ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』早川書房、2008年 定価1890円
本書は行動経済学のおもしろい事例を集めたものです。マーケティングに役立ちそうな話が結構あったのでご紹介します。
行動経済学は最近はやりの経済学の分野です。
大和証券のCFで、「店主が店員に給料の『2割を貯金しなさい』というと、店員は『無理だ』という、そこで『じゃあ、給料の8割で生活してみなさい』というと、店員がなぜか『なんとかやってみる』と答えた」と紹介されていました。あれが行動経済学です。
心理学を利用して人間の不合理な経済行動を明らかにするものなので、結構読み物として面白いです。本書は砕けた文体なので気軽に読めます。
以下、本書に紹介されている主な法則をいくつかご紹介します。
◎おとりを使うとお客を誘導できる
A雑誌の年間購読料が2万円、Bウェブ版1万円、C雑誌とウェブ版のセット2万円。多くの人は最後の雑誌とウェブ版のセットを選ぶ。AはCのおとり。
値の張るメインメニューを一つおとりとして設定するとレストランの全体の売り上げが伸びる。
旅行会社が普通のイタリア旅行、普通のフランス旅行、ちょっとダメなフランス旅行の3つを用意すると普通のフランス旅行が選ばれがちになる。
◎あらゆるものの価格はいい加減
需要もなく価値のはっきりしなかった黒真珠を買わせるため、高級宝石をあしらったアクセサリーのメインに黒真珠を採用し宣伝。「黒真珠は高級品」という観念を消費者に刷り込んだ。
新規オープンの店に前に行列を作っておく(サクラ)と、一気にブレークする可能性がある。
スターバックスは他の店のコーヒーと違って見せるために、雰囲気の細部まで作りこみ、従来のコーヒーショップと値段の違いに意識を向けさせないようにして成功した。価格競争の回避。
最初に頭の中に意識した価格が後々まで心に引っ掛かって価格決定に影響を及ぼす。
◎無料には絶大な効果がある
無料のものと有料の物を組み合わせる。「スーツ1着買うと2着目が無料」。トータルでペイする仕組みづくりの参考になる。
無料で千円の商品券をもらえるのと、700円出すと二千円の商品券がもらえるのでは意外と前者を選ぶ人が多い。不合理な判断。
他にもこんな法則が書かれています。
◎楽しみでやっていたことも報酬をもらうと楽しくなくなる。
◎自分の所有物は高く見積もる
◎同じ薬でも価格をかなり高くすると効き目も違ってくる。
いかがでしょうか。結構ふだんからお店の術中にはまっていることもありますね。
しかし、ほんのちょっとした操作によって経済行動の結果が大きく変わるという事実は重いでしよう。
知っていると知らないのでは大きな差が出ますから、行動経済学というものを心にとめておくと何かの際には役に立つと思います。