2010年8月1日日曜日

書評 「ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階」

ジェームズ・コリンズ『ビジョナリーカンパニー③ 衰退の五段階』日経BP社、2010年  定価 2,310円


ビジョナリーカンパニーの続々編です。

コリンズはドラッカーの影響を強く受けている人物ですので、基本的な企業観はドラッカーと同じです。

本書は大企業を想定して書かれていますが、そのエッセンスは中堅企業、中企業レベルには当てはまると思います。

・企業の衰退は次の5つの段階をたどる。

①成功から生まれる傲慢 :成功することで現実の厳しさから隔離される。勢いがあるのでまずい決定や規律の喪失があってもしばらく前進できる。  

②規律なき拡大路線 :あまり業績を上げられない分野に進出する。卓越性を維持できるペースを超えて成長しようとする。

③リスクと問題の否認 :内部では警戒信号が多数つみあがってくるが、外見的な業績が十分に力強いので心配なデータをうまく説明してしまう。

④一発逆転の追求 :急激な衰退がだれの目にも明らかであるため、一発逆転を狙ってしまう。

⑤屈服と凡庸な企業への転落か消滅 :財務力が衰え、士気が低下し、偉大な将来を築く望みをすべて放棄する。


こうした衰退のプロセスに陥らないためにコリンズは、規律ある人材、規律ある考え、規律ある行動 の3つを重視することを提唱します。

特に、規律ある人材を選ぶことができるかが重要になるといいます。ここにドラッカーの考えが大きく反映しています。

規律ある人材について、コリンズはドラッカーの思想を受け継いで次のように述べています。


不適切な人材はこれこれの「肩書き」をもっていると考えるのに対して、適切な人材は自分はこれこれに「責任」を追っていると考えることである。


また責任ある人材は、「どのような仕事をしているのですか?」という質問に対して「私はこれこれについて最終責任を負っている。」という回答ができるといいます。

規律なき人材はこの質問に答えられないとコリンズはいいます。