2010年8月19日木曜日

閑話休題-ホームズの探偵術

私はシャーロック・ホームズが好きで、ときどき文庫本を読み返したり録画してあるイギリスのドラマを見たりします。

ホームズは架空の人物ですが、モデルとなった人物がいます。作者のコナン・ドイルが医学生であった頃の恩師だそうです。

その恩師は患者がやってくると、何も聞かないうちにどのような人物であるかをズバズバと当ててしまったそうです。

小説の中のホームズもわずかな手掛かりから多くの推理を行います。

たとえば『青い紅玉』の中では、持ち主不明のヨレヨレの帽子を手に取って眺めながら、ワトソン氏に対してその持ち主がどのような人物であったかを説明しています。


箇条書きにしますと

・高い知性を持っている
・3年前までは裕福だったが今は落ちぶれている。
・当時は高い洞察力を備えていたが今はそれほどではない。
・資産が減るとともに素行が悪くなっている。原因はおそらく酒。
・妻は彼に愛想を尽かしている。
・彼の自尊心はまだ失われるまでには至っていない。
・主に座った生活をしている。あまり外出はしない。運動不足。
・白髪交じりの中年で数日以内に散髪している。
・髪にライムクリームを塗っている。
・家にガス灯がひかれていない。

ホームズはこの推理の根拠も示していますが、それは小説で確認してください。



さて、ホームズの推理術はアブダクション(Abuduction)と呼ばれるものです。訳すと仮定的推論です。

アブダクションとは「ある事象の原因を最もうまく説明できる仮説を立てる」というものです。

ささいな手掛かりから少しずつ仮定の範囲を広げていき、本質に迫っていき、最後に決定的な仮説を立てるというのがホームズのスタイルです。

ホームズの物語はアブダクションの推し進める経過を描いているものなのです。


アブダクションは優れたビジネスパーソンは多かれ少なかれやっています。

また会計にもアブダクションは使えます。

会計情報、つまり決算書だけで企業の状態を十分知ることは難しいです。ですから周辺情報を丹念に集めて数字の行間を埋めていかなければならないと思います。会計にもアブダクションが必要なわけです。

というわけでホームズを熟読するとビジネスパーソンとしてのスキルが上がるかもしれません。