最近、マーケティングとイノベーションの定義について質問を受けたので、改めて整理しておきたいと思います。
ドラッカーの用語は、広い意味で使われていたり、逆にごくせまい意味で使われたりします。
ですから場合に応じて読み分ける必要があります。
しかし、ドラッカー理論の全体像を把握する点からは初期の代表作『現代の経営』(1954年)の記述が重要です。
主要な個所を抜き書きして解説します。
まずはマーケティングの意味です。
企業の目的が顧客の創造であることから、企業には二つの基本的な機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである。
この二つの機能こそ起業家的機能である。
‥当時のマーケティングについての典型的な考えは、「工場が生産したものを販売すること」だった。
今日では、それが「市場が必要とするものを生産すること」に変わりつつある。
マーケティングは企業にとってあまりに基本的な活動である。
‥‥マーケティングは販売よりもはるかに大きな活動である。
それは専門化されるべき活動ではなく、全事業にかかわる活動である。
まさにマーケティングは事業の最終成果、すなわち顧客の観点からみた全事業である。
以上の内容には次の要素が読み取れます。
マーケティングは最終目的「顧客の創造」にかかわる基本的機能である。
マーケティングは市場の視点に立つ活動である。
マーケティングは全社活動である。
企業のマーケティング事業部の「マーケティング」概念は、ドラッカー理論では「販売」に当たる場合が多い。
その後の1964年の『創造する経営者』では、成果は市場・顧客、商品・サービス、流通チャネルの3つの領域のバランスによって実現されると書かれています。
そこで私はドラッカーのマーケティングの概念を
現在の視点から成果の3領域(市場顧客・商品サービス・流通チャネル)のバランスを取る全社的活動
と理解して再定義したわけです。
つまりマーケティングとは全社的な経営戦略であることになります。
マーケティングを全社的経営戦略ととらえる視点からは、その後、マーケティング理論の大御所のフィリップ・コトラーが体系化しています。
ドラッカーはコトラーに先駆けて極めて現代的なマーケティングの定義を行ったわけです。
(浅沼宏和)
2011年2月9日水曜日
2011年2月8日火曜日
深田氏のマネジメント批判への反論
先週後半は深田氏の著作に基づいてマネジメント批判について検討してきました。
深田氏のマネジメント批判の対案が
①勘・経験・度胸の重視
②他人が変わるより自分が変われ
の二つだけであるならば、マネジメント批判としては弱いのではないかと思いました。
確かに多くの経営者が経営の本質的な問題に取り組むというよりは経営ツールや手法の導入に気を取られている現状があるのかもしれません。
もしそうならば、手段と目的の取り違えですから大いに批判されてしかるべきです。
しかし、そうした現状の責任が「マネジメント論」全体にあるという主張は議論のすり替えであると思います。
ドラッカーのマネジメント論には深田氏が処方箋としてあげた二つの柱も含まれていると思います。
ドラッカーが「マネジメントを発明した男」と呼ばれるきっかけとなった1954年の『現代の経営』から深田氏の見解を覆す記述をいくつかあげたいと思います。
現代の経営でドラッカーは、事業をマネジメントの3つの側面をあげています。
① 事業のマネジメントは起業家的でなければならない。管理的・政策立案的仕事であってはならない。
② 事業のマネジメントは環境適応的ではなく創造的仕事でなければならない。
③ マネジメントは業績によって評価される意識的活動でなければならない。
この定義を読むだけでも深田氏の認識の誤りは明らかですね。
本書を読んで思ったのは「ドラッカーは誤解されやすい」ということです。
こうした基本的な誤解を解いていかなければ、せっかくのドラッカーの知的貢献が無駄になってしまいます。
このようなマネジメント批判が行われるのは「もしドラ」現象の負の側面ではないかと思います。
(浅沼宏和)
深田氏のマネジメント批判の対案が
①勘・経験・度胸の重視
②他人が変わるより自分が変われ
の二つだけであるならば、マネジメント批判としては弱いのではないかと思いました。
