2010年6月5日土曜日

ランチェスター経営について⑥

ここまでランチェスターの軍事法則から田岡氏の考案するマーケティング分析の指標、そしてランチェスター経営の骨格を説明してきました。

特に軍事法則の部分とマーケティング分析の部分は卓見です。実用性が非常に高いものといえます。

また弱者の戦略、強者の戦略もマーケティング分析の結果とある程度整合しています。
経営の基本的考え方を身につける上で大変有益であると思います。

弱者の戦略と強者の戦略をよく見ると、それ以前の法則との間には論理のギャップがあります。

それ以前のモノは数理的な手法で組み立てられています。米国の経済学の論文などと同じようなスタイルです。

ところが弱者の戦略、強者の戦略はそこからインスピレーションを得てまとめられています。そこにギャップがあります。

実際、これらの戦略の内容は古代の兵法書である「孫子」の内容を矛盾しない内容となっています。
孫子は数理的に導かれた法則ではありません。あくまで古代の優秀な作戦家が自身の経験と思索によってまとめたものです。

つまり、ランチェスターの戦略は戦略的には当たり前のことが整理されているものなのです。

3倍なら必ず勝ち、1.73倍なら戦略的に優位であることさえ押さえておけば、後はドラッカーのような深みのある本を熟読した方が良いように思われます。

ただ、深く考えることをすべての経営者ができるわけではありません。

多くのランチェスター関連のビジネス書は、この弱者の戦略を色々な角度や事例を使って説明しているものですから、それはそれで有益です。

しかし、ランチェスターの法則というたった二つの法則で正しい経営を体系的に説明することは無理があります。
世の中の複雑な経済現象をたった二つの経済法則で説明しきることができないことと同じです。

ですから、それぞれの本で主張されている内容については役に立つと思われる事例だけをピックアップするとよいでしょう。

次にまとめておきます。

①ランチェスターの法則、マーケティング分析指標と強者・弱者の戦略を分けて考える

②強者・弱者の戦略は経営の一般論として妥当する。ただし、具体例については読み手自身が自分の頭で考えて個別の状況に当てはまるかどうかを判断する。

③法則を機械的に当てはめて経営を行う愚を犯さない。最後は自身の責任において決断する。