2010年5月17日月曜日

給料の三倍稼いで一人前

「近代中小企業」という雑誌の別冊として管理者向けの簿記再入門についての原稿を書きました。

今回は32ページ分の分量を1週間の期限で書いたのでかなりハードでしたがどうにかまとまりホッとしています。ほんの数日前にも書いたのですが、原稿が仕上がりましたので改めて書きます。

その中で「給料の三倍稼いで一人前」という章を設けて、その簿記的な意味について解説しました。概要はこうです。


経営指標に労働分配率というものがあります。人件費の総額を会社の付加価値総額というものです

簡単に言うと売上高から仕入・外注費を引いた金額です。

なぜそれが付加価値かというと、仕入・外注費は会社の外でつけられた価値で、それ以外は会社がつけた価値とみることができるためです。

つまり労働分配率とは、会社の生んだ価値のうち人に回ったコストということです。優良企業ほど低くなることが知られています。


黒字の中小企業の場合、業種によっても違いますがだいたい労働分配率は50%台です。

ところで人件費=給料総額ではありません。人件費には会社負担の社会保険料、福利厚生費なども入ります。ですから黒字企業の給与総額は付加価値総額の40%台になります。

つまり黒字企業は社員全員で自分たちの給料の2倍ちょっとぐらいを稼いでいる(付加価値を上げている)ということになります。

社員にはベテランもいれば新人・パートさん等がいます。新人は仕事を覚えている段階であり、給料分を稼いでいません。パートさんは裏方的な役割の場合、せいぜい給料の1~2倍程度の稼ぎでしょう。

ですから中核社員は給料の3倍以上稼ぐのが黒字企業の条件となるわけです。

この辺りがあまり理解されていないようで、自身の給料の二倍ぐらい稼ぐとなんだか会社に貢献しているような気になりますが、それでは赤字になってしまいます。

給料の三倍稼いで一人前という表現は簿記的に適切な表現なのです。