確かに多くの経営者が経営の本質的な問題に取り組むというよりは経営ツールや手法の導入に気を取られている現状があるのかもしれません。
もしそうならば、手段と目的の取り違えですから大いに批判されてしかるべきです。
しかし、そうした現状の責任が「マネジメント論」全体にあるという主張は議論のすり替えであると思います。
ドラッカーのマネジメント論には深田氏が処方箋としてあげた二つの柱も含まれていると思います。
ドラッカーが「マネジメントを発明した男」と呼ばれるきっかけとなった1954年の『現代の経営』から深田氏の見解を覆す記述をいくつかあげたいと思います。
現代の経営でドラッカーは、事業をマネジメントの3つの側面をあげています。
① 事業のマネジメントは起業家的でなければならない。管理的・政策立案的仕事であってはならない。
② 事業のマネジメントは環境適応的ではなく創造的仕事でなければならない。
③ マネジメントは業績によって評価される意識的活動でなければならない。
この定義を読むだけでも深田氏の認識の誤りは明らかですね。
本書を読んで思ったのは「ドラッカーは誤解されやすい」ということです。
こうした基本的な誤解を解いていかなければ、せっかくのドラッカーの知的貢献が無駄になってしまいます。
このようなマネジメント批判が行われるのは「もしドラ」現象の負の側面ではないかと思います。
(浅沼宏和)
2011年2月7日月曜日
ユニクロ失速のニュース
1人勝ちを続けてきたユニクロ(ファーストリテーリング社)の業績に陰りが出ています。
2010年8月以降、5か月連続で売上高が前年割れを起こしているそうです。
私は何社かずっと観察を続けている企業があるのですが、ユニクロはその代表格です。
この点について週刊ダイヤモンド2011.2.5号で特集がなされているので、簡単にまとめます。
(ユニクロ1人勝ちの理由)
①不況による消費者の低価格志向
②ヒット商品(ヒートテック)
③ファストファッション・ブーム
世界同時不況で、消費マインドが一気に冷え込み、消費者はひたすら価格を追い求めるようになった。そのため低価格と高品質を両立させたユニクロが消費者の心をつかんだ。
(昨年夏からの失速の理由)
・2010年2月に満を持して投入した新ジーンズブランド「UJ」の失敗。 ⇒ 「表面的なファッションに走り過ぎた」との反省の弁 ⇒ 結局、2010年はヒートテックに次ぐヒット商品は生まれなかった。
・消費マインドの変化 ⇒ 消費者が価格一辺倒に走ったため同質化が進んだ。そのため差別化にお金を使おうとするマインドに変わった。⇒ 百貨店に客が戻りつつある
(総評)
ユニクロのビジネスモデルは大きなロットで委託工場に発注した商品をすべて買い取ること。
それによって、高品質低価格の商品提供ができる。
このモデルを支えるのが商品をすべて売り切る強力な販売力。
ただし、大きなロットで作りこむため、想定より売れなかった場合、大量の在庫抱え込みが発生する。
また商品ラインの絞り込みには1年近くの時間をかけているためUJの失敗からの軌道修正にかなり時間を要するとの観測がある。
対する大手アパレルは消費マインドの回復を追い風に付加価値をさらに高めたラインアップを強化する予定。
消費者の価値観がリセットされ、市場が混然一体となっている中で、それぞれの企業がどのような住み分け方をしていくかが注目されるとのことでした。
社長の柳井正氏は、ドラッカー経営の実践者として第一人者です。
今年の動向には要注目ですね。
(浅沼 宏和)
2010年8月以降、5か月連続で売上高が前年割れを起こしているそうです。
私は何社かずっと観察を続けている企業があるのですが、ユニクロはその代表格です。
この点について週刊ダイヤモンド2011.2.5号で特集がなされているので、簡単にまとめます。
08年のリーマンショック後、ユニクロは3つの追い風によって1人勝ちの構図を作った。
(ユニクロ1人勝ちの理由)
①不況による消費者の低価格志向
②ヒット商品(ヒートテック)
③ファストファッション・ブーム
世界同時不況で、消費マインドが一気に冷え込み、消費者はひたすら価格を追い求めるようになった。そのため低価格と高品質を両立させたユニクロが消費者の心をつかんだ。
(昨年夏からの失速の理由)
