本部映利香著『安定経営の極意』長崎出版、2010年 定価 1470円
著者の本部氏は16歳で起業し、結婚離婚などの人生の荒波を乗り越えて現在経営コンサルティングを行っているという異色の経歴の持ち主のようです。
ですから、体系的な経営書とは違った面白い視点が随所に見られます。
内容は「三日間の社長面談」「業務改善」「上司へのアドバイス」「経営者が陥るワナ」の4つの項目にまとめられています。
それぞれ主なものを抜き書きます。
●三日間の社長面談
・社長の5つのタイプ
初代「背水の陣」タイプ‥危機的状況に強いが安定期に伸び悩む
初代「好きを仕事に」タイプ‥仕事に情熱を注ぐが理想と現実のギャップに悩む
初代「なんとなく」タイプ‥計画性も根性もない
世襲「起業家」タイプ‥商売の勘所が分かっている。譲り受けたものを維持するのは大変
世襲「なんとなく」タイプ‥お坊ちゃんで精神的に弱い
・経営者と従業員はわかりあえない。経営者は全体に目が行き、従業員は仕事に目が行く。仕事の目的を伝えるのがコツ
・実務経験を重視する。多くの経験がデータベースとなり勘を生む。行動が勘を生む。
・「社長の仕事は先を見ることだ。でも、その前に市場を見ることだ」
・会社の生死は経営者の気力が握る
●業務改善
・ゴミを拾い掃除する。掃除をすれば利益が上がる。
・早起きする
・従業員に粗利を意識させる
・目標合格ラインを6~7割とする
・ビジネスマナーをしっかり教える
●上司へのアドバイス
・人ではなく、業務を管理する。業務を管理していれば嫌われてよい。
・「売りたいもの」ではなく「売れるもの」を作る
・嫌われても態度を変えずプロとして仕事をする
・楽しい職場づくりを否定する。会社の業績アップと楽しい職場は両立しない。
・上司と部下でミッションを共有する
●経営者が陥るわな
・嫉妬を買わないお金の使い方をする
・経営が順調な時ほど謙虚になる
・決断しない悪癖を改める
・きちんとお金を使う
・PRのポイントを絞る。選択肢が多すぎるとお客は選べない。
紫色の部分はドラッカーの考えと同じものです。偶然かわかりませんが、「上司へのアドバイス」はドラッカー経営の「人と仕事のマネジメント」の内容に合致しています。
その他の部分に関しては、読み物としてよりはおそらく本部氏の講演のほうがおもしろいのではないかと想像しました。
特に本部氏はご自身が経営者として若いころから苦い水を飲んでいますから「経営者が陥るわな」には実感がこもった話が期待できることでしょう。
また清掃する目的が細部に目を配る心構えを作ると考えている点、その関連性で壊れ窓理論に言及している点は当社の環境整備の考え方(2S直角平行)と全く同じです。
掃除(環境整備)は経営戦略の柱なのです。