2009年12月15日火曜日

≪閑話休題≫ バスカヴィル家の犬

ドラッカーの著作には各所に矛盾があると申し上げました。

理論の本筋のところではないのですが、ドラッカーのちょっとした誤解をご紹介します。

ドラッカーは、経営者の意思決定が何度も何度も考えを巡らせたうえでもハタと間違いに気づくことを例えるのに、シャーロック・ホームズの事件を引用しています。


『‥全く判断を間違っていたことに気づく。

‥シャーロック・ホームズのように、重要なことはバスカヴィル家の犬が吠えなかったことだと気づく。 』



と書いています。



しかし、これはドラッカーの勘違いです。


犬が吠えなかったことが「犬と親しい人物が犯人だ」という証拠であった事件は、「バスカヴィル家の犬」ではなく「銀星号事件」です。
ちなみに犯人は当初被害者と思われていた馬の調教師でした。



初歩的な引用ミスですが、こうした勘違いはホンのご愛嬌であり、それでドラッカーの評価が別に下がるわけではありません。

要は、ドラッカーの一字一句にこだわるのではなく、その本意は何かが問題なのだと言いたいわけです。

ちなみに、このエピソードの場合、そのポイントは「何の不自然さもないことが実は問題だ」ということです。

ドラッカーの著作にはちょっとした誤りが各所にあります。
意外なことにそれを正面から指摘する人が少ないように思います。

また、時代の違いから今では当てはまらなくなった説明もあります。

こうした点を踏まえてドラッカーを実質的に理解する姿勢が必要であると考えます。