・2010年2月に満を持して投入した新ジーンズブランド「UJ」の失敗。 ⇒ 「表面的なファッションに走り過ぎた」との反省の弁 ⇒ 結局、2010年はヒートテックに次ぐヒット商品は生まれなかった。
・消費マインドの変化 ⇒ 消費者が価格一辺倒に走ったため同質化が進んだ。そのため差別化にお金を使おうとするマインドに変わった。⇒ 百貨店に客が戻りつつある
(総評)
ユニクロのビジネスモデルは大きなロットで委託工場に発注した商品をすべて買い取ること。
それによって、高品質低価格の商品提供ができる。
このモデルを支えるのが商品をすべて売り切る強力な販売力。
ただし、大きなロットで作りこむため、想定より売れなかった場合、大量の在庫抱え込みが発生する。
また商品ラインの絞り込みには1年近くの時間をかけているためUJの失敗からの軌道修正にかなり時間を要するとの観測がある。
対する大手アパレルは消費マインドの回復を追い風に付加価値をさらに高めたラインアップを強化する予定。
消費者の価値観がリセットされ、市場が混然一体となっている中で、それぞれの企業がどのような住み分け方をしていくかが注目されるとのことでした。
社長の柳井正氏は、ドラッカー経営の実践者として第一人者です。
今年の動向には要注目ですね。
(浅沼 宏和)
2011年2月6日日曜日
ダンドリを改善する
重茂氏の著作の検討です。
仕事は緊急なものからとりかかる。重要度は関係ない。
この原則はドラッカーの時間論とは対極に見えます。
しかし、私は雑務をかたずけて、まとまった時間を生み出すための原則としてとらえればよいのではないかと思います。
スケジュールに予備時間は必要ない。
最初から、予備時間を想定するような仕事ぶりでは仕事の能力が低下するということです。
これは傾聴に値する原則です。なにせ仕事は量をこなすのがまず基本ですから。
1週間、1か月のダンドリは人と会う仕事を軸に組んでいく。
デスクワークの段取りは1日単位で考えて、人に会うダンドリを少し長いスパンで決めてそれを前提に動くということです。
ダンドリは変化するものと心得る。完璧主義ではいけない。
デスクワークは1日単位、人と会うことは週、月単位で考えるだけです。後は大まかな流れや外せないポイントだけを決めて、状況に応じて即断するやり方がよいと述べられています。
私も同感です。
(浅沼 宏和)
仕事は緊急なものからとりかかる。重要度は関係ない。
この原則はドラッカーの時間論とは対極に見えます。
しかし、私は雑務をかたずけて、まとまった時間を生み出すための原則としてとらえればよいのではないかと思います。
スケジュールに予備時間は必要ない。
最初から、予備時間を想定するような仕事ぶりでは仕事の能力が低下するということです。
これは傾聴に値する原則です。なにせ仕事は量をこなすのがまず基本ですから。
1週間、1か月のダンドリは人と会う仕事を軸に組んでいく。
デスクワークの段取りは1日単位で考えて、人に会うダンドリを少し長いスパンで決めてそれを前提に動くということです。
ダンドリは変化するものと心得る。完璧主義ではいけない。
デスクワークは1日単位、人と会うことは週、月単位で考えるだけです。後は大まかな流れや外せないポイントだけを決めて、状況に応じて即断するやり方がよいと述べられています。
私も同感です。
(浅沼 宏和)
2011年2月5日土曜日
タイムマネジメントに必要なこと
仕事術の本は数多くありますが、アデコの社長であった重茂 達(おもいとおる)氏の『ダンドリの手帳』は、なかなか良いことが書いてあります。
これから折に触れてご紹介していきたいと思います。
タイムマネジメントだけでは時間に追われる。「想像」「準備」「対応」を
想像・準備・対応がダンドリの基礎というのが筆者の考えです。
展開を想像し、望む結果のために準備し、想定外のことに対応するのが仕事の基本ということです。
ダンドリが下手な人は、一つの経路しか想定していないため、予想外のことが起きるとパニックになり息詰まります。
その他の原則もあげておきます。
●仕事は発生した順番に手をつける
仕事を後回しにすると効率を損なう。
●その日の仕事はその日のうちに。決して持ちこさない。
極限まで自分を追い込んでこそ、本気でダンドリ改善に取り組める。
