2010年10月29日金曜日

創発戦略-ミンツバーグの理論

ミンツバーグは、その経営戦略論も独特です。

私が昔、共著で出した『キーワードで読む経営学』でミンツバーグの紹介をしたことがあります。

そこの部分を抜き出しますと






経営学で大勢を占める分析的な経営戦略論を批判し独創的な戦略概念を提起したのがヘンリー・ミンツバーグである。

ミンツバーグはアンゾフからポーターに至る経営戦略論の主流が戦略を事前に計画するものととらえている点を批判し、企業の優れた行動や風土がパターン化して新たな戦略となる「創発された戦略」の概念を提起した。

これは事前の戦略に対する事後の戦略ともいうべき考え方であり、両者のバランスの重要性が指摘された。
ミンツバーグの理論は欧米の産業界を中心に広く支持されている。

       
     (浅沼宏和 「主な経営学者・経営学説」 『キーワードで読む経営学』より)




つまり、現場の取り組みがパターン化して自然と戦略が出来上がってくるという感じの理論なのですが、日本の経営はどちらかというとミンツバーグの考えがしっくりくるでしょう。

しかし、そのミンツバーグも事前の戦略がなくてもいいといっているわけではありません。

使い勝手の良い事前の計画立案フレームワークがあった方がよいわけです。

2010年10月28日木曜日

マネジャーの役割-ミンツバーグの理論

現在、恒例の年末セミナーに向けて少しずつ準備を進めています。

セミナーではドラッカーの理論を中小企業の現場で使えるように検討した試案を発表するのですが、ドラッカー以外の理論家たちもひそかに意識しています。

なかでも、私はミンツバーグを重視しています。ミンツバーグは日本ではあまり知られていませんが、世界的にみるとドラッカーと肩を並べるビッグネームです。

ミンツバーグは経営学を高尚なものではなく、「ぶっちゃけ本当はこれが現実でしょう?」と言ってのけるタイプの人物で、そのためMBA教育には批判的です。

ミンツバーグがマネジャーの役割をまとめているのですが、なかなか奥が深いのでほんのさわりだけで恐縮ですがご紹介します。


マネジャーの3つの役割 (細分化すると10の役割がある)


・公式な権限と地位に基づいて3つの役割が導き出される。


1、対人関係における役割

①看板的役割    :各種儀式にまつわり義務
②リーダー的役割  :社員の士気を高め、鼓舞する
③リエゾン的役割  :公式の権限外の他部署やその他の人々との接触


2、情報にかかわる役割

①監視者としての役割  :多くの情報は口頭で得る。 噂や憶測も多い。
②散布者としての役割  :自分が保有する情報を部下に知らせる
③スポークスマンの役割 :情報の一部を組織の部外者に送り届ける。


3、意思決定にかかわる役割

①企業家としての役割  :担当組織を改善し、変化する状況に適応させようとする
②障害排除者の役割  :変化に伴う障害にやむなく対処する
③資源配分者の役割  :もっとも貴重な資源はおそらく自分自身の時間
④交渉者の役割     :マネジャーは相当な時間を交渉に費やす


今回はこれぐらいのまとめですが、実はミンツバーグは日本の中小経営者にとってはとてもなじみやすい考え方を持つ大物です。日本で知られていないのが不思議なくらいです。

来年以降、ミンツバーグの理論をもとにした研修なども企画していますので、ブログを通じても時々理論を紹介していきたいと思います。

2010年10月27日水曜日

閑話休題-準備に関する名言集

木を切るのに8時間もらえるのなら、私は最初の6時間を斧を研ぐことに費やす。

             ‥‥リンカーン(第16代アメリカ大統領)


成功する商売の術は、90%の準備と10%の売り込みからなる。

             ‥‥バードランド・キャンフィールド


チャンスは周到な準備をした者だけにやってくる。

             ‥‥小柴昌俊(ノーベル賞学者)


しっかりと準備もしていないのに、目標を語る資格はない。

             ‥‥イチロー


好調の時こそ次の準備をせよ。

             ‥‥佐伯旭(シャープ二代目社長)


「勝つ意欲」はたいして重要ではない。そんなものはだれでも持っている。

重要なのは「勝つために準備する意欲」である。

            ‥‥ボビー・ナイト(バスケットボール・コーチ)


チャンスが訪れる日に備えなさい。

幸運とは、準備とチャンスの出会いなのです。

            ‥‥ロイ・D・チャピン(米国の元商務長官)


