2010年10月21日木曜日

黒字社員と赤字社員 -再考

今月初めに書評を書いた「東大卒でも赤字社員 中卒でも黒字社員」は反響がとても大きく、「プリントアウトして社内で回覧した」というご連絡をあちこちからいただきました。

ということで、あらためてそのキモの部分を整理し、解説を加えたいと思います。


本書が主張しているのは一言でいえば『徹底的な時間活用』です。

いいかえると「あらゆる仕事は投入時間と成果の比率を最大化するという視点から深く考えられていなければならない」ということに尽きてしまいます。

それを手を変え品を変え色々な角度から説明を加えているわけです。具体的に説明します。紫字が私の解説です。




・黒字社員は仕事のスピードがある。時間内にできるだけ多くの仕事をこなす意識が高い。


*あげた仕事の量と質で仕事を評価する。「何時間かかった」という視点は、プロダクト・アウトの視点にすぎない。仕事の評価はかけた手間(コスト)ではなく質と量できまる。


・黒字社員は時間コストに敏感 (時間と成果の比率について皮膚感覚がある)

・手待ちコストの削減も立派な利益貢献 (ムダな移動・ムダな行動・資源使用等にも敏感)


*定型業務コストは少なく見ても1時間当たり1,200~1,800円程度(一般社員)、
役員・上位役職者クラスなら時間当3,000円以上になると考える。(大企業はもっと高くなる)
次の計算式でおおまかに判断:  年収÷12÷月平均勤務日数÷1日平均勤務時間 )

*時間を余計に費やしたら顧客に対してその分を多く請求する必要があると考える。
追加請求すべき金額は、時間コストの2倍以上(中核社員なら3倍以上)の金額が目安。

*逆に、時間を1時間短縮したら時間当たり人件費の2倍の価値貢献をしたことになる。

*人件費コストは手待ち時間だけではなく準備時間・事後処理時間まで含めて考える。

*時短で空いた時間でさらに別の仕事をこなして価値貢献をするのが黒字社員。

*黒字社員の発想は常に自身の人件費コストをもとにしており、それは行動・発言のはしばしに表れている。


・会議・ミーティング・朝礼は時間コストをかけている。黒字社員は発言への意識が高い。


*時間を使ったら貢献するのがビジネスパーソンの基本行動。会議への貢献とは発言するか実行すること

*会議等については貢献するか時間を浪費するかのどちらかでしかない。

*顧客との面談も同じ論理。面談中に意味ある発言(情報提供)もしくは課題の発見がないならば時間の浪費。面談の価値を当人が認識できなければ時間の浪費

*顧客面談・社内会議・ミーティングなど社内外のコミュニケーションでは、意識的な努力がなければ価値創出をしたことにならない。価値創出しなければその時間自体が無意味になる。

*「いい話を聞いた」だけの研修も時間の浪費


・黒字社員は自社のビジネスモデルっているがわかっている


*あらゆる行動が自社の上げるべき最終成果に向けられている。

*最終成果に向けられない時間投入はムダになる。

*その状況において価値ある行動や発言が何かが判断できる。

*時間や資源を使う意味について隅々まで意識が届いている。ほんの5分を使うことの意味、紙1枚余分に使うことの意味まで意識されている。




非常にざっくりとしたまとめですが、焦点を絞ったほうが分かりやすいと思います。
こうしてみると本書はとてもドラッカー的であることが分かります。

ここのところドラッカーのタイムマネジメント論を検討していますから、合わせてお読みいただければより理解を深めることができると思います。