コスト管理の3回目です。
コスト管理の基本は「対業績比」に注意することがポイントでした。
前回はヒトに着目して対業績比が悪化しているであろう現象を事例として見てきました。
今回はドラッカーの提唱するタイプ別のコスト管理方法を説明します。
タイプ1 : 成果に直結する活動(生産、営業など)
このタイプの活動はコストとしてみてはいけません。あげた成果の大きさに注目します。
昨日の事例は、この活動が適切な成果を上げていない現象の説明でした。
タイプ2 : 補助的なコスト(経理、総務など)
必要最小限の仕事量を見積もり、それを最も効率的に行います。
タイプ3 : その活動をやめてもそのダメージ以上のコスト節約になるもの
当たり前に行っている活動も、よくよく検討してみると無意味になっている場合があるものです。
勇気を持ってやめましょう。
タイプ4 : 成果に全く貢献していないコスト‥『浪費的コスト』
稼働していない設備・人員など。
場合によっては浪費的コストの発見は大きなイノベーションにつながることがあります。
昨日の3つの例では、いずれも成果に焦点を合わせて現場がきっちりと働くと、手空き時間が発生します。
これが、わかりやすいタイプの「浪費的コスト」です。
現場では浪費的コストを明らかにすることに抵抗があります。
「手空き状態」がまるでサボっているように見えるからです。
結論だけいいますと、「成果に注目する」ことでしか解決できません。
しかし、この問題に対する答えは「ヒトのマネジメント」の領域になりますから、また機会を改めてまとめたいと思います。
また、浪費的コストには巨額であるにもかかわらず、まったく意識されない場合があります。
もっとも有名な例は20世紀半ばまでの海運会社です。
以前の海運会社は、最大のコストは船が海を渡るときに発生していると考えていました。
ですから、速く、安く運行できる船の設計や維持管理に意識を集中させていました。
しかし、海運会社の最大のコストは港で発生していました。
海運会社はこの港におけるコストを所与のものとみなし、まったく注目していませんでした。
かつて船の貨物の積み込み・積み下ろしは沖仲仕・陸仲仕によってほとんど人力で行われていました。
しかも日数は各5日ほどもかかったそうで、それがすむまで次の船は港で停泊して順番待ちをしていたのだそうです。
海運会社はこのコストは変えることのできないものと見ていたわけです。
ところが、コンテナが発明されると状況が一変しました。
それは港におけるこのような状況が「浪費的コスト」と認識されたことを意味しました。
海運会社はコンテナの積み込み・積み下ろしがしやすい船を求めるようになり、船舶の設計思想が変わりました。
厳しい肉体労働であった沖仲仕・陸仲仕は積み下ろし・搬送用機械のオペレーターとしての港湾労働者に変化しました。
そして貨物の運送コストは劇的に削減されたのです。
この事例は突出したものですが、「浪費的コスト」がどのようなものか具体的にイメージしていただけるのではないかと思います。