最近、ランチェスター経営に関する書籍が増えています。
そこで何回かに分けてランチェスター経営とはどのようなものかを解説していきます。
簡単に言うと経営戦略には「強者の戦略」と「弱者の戦略」があり、中小企業は弱者であるから「弱者の戦略」をとらなくてはいけないと主張するものです。
まず、ランチェスター経営はランチェスターの法則という軍事理論を利用しています。
これはフレデリック・ランチェスターという人物が航空戦を観察したところから生み出された法則です。
この法則は第二次世界大戦でアメリカ軍の兵力配置や武器開発、兵站などに実際に応用されて大きな成果をあげています。
そしてこの法則は経営にも導入されるようになり、特にマーケットシェアにかなり具体的な目標を設定させるのに役立てられてきました。
そして、現在は中小企業向けの経営コンサルティングに利用されるようになったものなのです。
しかし、実はこのランチェスター経営というものは日本独自の経営戦略理論です。
日本式のランチェスター経営戦略は国外ではあまり知られていません。
そこで、この理論の役に立つところと気をつけるべきところを検討していきたいと思います。
おおよその説明としては、ランチェスターの法則からマーケティングの分析に利用されているところまでは経験科学的な理論です。学会発表をしても耐えうるものでしょう。
しかし、日本でビジネス書として出されているものの多くは、そこからインスピレーションを得て発想されたその著者独特の経営観といえます。
ですから、著者によってニュアンスが結構違っています。また多くの場合、ドラッカー理論を導入して書かれていると思われます。またポーターの競争戦略論やその他の著名な経営理論も巧みに取り込んでいます。
ですから市販のビジネス書は「ランチェスター経営」という名称はあまり妥当ではないと考えています。
なにせマーケティング分析以降の話は、それぞれの論者の独自のモノですし、論理的厳密性もあいまいですから。
単純に言って「ランチェスターの法則からそこまでのことが言えるのか?」という問題点があるのです。
ただし、ランチェスター経営の本を書いている人は、豊富な実例や独特の視点をお持ちの場合が多く、経営に役に立つ内容は間違いなく含んでいます。読まれて損はないでしょう。