2010年2月10日水曜日

環境整備は戦略に従う-オフィス編

昨年末に行った当事務所のセミナーでは環境整備を取り上げました。

5S活動は抽象的で難しいので、そもそも環境整備とは何かについて素朴に考え、整理と清掃、そして見た目をすべて直角平行に整えるというシンプルな手順に集約しまおうというものでした。
それを「2S直角並行」と名付けています。

現在、そのセミナーを名古屋の大手企業で行うために理論の再整理をしています。

その結果、2S直角平行は、工場、店舗、オフィスによって重点については多少の違いがあると考えるようになりました。

そして、オフィスにおける環境整備の理論的な問題を考えていく中で、「環境整備は戦略に従う」という考えに至るようになりました。

この言葉はいうまでもなく、経営学者チャンドラーの有名な言葉である「組織は戦略に従う」の焼き直しです。

しかし、環境整備の在り方を考えていくうちに、オフィスの環境整備は仕事の性質や取り組みについての考え方に大きく左右されることに気付いたわけです。

少し具体的に説明します。

ぐちゃぐちゃになっているオフィスは別として、究極のオフィスは徹底的にモノがない状況であるといえるでしょう。

私はその好例として、有名なアートディレクターである佐藤可士和氏のオフィスがあげられると思います。


佐藤氏は、ユニクロTSUTAYAのブランドコンセプトをデザイン化したことで知られています。彼の発言はデザイナーというより経営コンサルタントそのものです。



右が佐藤氏のオフィスの写真です。



これは究極のオフィスですね。

すべてのプロジェクト資料はボックスの中に収納されています。


デスク周りについては一切物が置かれていません。


まだ引っ越しがおわっていないかのように思えるきれいなオフィスです。

こんなところで働くことができれば、さぞクリエイティブな仕事ができるでしょう。

さて、ここで一つ考えてみましょう。

すべてのオフィスでこの状況がまねできるでしょうか?


結論として言えるのは、少なくとも私のデスク周りはこのようにすることができないということです。

私は佐藤氏のオフィスが可能となる条件を次のように推理します。


 ①ほとんどの仕事が中長期のプロジェクト単位のものである。

 ②事務処理的業務はすべて定型的なものであり、量も多くない。

 ③電子ファイル化の比率を高める方針をとっている。

細かく、しかも定型性が乏しい仕事が少なければ、時間の割り振りも大きな単位で考えることができます。
大企業の大きなプロジェクトを中心に仕事をしている佐藤氏のオフィスであるからこそ可能であると見ることができるように思われます。

オフィスにおいて目に見えるところのモノの量は、発生する仕事の大きさ、期日、量、相互連携の必要性といった要因に左右されます。

つまり、一般的なオフィスでは一定の書類が目に入る状況になるということです。

したがって、そうした業務の現状を踏まえたうえで自社に適した環境整備の基本的なラインを打ち出すことが必要となるわけです。

現実的かつ実用的なオフィスの環境整備の一例をご紹介しておきます。

上がビフォアーで下がアフターです。 決して十分とは言えませんが、この会社としては、立派な環境整備というわけです。前よりは明らかにレベルが上がっているでしょう。