2010年9月24日金曜日

書評-「デフレの正体」

藻谷浩介『デフレの正体-経済は「人口の波」で動く-』角川書店、2010年  定価760円


本書は日本経済の直面するデフレの意味を的確に指摘します。

徹底して人口構造に注目する視点はドラッカーと同じです。

以下、概要です。

・現在の日本経済の停滞の真の原因は、「現役世代」の減少にある。

・内需縮小の背景は「就業者人口の減少」という構造的問題である。
・生産年齢(15-64歳)が減少に転じたことが就業者数の減少につながっている。
・出生率の低下によって、毎年新卒就職者より定年退職者が多くなっている。

・日本では景気循環ではなく、生産年齢人口の増減が就業者数の増減、個人所得の総額を左右し、個人消費を上下させてきている。これが平成不況の根本原因である。

・この状況に対して日本には3つの目標設定が必要である。

①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めること

②生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす

③個人消費の総額を維持し増やす


・この目標を実現するためにはさらに3つの具体策が必要となる。

①高年齢富裕層から消費性向が高い若者への所得移転を行うこと(年功序列賃金廃止・生前贈与促進策など)

②専業主婦など有償労働をしていない女性の就労を促進し、企画や経営に参画する助成を増やすこと

③訪日外国人観光客・短期定住客を増加させること


人口構造の変化こそ確実な未来を示すことをドラッカーは強調しています。

このように単純にまとめてしまうと、帰ってこの予測の確実さがひしひしと感じられます。

最近の対中問題の様子からして、安全保障という視点も入れないといけないと思われます。