2010年6月7日月曜日

書評-「社長さん! 税理士の言うとおりにしていたら、会社つぶれますよ!」②

河辺よしろう著『社長さん! 税理士の言うとおりにしていたら、会社つぶれますよ!」 定価1,470円

今回は河辺氏のランチェスター経営のコンサルタントとしての主張をまとめます。

概要は以下の通りです。

・「強者」は儲かる。約8割の確率で業界平均より経常利益が3~6倍よくなる。経営にレバレッジが利いている。
・「弱者」が勝とうと思えば、“小さな山”で強者を目指すべき。

・イノベーションよりリノベーション(事業再構築)。ポイントは「商品」「客層・業界」のどこかをできるだけ変えないでビジネスモデルを深耕する。

・新規顧客の開拓は難しいので、ビジネスモデルを転換するときには、できるだけ「顧客」を変えないようにするのがこつ。
・決算書をいくら眺めても会社の強みは見えない。「目に見えない企業価値」こそが大事。
・「強み」をもたない会社はない。

・徹底的にお客様目線で自社の魅力を探す。
・経営の問題 ①現状がわからない ②目的・目標がはっきりしない ③プロセスが分からない

・5つの数字で経営を見える化する。 1、売上額 2、人件費 3、材料費 4、設備費 5、総支出

・社長用の財務データ 1、損益余裕率 2、人件費に対する純利益割合 3、一人当たり純利益 4、一人当たり自己資本 5、売上と粗利の年計データ

・現代の儲けの方程式 客単価×客数×回転数=売上 客単価と客数があげられないなら回転数を増やすしかない。
・回転数を高めるには「お客様に忘れられない」こと

・商品開発は「裏の道」を行くこと。ex.ゴールドラッシュのアメリカで儲けたのは金を掘った人ではなく、その人たち相手に商売をした人
・商品が決まったなら利益を確定させる。中小企業は価格を高く設定できないかがポイント。
・ダメなチラシとは。一番多い失敗は、いくつもの商品を載せているチラシ。

・イノベーションは強い企業価値がなければ無理。ほとんど起業と同じ。生半可な強みでは生き残れない。
・イノベーションを目指すならエースは既存事業にではなく新規事業に投入する。

・戦略と戦術の違いが分からないから迷走する。戦略は首から上で考えること。戦術は首から下で繰り返し行われる作業のこと。戦略を担うのは社長さんしかいない。

・社長の役目は会社の規模で違う。小さい会社は戦略を立てながら戦術も実行する。
・ムダなポストは廃止する。
・社員に「求める役割」と「期待する成果」を示せ。

・社員の行動は管理しない。
・一番大切なのは熱意と覚悟。

なかなかうがった原則が提示されています。小さな会社の経営者には役立つ話であると思います。

これまでランチェスター経営の概要を解説してきましたので、すでにお分かりでしょうが、これらの原則はランチェスターの法則からすべて導き出すことは不可能です。

ですから、一つ一つの原則について読み手の側でしっかりと取捨選択する必要があるのです。

河辺氏の著作でもドラッカーの原則が多用されています。

私の場合も原則的にドラッカーの著書に書いていることをベースにして原則を割り出します。

そして、コトラー、ポーター、コリンズなどの経営学者の著名な著作や、有名経営者の言動などから引き出された原則も使用します。

ただし、ドラッカーの原則と矛盾する場合には、なぜそうなるのかを分析して、一定の結論を出すというやり方をとります。

一番の特徴は、原則の出所をすべて明らかにすることを心がけているところです。