2011年9月23日金曜日

閑話休題-「笑っていいとも」の視聴率低下

ネット記事に平日お昼のTBSの「ひるおび!」の人気が高まっているという話がありました。

7月には同時間帯の民放番組の首位であったそうです。

同番組は、例えば野田首相就任時にはゲストに政治家、政治評論家他文化人を呼び、討論を行わせるなど、「主婦相手の時間帯だから」といったお茶の間をなめた姿勢がない点が評価されていました。

そこで、引き合いに出されたのがフジTVの「笑っていいとも」です。

お昼と言えば「笑っていいとも」が思い浮かぶほどの番組ですが、全盛期の80年代にはなんと視聴率27.8%を記録したほどだったそうです。

それが、現在では視聴率5%も珍しくないほど低迷しているということです。

記事では、お茶の間のニーズが「バラエティよりも情報番組を」、「報道の奥にある真実が知りたい」、「明日の日本がどうなるかを知りたい」といったものに変わっている現れであるということでした。

また、「笑っていいとも」の中で行われる、芸人のうちわ受け的な悪ふざけに受け入れられなくなっているとまとめられていました。

顧客は変わり、ニーズも変わります。顧客ニーズに合った価値提供をすることがビジネスの基本ですから、どれほど成功していてもそのモデルはいつかは陳腐化すると考えなければなりません。


(浅沼 宏和)

閑話休題-中日・落合監督の解任

中日の落合監督が解任されたというニュースがヤフーで流れました。

私は最近野球に関心が薄れているので、成績が悪かったのかと思ったら現在はセリーグ2位で、これまでもなかなかの好成績のようです。

解任の理由は以下の通りであるそうです。

・勝利至上主義で守り勝つ野球に徹したため、見ている側にとって面白みのない野球を行った。
・観客動員数が毎年低下し続けている。
・落合監督就任以来、一度も黒字になったことがない。
・首脳陣の高年俸


以上の点からドラッカーのマネジメント的に考えてみると、「顧客の創造」がうまくいっていないわけですね。

スポーツというものは確かに勝つことが大事であると思います。しかし、それを見ることで楽しみ、対価を払っている顧客が求めているものは二つあります。一つは勝利ですがもうひとつは感動・興奮でしょう。

守り勝つというスタイルは玄人受けするのかもしれませんが、感動・興奮といったものとは違うように思います。

成績を残しているのに解任されるというとなんだか変ですが、マネジメントから考えるとありうることですね。

ドラッカーには三人の石工というエピソードがあります。

一人目「これで生活しています」
二人目「国一番の石工仕事をしています」
三人目「大聖堂を建てています」

落合監督は二人目の石工と判断されたのかもしれません。


(浅沼宏和)

2011年9月18日日曜日

書評-どうする?日本企業  -セイコーの事例②

クオーツ式腕時計で一時は世界を席巻したセイコーの失敗についてです。


・セイコーは創業以来、時計専門店ルートを抑え込み、国内で中級帯と高級帯市場の60%を占有するガリバー的地位を占めていた。

・技術進歩の大きな波を見て、クオーツ時計のイノベーションに進み、それに成功すると一気に攻勢に出た。


・また、クオーツ時計もあっという間に香港の10ドル時計に返り討ちにされてしまった。しかも、限られた経営資源を普及帯のクオーツ時計に振り向けていたため、本丸の中・高級帯を攻め込まれてしまった。



三品教授は、創業者の服部金太郎氏の創業精神が孫の服部禮次郎社長による方針転換によって失われてしまったと指摘しています。


(浅沼 宏和)

書評-どうする?日本企業  -セイコーの事例①

三品和宏 『どうする?日本企業』東洋経済新報社、2011年


神戸大の三品教授の近作です。名著ですので、数回に分けて事例紹介をします。


日本企業の多くが数十年にわたり売上高を増加させつつ、利益率を低下させ続けてきたことを指摘し、有名企業の戦略失敗をかなり厳しく指摘しています。

まずは、セイコーです。


セイコーはクオーツ式の腕時計を発表し、世界を驚かせ、あっという間に市場を席巻したものの、あっという間に凋落し、本来の高級時計などでの優位性まで失ってしまったといいます。

・セイコーはクオーツ式腕時計の販売攻勢によって1977年には金額ベースで世界一の時計メーカーに躍り出た。スイスにも進出し、1980年には生産個数も世界一となった。

・クオーツ式を主力と考え、機械式腕時計の使命は終わったと認識し、最高精度をほこるグランドセイコーの販売を中止した。

・この時点で、セイコーはスイス勢を打ち負かしただけではなく、アメリカ・ナンバーワンのタイメックスも追いぬいていた。

・1980年代に入るとセイコーの売上高は急減し、最近の2009年の実績では1960年代半ばの水準にまで低下している。

・セイコーの事例は1980年代のアメリカのMBAでは成功事例の筆頭として教えられていたが、最近では大失敗事例として教えられている。

・セイコーはイノベーションに挑み続けていて、数々の革新を成し遂げた。それでも結果的に大失敗となっている。


なぜそうなったのでしょうか?


