2011年1月26日水曜日

◇知的資産報告書をめぐる最近の動向

先日、会計専門家向けの知的資産報告書についての研修を受けてきました。


私は2004年に経産省が出したブランド価値報告書について論文を書いたことがあるため、直近の動向に特に興味がありました。


講師は元・神戸大教授の古賀智敏氏で、知的資産関連ではトップランナーの一人です。


知的資産報告書というのは2005年に経産省から出されたフレームワークの名称です。



財務報告書には記載されないような会社の価値ある知的資産を積極的に開示することで外部関係者の信頼を高めようという意図をもつものです。


1990年代は、無形の資産をどのように金銭的に評価するかということが学会の論点でした、つまり財務報告書の欠点を修正していこうという視点が中心であったと思います。


しかし、今回のセミナーを聞いてわかったことは2000年代は財務報告書とは別に非財務情報報告書というものを重視していこうという議論に代わってきたということです。

これは大変な話でして、簡単にいえば「うちの会社がどれだけすごいか、将来性があるか」をフォーマルな形式で報告するというものです。


従来はこれを経営計画書という形で金融機関等に提供してきたと思いますが、これにきっちりとしたフレームワークを作っていこうという議論といえると思います。


受講して感じたのは、会計学の大家である古賀先生の議論自体が経営学の視点に完全に変わってしまっているということです。


これは大きなことで、実務の流れも変わってくるのかもしれません。


すでに行政書士や中小企業診断士を中心に知的資産報告書がちらほら作られ始めているようですが、私が見る限りまだまだ水準が低いという印象です。


普通にレベルの高い経営計画書を作成している会社からみれば、「なんだ当たり前のことじゃないか」といった感じなのですが、中小企業の経営に対する意識水準の底上げには貢献するような気がします。


だいたい、経営状況の報告スタイルが一つに収束するわけがありませんが、経営情報提供のレベルを示す基準としての意味はもつことになるのかもしれません。


(浅沼宏和)