宮内拓智・小沢道紀編著『ドラッカー思想と現代経営』晃洋書房、2010年 定価2,625円
本書はドラッカー学会立命館支部の関係者の論文集です。
およそドラッカー理論を正面から扱っている学術的文献はごく限られています。
こうした論文集が出版されること自体、ドラッカーに対する世間の評価の変化の大きな兆候といえるでしょう。
本書は14名もの研究者の共著であるため、ドラッカーへの理解はまちまちです。
非常に深い視点から考察している論文は3分の1程度です。それ以外は自身の研究テーマにドラッカー的味付けがなされているというタイプのものです。
それでもドラッカーの全集を読んでいるような人には参考になる本であると思います。
ドラッカー理論の学問的位置づけについての意見が、いくつも見受けられ、それはとても参考になりました。
ただし、実践的なヒントを期待する向きにはあまり向かない本です。
私個人としてはドラッカーのイノベーション概念についてシュンペーターのイノベーション概念やクリスチャンセンの破壊的イノベーション概念との対比を行っている論考です。
おそらくシュンペーターとクリスチャンセンは今後ずっと重要な経営学者であり続けるでしょうからドラッカーと対比してくれている文献は刺激的です。