2010年3月10日水曜日

高校野球部女子マネージャーとドラッカー②

野球部の定義と目標も決まったので、みなみは次の課題に取り組んだ。

「企業の目的は顧客の創造である。‥企業は二つだけの基本的機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。その二つだけが成果をもたらす。」

「マーケティングは顧客からスタートする。‥『われわれは何を売りたいか』ではなく『顧客は何を買いたいか』を問う。」

そこでみなみは「野球部を甲子園に連れていく」という自分の欲求を言うのではなく、野球部のメンバーなどに対してマーケティングを行っていった。

将来起業家となるべく心身を鍛練し人脈を築く目的の部員、自分の実力を確かめたいだけで責任を負うのが重荷のキャプテン、打撃成績最低であるためレギュラーであることに悩む部員、野球が面白くなくて悩む部員、監督が嫌いでふてくされているピッチャー‥といったことが明らかになった。

「マネジメントは生産的な仕事を通じて働く人たちに成果をあげさせなければならない。」

みなみは野球部員たちにどうやったら成果を上げさせることができるか考えた。

「焦点は仕事に合わせなければならない。‥仕事がまず第一である。」

「働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには①生産的な仕事 ②フィードバック情報 ③継続学習 が不可欠である。」

これにもとづいてみなみはマネジャーの仕事の設計を行った。



成果に焦点を合わせて仕事を設計するというのはドラッカー流の組織構築の基本です。

そのためにマーケティングが必要であるという組み立ては「非営利組織の経営」の実践そのものです。

ドラッカーは非営利組織であっても成果を上げなければ存続できないし、したがって社会的意義を持ちえないと考えていました。

(つづく)

2010年3月9日火曜日

高校野球部女子マネージャーとドラッカー①

しばらく最近話題の本について解説していきます。
この本は相当話題のようでドラッカー・マニアの私に「あの本どうですか?」と聞く人がたくさんいます。

これはドラッカーのエッセンシャル版マネジメントを読んだ高校野球の女子マネージャーが、ドラッカーの原則に従って野球部を見事、甲子園に出場させるというお話です。もちろん架空の話です。

著者の岩崎夏海氏はあの秋元康氏の事務所で働いていたのだそうで、さまざまのTV番組にかかわったほか、最近ではアイドルグループのAKB48のプロデュースも手掛けていたそうです。


岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』ダイヤモンド社、2009年   定価 1,680円




ひょんなことから、みなみは都立進学高校の弱小野球部のマネジャーを務めることになった。

マネジャーの仕事が分からないみなみは辞書でマネジャーが「管理や経営をする人」と書いてあったのでそんなものであると勘違いをした。

そこで本屋でたまたま見つけたドラッカーの「エッセンシャル版 マネジメント」を読み、その通りにやろうと決意した。

そこで最初に目にとまった言葉は「‥根本的な資質が必要である『真摯さ』である。」というものだった。みなみはその言葉に衝撃を受けた。

「あらゆる組織において共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには『われわれの事業は何か。何であるべきか。」を定義することが不可欠である。」
に基づき「野球部とは何か?」を考えた。

そのために「企業の目的を使命を定義するとき、出発点はひとつしかない。顧客である。」という原則に基づいた。

その結果、高校野球部の顧客とは、親、学校、東京都、東京都民、高校野球連盟、高校野球ファン、そして野球部員であると考えた。

そして野球部の使命とは「顧客に感動を与えること」と定義された。

つまり野球部とは顧客に感動を与える組織ということを前提にマネジメントすることとなった。






まったく意表をついた設定ですが、ドラッカーを知るのに大変便利な本かもしれません。

話の展開はご都合主義的で、実際の経営はそううまくいくとは思えませんが、よくできていると思います。

非常に省略したまとめ方ですのでわかりにくいかもしれませんが、雰囲気を読み取っていただければと思います。


(つづく)

2010年3月8日月曜日

オフィスの環境整備

当社では環境整備のコンセプトとして「2S直角平行」を提起しています。

要するに、手軽に、見た目だけを少しずつ手直ししていくというコンセプトで、業種を問わずに適用できる点が長所です。

最近、日刊工業新聞社からでている「『見える化』で管理・間接部門まるごと大改革」という書籍を入手しました。

その本の基本的なコンセプトは、製造業では工場の現場で高いレベルで5Sが実践できているが、間接部門ではそれができていない。だから5Sを全社的に広めることが必要だという観点に立つものです。

