2010年2月9日火曜日

コストポイントと貢献活動

ドラッカー理論解釈における未解決論点の一つです。

ドラッカーは「創造する経営者」においてコスト管理の原則を明らかにしています。
ところが、その後の「マネジメント 上・下」においてはコスト管理については触れず、貢献活動について述べています。
この二つの説明を比較すると整合性が取れていない点があり、その理解の仕方について悩んでいます。

1964年の「創造する経営者」では、コスト管理の原則において、コスト管理のレバレッジがきいて大きな成果が上がる領域をコストセンターといい、その中で大きなコストがかかる活動をコストポイントと説明しています。

そして、コストポイントには
①生産的コスト :顧客が喜んで代価を支払う価値を提供する活動コスト。 ex.生産、販促、知識、資金、営業、差別化
②補助的コスト :経済価値は生まないが、不可避なコスト。 ex.輸送、受注事務、製品検査、人事、経理
③監視的コスト :悪いことが起こらないようにするための活動コスト。 ex.製品力の衰退、技術力低下の警報、仕入先・流通業者の状況把握
④浪費的コスト :どんな成果も生まない無為のコスト。 ex.空席の目立つ旅客機、貨物船が港で積み下ろす日数

ところが1973-74年の「マネジメント 上・下」では、コストポイントについては触れられず、似た分類が貢献分析のところで書かれています。

それは企業における諸活動を貢献の種類に区分けして管理するというもので、
①結果を生み出す活動 :業績に間接・直接に貢献するもので、さらに、結果を生む活動、結果に貢献する活動、情報の活動にわけられる。
②支援活動 :それ自体は目に見える結果を生まず、他部門に利用されて初めて活用される。
③補助的活動 :直接・間接にも結果や業績に関係しない。
④経営トップ活動 :

ドラッカーは、マネジメント活動は資源を投入し成果を最大化する活動であるので、目先のコスト削減を危険な手段と考えます。

ポイントは、資源を機会が最大に得られる領域に集中的に投入すること、その結果が最大になるように活動を組み立てることといえます。

その意味では上記の二つの概念は同じことを別の観点から言い直していると考えることができるように思われます。

ところが、ここで問題となるのは、それぞれ最も重要な①の概念の範囲に、重ならない部分があるということです。

特に「創造する経営者」のコストポイントの②「補助的コスト」のいくつかが、9年後の「マネジメント」においては①「結果を生み出す活動」に含まれているように読めるのです。

おそらくこの部分はドラッカーの思索の進化といえるものであると思うのですが、それぞれに完結した論理ですから、何が問題となって新たなバージョンに移行したのかをよく考える必要があります。

実はこうした論点がさまざまな部分にあるのが頭の痛いところです。

「そんなに矛盾する体系を提起したドラッカーには価値があるのか?」と思われるかもしれません。

しかし、その矛盾する論点レベルにまで掘り下げた視点を打ち出した経営学者は他にいません。
こうした論点を自分の頭で考えていくことが、自身で使いこなせる経営原則を身につけるのに役立つと考え、あれこれ頭を悩ませています。