小宮一慶著『繁栄し続ける会社のルール』ユナイテッドブックス、2010年 定価1,470円
例によってドラッカー度の高い小宮氏の新作です。
今回の著書はなんと日本の他、台湾・韓国・中国でも同時発売になるそうです。
もはや小宮氏は「東洋のドラッカー」の道を歩んでいるのかもしれません。
今回もかなりのドラッカー度数です。
まず、ドラッカー的なところから抜き出してみますと、
・会社が存在する理由について検討している‥ドラッカーはそれを「何によって覚えられたいか」という問うべしといってミッションの重要性に言及しています。
・ビジョンの重要性について‥小宮氏のビジョンはドラッカーの言葉ではミッションです。
・「目的」と「目標」の違い‥‥ドラッカーはゴールとターゲットの違いとして述べています
・「和気あいあい」より「切磋琢磨」‥‥ドラッカーは成果に目を向けないで、和やかな会話を繰り返す会社の人間関係を「不毛」と斬って捨てています。
・利益はコスト?‥‥ドラッカーの決め台詞の一つです。場合によっては利益は条件という表現になります。
今回の小宮氏はドラッカーに加えて松下幸之助氏の思想や「ビジョナリー・カンパニー」のコリンズの書籍からの引用も使っています。
ただし、コリンズはドラッカーを尊敬する経営学者ですし、ドラッカーは日本のかつてのカリスマ経営者たちを評価している人ですから、松下氏の考え方とも親和性が高いと思います。
コリンズ氏の近著「ビジョナリーカンパニー2」では、「先にバスに乗る人を選んでから行き先(戦略)を決める」という印象的なコンセプトを提起しています。
これはレベルの高い人の選抜が戦略設定に優先するというもので、実はドラッカー理論との整合性をよく考えなければならない重要な論点を含んだ考え方です。
小宮氏の著書ではまだこの論点には深く入り込んではいません。
今回の著書では小宮氏は「お客様から見えない部分」を大切にするべきであると論じます。
見えない部分として重視すべきなのが
1、会社のビジョンや理念がいかに大切か
2、働く人にとって働きがいのある会社、働きやすい会社にするためには、どんな姿勢で臨
むべきか
3、売上高や利益など、数字に対して徹底的にこだわる
といったことであるといいます。
今回の著書は、近年、続々と出版されている小宮経営論の集大成といった位置づけのようです。