2012年1月27日金曜日

名刺の肩書きの意味は?

ビジネスマンの名刺の肩書きはほぼ職能別組織における位置づけを示しています。

営業主任、製造部課長、経理部長などがその例です。

職能別組織は成果から逆算したプロセスを段階別に再編成したものです。さらにそれがスキル別に分けられています。

こうした役職は安定性が高いものです。

毎日の業務はどんどん変化しているはずですが、毎日肩書きが変わるわけではありません。

こうした安定的部分がないと組織は崩壊してしまいますから、役職が明確であることは重要なのです。

しかし、それだけでは足りません。

職能別組織で定められた仕事は安定的ではありますが、仕事を大きくしていきながら地震を成長させるという面で弱いのです。

ドラッカーは「仕事は大きくしなければならない」といっていますが、それはビジネスパーソンの成長のために不可欠なことなのです。


(浅沼 宏和)

マンモスを狩るための組織、ピラミッドを建設するための組織

先日、ある会社の社員研修でドラッカー流の組織論を解説してきました。

組織論というと、なんだか複雑そうですが、ドラッカーは組織について説明しています。

ドラッカーは組織の基本的なパターンは二つであり、あらゆる組織はその二つの組み合わせによって出来上がっていると考えているようです。

一つは、古代エジプトのピラミッドを建設するために使用された組織です。今風にいうと「職能別組織」というものです。

職能別組織とは仕事のプロセスを段階に分けて、さらにスキル別に人を振り分けて組織化するものです。

目標が明確で、やるべき仕事が明確な仕事に向く組織形態です。

経済性・安定性に優れますが柔軟性・機動性・チャレンジ精神に欠ける弱点があります。セクショナリズムも発生します。


もう一つは、原始時代にマンモスのハンティングに使われた組織です。今風にいうと「チーム型組織」というものです。

機動性・柔軟性に富み、イノベーションに向いていますが、経済性にかけ安定性にも欠けています。


あらゆる組織はこの二つの混合型です。二つとして同じ組織はありません。ここを押さえておくことが組織論のかなめになります。



(浅沼 宏和)

目標のもとに違うタイプのプロフェッショナルが集結し目標を達成しようとするものです。

2012年1月23日月曜日

中企業は二流の事業に手を出して失敗しやすい

ドラッカーは企業規模を判断するために、中核的人材の数で見るべきという提言をしています。

中核的人材が15人程度までが小企業、50人程度までが中企業、それ以上が大企業です。

したがって業種や個々の企業の事情で変わってきます。

もっとも単純に人数だけで判断すると間違うので、あくまで総合的判断が必要ですが。

中企業の場合、たいていはそこまで大きくなった強みのある事業があります。

こうした場合、ついつい他の事業に手を出して失敗をしやすい点を注意しています。


中企業は二流の事業に手を出して失敗しやすい。中企業はすでにそれぞれの分野で一流である。

他の企業にはできないことを楽にこなしている。したがって自信過剰となっている恐れがある。

(「マネジメント」より)


中企業はやはり大企業に比べて資源に乏しいという問題を抱えています。ですから中企業の成功の鍵も「集中」にあるわけです。

二兎を追う者一兎をも得ずという感じでしょうか。

ドラッカーは次のようにも言っています。

中企業とは、特定の重要な分野においてリーダー的な地位にある企業である。

ということは、社員数だけで見てもいけないわけですね。

強みの状況についても考えないといけません。


(浅沼 宏和)

2012年1月22日日曜日

見えてはいるが見てはいないもの

小企業の経営資源は制約されています。

ドラッカーは特に役割の組織化を行うことが大切であると言っています。

そこで、考えるべきなのは基幹活動なのだそうです。


小企業は事業目的の実現に必要な活動が何であるかを明らかにし、それを誰かに担当させることが必要となる。

さもなければ、基幹活動のいくつかが力を入れられることなく放置されたままとなる。

‥基幹活動については誰もが口にしていながら、誰も注意を払っていないことが明らかとなる。

見えてはいるが見てはいない。そうしてほおっておいている。


(「マネジメント」より)

ドラッカーは当たり前のことであるからこそ、逆にほおっておかれてしまうのだと言っています。

基幹活動は言葉で表現して担当者を決めなければ実行されません。


(浅沼 宏和)

小企業は成功できない?

