山崎将志著『残念な人の思考法』日経プレミアシリーズ、2010年 定価893円
刺激的なタイトルの効果もあり、なかなか売れているビジネス書です。
体系性という点ではいまいちなのですが、個別のエピソードや視点は非常に切れがあります。
本書ではダメなビジネスパーソンを「残念な人」と位置づけています。
そのモチーフとなる考え方は、仕事の成果=プライオリティ(考え方)×能力×やる気
のうち、プライオリティがダメな人は成果が出ないというものです。
まずこの方程式は稲盛和夫氏の提起する方程式そのままです。これを前提にしていろいろなエピソードをちりばめてあるのですが、体系性がないため活用しにくいかもしれません。
しかし、なかなか面白い話もありますので、以下、私が関心を持った部分を列挙します。
・「作り出す仕事」と「こなす仕事」の二極化は拡大している。上のポジションを目指すなら、「作り出す仕事」ができる力を身につけること。つまり、徹底的に「考える」のだ。
・労働力を投入すること=仕事 ではない。
・アウディのディーラーは顧客の車を預かったら必ずぴかぴかに洗って返す。きれいな車が町を走ることは広告になると考えるから。
・二流は積み上げ方式で考え、一流は市場全体から考える。(=『二流は掛け算で考え、一流は割り算で考える』)
・言い訳している限り店は寂れていく。
・「顧客のえり好みをせず、呼ばれたら迅速に対応し、要望に可能な限り答える営業担当者」は「残念な人」かもしれな。それは顧客にとってだけ理想的な人であり、会社にとって理想的ではない。
・任せられない人とは、期限内に、期待した水準の仕事を仕上げてこない人。
・小さな約束を守れない人と大きな約束はできない。
・就職活動における残念な人の志望動機-「とにかく会ってみればわかります」「御社の○○を評価します」「前の会社はひどい会社でした」「前職はハードすぎて」「協調性、行動力、忍耐力、‥‥等があります」「厳しい環境に身を置きたい」「御社を最後の職場にしたい」
・成功のもとは成功である。
といったところです。
前提が稲盛和夫氏の方程式で、あとはところどころがドラッカーです。例えば、「成功のもとは成功」とは強みに焦点を当てろというドラッカーの言葉と同じです。
また別のところでは「問題に集中するな、機会に集中せよ」とはドラッカーの言葉そのままです。
しかし、本書はアクセンチュアという大手コンサル出身者の独特の問題解決手法も垣間見える点は興味深いところです。