2010年3月5日金曜日

書評 「経営の教科書」

新将命『経営の教科書』ダイヤモンド社、2009年  定価1,680円



昨日まで連載していた「社長の教科書」とは違う本です。
経営者に人気の新将命(あたらしまさみ)氏による社長学です。
いいところだけまとめてみました。

新氏は、ビジネス環境が厳しい今こそ経営の原則の確認が必要であるといいます。
ドラッカーの経営学が見直されている状況を端的に表す言葉であると思います。

概要は以下の通りです。


ヒトは大きなことを信じた時に大きな仕事をする。だから「ビジョン」を浸透させることが極めて大切。

経営者には情熱がかかせない。情熱を燃やす方法は2つ。①短期と長期の納得目標を追い続ける ②情熱に火をつけてくれる人と付き合う

大局観をみがくには「(多面的・複眼的視点)」「(短期でなく長期で見とおす)」「(根本に目を向ける)」の3つを重視する。

経営者が目指すべきは新規開拓より既存顧客の固定化。そのためには顧客を感動させるようなプラスアルファの付加価値の提供が欠かせない。

「目標設定」は極めて重要。目標を持たない社員と持つ社員ではあげる成果が全く違う。

経営者には「胆識」が必要。モノを知り(知識)、自分の判断を加え(見識)、かつリスクを恐れず決断・断行する能力。

一人の力には限界がある。企業を成長させるには部下に任せる必要がある。

社員を行動させ、結果を出させるためには経営者は人間関係力を高める必要がある。


新氏もドラッカー的な発言をする人です。もっとも経営の基本を押さえようとすると必ずドラッカー的になりますが。


本書が目を引くのは新規顧客よりも既存顧客重視を掲げていることです。これは「社長の教科書」の小宮一慶氏と全く同じ発言です。ドラッカーも10年後も現在の顧客・商品が4分の3の位置を占め続けていると述べています。

しかし、新氏の主張は「既存顧客を感動させるプラスアルファの価値をつけろ」という点で強力です。同じ商品・サービスを提供し続ければ必ず飽きられます。

京都の老舗のお店のご主人がこういっていました
「うちは江戸時代から『変わらない』といわれ続け、それが信用のもとになっています。しかし、本当は『変わらない』と言ってもらうために毎年大きく変えているんですよ。」
今まで聞いた経営者の話の中で一番ためになった言葉でした。

水面下では必死の努力で変革しているのに、表面的には変わらないというところがすごいところですね。多くの場合、これを誤解していると思います。
「今の商品・サービスで満足してもらっているのだから変える必要がない。」という考え方のビジネスマンが結構いますね。

ただし、意図的に変化を感じさせないといけない場合もあるとは思います。これはマーケティング上の問題ですね。