どれだけの備えをしたかで結果は決まる。

            ‥‥野村克也


人生において必ず幸運が訪れます。

その幸運を逃さないように準備することが大切。

            ‥‥ジュリー・アンドリュース(女優・歌手)




段取りや準備の重要性を述べた名言集です。


たまたま10月25日に、プリマドンナの吉田都氏が引退公演の準備をしているところをNHKの「プロフェッショナルの流儀」という番組でやっていました。


満身創痍の体であるにもかかわらず、一切練習に手を抜かず、痛々しいほどの追い込み方をしている姿が印象的でした。

見守る英国人スタッフたちが彼女の気迫に圧倒されている様子がよく伝わってきました。


吉田都氏には、「舞台で100%の実力を発揮するためには、日々の練習では120%の努力を重ねていく」 という信念があるそうです。

それだけの覚悟があるからこそ、東洋人であるにもかかわらず英国ロイヤルバレエ団でトップに立てたのであると思います。


ドラッカーはプロフェッショナルとは全力を尽くすことを約束する人であると述べています。

この「全力を尽くす」という意味は文字通りであると思います。


精根尽き果てるまで取り組んだのか? これが基準になると思います。

2010年10月26日火曜日

書評-「ビジネスで一番大切なこと」②

ヤンミ・ムン教授のマーケット論の続きです。

現在のビジネスシーンでは差別化が行き過ぎて意味を失っているというのが彼女の主張でした。


・市場が成熟化しすぎると二つの傾向が表れる。一つは、競争が行き過ぎ過剰な活動が展開されて消費者の目に違いが見えなくなること、もう一つは、市場の成熟化で消費者にとってはそのカテゴリーのあらゆるブランド全体との関係になること。

・過度に成熟したカテゴリーに対する消費者の態度の5タイプ

①知識豊富なカテゴリー通  ;カテゴリーに強い愛着を持ち、目が肥えているが、特定のブランドを選ばない。

②目ざとい買い物上手  ;実利を重んじる取引志向の消費者。バーゲンやポイントに詳しい。

③関心の薄い現実主義者  ;ブランドの違いに無関心。習慣・価格・便利さによって購買を決定する。

④いやいや関わる不本意な人々  ;そのカテゴリーに渋々かかわっている。親近感の欠如は混乱、ストレス、気まずさとなって現れる。

⑤理屈抜きの熱心な愛好者  ;市場が過度に成熟するとこの手の愛好者はレトロに見えるが、どの市場でもわずかに生き残っている。


・市場が飽和状態になると、消費行動は製品やブランドではなく、カテゴリー全体との関係に左右されるようになる。ブランドロイヤルティはほとんど見られなくなる。

『競争の群れ』から抜け出すには3つの可能性がある。 ①リバース・ブランド ②ブレークアウェー・ブランド ③ホスタイル・ブランド


1、リバース・ブランド   家具メーカーのIKEAが好例。

・他社が競争には欠かせないとみなしている便益の提供を控える。

・余分なものをそぎ落とすが、予想もしない形でぜいたくなものに変える。

・ともすればしみったれた製品を独特のきらめきで取り囲む。

・期待するものを取り上げ、期待しないものを提供する。

・何かは足りないが何かは多い。共存は無理だと思うものが共存している。

・競合他社とは出発点がまるで違うからこそ、何年もの間、独自の差別化に成功している。


2、ブレークアウェイ・ブランド   ソニーの犬型ロボット AIBOが好例。

・AIBOはロボットではなく「ペット」と位置づけられたため、「20万円もしたのに性能が悪いロボット」と批判されず、「うちの子はわがまま」と顧客に愛着を感じさせた。

