前回までは零細企業について検討しました。
今回からは中小企業における「限界的存在」を考えたいと思います。まずは中小企業とは何かを考えてみましょう。
前回までの定義によって中小企業とは10人超(飲食・サービス業等は5人超)の企業を指すことになります。
中小企業基本法によると、人数に注目した観点からは
製造業300人以下、卸売業100人以下、小売業50人以下、サービス業100人以下が中小企業ということになっています。
こうした数字が一つの目安となるでしょう。
ところでドラッカーは組織の構造に注目した定義を行っています。
小企業‥トップと社員との間に1階層あり。 例:工場長、部長
中企業‥大企業と小企業の間にあるあやふやな存在。業務遂行の仕事に専任者が必要。目標設定は機能別の部門長が担当するのがベター。専門職の取り扱いの問題が発生。
大企業‥トップマネジメントの仕事をチームで行い分担しあうことが必要。例:社長は業務遂行の最高責任者、同時に生産担当役員と販売担当役員がそれぞれ業務遂行の責任の一部を負う。
なかなかまとめるのが難しいのですが、単純な構造で仕事に支障の出ない規模が小企業、きちんとした組織的枠組みが必要な規模が大企業、その中間的存在が中企業といったところです。
組織として成熟していない規模が中小企業としてとらえることができるということでしょう。
総社員数は目安に過ぎません。中核的社員の数が重要な意味を持ちます。
コンサルティング会社では、200人という規模ですでに大企業である。
大企業の組織構造とマネジメントを必要とする立派な大企業である。
‥‥秘書、使い走り、事務員を除き、全員がトップマネジメントか少なくとも上級の経営管理者だからである。
ルーマニアの軍隊のように将軍と大佐しかいない。
従業員の数だけは膨大であっても、他の側面、特にマネジメントの構造と行動については中小企業並みのものがある。
ある水道会社は従業員が7500人いた。しかし、マネジメントは「おもちゃ屋ほどのもので十分」だった。
‥‥マネジメントらしい仕事が必要なのは、州の組織、市議会、一般市民との関係だけであり、それは75人の会社であろうと同じであった。
(『現代の経営 下』56-57頁)
この記述は1954年のものですが、現在はさらに組織が考慮すべき内容が複雑になっていると思います。
ですから、規模が小さくても上のコンサルティング会社的な意味で大企業のようにマネジメントする必要がある会社が増えているでしょう。(ベンチャー企業などは小規模でもそれに該当することが多くなるでしょう)
また、このドラッカー的な意味での純粋な小企業は少なくなっていると思います。
複雑な経営環境に適応するためには自社を小企業といえども中企業的な要素が必要となっているでしょう。
その場合、組織形態として小企業であっても、マネジャーの必要とされる力量は相当高いものになります。
中企業と小企業を分けて考えることの価値は少なくなったように思います。
次回は中小企業的な意味での「限界的存在」について考えてみたいと思います。