2010年12月20日月曜日

『創造する経営者』⑩

続きです。卓越性と優先順位、機会と計画についてです。



・卓越性とは常に知識にかかわる卓越性。

・卓越性-「事業にリーダーシップを与える何らかのことを行いうる人間能力のこと」

・卓越性には色々な定義が可能。

・卓越性の定義の適切さを判定できるのは経験だけ。


・卓越性の定義は事業に弾力性や成長と変化の余裕をもたせることができるように大きくしかも集中が可能なように範囲を限定するものでなければならない。

・狭すぎる卓越性の定義をする企業は自らを貧血状態に陥れる。

・卓越性の定義が有効であるためには、実行可能であって、ただちに行動できるものでなければならない。


・卓越性の定義は頻繁に変えられない。すでにかなりの程度、従業員とその価値観、行動に体現されているから。 しかし、定期的に見直し、その都度新しく考えていかなければならない。


・なすべきことは常に利用しうる資源より多い。優先順位は企業そのもの、経済的特性、強みと弱み、ニーズについての最終評価が反映されねばならない。


・優先順位の決定はそんなに難しくないが劣後順位の決定は難しい。延期は「放棄」を意味する。


・経営計画における4つの決定

①追求する機会、進んで受け入れるリスク、許容範囲のリスク

②事業の範囲と構造、特に専門化・多角化・統合のバランス。

③目標を達成するための時間と資金。新事業の設立と買収・合併とのバランス。

④経済情勢、機会、成果目標のための計画に適合した組織構造。


・事業においてはリスクは最小にするよう努める。しかしリスクを避けすぎると最大にして最も不合理なリスク、すなわち「何もしないリスク」を負う。


付加的機会 :既存資源をさらに活用するための機会。事業の性格は変えない。 例-製紙メーカーが印刷業者向け市場から事務用コピー機市場へと進出する。

補完的機会 :事業の定義を変える。現在の事業と結合してそれぞれ別個の時よりも大きな挿話をもたらす新しい事業機会。常に少なくとも一つの新しい知識において卓越性を獲得しなければならない。通常リスクを伴う。
補完的機会は事業全体の富の創出能力を数倍にしてくれるものである必要がある。

・革新的機会 :事業の基本的性格を変える。実現のための革新が必要、かつ非常な労力を要する。第一級の資源、特に人材を充てる。多額の研究開発費が必要。利益は極めて大きくなければならない。


・あらゆる企業が中核的なものを持たねばならない。リーダー的地位に立てる領域を持たねばならない。したがってあらゆる企業が専門化しなければならない。

・企業には核が必要。あらゆる活動を一つの知識か一つの市場に統合できなければならない。

・急激に変化する市場と技術の世界にあって、必要とされる弾力性を確保するために、成果をもたらす領域を多角化しておかなければならない。

・企業は、製品・市場・最終用途において多角化し、基礎的な知識において高度に集中化しなければならない。

・あるいは知識において多角化し、製品・市場・最終用途において高度に集中化しなければならない。


・専門化と多角化のバランスは資源の生産性を大きく規定する。

・知識の大きな変化があったときには事業の範囲を大きく変える。

・卓越性の変化のあった時は専門化と多角化のバランスを変える。

・通常、川下統合は多角化を意味し、川上統合は専門化を意味する。


・専門化・多角化は影響が大きいばかりかリスクも大きい。経済的効果とリスクの二つの基準で判断する。

・新たな事業形態は事業の性格を一変させるほど大きな成果をもたらすものであること。

・事業の成長は主として内部からもたらされる。したがって時間がかかる。

・事業をマネジメントせずに財務的操作だけに頼るなら菅らざる失敗する。財務的手段は人材開発、組織開発、イノベーション、事業の方向付けや見直しの代わりを務めることはできない。


・計画の基礎は、事業の定義、目標についての意思決定、自らの卓越性・優先順位・戦略についての意思決定。

・最初の目標設定。「いかなる成果が必要か、どこで必要か、いつまでに必要か」

・必要とされる活動を検討・評価・割り当てる資源を選択。それらの活動を具体的仕事として誰かに割り当てる。


・あげるべき成果はだれかが責任を持つべき仕事とする。

・期限を切る。

・あらゆる提案は目的と期待を明記する。

・新しい事業のための提案はすべて企業全体に焦点を当てなければならない。


以上で、ドラッカーの三大古典の一つ「創造する経営者」の戦略論を終わります。

10回に分けて原理原則を取り上げてきました。

これら一つ一つが「組織が成果を上げる」のところで説明した基本形を実行する際のガイドラインになります。

さすがに世界初の体系的戦略論であるだけに密度が濃いです。

私は経営戦略論は最後には本書が残ると思います。

これを補う戦略論はアクションの中から新たな戦略が生まれると考えるミンツバーグの理論でしょう。