その中に次のような話がありました。

‥‥次のような行為や考え方は絶対禁止である。   

・思いつき
・成り行き
・言われるがまま
・中途半端
・やみくも
・やりっぱなし


さて、2S直角平行というコンセプトは「お手軽」で「基準を作らない」というものです。
すると、形式的には上記の考え方と抵触する可能性があるわけですね。

私はそれぞれの話は矛盾しないと考えています。つまりそれぞれの考えが前提としている局面・状況というものの相違に注目すれば整理が可能であると思っています。

これは社内で宿題としているものですから、またの機会に解説したいと思います。

閑話休題 -Y社訪問

静岡銀行の交流会でよくお会いするY社のS常務から電話がありました。

先日のパーティでたまたま旧友をご紹介したのですが、S常務がその会社を訪問したいということで、仲立ちをしてほしいとのことでした。

S常務は積極的な性格で、交流会などでご挨拶した方の会社に良く出向くようです。

そこから話が広がってY社の環境整備やISOの話になり、近々私がY社の環境整備を見学しに出かけることになりました。


他の勉強会と少し違うのはこの交流会ではオフでこうした勉強の輪が広がるという点でしょうか。

当社では環境整備を戦略を支える重要な柱と考えており、あちこちの会社の事例を参考にさせていただいています。

しかし、飛び込みで見学をお願いするわけにもいかないですから、こうした機会が増えたことは交流会のメリットですね。

現在、一緒に参加する人がいないか声かけをしているところです。
他社の事例をみることが一番勉強になりますからいい機会になると思います。

2010年3月6日土曜日

書評 「強い者は生き残れない」

吉村仁『強い者は生き残れない』新潮社、2009年  定価1,260円






生物学ないし進化論の観点からビジネスをとらえた本です。

非常に面白い観点なのでご紹介します。

強いものではなく、環境変化に対応できた者が生き残る。

生物にとって最も大切なのは変動する環境の中で生き残ること。
そのために生物は「共生」したり「群れ」や「家族」といった協力体制を作ってきた。

人間社会ではまた「一人勝ち」を避けるための制度として民主主義が発展した。

人類の歴史は栄枯盛衰の繰り返し。文明の勃興期には人は国や民族のために利他的行動をとるが繁栄すると利己的行動をとる者が増えると考えられる。

経済学でゲーム理論がはやっているが、これは間違い。ゲーム理論は成員(プレーヤー)がすべて利己的行動をとると仮定されている。成員に内面化されている社会規範による制約が考慮されていないのは間違い。

社会的な足かせがないと仮定するゲーム理論が経済学に導入された結果、市場原理主義が台頭した。おかげでだれも勝てないような金融崩壊が起きた。

経済学が見落としているのが「富の有限性」。例えば漁業を自由化すると魚をとりつくし、後は船を売り払う戦略がベストということになる。

現在は「長期的利益」のために「短期的利益」の追求を控え、共同行動をとることが大切。最後まで生き残るのは進化史が教える通り「共生する者」である。

生物学の視点というのは意外に政治学・経営学・経済学といった社会科学の仮定として使えるんですよね。この本もそうしたものであるわけです。

こうした本を読み、マクロ的な状況を認識して、そこから足元を見つめなおすのもたまには必要でしょう。

2010年3月5日金曜日

書評 「経営の教科書」

新将命『経営の教科書』ダイヤモンド社、2009年  定価1,680円



昨日まで連載していた「社長の教科書」とは違う本です。
経営者に人気の新将命(あたらしまさみ)氏による社長学です。
いいところだけまとめてみました。

新氏は、ビジネス環境が厳しい今こそ経営の原則の確認が必要であるといいます。
ドラッカーの経営学が見直されている状況を端的に表す言葉であると思います。

概要は以下の通りです。


ヒトは大きなことを信じた時に大きな仕事をする。だから「ビジョン」を浸透させることが極めて大切。

経営者には情熱がかかせない。情熱を燃やす方法は2つ。①短期と長期の納得目標を追い続ける ②情熱に火をつけてくれる人と付き合う

大局観をみがくには「(多面的・複眼的視点)」「(短期でなく長期で見とおす)」「(根本に目を向ける)」の3つを重視する。

経営者が目指すべきは新規開拓より既存顧客の固定化。そのためには顧客を感動させるようなプラスアルファの付加価値の提供が欠かせない。

「目標設定」は極めて重要。目標を持たない社員と持つ社員ではあげる成果が全く違う。

経営者には「胆識」が必要。モノを知り(知識)、自分の判断を加え(見識)、かつリスクを恐れず決断・断行する能力。

一人の力には限界がある。企業を成長させるには部下に任せる必要がある。

社員を行動させ、結果を出させるためには経営者は人間関係力を高める必要がある。


新氏もドラッカー的な発言をする人です。もっとも経営の基本を押さえようとすると必ずドラッカー的になりますが。


本書が目を引くのは新規顧客よりも既存顧客重視を掲げていることです。これは「社長の教科書」の小宮一慶氏と全く同じ発言です。ドラッカーも10年後も現在の顧客・商品が4分の3の位置を占め続けていると述べています。

