2010年10月3日日曜日

書評-「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」①

香川晋平『東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員』経済界、2010年  定価 800円+税


香川氏は会計士の立場から社員の採算感覚についてまとめています。これは財務にかかわる人間は必読です。


私は今年『簿記再入門』を書いたときに、「ビジネスパーソンは給料の3倍稼ぐ必要がある」ことを会計的に説明しました。

私の論理を簡単に説明しますと、黒字の中小企業の労働分配率は少なくとも50%前後以下であり、給与額面から言うと40%台であること。

この事実から企業は従業員平均で給料額面の2.5倍程度の付加価値を生む必要があり、中核的な人材ならば当然3倍の付加価値を生む必要があることが論理的帰結であること。

そして、この付加価値を生む基本的視点は、投入資源とそこから生み出される成果の比率を最大化することにあり、そのポイントが時間管理にあることを示しました。 (ドラッカーのコスト管理論)



香川氏の著書は、数字的な結論は私と全く同じです。せっかくですので香川氏の説明の中からとてもいい部分をまとめていきましょう。



・発言に具体性を欠き、数字ではなく「かなり」「少し」という表現を多用する社員は赤字社員。

・「オレの時給はマックの店員並み」という社員は赤字社員。黒字社員は自分が貢献した利益額を考える。


・黒字社員の発想法の例 - 上司のサポートを積極的に行い「君のおかげだ。」と言われた。
そこで、上司の営業成績(粗利)500万円アップ分の貢献2割と考えて、貢献額100万円と考えた。
すると給与額面25万円の3倍の75万円を上回ること25万円であり、自分は黒字社員であると判断した。


・黒字社員は1つの仕事の時間効率を気にする。例えば、25万円÷20日÷8時間=1,600円/時間


・1時間当コストをはるかに上回る価値を生まなければならない。
与えられた仕事を終業時間まで引っ張る「ダラダラくん」、追加仕事を振られないよう常に忙しそうにしている「演技派ちゃん」は時間当たり給与の感覚がないので、1000円の経費申請書作成に平気で1時間を使う。


・黒字社員はスピードアップを常に意識する。できるだけ多くの仕事を就業時間内でこなそうとする。


・黒字社員は各仕事に求められる精度、自分の時間当たりコストがわかっているため「どの程度の時間をかけるべき仕事なのか」をすぐに計算できる。