ゲイリー・ハメル=C.K.プラハラード『コアコンピタンス経営』日経ビジネス人文庫、2001年 税込840円
原書は1995年の刊行です。この本は1990年代の経営戦略論の代表著作であり、またドラッカー理論の現代的実行法を考えるにあたり無視できない本といえます。
経営戦略論は、
1960年代の厳密な計画作成重視
1970年代の現場から生み出されるパターン的な戦略(創発戦略、事後的な戦略)の重視
1980年代のポーターに代表される産業内部での競争状況とポジショニング(位置取り)の重視
という流れを経て1990年代は企業内部の経営資源を重視する動向が注目されました。
コアコンピタンスとは、直訳すれば中核的競争能力とか中核的経営能力といった感じでしょうか。
ドラッカー流に言うならば、その会社における「強み」ということになります。
私は中小企業の場合には、もっとも現実的な戦略論は「強み」を意識することであると思っていますので、コアコンピタンスは非常に重要と考えるわけです。
コアコンピタンスとは具体的な製品や技術というより、個々の技術や人や資源や行動などを組み合わせる統合力によって生み出された企業全体の強みとして考えるべきものということです。
そのコアコンピタンスは長い年月の企業全体を挙げての努力によって獲得されるものであり、そのためにはストレッチ戦略とレバレッジ戦略の二つが重要であるといいます。
ストレッチ戦略とは一言でいえば「背伸び」をすることです。
そしてレバレッジ戦略とは少ない資源から最大限以上の成果を生み出すように工夫に工夫を重ねることです。
最近NHKのドラマになった司馬遼太郎の「坂の上の雲」はそのよい例であるように思います。
明治期の日本が、普通に考えたならば100%勝ち目のないロシアに打ち勝つために国家を上げてストレッチ目標を設定し、国家を上げて最大限の軍備を整え、兵力も兵器も乏しい状況で知恵を振り絞って勝利にこぎつけた物語です。
そこでは考えられないぐらい高いストレッチ目標と、わずかな資源を120%どころか200%活用しきるレバレッジ戦略が実行されるさまが詳細に描かれています。
私は司馬遼太郎ファンなので本書を20年以上前から愛読していますのでドラマも見ています。
話を戻しますが、著者のハメルとプラハラードは本書を大企業向けの戦略として書いています。
しかし、ストレッチもレバレッジもない小企業は生きることはできないとも述べています。
次回は、本書の中小企業向けの読み方について考えてみたいと思います。