・意図的に製品を作りなおす。ロボットを提供するが、ペットとしての役割を果たさせる。

・新しい定義を通じて製品にアプローチするように顧客に働きかける。

・カテゴリーの境界線から飛び出そうとしながらも、その一員でいるメリットを理解している。

・スウォッチは、季節ごとのコレクション提供・セレクトショップ・芸術家によるデザイン等、ファッション業界で当たり前のことを時計業界で行った。

・スウォッチはカテゴリーの境界線から飛び出そうとしながら、その一員としての恩恵にもよくしていた。

・歩幅をギリギリまで広げる。カテゴリーから外れない範囲で原形をとどめようとする。

・枠組みを変えると違うタイプの行動を呼びさまされる。

・日常的に消費されている商品のほとんどには別の形がありうる。


3、ホスタイル・ブランド  ミニ・クーパー、ベーシング・エイプ(日本のファッション・ブランド)が好例。

・消費者にこびず、その気がないふりをする。

・消費者の意向にひるまないブランドは強い愛着を獲得する。

・自社製品の長所も短所もさらけ出し、もし気に入らないのならそれまでだと言ってのける。

・迎合や追従を拒み、製品のででこぼこを磨いて直そうとはしない。

・消費者の懸念に一切反応せず、市場のフィードバックにも反応しない。これ以上ないほど偏ったポジションをとる。

・愛憎の衝突するエリアで生計を立てている。

・希少性は重要を呼び起こす。


ムン教授は、「あらゆるビジネス戦略は最後には失敗する運命にある」という話を書いています。

ビジネスの世界では、どんな戦略であっても永遠を期待することはできないわけです。

ある程度の期間にわたって持続する競争優位を得られれば上出来と考えるべきであるというわけです。


ですので、差別化についても非常にドライな視点を持っているようです。

ただし、本書はエッセイ調で、非常に親しみやすく読みやすい本です。いわゆる「学者調」とは違いますので気楽に読めます。

ムン教授は、上記の3つの戦略は、厳密に考えないで良いとも言っています。アップル社などは、3つの戦略を同時につかっているとも述べています。

ここではカテゴリーを厳密に区分するよりも、ある程度の目安として考える方が有益でしょう。


教授の差別化論は斬新で、今後も引用されることが多くなるでしょう。



2010年10月25日月曜日

書評-「ビジネスで一番大切なこと」①

ヤンミ・ムン『ビジネスで一番大切なこと』ダイヤモンド社、2010年  定価 1500円+税


ヤンミ・ムン氏はハーバード・ビジネススクールで競争戦略論のマイケル・ポーター、破壊的イノベーションのクリステンセンと並ぶ大人気のマーケティング論の教授です。

彼女は、今の企業が行っている差別化はほどんど差別化になっておらず、せいぜい「群れ化」を促進しているにすぎないと主張します。

本書は随筆風の柔らかい文章ですが、言っていることは意表をついています。

彼女の意見は今後重要視されていくような気がしますので整理しておきたいと思います。


・ビジネスの成功のカギは競争力にある。競争力とは他社といかに差別化するかである。
 ところが、その差別化が細かくなりすぎたために無意味なものになってしまった。

・企業が激しく差別化を争うほど、その違いはプロでなければ見分けがつかないものとなる。

・雑魚の集団から抜け出し、消費者との純粋なきずなを生み出せる傑出した企業は残念なほど少ない。

・何かを測定しだすことはそれを重視すると決めたに等しい。競い合う群れが一斉にその方向に走り出す。

・よくある「ランキング」は一匹狼の存在を危うくする。


・一定の測定方法が定着すると、逸脱者、異端児、冒険者が生まれにくくなる。

・全員が同じ方向を目指せば、誰も抜きんでることはできない。


・消費者に聞くことは「競合他社が何を提供しているか」を聞くに等しい。その結果、「アウディのように走るボルボ、ボルボのように走るアウディ」が生まれることになった。

・相違点を可視化すると当事者たちは互いの違いを際立たせるのではなく、解消しようとする。

・群れに参加しようとする者は二つの要件を求められるだけ。①感知機能-周囲が何をしているか察知する ②反応性-周囲が方向転換したら、それに合わせて調整する。


・企業が熱心に差別化を競い合うほど、その違いは消費者からみて小さくなっていく。


・ビジネスパーソンは型通りで意外性のない製品の改善を加える傾向がある。

 ①よりよく新しく進化させる「付加型」

 ②選択肢が掛け算のごとく増えていく「増殖型」

・付加型にしろ増殖型にしろ、本来の目的を見失い、その改良自体が自己目的化する。過度のセグメント化、過度の競争の結果、変化そのものがコモディティ化してしまう。



・消費者はある段階まで来るとそう簡単には心を動かされなくなる。

・差別化のための努力があまりに実を結んでいない。顧客満足度も上がっていない。




差別化といえば、経営戦略の最重要概念です。その意味自体がビジネスパーソンに正しくとらえられていないというのがムン教授の主張です。

これは重要な指摘であると思います。


次回も本書のまとめを続けます。

2010年10月24日日曜日

Why型思考とWhat型思考の違い

しずぎんビジネスナビの経営レポートのベストセレクション集におもしろいものがありました。

ここでは、「頭を使っていない。考えていない」アクションをWhat型思考と位置づけ、

「良く考えた」アクションをWhy型思考と位置づけています。

What型思考の人は、目にしたもの、耳にしたことをうのみにして思考停止状態のまま行動します。

具体的には

  • 上司に言われたことをそのまま実行するだけ。一切応用が利かない
  •  お客様の要望をそのまま聞くだけ、何の疑いもなく実行する
  •  誰かがいった話をそのまま写しただけの報告書を作る
  •  規則やマニュアルをそのまま守ることだけが正しいと信じている
  •  「前と同じ」にやればすべて安全だと考えている。