●仕事を効率化するだけではアウトプットは増やせない。
目標はアウトプットを増やすこと。そうすることでダンドリの技術が磨かれる。
絶え間ない努力だけが人を成長させる。
●とにかく量をこなそう。
「拙くても早い仕事か、質が高いが遅い仕事か」で悩む人は仕事の量が足りていない。
(浅沼 宏和)
これから折に触れてご紹介していきたいと思います。
タイムマネジメントだけでは時間に追われる。「想像」「準備」「対応」を
想像・準備・対応がダンドリの基礎というのが筆者の考えです。
展開を想像し、望む結果のために準備し、想定外のことに対応するのが仕事の基本ということです。
ダンドリが下手な人は、一つの経路しか想定していないため、予想外のことが起きるとパニックになり息詰まります。
その他の原則もあげておきます。
●仕事は発生した順番に手をつける
仕事を後回しにすると効率を損なう。
●その日の仕事はその日のうちに。決して持ちこさない。
極限まで自分を追い込んでこそ、本気でダンドリ改善に取り組める。
●仕事を効率化するだけではアウトプットは増やせない。
目標はアウトプットを増やすこと。そうすることでダンドリの技術が磨かれる。
絶え間ない努力だけが人を成長させる。
●とにかく量をこなそう。
「拙くても早い仕事か、質が高いが遅い仕事か」で悩む人は仕事の量が足りていない。
(浅沼 宏和)
2011年2月4日金曜日
再考・ 勘と度胸と経験の経営
深田氏は「勘と度胸と経験の経営」が今、求められているのだと主張します。
この問題点については昨日も検討しましたが、もう少し深掘りしてみたいと思います。
未来を見通すことは困難で、詳細なプラン通りに物事が運ぶはずもありません。
ですが、プランがなければそれは「行き当たりばったり」の経営になるのではないでしょうか。
プランとは何をするかを決めることで、それがなければ毎日の仕事の中で成果をあげることは難しいのではないかと思います。
そこで、ドラッカー的に「考え抜く」という視点でマネジメントを検討してみたいと思います。
視点① 経営環境の変化
先月のブログにも書いたのですが、かつての高度経済成長のころとは経営環境が全く違います。
当時は、中の上を目指していれば普通に黒字経営になりました。しかし、今は黒字企業の比率が2割をちょっと超える程度にまで厳しくなっています。
ここで求められるのは他に例を見ないオンリーワン経営です。
勘と度胸と経験でオンリーワンになることはなかなか難しいことと思います。
ドラッカーは、今できることをすべてやる。創意工夫を凝らし、次々と打ち手を打つ中で、思わぬ出来事や思わぬ成果が上がる。そこに「強み」がある。
強みを見つけたらそれを磨きぬき、卓越性を持つものとする。
これがドラッカーのイノベーションの一側面です。
視点② 時間管理の本質に着目
勘と度胸と経験もよいのですが、一番肝心なことは「何をするか」です。今日これから何をするかを勘で決めるのでしょうか?それは違うと思います。
ドラッカーは最重要経営資源であるヒトは、時間と知識に分解できるといっています。
特に最大の制約条件である時間を何に投入するかが大切です。時間管理の本質はアクションプランの明確化ですから、勘と度胸と経験といういい方はここに誤解を生じさせると思います。
最後に、ドラッカーの次の言葉で締めくくりたいと思います。
ナポレオンは「アクションプラン通りに事が運んで勝利したことはない」といった。
しかし、彼は史上例のない緻密さでアクションプランを作っていた。
アクションプランなしではすべては成り行き任せとなる。
‥‥『経営者の条件』より
(浅沼宏和)
この問題点については昨日も検討しましたが、もう少し深掘りしてみたいと思います。
未来を見通すことは困難で、詳細なプラン通りに物事が運ぶはずもありません。
ですが、プランがなければそれは「行き当たりばったり」の経営になるのではないでしょうか。
プランとは何をするかを決めることで、それがなければ毎日の仕事の中で成果をあげることは難しいのではないかと思います。
そこで、ドラッカー的に「考え抜く」という視点でマネジメントを検討してみたいと思います。
視点① 経営環境の変化
先月のブログにも書いたのですが、かつての高度経済成長のころとは経営環境が全く違います。
