2010年9月24日金曜日

書評-「MBB:思いのマネジメント」

野中郁次郎他『MBB:「思い」のマネジメント-知識創造経営の実践フレームワーク』東洋経済新報社、2010年   定価1,890円


日本が世界に誇る経営学者・野中郁次郎教授を中心にまとめられた力作です。

本書は日本企業が多く実施している目標管理制度の問題点を鋭くえぐり、新たなフレームワークを提起しようとするものです。

ですが、中身についていえばこれはドラッカー流目標管理制度に他なりません。

概要は以下の通りです。


・バブル経済が崩壊し、日本企業の多くが目標管理制度、成果主義制度を導入した。
・結果的に業績向上につながったものの、社員の多くが仕事のやりがいや喜びを失った。
・成果主義・目標管理には働く人の「思い」の入る余地がない点が問題である。

・日本企業には自身の内側からのほとばしる思いを込めて創造的に仕事に打ち込むための仕組み-『思いのマネジメント』Management by Belief (MBB)-が必要だ。

・動機づけによって社員の創造性を引き出そうとするのは間違いだ。人がもともと備えている創造性を解き放つような支援が必要なのだ。

・経営の原点は、『自分は何をやりたいのか』『今何をすべきなのか』といった思い、つまり主観だ。こうした思いの集積がイノベーションを生み出すのだ。

・より質の良い「思い」でなければ、よりよい価値を生み出せない。そのためには個人の思いを組織的な思いへと磨き上げる必要がある。

『なぜその目標を目指すのか』といった根源的な問いが重要だ。企業の各単位、個人は上位目標を自分の思いと照らし合わせて自分なりの解釈を加え、自分の目標に置き換えなければならない。

・大きな思いを持って目標設定を行い、実践することが大事だ。その場合、組織の枠を意識しないことが必要だ。

・最も大切なのはトップの「思い」であり、その表明としてのビジョンである。


まったくドラッカーの経営フレームワークそのものです。

ドラッカー流目標管理制度は完全に自主管理です。その本質は成果を上げることに対する真摯さです。真摯さとは「思い」に他なりません。

いろいろな登り口はあるのでしょうが、経営原則は最終的には同じ結論に至るのであると思います。