(浅沼 宏和)

2011年9月15日木曜日

ドラッカーのリーダーシップ論―戦略の10原則

①明確な目標に全力で取り組む

目的が明確でなければそこにはたどり着けない。リーダーが熱心でなければメンバーから真摯な持続的な参加は期待できない。


②イニシアティブを発揮し、その状態を維持する

素晴らしいアイディアは考えただけでは意味がなく、その具体化のためのアクションが不可欠。


③資源は節約し、集中的に使う

経営資源には限度があり、あらゆる局面で優位に立つことはできない。適切な場で投入することが大切。


④戦略的なポジションに立つ

もし、実践していることが成果をあげていないなら、戦略を見直すことも必要だ。


⑤相手が想定しなかったことを行う

競争相手が予想できなかったことを実行して驚かすのは非常に効果がある。


⑥ものごとを単純化する

NASAによると各部品の信頼度が99.9%であれば、ロケット打ち上げの失敗確率は50%にもなる。
単純な戦略ほど失敗確率が低い。


⑦いくつかの代替案を準備しておく

アクションは失敗することがある。代替案が必要。


⑧目標への迂回ルートをたどってみる

凝り固まった考え方や行動にまともに逆らっても必ず抵抗にあう。戦略に迂回ルートを組み入れておくことが肝心。


⑨タイミングと順番を合わせる

正しい戦略であってもタイミングと順番を間違えると間違った戦略を実施することと変わらない。

⑩自分の成功をうまく活用する

うまくいっているときにペースダウンしないことが肝心。相手にチャンスを与えないこと。

2011年9月14日水曜日

ドラッカーのリーダーシップ論―戦略的プランニングの考え方

ドラッカーが戦略的プランニングについて重要な要素と考えるのは次の通りです。

・途切れることのないプロセスである。

・現時点で行う、リスクを取る決定を含んでいる。

・将来起こりうる可能性―考えられること―の最大限の知識に基づいて意思決定している。

・決定を実行するための取り組みは、系統立てて組織化しなくてはならない。

・取り組みとともにフィードバックもまた系統立てて組織化する必要がある。


アイゼンハワーが「プランには意味がなく、プランニングがすべてだ」といっているのは、戦略が静態的なものではなく、動態的なプロセスであるからです。

事業環境の変化の多様な可能性や、事業そのものと環境変化をどう想定したかを記録しておけば、事を大局的に見ることができるようになり、リスクを避けると同時に容易にかつ優位に好機をとらえることが可能になります。


(浅沼 宏和)

ドラッカーのリーダーシップ論―事業の定義

ドラッカーは事業の定義こそリーダーの最も重要な仕事と考えていました。

・事業の定義こそ、リーダーの主要な責任である。

・手遅れになるまでそれをやらない組織は、結局破綻する。

・事業の定義は、関係部署のリーダーたちと一緒に検討する。

・事業を分析して正しい答えを見つけるために、次の問いに答える。

  誰が顧客か?
  顧客はどこにいるか?
  何を買い、その理由は何か?
  顧客の価値をどう定義するか?

この問いが最も重要というわけです。

戦略的プランニングはこの問いの答えを整理して表現するのですから必然的に重要ということになります。


(浅沼 宏和)

2011年9月12日月曜日

ドラッカーのリーダーシップ論―戦略的プランニング

ドラッカーは戦略的プランニングこそリーダーシップの土台と位置づけました。


リーダーの主な仕事は、組織のミッションを明確に打ち出し、目標の設定、優先順位、途中で進捗具合を測定する基準等とともに組織全体のミッションを周知徹底させることと考えていました。



・望ましい将来を切り開くために私たちは現時点で意思決定をしなければならない

・リーダーの目標から始めることが肝要となる。それが確立されて初めて将来の目標に到達するために現時点で必要なアクションを決定することができる。

・「マネジメントとは事を正しく行うことであり、リーダーシップは正しい事をすることである」という考え方


つまり、何が正しいことなのか、また、とるべきリスクは何かを決定できるのはリーダーだけであるということです。


(浅沼 宏和)

ドラッカーのリーダーシップ論―ドラッカー・モデル

コーン氏はドラッカーのリーダーシップ論について次のように結論付けています。


・戦略的プランニングがすべての基礎になる

・リーダーにはビジネス倫理と誠実さが備わっていることが求められる

・軍隊で教えるリーダーシップを基準となるモデルとする

・モチベーションについての心理学的法則を理解し、応用する

・効果的で全般的アプローチとしてのマーケティング・モデル


ということだそうです。


(浅沼 宏和)

ドラッカーのリーダーシップ論―ドラッカーのスタンス

原稿の締め切りに追われ、すっかりブログ更新が滞ってしまいました。

ここから復活させます。

当面、ドラッカーのリーダーシップ論について書いていきます。


全く意外なことですが、ドラッカーはあまりリーダーシップについて深く体系的に書いていないのです。

だからといってリーダーシップについて無視しているわけではなく、明らかに重視しています。

その辺の秘密について解説していある本が刊行されています。


ウィリアム・A・コーン 『ドラッカー先生のリーダーシップ論』ランダムハウスジャパン、2010年

コーン氏は大学院でドラッカーの授業を直接受けた人物です。

自身の考えたものをドラッカーに直接質問することで、ドラッカーの見解を良く引き出しています。

コーン氏の著作はドラッカーの考え方を知る上では貴重な情報が満載です。

以後、本書に沿ってドラッカーのリーダーシップ論を見ていきたいと思います。




(浅沼 宏和)