戦略を事前に計画するものととらえている点を批判し、企業の優れた行動や風土がパターン化して新たな戦略となる「創発された戦略」の概念を提起した。

これは事前の戦略に対する事後の戦略ともいうべき考え方であり、両者のバランスの重要性が指摘された。
ミンツバーグの理論は欧米の産業界を中心に広く支持されている。

       
     (浅沼宏和 「主な経営学者・経営学説」 『キーワードで読む経営学』より)




つまり、現場の取り組みがパターン化して自然と戦略が出来上がってくるという感じの理論なのですが、日本の経営はどちらかというとミンツバーグの考えがしっくりくるでしょう。

しかし、そのミンツバーグも事前の戦略がなくてもいいといっているわけではありません。

使い勝手の良い事前の計画立案フレームワークがあった方がよいわけです。