といった判断・行動をする人がそれに該当するといいます。

しかし、最近では環境が激変し、こうしたWhat型思考が通用しなくなったといいます。

現在は、「正解のない」「先が読めない」になったのであり、黙っていても仕事が来る成長の時代から、自分で仕事を作り出すことが求められる時代となったといいます。

こうした時代に合うのが、常に考え抜いたアクションを行うWhy型思考の社員であるというわけです。



今となっては当たり前の話ですが、2つの類型をうまくネーミングしていると思います。

ドラッカーのコスト管理論を現在の乱気流時代に応用して考えると、既存の仕事の効率性を最大化し、資源(特に時間)の余裕を生み出し、それを将来の成果につながる分母を作り出す行動(次々と「打ち手」を出し続けること)を行うことがWhy型思考に当たるのではないかと思います。


2010年10月23日土曜日

閑話休題-NHK 会社の星

教育テレビで深夜に「会社の星」という番組をやっています。

若手のビジネスパーソンが仕事や組織の中で成果を上げる方法をバラエティー感覚で情報提供するという番組です。

私も時々視聴しています。


先日、人事担当者が具体的なビジネスシーンにおける行動を評価するポイントを問題形式で回答する場面がありました。

少し面白かったのでご紹介します。



問1 企画書を作成途中に上司から「ちょっと見せて」と言われました。







 A:「考えをまとめてから後でご報告します。」と返答する


 B:「途中ですがいかがでしょうか。」と報告する





答え: Bが高い評価。ポイントは「柔軟な行動ができる人材」であること




問2 レベルが高すぎるプロジェクトを上司から任されました。






 A:ダメもとで挑戦する


 B:自身のスキルを冷静に判断し辞退する



答え: Aが高い評価。ポイントは「困難を克服する姿勢」を見せたこと

 
 
この問題と解答は、経営者やマネジャーの立場にある人なら迷うことなく同じ回答になるでしょう。
 
つまり初歩的なレベルの状況判断です。
 
 
しかし、こうしたレベルの判断についても駆け出しのビジネスマンの判断力を磨くという意味では良いのかもしれません。
 
実際に体験しなくても、こうした問題でシミュレーションしておくことは意味があると思います。
 
 
この番組を見ていて、こうした状況判断の事例を集めた基本行動マニュアルを作成してみようかと思いました。
 
事例を集めて体系的に編集するのは結構大変そうですが、考えてみたいと思います。

2010年10月22日金曜日

タイムマネジメント-こまぎれの時間

仕事のほとんどは、わずかの成果を上げるためでも、かなりのまとまった時間を必要とする。

こまぎれでは意味がない。

                         『経営者の条件』より


この考え方はドラッカー独特のものであると思います。

一般的に、タイムマネジメントというと、細切れ時間の活用法と理解されがちです。

雑用をテキパキこなすことはもちろん否定されるべきではありません。



しかし、最大の目的である「成果を上げる」ことに注目すると、「まとまった時間をどう使っているか」が一番大事であるはずです。



時間のまとめ方や、管理の幅については業種や仕事の内容で差がつくでしょうが、時間をまとめるという活動を意識的に行う必要がある点は変わりません。

例えば、1日を午前・午後で分けて、それぞれなるべくまとまった時間投入を行うようにするやり方などが可能であると思います。

私の場合、日曜日の夜にその週の午前・午後10回分の時間の使い方のスケジュールを組んでおくことを習慣化しています。



こうして組んだ予定について週末に評価し、自分の時間の使い方(つまり成果の上げ方)が的確であったかを判断しています。

2010年10月21日木曜日

黒字社員と赤字社員 -再考

今月初めに書評を書いた「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」は反響がとても大きく、「プリントアウトして社内で回覧した」というご連絡をあちこちからいただきました。