小企業にも戦略が必要であることは明白ですが、ここからドラッカーはちょっと厳しい主張をしています。


現実にはほとんどの小企業が戦略を持たない。

機会中心ではなく問題中心である。

問題に追われて日々を送る。

だからこそ小企業の多くが成功できない。


(「マネジメント」より)


小企業はあらゆる経営資源が足りていないわけですが、この話からすると最も欠落しているのが経営者の能力ということになります。

小企業が成功する理由はひとえに経営能力にかかっているということですね。


(浅沼 宏和)

小企業にも戦略は必要

戦略が必要なのは大企業だけという意見は今だによく聞かれます。

これは戦略という言葉の定義の問題であり、「誰に、どんな価値を、どのように届けるか」を決めて、その具体的実行法を明確にするのが戦略であるならば、個人事業であっても必要です。

ドラッカーは

小企業は戦略を持たなければならない。

小企業は限界的な存在にされてはならない。

その危険は常にある。

したがって際立った存在になるための戦略を持たなければならない。

有利に戦うことができるニッチをみつけなければならない。

(「マネジメント」より)


特に小企業はニッチに生きる具体策を持つということですね。


(浅沼 宏和)

2012年1月21日土曜日

利益より売り上げ③

特集を読んでいくと、グローバル競争を展開する大企業を想定した話になっています。

ドラッカー理論で考えて納得のいく部分を上げますと


1、コスト管理はコスト削減ではなく成果の最大化であるという視点が入っている

コスト削減は未来の競争力を失う可能性につながります。最も重要な商品サービスのボリュームを増やす、つまり投入資源に対する成果の最大化を目指すことが大事であるということです。


2、EVA(経済的付加価値)の否定

これは要するに短期における成果とコストの差額を大きくする視点ですので、先行投資という考え方を重視しろというは話です。
「戦略とは現在と将来のバランスをとることである」というドラッカーの視点からすると直近の利益の犠牲をどのように行うかは重要です。
先行投資なくして将来の利益はありません。


ということで、ドラッカー的な観点からするとしっくりきそうな気がします。

しかし、ポーター的に考えるとまだよくわかりません。

1、ニッチではなくナンバーワンを目指すべき

これですとポーターの言うパフォーマンスエクセレンスの追求という泥沼の戦いになるような気がします。
ニッチという概念の定義の仕方の問題のような気もしますが、誤解も生じそうです。


2、国内市場が縮小しているのだからグローバルに戦え、それには売り上げ重視だ。

企業の強みを生み出すのが産業集積(クラスター)であるとすると、海外展開は中長期的には国内を弱体化させる気もしますが、この点、まだ私も整理がついていません。



特集を総括すると、いろいろな前提仮説が入っているようで、結論としては安直な気もします。

前向きに受け取るとするならば「昔の勝ちパターンを思い出して、現代風に生き返らせろ」といったことでしょうか。


(浅沼 宏和)

利益より売り上げ②

続きです。


利益偏重経営の4つのウソ


ウソ① 利益確保こそ企業存続の条件 →ホント:縮小に均衡なし、衰退の始まり

事業が伸び悩む企業は縮小均衡に走りがち。単なるコスト削減や他社の物まねでは新規事業を展開する余裕もなく、新たな市場開拓もままならない。これでは均衡どころか衰退の一途。


ウソ② ニッチ市場を狙え →ホント:ニッチ市場こそ優勝劣敗の厳しい市場

ニッチ市場でトップシェアを狙えるのは優れた中核技術を持つ企業に限られる。市場がニッチであるほど負けると危険。「優れた技術でオンリーワン企業」というのは結果論だ。やはり目指すはナンバーワン。


