ドラッカーは、シェアが一定水準以下となった企業を「限界的存在」と評します。
限界的な存在となった供給者は、いかなる景気後退、ごくわずかの軽度の景気後退によってさえ、市場から駆逐されるおそれがある。
(『現代の経営 上』89頁より)
ドラッカーは、おそらく大手企業同士の間での優劣を評する概念として「限界的存在」という表現を使っていると思われます。
私は、この表現を日本の中小企業向けに新しく定義する必要があると思っています。
先日開催したセミナーで「戦略的コスト管理」を具体的に説明する資料として、業種別の一人当たり粗付加価値額を企業規模別に見ることのできるグラフを作成しました。
そこでわかったことは、どの業種でも一定の規模(人数)に達していない会社の場合には、高い付加価値を生み出すことが難しいということです。
簡単にまとめると以下の2点になります。
①製造・建設などの業種では少なくとも10名数名(サービス・飲食・小売等はその半分程度)いなければ高付加価値を生み出しにくい。
②優良企業(2期連続黒字企業の各種指標の総合点で上位15%)は、平均的に15~30名ぐらいの規模である場合が多い。(もちろん業種によってかなり異なります)
そこで私は中小企業においては10名以下(サービス・飲食業などは5名以下)を規模において「限界的存在」とみてよいのではないかと考えます。
これに当てはまる企業は零細企業であると定義して差し支えないと思います。
零細企業の場合、常に高い経営リスクにさらされているということができます。
零細企業は規模において少なくとも10名(サービス・飲食等は5名超)を超えることを当面の目標とすることが必要になります。