しかし、新氏の主張は「既存顧客を感動させるプラスアルファの価値をつけろ」という点で強力です。同じ商品・サービスを提供し続ければ必ず飽きられます。

京都の老舗のお店のご主人がこういっていました
「うちは江戸時代から『変わらない』といわれ続け、それが信用のもとになっています。しかし、本当は『変わらない』と言ってもらうために毎年大きく変えているんですよ。」
今まで聞いた経営者の話の中で一番ためになった言葉でした。

水面下では必死の努力で変革しているのに、表面的には変わらないというところがすごいところですね。多くの場合、これを誤解していると思います。
「今の商品・サービスで満足してもらっているのだから変える必要がない。」という考え方のビジネスマンが結構いますね。

ただし、意図的に変化を感じさせないといけない場合もあるとは思います。これはマーケティング上の問題ですね。

2010年3月4日木曜日

書評 「社長の教科書」⑥

第6弾です。今回は「ヒト」に関する部分に少しふれます。


小宮氏は、人を思い通りに動かすといったたぐいの本をいくら読んでも、人を動かすことはできないといいます。

まず、小宮氏自身、人生において自分を完ぺきに動かすことができた日すら1日もなかったといいます。ましてや人を動かすことなどできるわけはないといいます。

そこで小宮氏が提唱するのは「良い仕事をした人をほめること」です。

この「良い仕事」について少し説明が必要です。

まず、小宮氏は多くの会社で実施されている成果主義人事制度はすべて誤りであるといいます。制度のほとんどは「良い仕事」を評価するのではなく、売上や利益を評価する仕組みとなっているため、良い仕事を目的としないで売上・利益を目的とする結果となっているというわけです。

ドラッカーも目標管理について同じ指摘をしています。


小宮氏も次のような表現で成果主義を批判しています。

「 ‥‥しかし、成果主義人事制度のもとでは、良い仕事をしなくても、お客様をだましても、法律をおかしてでも、果ては世界同時不況を引き起こすような事態を起こしてでも、稼ぐ社員が良い社員だとする会社が出来上がってしまったのです。」

ただし、この「良い仕事」を誤解してはいけないといいます。

自己満足の良い仕事ではダメで、顧客や周囲の人が認めてくれるような良い仕事でなければなりません。それは結果がともなった良い仕事でなければならないということです。

この辺りが難しいところなのですが、要するに例の「三人の石工」の話同じということですね。

2010年3月3日水曜日

書評 「社長の教科書」⑤

少し間が空きましたが第5弾です。



テーマは「マーケティングでお客さま第一を具体化する」です。


ドラッカーは販売とは売ること、マーケティングとは自然に売れるようにすること言っています。


お客様は、品質(Q)、価格(P)、サービス(S)のバランスを価値と認識してそれに対してお金を支払います。

小宮氏はQPSの組み合わせで他社との違いを出せるかがポイントになるとみています。

小宮氏はこの「サービス」を誤解しないようにといいます。

一般的な意味合いでのサービスは「品質」に含まれます。
小宮氏の言う「サービス」とは、お金を頂かないその他の要素ということのようです。

具体例として「店が近い」「店員と知り合いだから」「社名を知っていたから」「会社の評判がいい」「友達が持っていたから」「ニュースで見たから」といった理由で購入された場合、それは品質とも価格とも関係ないわけです。これがこの場合の「サービス」なのだそうです。

品質についてくわしくいうと、商品そのもののスペックや大きさ、付随するパッケージングなどをすべて含みます。百貨店等では店の包み紙の価値、つまりパッケージングが重要になります。

品質の場合、スペック、大きさ、太さ、重さ、色などのように要素に分解すると解決策が見えることがあると指摘します。

価格については一般的にいえば安いものが売れる傾向になります。しかし「値ごろ感」も大切で、あまりに安すぎると逆に信頼を得られず、買われないことになります。この値ごろ感の上限と下限を決めなければならないわけです。

