小林氏は長野の中小企業の社長です。長年、大手企業の下請けに甘んじてきた結果、経営危機に陥り、そこから「ノーを言わない営業」を武器にして経営を立て直したという人物です。
小林氏は非常に物事を体系化する頭脳の持ち主のようで、本書は中小企業の現状についてかなり本質をついていると思います。
また、中小企業政策についての提言もしていますが、説得力があります。
本書は特に中小製造業の経営者はぜひ読まれたほうがよいと思いました。
まず、小林氏は大企業の倫理観について厳しい批判をします。大企業は平気で中小企業の技術を盗むというのです。
工場を見学し、写真を撮り、それを自社で行えるようにした後でその会社との取引をやめてしまう。こうした姿勢を延々と続けてきたため、大企業と中小企業の関係はWIN‐WINではないというのです。
そこから小林氏は中小企業の生き残りの方策を模索します。
中小零細が下請けから脱するためにすべき7つのこと
①技術力の確立
②ノーと言わない営業
③顧客ニーズを満たして特許出願
④「匠」の技を機械に置き換える
⑤中小零細同士でコラボする
⑥広告・宣伝・展示会への出展
⑦行政関係機関からの応援を得る
この詳細については触れませんが、小林氏は日本の中小零細製造業の未来について「なんとかなる」という考え方を持たれているようです。
ただ、今の製造業が厳しい状況にある理由については
「 この失われた10年というのは、何も考えずに『ただただ安く造れる』という理由だけで海外に進出した企業が、結局、地元にさまざまなノウハウ・技術を伝授する結果となり、それらのメーカーの追い上げに戸惑い、恐れ、翻弄され自信を失ってしまった10年という見方もできるのではないか 」
と厳しい評価を下しています。
私はモノづくりの第一線で成果を上げている小林氏の実感のこもった本書の提言にはかなり信憑性があるように感じました。