2011年3月26日土曜日

閑話休題-坂本光司教授『伸びる中小企業の条件』

法政大の坂本光司教授は「日本で一番大切にしたい会社」によって一気に全国区になりました。

私は6年前に坂本先生の編著である「キーワードで読む経営学」の中で経営学の歴史をまとめた部分を担当し、執筆しました。

あの執筆のおかげで経営学の歴史にはだいぶ強くなりました。坂本先生にはとても感謝しています。

先生は身長190cm以上はあり、学者とは思えないフットワークの良さがあるフィールドワーク中心のバイタリティあふれる研究者です。
顔つきのいかめしさと体格におされて一緒にお酒を飲んでいる時につい背筋が伸びてしまったことを思い出します。

坂本先生が社労士会のシンポジウムで伸びる中小企業の条件に語った内容が日経新聞に出ていたのでまとめておきたいと思います。



伸びる中小企業10カ条

① ある特定のマーケットに過度に依存しない

特定のマーケット・企業・商品への依存度が高いと、景気の影響をまともに受けてしまうということです。リスクの分散化を図る必要があるということです。

② 景気・流行を追わない

景気には波があり、流行は必ず廃れます。伸びる中小企業は本業を追うものです。

③ 成長の種まきを怠らない

人材確保・研究開発等は未来経費といった種類のものです。
未来経費には保証はないがやらなければ可能性はゼロということです。
低迷企業の圧倒的多数は成長の種まきをほとんどやっていないそうです。
坂本教授は未来経費を売上高の4%以上と考えているようです。

④ 自己資本比率を高める

坂本教授は売上高経常利益率と自己資本比率を重視しているようで、特に自己資本比率を強調しています。50%を最低目標としているようですが、これはなかなか厳しそうです。

⑤ 景気に左右されない自家商品を創造確保する

教授は「下請けは永遠にやる業態ではない」と提唱します。
12,13年でやめるべきであり、自家商品を扱うようになるべきであるといいます。
中小企業の場合、医療・介護・福祉分野など景気に左右されない商品が向いているといいます。

⑥ 敵を作らない

これは「競争見積もり」の対象となるような商品を作らないことだそうです。
いわゆるオンリーワン企業を目指そうという意味のことです。

⑦ 人本主義を貫く

社員、下請け、お客様、地域住民など会社にかかわるすべての人の幸せを考えることの意味です。
坂本理論の骨格です。

⑧ 好不況に関係なく人材を確保する

伸びる中小企業は不況期であっても人材採用を行います。人材の安定的採用を重視すべきということです。

⑨ 業績ではなく継続を重視する

リスクがあって利益率が10%のやり方よりも、リスクの少ない利益率5%のやり方を目指すべきだということです。
中長期の継続性の高い方を選ぶのが正しいということです。

⑩ 多角・多面・多重・多層人材を育成する

営業も生産もできる人材といった意味のようです。複合的な能力を持つ人材は「つぶしがきく」ということです。
中小企業はつぶしのきく人材をどれだけ揃えられるかが勝負です。



坂本先生はもともと静岡県では有名な先生でした。
圧倒的な中小企業の現場訪問によってその理論は支えられています。

個性が強い先生なのでセミナーを聞く経営者の側でも好き嫌いが分かれるようですが、良い企業が結果として上記の条件をそろえているという傾向はあるでしょう。


(浅沼 宏和)