「限界的存在」を10人以下(サービス業等は5人)の零細企業と見るべきと前回書きました。
これはあくまで現在の中小企業の経営指標の趨勢から割り出した現時点における判断です。
「限界的存在」の定義は状況が変わればまた変わっていくでしょう。
細かい数字は割愛しますが、とある経営指標によると中小企業経営に関してさらに厳しい状況が明らかになります。
平成20年度の実績をみると
売上高5千万円以下の企業では70%以上が赤字です。黒字は30%以下です。
ところが売上高1~5億円以上の規模では逆に約55 %が黒字なのです。
さらに売上高が5億円以上になると黒字企業の比率は約75%にまで上昇するといいます。
つまり規模小さくなるほど経営が厳しくなる傾向にあるのです。
この数字はリーマンショック以後の数字が出てきたらかなり変わってくると思います。
そのダメージはおそらく小さい規模の企業ほど大きいであろうと予測しています。
企業の社員数が10人以下の企業が限界的存在であるといいましたが、趨勢分析によると社員数が増えるほど一人当り付加価値が増える傾向にあります。
逆に10人以下の場合、急速に付加価値が低下することがわかっています。
この二つの指標から、私は10人以下の零細企業は、規模の拡大ができなければ環境変化の中で常に高い経営リスクに直面していると考えたわけです。
昨今の世界的な経営環境を考えますと日本の成長率が大幅に高まる可能性はほとんどないと思われます。
このような環境であるからこそ、企業として中長期には限界的存在から抜け出す意欲や考えを持たなければならないと思うのです。
しかし、残念なことにドラッカーは限界的存在である企業に対して厳しい見方をしています。
小企業や中企業に共通する問題は、規模が小さすぎるために必要なマネジメント(経営管理者)をもつことができないことである。
‥‥大企業に比べて多芸であることが求められる。しかも、大企業のそれと同じように有能であることを求められる。
(『現代の経営 下』67頁。*多少短く書き換えてあります)
つまり、中小零細企業は常に十分なマネジメントを行えないということになるわけです。
企業が躍進するためには何が必要でしょうか。
それは同業他社と比べて突出した強みがあるかどうかに尽きると思います。
専門的にはそれをコア・コンピタンス(中核的経営能力)といったりします。
わかりやすく言えば「同業者が舌を巻くような何か」があるかということです。
規模も小さく、同業他社から見ても平凡な会社は「限界的存在」である可能性が高くなるわけです。
こうして整理してみると、中小零細企業は限られた経営資源しかないため躍進しにくいにもかかわらず、突出した強みを持って躍進せざるを得ないわけです。
中小零細企業は、こうした矛盾を抱えたままで前に進まなければなりません。