当時は、中の上を目指していれば普通に黒字経営になりました。しかし、今は黒字企業の比率が2割をちょっと超える程度にまで厳しくなっています。
ここで求められるのは他に例を見ないオンリーワン経営です。
勘と度胸と経験でオンリーワンになることはなかなか難しいことと思います。
ドラッカーは、今できることをすべてやる。創意工夫を凝らし、次々と打ち手を打つ中で、思わぬ出来事や思わぬ成果が上がる。そこに「強み」がある。
強みを見つけたらそれを磨きぬき、卓越性を持つものとする。
これがドラッカーのイノベーションの一側面です。
視点② 時間管理の本質に着目
勘と度胸と経験もよいのですが、一番肝心なことは「何をするか」です。今日これから何をするかを勘で決めるのでしょうか?それは違うと思います。
ドラッカーは最重要経営資源であるヒトは、時間と知識に分解できるといっています。
特に最大の制約条件である時間を何に投入するかが大切です。時間管理の本質はアクションプランの明確化ですから、勘と度胸と経験といういい方はここに誤解を生じさせると思います。
最後に、ドラッカーの次の言葉で締めくくりたいと思います。
ナポレオンは「アクションプラン通りに事が運んで勝利したことはない」といった。
しかし、彼は史上例のない緻密さでアクションプランを作っていた。
アクションプランなしではすべては成り行き任せとなる。
‥‥『経営者の条件』より
(浅沼宏和)
2011年2月3日木曜日
深田氏の「マネジメント信仰」批判
深田和範氏のマネジメント信仰批判の概要は次のようなものです。
マネジメントが下手だから会社が傾くのではない。
マネジメントなんかに頼ろうとするから会社が傾くのである。
本業で稼げない時に人事制度や情報システムを精緻化させて何の意味があるのか。
どんなに見栄えの良い事業計画を作っても、経営者に「意思」がなければ机上の空論である。
深田氏の意見はドラッカー本来のマネジメント論と合致しています。
しかし、深田氏はドラッカーのマネジメント論を実行しようとすると上記のような状態に陥ると考えています。
それはここでいったん置いておいて、深田氏の著書の内容をまとめていきます。
・経営者やホワイトカラーが社内のマネジメントばかりにこだわって企業の本質であるビジネスをおろそかにしているために業績悪化に拍車がかかっている。
・以前の日本企業は、マネジメントではなくビジネスを必死に追求していた。
・ビジネスが付加価値を生み出すことができない状態に落ち込んでしまえば、どんなマネジメントを行ったところでムダである。
・マネジメントがビジネスをダメにしている現状
症状① 意見はあっても意思はなし
・ビジネスには行う者の意思が必要。意思がなければ人間は行動を起こさない。
・「真似ジメント」の弊害。最近、マネジメント本に書いてあることをそのままマネする会社が多い。
症状② 都合のよいことばかり考える
・雰囲気で方向性が決まる。一度決まるとその方向性に沿うようなことばかり考える。
・反対意見がでることを嫌う。
症状③ 管理はするけど無責任
・何事においても内容より形式が重視される。
・形式的なことや目立つことはするが当たり前のことはできなくなる。
症状④顧客よりも組織を重視する
・経営理念・会社方針・ビジョンにこだわり、それが現実の会社の姿や日常業務とかい離していく。
・社員の考え方が幼稚になる。
以上を前提とした深田氏の主張は次の通りです。
★ 経験と勘と度胸を重視せよ
・2000年代になるまで日本ではマネジメント手法はあまり広まっていなかった。成功者の多くは成功の秘訣を「自分の経験・勘・度胸」といっている。今は物事を難しく考えすぎているのではないか。
・経験・勘・度胸でビジネスをすることは決して悪いことではない。あてにならない計画よりよほど役に立つ。
・勘と度胸を伸ばすには「新しい仕事を担当させる」のがよい。
・経験・勘・度胸が伸びてきたら、それにもとづいて自らの意思を積極的に示したり、主体的に選択するようにする。
・ビジネスを進める上では変わり者扱いされるぐらいの「こだわり」が必要。これが成功の秘訣。
★ 他人を変えるより自分が変われ
・他人はコントロールできない。自分が変わらなければ何も変わらない。
・マネジメント理論や手法で会社や社員を変えられると思ったら大間違い。