ということで、あらためてそのキモの部分を整理し、解説を加えたいと思います。


本書が主張しているのは一言でいえば『徹底的な時間活用』です。

いいかえると「あらゆる仕事は投入時間と成果の比率を最大化するという視点から深く考えられていなければならない」ということに尽きてしまいます。

それを手を変え品を変え色々な角度から説明を加えているわけです。具体的に説明します。紫字が私の解説です。




・黒字社員は仕事のスピードがある。時間内にできるだけ多くの仕事をこなす意識が高い。


*あげた仕事の量と質で仕事を評価する。「何時間かかった」という視点は、プロダクト・アウトの視点にすぎない。仕事の評価はかけた手間(コスト)ではなく質と量できまる。


・黒字社員は時間コストに敏感 (時間と成果の比率について皮膚感覚がある)

・手待ちコストの削減も立派な利益貢献 (ムダな移動・ムダな行動・資源使用等にも敏感)


*定型業務コストは少なく見ても1時間当たり1,200~1,800円程度(一般社員)、
役員・上位役職者クラスなら時間当3,000円以上になると考える。(大企業はもっと高くなる)
次の計算式でおおまかに判断:  年収÷12÷月平均勤務日数÷1日平均勤務時間 )

*時間を余計に費やしたら顧客に対してその分を多く請求する必要があると考える。
追加請求すべき金額は、時間コストの2倍以上(中核社員なら3倍以上)の金額が目安。

*逆に、時間を1時間短縮したら時間当たり人件費の2倍の価値貢献をしたことになる。

*人件費コストは手待ち時間だけではなく準備時間・事後処理時間まで含めて考える。

*時短で空いた時間でさらに別の仕事をこなして価値貢献をするのが黒字社員。

*黒字社員の発想は常に自身の人件費コストをもとにしており、それは行動・発言のはしばしに表れている。


・会議・ミーティング・朝礼は時間コストをかけている。黒字社員は発言への意識が高い。


*時間を使ったら貢献するのがビジネスパーソンの基本行動。会議への貢献とは発言するか実行すること

*会議等については貢献するか時間を浪費するかのどちらかでしかない。

*顧客との面談も同じ論理。面談中に意味ある発言(情報提供)もしくは課題の発見がないならば時間の浪費。面談の価値を当人が認識できなければ時間の浪費

*顧客面談・社内会議・ミーティングなど社内外のコミュニケーションでは、意識的な努力がなければ価値創出をしたことにならない。価値創出しなければその時間自体が無意味になる。

*「いい話を聞いた」だけの研修も時間の浪費


・黒字社員は自社のビジネスモデルっているがわかっている


*あらゆる行動が自社の上げるべき最終成果に向けられている。

*最終成果に向けられない時間投入はムダになる。

*その状況において価値ある行動や発言が何かが判断できる。

*時間や資源を使う意味について隅々まで意識が届いている。ほんの5分を使うことの意味、紙1枚余分に使うことの意味まで意識されている。




非常にざっくりとしたまとめですが、焦点を絞ったほうが分かりやすいと思います。
こうしてみると本書はとてもドラッカー的であることが分かります。

ここのところドラッカーのタイムマネジメント論を検討していますから、合わせてお読みいただければより理解を深めることができると思います。





タイムマネジメント-何かを伝える

何かを伝えるには、まとまった時間が必要である。

計画や方向付けや仕事ぶりについて、部下と15分で話せると思っても、勝手にそう思っているだけである。

肝心なことをわからせ、何かを変えさせたいのであれば、1時間はかかる。

                    『経営者の条件』より



ドラッカーの時間論は、成果の上がるべきところに時間を集中投入するというのが根幹です。

しかし、コミュニケーションについてはこの原則から少し外れると考えているようです。


単なる業務上の情報伝達であるならば、5分、10分でよいでしょうが、根本的な基準や方針については、その意味や満たすべき条件についてきちんと理解させねばならないということです。

これらについて時間が必要であるのは、部下が原則や方針を理解し受け入れる構えを持っている場合が稀であるからです。


ドラッカーは、人は自分が聞きたい話だけを聞く」と述べています。


原則や方針を決める人と、それを受け入れる人では立場が違います。

下位の立場の人は、上位の人間が当たり前に考えていることを理解することはできません。

そこに時間をかけるというのがドラッカーの考えです。


多くのビジネス本には、「経営者は当たり前のことを何百回、何千回と繰り返し言い続けなければならない」と書かれていますが、これはドラッカーと同じことを言っていると思います。