先日のセミナーでドラッカーの著作を読むにあたっての注意点を説明させていただきました。
ドラッカーの著作は名著ですが、多少注意して読まないと読み違いをしやすい難点があります。
以下、私が気を留めているものを列挙します。
1、同じ用語にいくつもの意味がある。
例:マネジメント ①経営者 ②経営管理者以上 ③成果を上げる取り組み ④マネジメント分野
2、同じ内容にいくつもの側面があり、それぞれ違う用語で説明する場合。
例:「貢献」は成果に対して行う重要な用語として扱われるが、貢献は広い意味で「成果」である。
3、広い意味とせまい意味がある。
例:広い意味での成果には ①直接の成果 ②価値への取り組み ③人材育成 という狭い意味の成果に分けられている。
4、一般的な意味とドラッカー独特の意味づけがある。
例:「知識」という用語について、情報・専門知識といった一般的な意味と、「情報を成果に結びつける能力」というドラッカー独特の意味で使われている場合とがある。
こうしたことを知らないと、ドラッカーの説明が理解できない場合が多々発生します。
それぞれの用語がどのような意味で使われているかを自分なりに考えていくことが必ず必要です。
こうした思考プロセスによってドラッカー理論が頭にしみこませることができます。
さらにマネジメントの古典三部作に良く見られることですが、1950年代~60年代のアメリカの経営事情を反映している部分があります。
そうした部分は現在の状況にはそぐわなくなっていますので、意識的に区別しておく必要があります。
たとえば『創造する経営者』において多角化経営についての説明が多くなされています。それは当時の多角経営ブームの反映ですので、その点は現状に合わせて読み解く必要があります。
また同書では、成果の上がる3領域について製品・サービスの分析から始めるべきで、場合によっては市場や流通チャネルから始まるといった趣旨のことが書いていあります。
しかし、1960年代の米国企業の経済成長の状況と現在の経営環境と比べると、市場や流通チャネルの分析から始めることが原則的になったのではないかと私は考えています。
こうしたことを考えるきっかけになるのもドラッカーの優れたところだと思います。