・もはやV字回復でも足りない。X字回復を目指せ。
・X字回復とは、頭打ちとなった既存事業とは別に新規事業の柱を作ること。
というのが深田氏のマネジメント信仰への批判の骨子です。
(浅沼宏和)
マネジメントが下手だから会社が傾くのではない。
マネジメントなんかに頼ろうとするから会社が傾くのである。
本業で稼げない時に人事制度や情報システムを精緻化させて何の意味があるのか。
どんなに見栄えの良い事業計画を作っても、経営者に「意思」がなければ机上の空論である。
深田氏の意見はドラッカー本来のマネジメント論と合致しています。
しかし、深田氏はドラッカーのマネジメント論を実行しようとすると上記のような状態に陥ると考えています。
それはここでいったん置いておいて、深田氏の著書の内容をまとめていきます。
・経営者やホワイトカラーが社内のマネジメントばかりにこだわって企業の本質であるビジネスをおろそかにしているために業績悪化に拍車がかかっている。
・以前の日本企業は、マネジメントではなくビジネスを必死に追求していた。
・ビジネスが付加価値を生み出すことができない状態に落ち込んでしまえば、どんなマネジメントを行ったところでムダである。
・マネジメントがビジネスをダメにしている現状
症状① 意見はあっても意思はなし
・ビジネスには行う者の意思が必要。意思がなければ人間は行動を起こさない。
・「真似ジメント」の弊害。最近、マネジメント本に書いてあることをそのままマネする会社が多い。
症状② 都合のよいことばかり考える
・雰囲気で方向性が決まる。一度決まるとその方向性に沿うようなことばかり考える。
・反対意見がでることを嫌う。
症状③ 管理はするけど無責任
・何事においても内容より形式が重視される。
・形式的なことや目立つことはするが当たり前のことはできなくなる。
症状④顧客よりも組織を重視する
・経営理念・会社方針・ビジョンにこだわり、それが現実の会社の姿や日常業務とかい離していく。
・社員の考え方が幼稚になる。
以上を前提とした深田氏の主張は次の通りです。
★ 経験と勘と度胸を重視せよ
・2000年代になるまで日本ではマネジメント手法はあまり広まっていなかった。成功者の多くは成功の秘訣を「自分の経験・勘・度胸」といっている。今は物事を難しく考えすぎているのではないか。
・経験・勘・度胸でビジネスをすることは決して悪いことではない。あてにならない計画よりよほど役に立つ。
・勘と度胸を伸ばすには「新しい仕事を担当させる」のがよい。
・経験・勘・度胸が伸びてきたら、それにもとづいて自らの意思を積極的に示したり、主体的に選択するようにする。
・ビジネスを進める上では変わり者扱いされるぐらいの「こだわり」が必要。これが成功の秘訣。
★ 他人を変えるより自分が変われ
・他人はコントロールできない。自分が変わらなければ何も変わらない。
・マネジメント理論や手法で会社や社員を変えられると思ったら大間違い。
・もはやV字回復でも足りない。X字回復を目指せ。
・X字回復とは、頭打ちとなった既存事業とは別に新規事業の柱を作ること。
というのが深田氏のマネジメント信仰への批判の骨子です。
(浅沼宏和)
2011年2月2日水曜日
書評-「マネジメント信仰が会社を滅ぼす」
深田和範 『マネジメント信仰が会社を滅ぼす』新潮新書、2010年 (定価 714円)
深田氏は、昨今のドラッカー・ブームに対するアンチテーゼ(批判)というようなものを本書によって提起しています。
私もドラッカーを読みこんできただけに、深田氏のマネジメント批判を良く理解したうえでコメントする必要があると感じました。
まず、深田氏の意見について何回かに分けて解説していきたいと思います。
ただし、この時点で深田氏の基本的な問題点を指摘しておこうと思います。
深田氏はドラッカーのマネジメント論を詳細には読んではいないと思われます。
本書の中で深田氏は次のように述べています。
‥‥ちなみに、ドラッカーの著書の中では、「マネジメント」は「ビジネスを管理する活動全般」と、また「ビジネス」は「事業」という意味で用いられている。
これは深田氏の明らかな読み誤りです。
私がドラッカーのほとんどの著作を繰り返し読み、内容を比較検討して見つけたドラッカーによるマネジメントの定義とは