最下限は「コスト」です。短期的にはライバルとの関係でコストより安く売ることもありますが、そのやり方は長期では続けられません。

そして上限は「お客様からみた価値」になります。その最もわかりやすい例がブランドです。ブランドの場合、その価値をいかに高く演出できるかが重要です。

最後にサービスです。小宮氏があげるサービスの要素は、立地・評判・品ぞろえ・人・デリバリー・納期・クレジット制度・店構え などです。

こうした要素をすべて考えながらマーケティングを行う必要があるわけです。

ドラッカーはマーケティングを全社的活動ととらえていますが、小宮氏はそれをわかりやすく伝えていると思います。


また小宮氏は会社のレベルを知るための面白い基準を提案しています。

原則: 既存顧客の売上の増減が会社のレベルのバロメーター

小宮氏は良い会社は良い顧客が長続きするといいます。つまり顧客を見れば会社のレベルが分かるわけです。
小宮氏は「友達を見ればその人が分かる」といわれるのと同じと説明しています。

京都では「いちげんさんお断り」という店が多くあります。長い歴史の中で既存の優良顧客を大切にすることで結果的に儲かると知っているというわけです。

そして最も望ましいのは既存の顧客が別の顧客を紹介してくれることであるといいます。これが一番の信用のバロメーターなのです。

2010年3月2日火曜日

貢献すべきことは何か?

上田惇生氏が週刊ダイヤモンドで連載している3分間ドラッカーで次の言葉が取り上げられていました。

「  自らの果たすべき貢献を考えることが、知識から行動への起点となる。
問題は何に貢献したいかではない。何に貢献せよといわれたかでもない。
何に貢献すべきかである。 」 (『明日を支配するもの』より)


このような事態になったのは人間の歴史においてごく最近の出来事だそうです。
それまで貢献すべきことは自分以外の何かによってきめられてきました。
農民は土地と季節で決められ、職人は仕事で決められ、家事使用人はご主人の意向で決められていました。

ところが知識労働者が仕事の主役となると彼らに何をさせるかが問題となったわけです。

一時期、人事部がその役割を担いました。しかし、人事部は知識労働者の世話役をこなすことはできないことが明らかとなりました。

そこで1960年代には早くも
「知識労働者は何に貢献するかを自分で考えよ。」
ということになりました。ドラッカーはこの点を主張し続けているわけです。

ポイントは何を貢献すべきかであって、何をしたいかではないということなのです

この点が重要ですね。非常に多くの場合、「何をしたいか」によって仕事が行われるようです。

いつも引き合いに出す3人の石工のたとえでいえば、

「何をすべきか」=「大聖堂の建設への貢献」 ◎
「何がしたいか」=「自身の満足できる一流の石積み」 ×

何をすべきかを知るためには次の3つの問いを考える必要があります。

①状況が求めるものは何か?

②価値があるのは何か?

③あげるべき成果とは何か?

2010年3月1日月曜日

書評 「ファストファッション戦争」

川嶋幸太郎『ファストファッション戦争』産経新聞出版、2009年 定価1,365円  



ファッション業界にはうといので、こういった業界の現状をコンパクトにまとめてある本は助かります。



以下概要です。


低価格で高品質の衣料、通称「ファストファッション」が人気を集めている。


ファストファッションとは、気楽に、安く、日常的に着ることができるファッション衣料のこと。ファストフードのような服という意味。特徴は「低価格」「高品質」。

ユニクロは、自社商品の企画・デザイン・生産・販売までをすべて手掛ける製造小売業(SPA)の業態を行っていることが特徴。大量生産・大量販売できるため低価格・高品質ながら高い粗利益を実現。

スウェーデン発のH&M(へネス&モーリッツ)は、高回転で最新モードファッションを店頭に並べるのが特徴。スピード重視のため品質確保は二の次。

ファストファッションには ①ファッション性 ②スピード ③低価格 ④クオリティ の4つの要素がある。どれを重視してどれを犠牲にするかのバランスが各社の独自性となる。
H&Mは④を犠牲にして①~③を実現している。ユニクロは③と④を重視している。

しまむらは商品を売り切る力が強く、メーカー・問屋に返品しないのでメーカー・問屋は安心して取引できる。そのため高品質商品を低価格で仕入れることができる。

米国発のフォエバー21は「消費者の求めるものを低価格で売り切る」というファストファッションの目的に最も忠実。今後、最も成長する可能性が高い。フォエバー21はしまむらと特徴が似ている。

ユニクロの第二ブランド、ジーユー(g・u)は2009年に990円のジーンズを販売して話題となった。するとこれに影響されてセブン&アイグループ、イオン、西友も低価格ジーンズを発売した。今後の激戦が予想される。