2011年2月18日金曜日

ガリバーの戦略ストーリー

楠木氏は中古車買い取り専門のガリバーを例にとって優れた戦略ストーリーを説明しています。


ガリバーが意図した競争優位の源泉は「低コスト」です。

従来の中古車業者のやり方と比べてはるかに低いコストのオペレーションを確立したことがガリバーの持続的利益の源泉です。

低コストを実現したのが「買い取り専門」というユニークなコンセプトでした。

中古車業者は販売に軸を置く事業モデルです。買い取りは単に「仕入れ」と位置づけられるものにすぎませんでした。

これに対してガリバーは180度異なる戦略を立てたわけです。

ガリバーが買い取った車は即座に中古車業者向けのオークションに流されますので、在庫リスクもなく、確実に利益を上げるビジネスモデルになるわけです。

以下、戦略ストーリーの5Sにもとづいて整理します。

1 競争優位

買い取り専門のポジションをとることで、従来のやり方に比べてコストとリスクを同時に削減できるというのがガリバーの意図した戦略です。

2 コンセプト

「買い取り専門」という言葉に端的に表現されています。これは従来の中古車業界にまったくない発想でした。

3 構成要素

・本部一括査定
・短期在庫
・展示場を持たない
・出張査定
・査定価格自動算出システム
・積極的なマスプロモーション

これらの構成要素は買い取り専門というコンセプトを実質的に支えるものとなっています。

4 一貫性

各構成要素の因果論理が非常に強固で、ストーリーの流れに無理や破たんがありません。つまり一貫しています。

5 クリティカル・コア

「買い取り専門」というコンセプト自体がクリティカル・コアです。


ガリバーのとった戦略は、いわゆる中古車業界の玄人の眼から見ると非合理な側面が目につくものです。しかし、戦略ストーリー全体でみるとまったく無理がなく、実に革新的なビジネスモデルといえるのです。



(浅沼 宏和)