組織・個人が成果をあげるための取り組みのすべて
です。深田氏のいう「ビジネス」もドラッカーのマネジメント概念に含まれています。
データエージェント社から明日(2月1日)刊行される拙著「実践!ドラッカー経営入門」でも明らかにしているように、ドラッカーは重要な用語について文脈に応じて広い意味とせまい意味を使い分けて使用しているのです。
深田氏はこの点に気づいておらず、特定の文脈におけるドラッカーのマネジメントの定義を理論全体に拡大しているため、明らかにドラッカー理論を理解しそこなっています。
ですが、深田氏の意見は、多くの経営者がドラッカーのマネジメント論を理解しそこなってテクニックに走る状況への批判ですので、結局は「本来の意味でのドラッカー経営を実践せよ」といっていることになります。
ドラッカーは本腰を入れて著作を読まないと、簡単に読み違えてしまいます。だからこそ丁寧に読んでいく必要があると思います。
(浅沼宏和)
深田氏は、昨今のドラッカー・ブームに対するアンチテーゼ(批判)というようなものを本書によって提起しています。
私もドラッカーを読みこんできただけに、深田氏のマネジメント批判を良く理解したうえでコメントする必要があると感じました。
まず、深田氏の意見について何回かに分けて解説していきたいと思います。
ただし、この時点で深田氏の基本的な問題点を指摘しておこうと思います。
深田氏はドラッカーのマネジメント論を詳細には読んではいないと思われます。
本書の中で深田氏は次のように述べています。
‥‥ちなみに、ドラッカーの著書の中では、「マネジメント」は「ビジネスを管理する活動全般」と、また「ビジネス」は「事業」という意味で用いられている。
これは深田氏の明らかな読み誤りです。
私がドラッカーのほとんどの著作を繰り返し読み、内容を比較検討して見つけたドラッカーによるマネジメントの定義とは
組織・個人が成果をあげるための取り組みのすべて
です。深田氏のいう「ビジネス」もドラッカーのマネジメント概念に含まれています。
データエージェント社から明日(2月1日)刊行される拙著「実践!ドラッカー経営入門」でも明らかにしているように、ドラッカーは重要な用語について文脈に応じて広い意味とせまい意味を使い分けて使用しているのです。
深田氏はこの点に気づいておらず、特定の文脈におけるドラッカーのマネジメントの定義を理論全体に拡大しているため、明らかにドラッカー理論を理解しそこなっています。
ですが、深田氏の意見は、多くの経営者がドラッカーのマネジメント論を理解しそこなってテクニックに走る状況への批判ですので、結局は「本来の意味でのドラッカー経営を実践せよ」といっていることになります。
ドラッカーは本腰を入れて著作を読まないと、簡単に読み違えてしまいます。だからこそ丁寧に読んでいく必要があると思います。
(浅沼宏和)
2011年2月1日火曜日
★「実践!ドラッカー経営入門」刊行
本日(2月1日)、データエージェント社(東京)の『近代中小企業』の別冊として、
ゼロから始める 実践!ドラッカー経営入門 (税込:525円)
が刊行されました。
本書は私がドラッカーの著作を読み比べてその論理構造を解きほぐしたものをまとめたものです。
ドラッカーのマネジメントとは「組織が成果をあげるためのすべての取り組み」と簡単に定義したところから始まり、
・現代では個人の成果は組織を通じてあげるようになっている。
・成果は3つの領域のバランスでのみあがる。
・成果をあげるために最も重要な資源はヒト。
・ヒトという資源は時間と知識に分解して理解する。
等の私が整理したドラッカー経営のポイントを中心に解説させていただいています。
市販のドラッカー本とは視点が違っていますので、これからドラッカーの著作を読んでみようという方、すでに読んでいるがさらに理解を深めようという方はデータエージェント社のHPにアクセスしてご是非購入ください。
また、当社のお近くの方はお声をかけていただければお届けいたします。
(浅沼 宏和)
ゼロから始める 実践!ドラッカー経営入門 (税込:525円)
が刊行されました。
本書は私がドラッカーの著作を読み比べてその論理構造を解きほぐしたものをまとめたものです。
ドラッカーのマネジメントとは「組織が成果をあげるためのすべての取り組み」と簡単に定義したところから始まり、
