2010年12月2日木曜日

意思決定-必要条件・再考

意思決定には必要条件を明確にすることが求められます。

必要条件があいまいなままだと、状況が変化したときにその意思決定が不適切であることがわからなくなってしまいます。


『経営者の条件』に次のような事例が載っています。


第一次大戦のときにドイツは『シュリーフェン計画』という戦略構想を持っていました。

ドイツの西にはフランスがあり、東にはロシアがありました。

シュリーフェン計画とは、フランスとロシアに挟み撃ちにされた場合にどう戦うかを決めたものでした。

計画では、弱敵である東のロシアにはわずかの兵力で対応し、強敵フランスに対しては短期間で大打撃を与えるために大軍を投入することになっていました。

この計画ではフランスを打ち破るまではロシアがドイツ国内に侵入することを容認することになっていました。

実際に第一次世界大戦がはじまり、この計画は実施されました。

しかし、予想外にロシア軍の進撃速度が速く、東の地域の人々から救いを求める声が上がりました。

この計画を立てたシュリーフェン元帥は、ロシアの進撃速度は遅く、フランスを撃破するまでの時間が十分あることを必要条件としていました。

シュリーフェン元帥の必要条件は明確でしたが、彼の後を継いだ者たちは単なる戦争技術者にすぎなかったため「必要条件を満たさない以上、戦略を変更する必要がある」ことに気がつきませんでした。

そのため、軍事上の最大のタブーである兵力の小出しの投入という過ちを犯し続けました。

こうして必要条件を失ったシュリーフェン計画を維持しようとしたばかりに、西部戦線では兵力の大量投入によるフランスの撃破に失敗し、東部戦線では兵力を十分補給できず、ロシアを食い止めることはできなかったのです。

これ以後、ドイツは場当たり的な応急措置を行い続け、敗北へと突き進んだのです。


必要条件を明確にしておかないと、「都合の悪いことは起きない」という間違った思い込みのもと行動し続け、最後には大失敗をすることになってしまいます。

今回の事例の場合、たとえば東部戦線を後退させてロシアの補給線を伸び切らせること。
さらに、ロシアの後方を攪乱して東部戦線を膠着状態で維持し、その間に西部戦線で決戦を挑むという戦略などが考えられると思います。