先週に続いてドラッカー流の事業戦略です。
私は英語圏の政府、研究機関、企業のサイト等をよく閲覧しますが、ドラッカー流にミッション、ビジョンを定義している組織が多いことに気づかされます。
今回はその中でも会計人としての私が興味を持ったカナダ勅許会計士協会(CICA)の事業戦略をご紹介します。
CICAのHPから分厚い事業戦略書がダウンロードできますが、私にはとてもわかりやすくて参考になりました。
↓ カナダ勅許会計士協会HP (中央下のreportをクリックすると事業計画がダウンロードできます。)
http://www.cica.ca/about-the-profession/vision-and-mission/index.aspx
量が多いですから重要な個所だけ簡単に訳してみます。
直訳するとわかりにくそうなので一部意訳しました。
まず、ミッションとビジョンの意味については
ミッションとは
自組織が貢献できる顧客ニーズ、所有している中核能力、またそれらを詳しく説明する価値観等についての正確な表明。組織の使命。
言い換えれば、どういった領域で競争することを選択するのか、そしてそれを成功させるための強みや特徴は何かということ。
ビジョンとは
ミッションで定義した競争領域において将来自組織がどのようになっているかについての表明。自組織の将来像。
そこでカナダ勅許会計士協会の事業戦略とは
ミッション
「私たちのミッションは、財務マネジメント、保証業務、その他の専門技能を通じて意思決定を強化し、組織のパフォーマンスの改善を行うことです。
私たちは、誠実性、客観性、卓越性と公益に対する堅い約束(コミットメント)を伴った行動をします。」
ビジョン
「私たちは組織のパフォーマンスを測定、強化するための情報を創造し、正当性を与え、それを解釈することにおいてリーダーとなります。そして財務マネジメント、保証業務、その他の専門サービスについて抜きんでた存在となります。」
というものです。普通の方はあまりなじみのない表現でしょうが、会計専門家からみる力強く頼もしい前向きの宣言に聞こえます。
さらにこれらの定義について、その言葉の一つ一つに詳細な解説が付けられています。
そして、このビジョン、ミッションを前提としたうえで戦略的に重視する領域を
A:顧客重視
B:知識とスキル
C:資本市場におけるリーダーシップ
D:専門家としてのアイデンティティと展望
E:専門家への近づきやすさ、魅力
と定めたうえで、AからEに関するゴール(目標)を定めているのです。
それぞれのゴールにはいくつかの重要要素に分解され、どのようにアクションを起こすかが決められているのです。
全部で50ページ以上にわたる詳細なものです。
組織の使命を決めること、目標を細分化して設定することの大切さをドラッカーは強調しています。
組織を取り巻く環境が複雑になる一方ですから、こうした手順を踏むことの重要性は高まるばかりです。