・現代では個人の成果は組織を通じてあげるようになっている。
・成果は3つの領域のバランスでのみあがる。
・成果をあげるために最も重要な資源はヒト。
・ヒトという資源は時間と知識に分解して理解する。
等の私が整理したドラッカー経営のポイントを中心に解説させていただいています。
市販のドラッカー本とは視点が違っていますので、これからドラッカーの著作を読んでみようという方、すでに読んでいるがさらに理解を深めようという方はデータエージェント社のHPにアクセスしてご是非購入ください。
また、当社のお近くの方はお声をかけていただければお届けいたします。
(浅沼 宏和)
閑話休題- 猟師の真剣勝負
江戸時代に「渡世伝授車」という、今風にいえばビジネス書のような本がありました。
この本にはいろいろな職業の成功のポイントが面白おかしく紹介されています。
その中に次のような話があります。
昔、網を打って小鳥を捕る猟の名人がいました。
名人は自分の腕を自慢して、 「私が網を打てば藩の剣術指南役といえども剣を十分に働かすことはできない」 とつい言ってしまったのです。
これを伝え聞いた剣術師範は激怒し、網打ち名人を呼びつけて勝負を挑みました。
名人は驚き、自身の軽口について土下座をしてわびたのですが剣術師範は許しません。
そこでとうとう鳥網打ちの名人と剣術師範は勝負をすることになりました。
剣術師範が切りかかると、名人はヒラリと体をかわし、すかさず打った網が剣術師範をからめ取ってしまいました。
剣術師範は面目を失い、顔を真っ赤にして再勝負を願ったのですが、鳥打ち網の名人は次のように答えたのだそうです。
「まず心を静めてください。何度やっても同じことです。
私は若年よりこの技を磨きぬいて、生活の糧を得て妻子を養ってきました。
私はたった5寸にも満たない小鳥さえ取り外すことはありません。
ましてや飛ぶこともできない5尺のあなたさまをからめ取ることができないはずはございません。」
これを聞いた見物の人々はどっと笑って 「なるほど、そりゃ道理だ!」 と口々に言ったそうです。
この名人の答えは、まさにプロフェッショナル論そのものです。
生活の糧を得るために精根こめて技を磨きぬくことは武芸の師範にも勝る意識レベルが必要ということです。
ドラッカーは「最善を尽くす」ことは約束できると述べていますが、そこでの「最善」というのはこの鳥網打ちの名人の意識レベルのものを指していると思います。
(浅沼宏和)
この本にはいろいろな職業の成功のポイントが面白おかしく紹介されています。
その中に次のような話があります。
昔、網を打って小鳥を捕る猟の名人がいました。
名人は自分の腕を自慢して、 「私が網を打てば藩の剣術指南役といえども剣を十分に働かすことはできない」 とつい言ってしまったのです。
これを伝え聞いた剣術師範は激怒し、網打ち名人を呼びつけて勝負を挑みました。
名人は驚き、自身の軽口について土下座をしてわびたのですが剣術師範は許しません。
そこでとうとう鳥網打ちの名人と剣術師範は勝負をすることになりました。
剣術師範が切りかかると、名人はヒラリと体をかわし、すかさず打った網が剣術師範をからめ取ってしまいました。
剣術師範は面目を失い、顔を真っ赤にして再勝負を願ったのですが、鳥打ち網の名人は次のように答えたのだそうです。
「まず心を静めてください。何度やっても同じことです。
私は若年よりこの技を磨きぬいて、生活の糧を得て妻子を養ってきました。
私はたった5寸にも満たない小鳥さえ取り外すことはありません。
ましてや飛ぶこともできない5尺のあなたさまをからめ取ることができないはずはございません。」
これを聞いた見物の人々はどっと笑って 「なるほど、そりゃ道理だ!」 と口々に言ったそうです。
この名人の答えは、まさにプロフェッショナル論そのものです。
生活の糧を得るために精根こめて技を磨きぬくことは武芸の師範にも勝る意識レベルが必要ということです。
ドラッカーは「最善を尽くす」ことは約束できると述べていますが、そこでの「最善」というのはこの鳥網打ちの名人の意識レベルのものを指していると思います。
(浅沼宏和)
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