ウソ③ 高付加価値が利益の源泉 →ホント:高付加価値だけではもうからない

海外市場では「高機能」「品質重視」だけではビジネスの規模は限られる。富裕層ではなくボリュームゾーンを狙うのがよい。


ウソ④ 海外市場は利益重視 →ホント:成長市場ではシェアを優先

特に成長を見込める新興市場ではまず売り上げ確保にまい進するのがグローバル企業だ。




(浅沼 宏和)

2012年1月20日金曜日

利益より売り上げ①

日経ビジネス2012.1.23号に興味深い特集がありました。

利益より売り上げ -さらば縮小均衡路線-

です。

もし、そのとおりであるならば、ドラッカーのニッチ戦略の考え方やポーターのポジショニング理論とも関係してきますので、私としては一定の整理が必要になります。

ということで、まずは日経ビジネスの特集の趣旨をまとめて、その後、検討を加えていきたいと思います。


・利益なくして企業の存続はない。だが、極端な利益優先の先に未来はないのでは?


・かつて「売上高至上主義」は日本企業の強さの源泉だった。売り上げ増とは消費者の支持の表れであり、新たな雇用を生み出す原動力。


・日本全体に漂う利益偏重。小さくまとまるムードを変える時が来た、今あえて利益よりも売り上げ重視を提言する。




・有名企業を分析すると過去5年間の累積営業利益は増収重視型(売り上げ重視)のほうが増益重視型よりも多い。


・売り上げ重視、シェア重視の経営にかじを切ることは、必死でコスト削減に取り組む日本企業に有効だ。


・目先の利益より売り上げを伸ばすことに力を入れるべき。


・持続的利益を得るために最も重要なことはトップラインを伸ばすこと。コスト削減は手を付けやすいがそれで利益率アップしても限度がある。


・国内企業は国内市場での順位ではなく、世界市場でシェア上位を目指すという気概と具体的方策が必要だ。(A.T.カーニー日本代表・梅沢氏)


・シェア拡大といった成長路線をあきらめ、短期的な利益確保に走る国内企業が増えているのは、海外勢との厳しい競争に打ち勝つための具体策が見えないという事情がある。


・マーケットの目も気になる。


・多くの企業が系絵指標として取り入れたEVA(経済的付加価値)が短期志向を生んだ。必要な先行投資が実施されていない企業は少なくない。

・利益を最大化するためにはボリュームを増やさないといけない。国内が低迷しているので、海外市場で規模を拡大するしかない。

・1960年代、米国企業の多くが利益率重視で、日本企業は売り上げ・シェア重視だった。米国企業は「三流の手法」とみていたが、その後日本企業は急成長した。

・先進国経済の不振と新興国経済の勃興というパラダイムシフトが起きつつある今、利益を優先するよりまず売り上げやシェアの拡大を追求すべき時代になった。



つづく



(浅沼 宏和)

イノベーションには10年以上かかる

先週、マイケル・ポーターの入門書の原稿ができあがりました。
こうした大物をまとめようとするとわが身の力量の乏しさを実感します。


ポーターを半年以上読み込んでいて気が付くのは、ドラッカーに似ている部分が多いということです。

最近、特に気に留めているのはイノベーションにかかる年数がどちらも10年以上ととらえていることです。

原則: イノベーションには10年かかる

ドラッカー現在のビジネスで成果を上げることを「マーケティング」 将来に成果を上げる取り組みを「イノベーション」と考えているようです。

そして、このイノベーションのためには10年単位の時間が必要といっています。

マイケル・ポーターは、競争優位は戦略的ポジションを確立することによって得られる

そして、その戦略的ポジションはさまざまな活動が組み合わさったシステム(活動システム)によって生み出されると主張しています。

強力な活動システムの構築には試行錯誤が必要であり、したがってイノベーションには長期間が必要であるといっています。

その期間が10年です。

私はポーターはかなりドラッカーを意識しているような気がしています。

いずれにしても10年計画で行うものがイノベーションであり、その間、さまざまな打ち手は実行しなければなりませんが、大筋の方向性でぶれてはいけないということです。


変化への対応と称して右往左往することはどちらも厳に戒めています。


(浅沼 宏和)